先生は17歳!?(90/100)縦書き表示RDF


今回は文章の書き方を変えています
劇的ではなく、ほんの少しですが……
そろそろ二部に向けて、動いていかないといけないので
色々とまだ、実験の段階ですが……

先生は17歳!?
作:takuto



Another Episode12 欲しい時に限って……


―――欲しい時に限って、中々見つからない


そんな経験、皆さん感じたことはないだろうか?
例を挙げるとすれば、爪切りや綿棒など何ともないときは
すぐに何処にあるか分かる物なのに、いざ使いたいと思うと、中々見つからない。
そんな経験……シチュエーションは様々ではあるだろうが、似たような経験
少なからずあると思われる。
見たはずなのに、あるはずなのに、なぜか見つかず積もるイライラ感
そして、忘れた頃になって発見するという表現しがたい寂しさ。
今回はそんなお話……
ある一人の少年が、たかが和菓子一つに振り回される
そんな一日を描いた、物語である。



「……和菓子が、和菓子が食べたいっ!」


伝馬和弥宅、居間
彼、伝馬和弥は居間のど真ん中で立ち尽くしたまま
大声で己の欲望に赴くまま、叫んでいた。
今日は休日……空も晴れやかで、春の温かい風が吹き抜け
世間はレジャー施設、ショッピングモールなどに足を運ぶ中
彼は皆とは逆ベクトル……というか、全く持って違い
和菓子というただ一つものに、異様なほどの欲求を感じていた。


「みんな、オラに和菓子を分けてくれぇえぇぇぇえ!!」


ついにはドラ○ンボールでも有名なアノ台詞を言い出し始める始末
とにかく、和菓子が欲しくて堪らない。
その気持ちだけは無駄に伝わってくる、そんな雰囲気
彼の現在の姿を見る限り、これが世界を驚かせるほど天才の素顔であり
やはり天才も人の子だと頷かざるを得ない。


「なんでこんな時に限って、俺の家には和菓子がないんだ……」


心の奥底から出てくる嘆きの言葉
どうやら、この家には現在和菓子と呼ばれるジャンルのものは存在しないらしい。
一般家庭を考えれば和菓子が無くとも、それに代用する事が出来る
洋菓子、スナック類の菓子がありそうなものだが……


「ダメだ、伝馬和弥!あそこに見える、じゃ○りこに手を出しちゃ!何気に大好きな
チーズ味だけれど、それじゃあチャライ、スナック菓子なんかに負けたことになる」


彼のプライドが許さないようだ
まさしく、和菓子愛、和菓子LOVEな精神である。
正直、なぜここまで頑なに和菓子にこだわるのか、甚だ疑問ではあるが
周りからすれば余りにも滑稽、馬鹿すぎて涙が出てきそうな光景だったりする。


「俺の、俺の和菓子分が……限界に」


訳分からない事までぼやき始めた。
和菓子分というのは、ダ・○ーポ2の天枷○夏のごとく
8時間に一回摂取しなければならないバナナミンと似たようなものであろう。
まぁ、言いたいことはただ一つ、和菓子食べたい!それに尽きる。
それから数分間、和弥の視界に映るスナック菓子と和菓子へのプライドが
錯綜しあい、心が揺らめき、ようやく決心が着いたのか
勢い良く立ち上がり………


「……よし、外に和菓子を買いに行こう!」


外へと出かける準備を開始した。
この結論に達するまで、約30分……中々の無駄な時間の使い方であった


扇山商店街
ここは新鮮な食材、最新の商品が売られている店が立ち並ぶ
この町きっての、人々の買い物エリアとなっている場所……
多くの人々が行き交う中、和弥の目的地はここではなく
通りを抜けた先にある、少し狭い通路。
そこには少し趣のある古びたお店が立ち並んでおり


「……フッ、やってきたぜ!我らの聖地へ!」


……と頼まれてもいないのに少しカッコよく言葉を述べる、和弥。
少し離れた所で、遊んでいる子供達が変な視線で彼を見ているが
今の彼には目の前に広がる桃源郷にしか、興味は無いようだ。
何しろここは今の和弥にとっては余りにも輝かしい場所


―――通称、和菓子ロードと呼ばれている場所なのだから


ちなみにそう皆が呼んでいるのではなくて、ただ勝手に和弥が命名しているだけである。
とは言え、たまたまながらも約数十メートルの距離に、和菓子のお店が
数十店も並んでいるのだから、和弥がそう呼びたくなるのも頷ける。


「ここなら、和菓子食べ放題だっ!お金も貯金から十万円近く下ろしてきたし………
準備に抜かりはねぇぜ!」


なんともやる気満々な和弥。この世の中にたかが和菓子のために
貯金から十万も下ろしてくるバカ……もとい、猛者は中々会える者ではないだろう。
和弥は余り見せる事のない満面の笑みで、意気揚々と目の前に見える
年季の入った和菓子の店へと足を向けた。


「あら〜和弥くん。今日は大きなお茶会が開かれて、和菓子一つも残ってないの」


一軒目のお店
まさかのお茶会の存在により、和菓子全滅
折れかかる和弥の心。しかしまだ一つ目だと言い聞かせ
笑顔で和菓子屋のおばあちゃんと会話
まだ、まだ余裕あり……


「えっ!運悪いな〜、和弥の旦那。今日は老人会の関係でもう和菓子残ってないよ」


二軒目のお店
信じられないが、まさかの老人会の存在により、またもや和菓子壊滅
砕けそうになる和弥の心。だけれど、まだ……まだ二つ目だと思い込ませ
愛想笑いを浮かべて、和菓子屋の親父と会話
まだ、余裕あり……


「あっ、伝馬くん。ごめんね!さっき女性のお客さんが大量に和菓子購入しちゃって……
今は在庫ないの。今度、来た時はちゃんと用意しておくから!」


三軒目のお店
考えられない確率で、和菓子大人買い女の存在により、あり得られない和菓子崩壊
その女に軽い殺意が芽生えそうになる和弥の心
次は、次こそは……そう願い、和菓子屋のお姉さんに癒されながら会話
余裕なんとか、あり


四軒目。余裕……

五軒目。よっ、余裕……

六軒目。余……

七軒目。………

八つ、九つ、十…………


十四軒目のお店


「………個人的な用事なため、休業」


ついにはお店、閉鎖
当たり前ではあるが、和菓子消滅……
そして、ある意味奇跡の14軒連続和菓子ゼロ


「なんじゃこりゃぁぁぁぁあぁぁあぁぁぁぁぁぁぁあああぁぁぁあああああ!!」


あまりの悲惨さに、和弥も限界突破のようだ
その叫びは昔懐かしい太陽に○えろ!ジー○ン刑事殉職シーンを思い出させる。
切実すぎる、魂からの叫び


「くそっ、どうしてなんだっ!なぜ俺がこんな苦しい思いを……俺はただ和菓子が食べたい
それだけなのに!」


どれだけ理由がショボイであれ、ここまで不幸が重なるとは
さすがに誰もが同情の念を感じずにはいられない。
たかが和菓子、されど和菓子……こんなにも彼は頑張っているのに
和菓子一個すら食べれないなんて、ちょっとした三流感動映画よりも
泣けるシチュエーションである。


「でも……でも、俺は諦めない!昔の人だって言ってたじゃないか、諦めません
勝つまではって!」


しかし、彼の辞書には諦めるという言葉はないようだ。
彼の今のハングリー精神は、さながら昔の日本兵のように
勇敢であり、強き意志を持ったソルジャー
今日の彼は本当に珍しく輝いており、充実した表情を浮かべている。
これが和菓子のためでなければ、どんなにカッコ良いことであろうかと
考えずにはいられない。


「次の店へ……十五軒目のお店へ突入だ!」


掛け声と共に彼は新しそうな、大きな店の中へと歩を進めた。


十五軒目のお店
中はとても広く、ちょっとした喫茶店のように華やかで
色々な世界のお菓子が置かれている。
ここは数十あるお店の中でも和菓子だけではなく、多数のモノを取り揃えているお店で
店内には所狭しとお菓子が並べられている。
彼はゴル○のごとく、周囲を丹念に見渡す
そして、発見した和菓子コーナーへとすばやく移動……
そこまで動作、時間にして一秒も経ってなどいない。
まさしく熟練された人間の動き
間違いなく、人外的な動きと判断力ではあるが
全く持って実生活に、今度の人生に役に立つとは思えはしない。

………歩を進めて数秒、ようやく目的の場所に到着する和弥。
予想通りというべきか、ほとんどの和菓子はなくなっており
今まで数十軒と見てきた、同じ光景が目の前に広がっている。
ここは諦めるしかないか……そう、思ったとき
彼の視界にあるものが、入り込んできた!
見間違いかと思い、もう一度視線を……まっ、間違いない!
こっ、これは……


……視界には、一つだけポツンと置かれたどら焼きの姿が!!


彼は心の中で歓喜するように手を伸ばし、待ち望んだものを


――――ドンッ!


「………うん?」
「………おっ?」


誰かの手がぶつかった。
横に誰かいることに気づき、視線を送るとそこには地味を象徴とするような男が一人
一瞬誰か分からなかったが、そこにいたのは


「何で、伝馬がこんな所にっ!」


我がクラス生徒、佐藤その人であった。


「おっ、お前こそ何でこんな所にいるんだ!」


一瞬、佐藤がこんな所にいることに焦りを感じるも
すぐに言葉を佐藤へと返していく。


「こんな所って……ここにいるってことは、お菓子買いに来たに決まってるだろうが」


当たり前の話であった。
あまりの緊張具合に和弥らしからぬ発言をしてしまう。
これほどまで彼を狂わせる和菓子……ある意味侮れない。


「それで佐藤、お前は何を買いにきたんだ」
「そりゃあ、朝から無性に和菓子が食べたくなって、でも色々探しても見つかんなくて
やっとこの店でどら焼きを……もっ、もしかしてお前も!」
「そうだ……俺も和菓子を探しにな。長い道のりだった」


和菓子バカの奇跡の競演であった。
同じ日に、それも知り合いと同じような馬鹿な行動をしているとは
ある意味で天文学的数字に近い確率の出来事


「やはり俺達は常に闘う運命にあるようだな」
「……確かに、伝馬の言うとおりだ」


意味の分からん事で、少年誌的な展開に持っていかれても困るが
二人は至って真面目……


「だけどな、伝馬。この勝負、始まる前から決着は着いているんだよ」
「なっ、なにぃ!?まさか、お前……」
「その通りだ。手がぶつかり合ったとき、お前が呆然としている間にどら焼きは
我が手中に収まった!」


佐藤はスッと持っていたどら焼きを掲げる。
その笑みは、正に悪役そのものといった感じだ。


「こっちに渡せ!俺の方が和菓子歴は長いはずだ、俺に食べられた方が和菓子も幸せなはず」
「何を馬鹿なことを。もし、そうだとしても伝馬!今、どら焼きを持っているのは俺だ!」


意味不明なやり取りが続く。
でも再び言うようだが、本人達は至って真面目


「……クッ、頼む!俺にそのどら焼きをくれ!」
「ダメだ、これは俺がちゃんと責任持って食してやる。伝馬はそこで俺の胃袋の中に収まる
愛しのどら焼きの姿でも眺めているんだなっ!」
「くっ、クソッ!」


和弥の懇願を、冷徹かつ非情に振り払う佐藤
用は済んだと言わんばかりに、佐藤はレジへと向かっていく。


「待ってくれ!だったら、俺の秘蔵のプラモを渡す。それでどうだ!」
「恐喝、懇願、そして交渉……さすがは天才、頭が良く回る」


佐藤はさながら軍師のごとく、偉そうに言葉を述べる。
たかが和菓子一つ、それだけの事なのに、人はここまで偉そうになれるものなのだろうか


「……で、何をくれるっていうんだ。そんじょ、そこらのものでは―――」
「機動戦艦ナ○シコ、ブラック○レナだ!」
「なっ、何ィ!?」


一瞬にして、佐藤の表情に余裕の色が消えた。
どうやら佐藤の急所を上手く捉えたようだ。


「知ってるんだ、俺は……佐藤、お前がナ○シコ好きだという事を!ル○ルリが
お気に入りで、未だに二期を待ち望んでいる事を!!それに―――」
「言うな、それ以上言うんじゃない!」


形勢が和弥へと傾いていく。
明らかに佐藤、圧倒的劣勢
対して和弥、まさかの圧倒的有利!
あと少し、あと少し押し込めば………
そんな状況まで来た所で


「あっ、ここにもどら焼きない……お母さん、今日はどこにもどら焼き置いてないね」
「そうね。今日はどら焼き、人気なのかもね」


少し離れた所、先ほどまでどら焼きが置かれていた場所で
見知らぬ母と子の会話が、耳に入ってくる。
その二人からある意味、聞きたくなかった言葉
嫌な予感が、いや確信すら感じる会話が聞こえてきた。


「どら焼き……どら焼き食べたいよぉ〜!」
「こらっ、文句言っちゃいけません。ケーキ買ってあげるから」
「嫌だ!どら焼きじゃないとダメなのぉ〜」


子供のどら焼きを懇願する声が聞こえる。
余程欲しいのか、少し泣き声が混じっているようにも聞こえる。
えっ、えっと……こういう場合は……
彼と佐藤の間に置かれている、先ほどまで争い続けていたどら焼き
今となっては、彼らが食べるには気まずすぎるどら焼き……
でも!彼らだってどら焼き食べたいのは事実な訳だし
だけれども、そうだと言っても……


「どっ、どら焼き……たっ、食べたいのぉ……うぇぇええん!!」


泣き声が店全体を包み込んだ瞬間
彼らにはこんな光景、耐えられるわけがなかった


「お嬢さん、コレどうぞ」
「………あっ、どら焼きっ!」
「味わって……食べるんだぞ」
「うんっ!ありがとうお兄ちゃん!」


泣く泣く彼は彼女へと、どら焼きを渡した

瞳に映るのは、目蓋に雫を溜めながらも嬉しそうに笑う女の子の姿

俺は呆然としたまま、でも少しの満足感を感じながら

その姿を眺め……


「……百華屋でも行こうか、伝馬。俺が奢るよ」


俺達二人は寂しく、百華屋へ向け歩き出したのであった。

結局、彼は百華屋でも和菓子を食す事はできず

彼が口にしたものは、その店名物のイチゴサンデー

その味はとても美味しく、だけれど

少ししょっぱい涙の味がしたのだった……






……で今回は和菓子ネタでした!
今回のストーリー、実は作者の体験を元に書いた
お話であります。多少の誇張表現な所はありますが
中学時代の若かった頃の馬鹿な思い出です。
そして、今頃ではありますがこの小説、何時の間にやら一周年を突破し
今回で90話達成です!
作者としては良く続いたもので、やはりこの快挙は見てくれている皆さんのお陰
感謝しても、しきれないくらいです。本当に読んでいただきありがとうございます!!
これからも頑張って書いていきます!!
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