Another Episode13 if……前編
Introduction 目覚め、いつもと違う始まり
「お兄ちゃん、早く起きてぇ!遅刻しちゃうよぉ」
…………朝
今日は、晴れやかな朝であった。
カーテンから洩れる朝日は、俺を優しく照らし出し
耳元に聞こえる鳥達のさえずりは、さながら目覚めを知らせる音楽のよう……
その場にコーヒーか紅茶などの飲み物があれば、ちょっとした金持ち気分が
味わえるかなと少し安直な考えが浮かんでくるが、寝起きだと思って勘弁してもらいたい。
繰り返すようだが、本当に理想的な朝の風景
文句の付け所のない完璧すぎる、朝のスタート
………そう、間違いなく百人中最低でも八割は気分良く
目覚める事のできる、このシチュエーション。
なのに俺は、まさに気分良くとは真反対の不快な目覚めを
現在進行形で感じていた。
苦悩、そう言った方がシックリ来るかもしれない。
とにかく心地よい目覚めとはかけ離れた、そんな状況……
――――なぜ?
そんな疑問が当然、皆に浮かんでくる事だろう。
当たり前だ。俺だって第三者の立場なら、そう思う。
未だ俺自身、なんでこんな不可解な状況に陥っているのか、混乱しているのだから。
でも、そんな錯乱した状態でも原因ははっきり分かっており
それはベットで横たわる俺の上に感じる重み……
「……あっ、やっと起きたぁ!この寝ぼすけお兄ちゃん!」
俺をお兄ちゃんと呼ぶ、俺の上に圧し掛かっている一人の少女が原因なのだから
この時点ではまだ、えっ?……そう、言葉に上げる人が多数であろう。
俺、伝馬和弥には知っての通り妹である泉がいる。
朝、起しに来る事に何の疑問を感じることはない。
確かに双子とは言え、最近では呼ばなくなったお兄ちゃんという言葉には
懐かしい響きを感じなくもないが、そこまで頭を悩ませるほどの事態ではない。
………なら、なぜ俺がこんなにも苦悩しているかというと
それは俺の視界に映っているのが、妹である泉ではなく
「あっ、飛鳥……なんでお前がここに」
我が幼馴染である宮本飛鳥が、そこにいるのだから……
もう一度見直すが、間違いない。
余程の目の悪さではない限り、目の前にいるのは飛鳥その人であった。
「何馬鹿げた言ってるのぉ!ここに私がいるのは当たり前の事じゃない」
頬を膨らませて、少し怒り気味に言う飛鳥。
俺からすれば、何が当たり前なのか、寝起きの頭では皆目見当が着く訳がない。
でも、飛鳥は続けざまにこう俺に向けて言葉を放つ。
「私は伝馬飛鳥。正真正銘、伝馬和弥……お兄ちゃんの妹なんだからっ!」
満面の笑みで衝撃の言葉を……
「………えっ!?ちょっとそれって――――」
「良いからぁ、朝御飯出来てるよぉ!早く下に下りてきてねぇ」
「だから、それどころじゃなくて―――」
「うるさいよぉ、お兄ちゃん!妹の言う事ちゃんと聞きなさいっ!」
俺の言葉を慣れた手つきで遮る飛鳥
一瞬の隙すら与えず、飛鳥は俺の部屋から出ていく。
聞こえてくるのは、下へと降りているのであろうスリッパ音のみ
………俺が、飛鳥のお兄ちゃん?
脳内に埋め尽くされる疑問符の大群
これは夢なのだろうか、それとも誰かのイタズラ?
混乱する思考の中、無数に浮かび上がる思い
意味の分からない現状に様々な考えが飛び交い、錯綜する。
そんな中でも、俺は数十ある行動パターンをなんとか頭の中で導き出し
結局の所、決定した行動は
「………朝飯でも食べるか」
ヘタレらしいなんとも勇気の欠片もない案であった。
First Action 朝の登校風景
………よし、まずは状況整理だ。
俺の名前は伝馬和弥、17歳。身長、体重に変化はなく
外見の変化はほとんど見受けられない。
細かい変化を言うならば、少し前髪が長くなっているくらいか
朝飯で聞き出した現在、絶賛俺の妹中の飛鳥いわく
俺は先生ではなく、学生であり扇山高校に通う高校2年生らしい。
妹である飛鳥も同じく高校2年であり、同じクラスらしいが
それでは俺の妹と言うのは、いささか可笑しいという疑問が沸く。
まぁ、俺と泉みたいに双子ならまだしも、ここまで似てない双子はありえない訳で……
それを飛鳥に追求してみるも、返って来る答えは
「そんな問題、地球温暖化問題に比べればぁ、些細なことだから気にしないのぉ」
……と避けられるばかり
取り合ってくれる雰囲気はまるでありはしない。
触れてはならないタブーなのだろうか……
聞きたい気持ちはあることは確かだが、俺はそれ以上の追求はせずにおいた。
とにかく今の現状は大雑把ながらではあるが、こんな所である。
なぜ俺がここに?なぜ妹が飛鳥?夢でも見てるのか?
と言うように色々と不満、疑問点は浮かんでくるも、これ以上考えていても仕方が無い。
言うなれば、考えたら負け……そんな状況なのだと納得するしかない。
まぁ、どうあれ一生味わえる事のできないと思っていた
高校生活をエンジョイ出来るのだ。
俺はこの今の現状を思いっきり楽しむ……そういう考えで一応ながら
結論をつけようと思う。
………はい、俺の脳内会議終了!
学校へとレッツゴーであるっ!
「そんな風にポジティブに考えていた時、俺にもありました……」
でも、そうは問屋が卸さないのが俺の不幸クオリティー
今、俺がいるのは通学路。周りに視線を向ければ、同じような制服に
身を包んだ学生の姿が瞳の中に映りこむ。
同じ扇山の生徒なのだから、当たり前……そうなのだが、明らかに俺を
俺達を見つめる生徒達の眼差しに、なんだか朝から気分が重くなる。
向けられている視線の原因は明らかであり、それは俺の両腕に
しがみ付いている二人の女性が災いしているわけで……
思い描いていた甘酸っぱい、青春を感じる朝の登校風景とは
まるで違う、昼ドラような雰囲気が目の前で展開されていた。
「俺はどこで修羅場フラグを踏んだのだろう」
そんなオタクらしい言葉が洩れてくるも、この状況下では
発言力はないに等しい。溜息を浮かべつつ、現実に目を向けるため視線を右へ
そこにはドエライ冷え冷えした視線を左側に向ける
「お兄ちゃんは私とずっと一緒なの、お兄ちゃんは私とずっと一緒……」
何か恐ろしい言葉を呟き続ける現、マイシスター飛鳥の姿が
……っていうか飛鳥さん。痛い、痛いよ!そんなに力強く俺の腕握らないで!
絶対離さないと言わんばかりに、ギュと両手を使って握る妹、飛鳥。
でも腕の痛みは右側ではなく、反対側も……
「……なっ、何よ!そんな私の方をジロジロ見て!このバカ和弥!」
力強く握る少女の姿が……
そこにはスラリとした体。優美で、とても可憐な佇まい
少し乱暴な言葉遣いではあるものの、見た目大和撫子という言葉が
とても良く似合う女性が、頬を赤く染めてこちらに視線を向けていた。
そう、その少女は見知った顔の人物であり
「予想はしていたけれど、まさか蓮まで変わっているとは……」
落胆の言葉を洩らさずにはいられない。
左側……恥ずかしそうに俺の左腕を握っているのは
正真正銘間違いなく、俺の親友綾月蓮であった。
今の俺の状態は、左腕に蓮。右腕に飛鳥という
俗に言う両手に花状態という、ギャルゲーでは定番のシチュを
現在進行系で行なっていた。
その状況は俺に負担を与え、周りの視線でダブルパンチな状態なのだが
それに加えて……
「………」
「………」
いつもの仲良し5人組のときとは違う、隠すことのない敵意に
俺の心は更に追い込まれていたのであった。
事の発端は、学校へ向かうために家から出たその瞬間から始まっていた。
いつも一緒に学校に行ってるのぉ!と強く飛鳥に言われ
二人仲良く玄関を出ると、そこには見知った顔の人物……蓮がそこにいた。
何事かと思い、話しかけてみると蓮は開口一番
「だっ、だらしない和弥のために迎えに来てあげたわよっ!言っておくけれど
あんたと一緒に登校したいとかそんなこと、全然思ってないんだから勘違いしないでよね!」
と、なんともツンなんとかみたいな発言を述べる蓮。
俺は唖然としながらも、蓮も何かが変わっていると感覚的に理解する。
そうして、俺は蓮に引きずられるように登校を始め
蓮に対抗するかのように、飛鳥が反対側の腕を握り、今の状態となった訳である。
おいおい、朝っぱらラブコメ展開なんて、なんてギャルゲー?
などと言いたくもなるが、ここは我慢。
こういう展開は第三者であってこそ、面白いのであって
当事者は大抵酷い目に遭うのが、定番……鉄板な事柄である。
それゆえ、俺は早くこの負のスパイラルから抜け出さなくてはならない。
先人達と同じ轍は踏んではならないのだ。
ヘタレ脱却、NOと言える日本人になろうである。
だからこそ二人が少し傷つこうとも、強めに
「おい、二人とも!何時までもベタベタと俺の腕に―――」
「うるさいよ、お兄ちゃん!少し黙ってて!」
「近くで怒鳴らないの!少し静かにしときなさい、バカ和弥!」
「………はい」
……ふっ、やはりヘタレはヘタレ以下にもヘタレ以上にもなれないようだ。
正直な話、泣いても良いですか?
そんな俺が悲しみにくれている中、二人の中で何か時が満ちたのか
ついに沈黙貫いていた二人の空間に、動きが出始める。
「ねぇ、蓮ちゃん。お兄ちゃん、動きずらいから離れてだって。早く離してあげなよぉ」
「えっ?それって飛鳥に向けて言った言葉じゃないの?離れるのは飛鳥のほうよ。
身長だって小さいのだし……」
「ぅんぐ!?なっ、何をぉ……小さいって。それなら、蓮ちゃん!蓮ちゃんだって
そのスレンダーすぎる体、そんな体押し当てた所で、巨乳好きのお兄ちゃんには不快なのぉ」
ちょっと待て、天下の公道で何、人の趣味暴露してるの!?
嘘、嘘だから!女子の皆さん、飛鳥が勝手に言ってるだけだから!
引かないで、誤解しないで!!
「あっ、飛鳥!?私の気にしている事を……それに飛鳥だって同じようなものじゃない!」
「バストなら私の方が少し勝ってるよ〜だっ!」
「嘘言わないの!飛鳥」
「本当のことだよっ!間違いないもん」
良く分からない言い合いは続いていく。
この会話から察するに、違和感を感じてはいたのだが
蓮はこの世界では男ではなく、女のようだ。
見た目貧……スレンダーすぎて分からなかったが……
完全に俺置いてけぼりで、会話は益々エスカート
白熱した展開へと進んでいく。
「言っておくけどぉ、お兄ちゃんは私の物なのっ!ずっと一緒だったの!
お兄ちゃんは私にぞっこんラブなんだからっ!」
ぞっこんラブって……飛鳥、今時そんな言葉を使う人はいねぇよ
「なっ……そっ、そんなこと和弥に限ってあり得ないわ。あのバカ和弥は私がいないと
どうしようもないくらいダメなヘタレ男なのっ!だから、私がずっと面倒見て………
それに不本意だけれど、昔私はバカ和弥と結婚の約束だってしてるんだからっ!」
えっ、結婚?そんな約束あったの?
あれか、所謂アレなのか。昔約束してたって言う定番の奴
不本意なのに顔を赤くして、蓮さん風邪っすか?
二人の攻防はまだまだ終わらない……
「それに飛鳥、あんたは和弥の妹じゃない!どうやって結婚するのよ?」
蓮から至極当然すぎる疑問の一手が飛んできた。
そうである、俺と飛鳥は兄妹……
戸籍上では一緒にはなれない。どうにもならない現実問題なのである。
それを飛鳥に突きつけたことにより、蓮は笑みを浮かべ
やはり飛鳥は憂いの顔を浮かべ……
「ふふふっ、何言ってるかなぁ蓮ちゃんは」
ていない!?
飛鳥は蓮と同じように笑みを、いや蓮以上に満面の笑みを浮かべている。
その光景に俺を含め、蓮も戸惑いの表情を感じている。
そして、満を持して飛鳥は口をゆっくりと開き
「教えてあげるよ、私はね……いつでも妹止めることができるんだよ?」
衝撃の発言を放った。
妹を止める?飛鳥が妹じゃなくなる?
意味不明な言葉に、俺を含め、蓮も困惑の顔を隠しきれない。
「どういうことなの……妹止めるなんて出来るわけが」
「出来るよぉ。お母さんがね、我慢できなくなったら、戸籍操作してあげるって!」
笑顔でそう言う飛鳥。
我が母が戸籍操作ねぇ…………………………って、えええっ!?
「何言ってんだ、飛鳥!?そんな馬鹿なことあってたまるかっ!」
突っ込まずにはいられない俺
戸籍操作なんて、そんなこと……義理の妹説だと考えていた
俺の気持ちをどうしてくれる?
「でもぉ、お兄ちゃん!お母さん言ってたよぉ、伝馬百合に出来ない事はないって!」
その瞬間に浮かぶ、我が母の顔
確かにあの母なら可能だと思う気持ちが、沸かないこともない自分がいる。
「だから、問題なんてないのっ!お兄ちゃんが18歳になったら結婚しようねぇ!」
「戸籍操作なんてするんじゃない!そんなことしても妹という事実は変わら―――」
「気にしないのぉ!戸籍操作くらい地域紛争に比べれば、ちょっとしたこと……」
「無理だからっ!確かに地域紛争問題は重要だけれど、今の俺にとっては戸籍操作の方が
重要だからっ!」
このままでは実行しかねない妹、飛鳥を必死に説得する俺
でも、取り合う気は相変わらずないのか、俺を無視し
話を進めていき
「お兄ちゃんが学校卒業するまで一年とあとちょっと!新婚旅行はハワイかなぁ〜
やっぱり住まいはぁ一戸建てで、子供は二人くらい欲しいかもっ!キャッ♪」
喜声を上げながら、妄想を膨らませていらっしゃる飛鳥。
俺が断るとか、そんな根本的な部分は完全に遥か彼方であり
結婚旅行はもちろんのこと、ついには子供の話まで妄想は進んでいる様子。
このままでは老後まで語ってしまいかねない勢いではあったが
「ちょっと待ちなさい、飛鳥!」
飛鳥が子供教育方針について語り始めた所で、蓮の止めが入ってくる。
「そんな、そんな戸籍操作なんて……こんな法律を無視するような卑怯な手
私は認めないわ!」
そして、もっともであろう意見で持って返していく蓮。
だけれど、飛鳥も弱気になることなどなく
「そんなこと言ってもぉ、事実なんだもんっ!それに私、法律とかバカだから分かんないしぃ
私とお兄ちゃんの仲を邪魔するくらいならぁ、日本国憲法なんてゴミ同然なんだもん」
強気で言い返していく、我がシスター
日本国憲法をゴミ扱いとは……
どんな事情があれ、日本国憲法をゴミと同列に扱う女子高生なんて
そうそうお目にかかれない光景である。
飛鳥の強気に蓮が押されながらも、話は更に続いていく。
「兄妹で結婚なんて、そんな非常識なこと……両親が認めたって、周りの親戚の人が」
「大丈夫だよっ!親戚一同結婚への了承は取ってあるよ。ほら、承認書」
嬉しそうに俺達の前に承認書と書かれた紙を見せ付ける飛鳥
確かにそこには、親戚一同の名前と判子が押された印が記されている。
というか、何時の間にそんな作業を………
それに何親戚の一同、快く血縁同士の結婚認めてんの!?
「そっ、そんなこと言っても飛鳥!世間体とか、いろいろと――――」
「関係ないのっ!私の愛の前ではぁ身分だって、国籍だって、性別だって
血の繋がりだって、全てものが霞んでいくのっ!」
ことごとく蓮が述べる問に、冷静かつ迅速に意見を述べる飛鳥。
今の飛鳥はいつもの俺が見ている飛鳥とは違い、圧倒的な発言力が存在している。
逆に蓮はいつもの冷静な態度とは違い、状況に混乱しているのが
傍から見ていても明らかである。
飛鳥のにこやかと笑う表情と、悔しそうに歪む蓮の顔が
優勢と劣勢をうまく表現している。
正直な所、早く学校行かなくちゃ遅刻じゃない?とか
結婚するとかしないとか、まだ俺達には早くない?などが頭に思いつくのだけれど
この緊迫した空気に、そんなツッコミを入れる勇気は俺にはなかったりする。
俺は一言も言葉を発することなく、沈黙の時間が一秒、二秒………
約十秒の時が過ぎ去ろうとした瞬間、先ほどまで悔しそうに表情を
歪めていた蓮が、何か心に決めた表情へと変わり
こんな言葉を俺に向けて、呟いた。
「結婚………するわよ」
「……へぇ?蓮、今何って」
蓮からありえない言葉が聞こえた気がして、もう一度俺は聞きなおす。
「だから……結婚、結婚するって言ってるでしょうが!何度も私に言わせないの!」
怒り狂うように言葉を放つ蓮
何度もって、俺は一回しか聞いてない訳だが……
いや、そんな場合ではなく血痕?
じゃなくて結婚!?
「何を言ってるんだ、蓮!結婚って……飛鳥に感化されたからってそんなこと」
「ちっ、違うわよっ!飛鳥があんたと結婚するって言うから、そんなことしたら和弥の立場が
悪くなると思ったから、そうなるくらいなら私が!って思って……」
モジモジと恥ずかしそうに言葉を述べる蓮
衝撃的すぎる怒涛の展開……
いや、蓮が俺のためを思って行動してくれてるのは分かるのだが
蓮と結婚じゃ、相手が飛鳥から蓮にスライドしただけであり
俺が結婚するという、俺にとって重要問題は解決しない訳で……
「蓮、落ち着くんだ。冷静になれ、状況をクールに判断しろ。こんな俺と結婚だなんて……
義理とは言え、こんなダメ男と結婚なんて考え直すんだ」
説得に掛かる俺。しかし、何がどうしてこうなったのか
蓮は先ほどのツンツンした状況とは一変し、デレっとした表情でこちらへと視線を向け
「良いのよ、和弥。分かってる……大丈夫。私、料理だってちゃんと出来るし、掃除、洗濯も
家事は一通り出来るから安心して」
「いや、そうじゃなくて……」
「親のことだって心配しないで。昔から私の両親、私の好きにしなさいって言われてるから
何の問題はないわ」
「だから、俺の話を―――」
「結婚式はやっぱり、私は洋式が良いかな。でも、和式も捨てがたいかも………
一生に一度の事だから悩んじゃうな〜。どうしよう?」
…………完全無視ですか、コノヤロー
目の前では、蓮が乙女ちっくな雰囲気で一人結婚式について
話の花を咲かせている。何と言うか、先ほどとは打って変わっての姿である。
それにしても何か、アレなのだろうか
今、女子高生の間で流行っている、ブームに
結婚式ブーム、結婚願望ブームにでもなっているのだろうか?
急な事態に俺の頭も、もう限界寸前、いっぱいっぱいである。
でも、こうなるとあの娘も黙っていないのは、考えずとも分かる事で
「な、何でぇ蓮ちゃんがお兄ちゃんと結婚することに?違うのぉ!お兄ちゃんと
結婚するのは飛鳥なのぉ!」
予想通り、この混乱した現状を更にかき回す、シスター飛鳥
「お兄ちゃんは私と結婚するのぉ!蓮ちゃんはあっち行っててぇ!」
「離れるのは飛鳥、あんたの方よっ!和弥は私の物なんだからっ!」
二人は俺の腕を左右掴み、己の力限り引っ張っていく。
この二人に大岡裁きの話を教えてやりたいと思うほど、両者とも強く……
両腕を二人に引っ張られ、感じる痛みを耐えながら俺は思う
相沢○一、岡崎○也、朝倉○一、河野○明………
この苦難を乗り越えてきた、偉大なる先人達よ……
この最悪の状況を抜け出す術を教えてください
本気と書いて、マジで……
俺はそう空に向け、心の中で思いの丈を叫んだ
でも、返って来るものは何もなく
心地よい風が、太陽の光が俺達に降り注いでいく
こんな朝の風景、一般的に稀な登校風景
恐怖の一日の始まりであった。
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