先生は17歳!?(82/100)縦書き表示RDF


バレンタインデーから大分過ぎましたが、後編です
書いて欲しいストーリ募集してます。
ちょっとした思いつきネタでも良いのでよろしくお願いします!!
先生は17歳!?
作:takuto



Another Episode4 バレンタインデーの悲喜劇 後編


「もうゴールしていいよね?」


冒頭から○irネタですまない。
それくらい俺がいっぱい、いっぱいなのを少しは察して欲しい。
今日一日の半分も回想した訳ではないのに、何なのだろうか?
この摩○不思議アドベンチャーな気分は……
この扇山に来て大分月日が経ったが、朝からこんな目に合うのは
初めではないかと俺自身思う。
普段から不幸な目に合うことは一般化しつつある俺であるが
今日は普段と何が違っていた。
どう言葉にすればよいか分からないが、言うなれば周りの人間の雰囲気が
変わったと言うか、変なベクトルにやる気満々と言うかそんな感じ。
そう考えると、客観的に今日と言う日がいつもと何が違うかと言えば


「バレンタインデーのせいなのか」


それしか思いつきはしない。
どうしてなのだろう?基本、バレンタインデーと言えば
貰えない人間が絶望感や疎外感に打ちのめされ、不幸な思いを感じるのは分かるのだが
逆に貰える人間は一日中ハッピーな日なはず。
なのに、なのに俺は!俺って奴っぁぁああ!!
……すまん、取り乱してしまった。今日は少し情緒不安定のようだ。
まぁ、いくつも理屈をこねたとしても起きてしまったものは変わりようのない事実。
コ○ン君だって、「真実はいつも一つ!」って聞き飽きるくらい
言っているのだし、回想に戻る事にしよう。
校門前まで終わったんだっけ?なら、その後……
教務室へと向かっていく所から、物語を再開しようと思う。


「何で朝っぱらから、全力疾走する羽目に……」


教務室前、廊下
俺はそんな愚痴を言いながら教務室に向け、体を引きずるようにして歩いていた。
……気持ちが悪い
現在の俺は佐藤を追い掛けるため、全力疾走したお陰か
朝食べたごはん、味噌汁、納豆その他諸々がいい感じでシェイクされて
いい感じで限界が来そうになっていた。
とは言え、ここは学校。いろんな事情が含み最悪の事態だけは避けなくてはならない所


「こんな、こんな吐き気に負けてたまるか……」


結果、理系らしくない気合論で教務室へゆっくりと向かっていく。
時間を掛けながらも、なんとか扉の前へとたどり着き
ある程度の達成感に包まれつつ、俺は教務室の中へと入っていった。


――――刹那、空気が変わった。


俺はすぐにいつもとは違う雰囲気に一瞬、足を止める。
何か不穏なモノを感じ取り、周りを眺めてみると
そこには世話しなく授業の準備に勤しんでいる先生達の姿が……
否、違う!完全に可笑しいと言う訳ではないが、一部分と言うか
ある種類に属する人物のみの様子が少し可笑しいことに俺は気づいた。
生徒のプリントの丸付けをしながらも、真向かいの机に座る女性教師にチラチラと
目を向ける国語教師、独身27歳。
それ以外にも、同じ担当科目の先生と打ち合わせしながらも
話の折々にチョコと言う単語をさりげなく、ぶっちゃけあからさまに
入れ続ける英語教師、独身30歳。
そう、ここまで例を挙げれば分かっていただけただろう。
ここにいる男性教師の大半、って言うかほとんど人達が今日と言う日を
意識しまくりな状況が、目の前に広がっていた。
なんだろうか、見ていて心の涙が流れてきそうな自分がいる……


「……やっぱり先生と言ってもチョコは欲しいのかな」


ボソリと、自分にしか聞こえないほどの小さな声で独り言を洩らし
俺はバレンタインフィールドに包まれている教務室内を掻き分けながら
ゆっくりと自分の席へ腰を下ろした。


「おはよう、伝馬くん」


座ってまもなくして、誰か俺の名を呼ぶ声が聞こえてきた。
後ろを向くと、そこには良く見知った顔の女性が一人立っており


「今日はいつもよりもゆっくりね。まぁ、まだ時間には余裕あるけれど」


とても魅力的な、元気溢れる笑顔をこちらに向ける橘お姉ちゃんの姿が見えた。
それと同時に、男性教師達の視線が橘先生に向けられた事も俺は感じていた。
さすがはお嫁にしたい先生No.1。普段から視線が橘お姉ちゃんに向けられるのは
日常茶飯事のことではあるが、特に今日は一段と向けられている数が多く感じられる。


「あぁ、おはようござます。なんか、今日も一段と元気ですね」
「そりゃあ伝馬くん、何事も元気が一番……って何か体調悪そうよ。どこか調子悪いの?」


心配そうな瞳が俺の視線を捕らえる。
確かに体は少し、と言うかかなり重かったりする。
忘れてはいたが、俺の吐き気は現在進行形で持続中だったのだ。
教務室の中の、悲しくなるくらいのチョコ欲しいムードが強烈過ぎて
一時は消え失せていたのだったが……
そう思うと、無性に辛くなってくるのが人間の性分
収まりつつあった吐き気が、徐々に悪化してしていく。
マジでなんとかしなければ……考えを巡らせるも、周りには頼れる人など……


「本当に大丈夫、伝馬くん?凄く辛そうに見えるんだけれど」


あっ……いっ、いた!そう言えばいましたよ、女神が
保険医と言う名の救世主が目の前に、すぐそこに!
いやぁ、灯台下暗しと言うべきか、何と言うか
さっきまでこの人が保険医と言う事を俺は完全に忘れていた。
とにかく、危機的状況の打開を……そのために俺は、下に向けていた視線を上に向け
橘お姉ちゃんの方へと視線を向けた。


「すいません、橘せんせ……じゃなくて、橘お姉ちゃん?一つ頼みごとがあるんだけれど
聞いてもらっていいかな?」
「うん?伝馬くんが私に頼みごと……良いわよ!何、お姉ちゃんに何でも話してみて」


嬉しそうにこちらに顔を向ける橘お姉ちゃん
めずらしく俺に頼られた事が嬉しそうな、そんな雰囲気


「えっと、言いにくいだけど。朝、全力疾走したためかお腹の調子がどうにも悪くて
吐き気までしてきちゃって……何か対処法とか、薬ない?」


懇願するように俺は、橘お姉ちゃんに言葉を送る。
その切なる思いが伝わったのか、少し考える仕草をした後


「大丈夫、伝馬くんのためにとっておきの物があるわ!」


と自信満々な台詞を述べて、俺に向けて視線を送る橘お姉ちゃん。
そして俺は、その言葉に喜びを感じずにはいられなかった。
やはり、伊達に俺のお姉ちゃんだと名乗ってはいない。
普段はふざけてるけれど、ちゃんと困ってくれている時は助けてくれる存在
今日、初めて感じる幸福感が俺を包み……


「はい、伝馬くん。これよ」
「………」


俺の思考が一瞬、停止した。
……あっ、あれ?俺、何時の間に目が悪くなったのかな?
信じられない、今見たくない物No.1な物体Cがなぜか目の前に……
何度も目を擦り、見直してみるも変わることはなく
悠然とその存在感を示しておられる。


「ちょっと確認なんですが、良いでしょうか?」
「はい、どうしたの?伝馬くん」
「俺はあなたに薬を所望しましたよね?吐き気がするって」
「わかってるわよ。だから、これ」
「すいません。でも、俺にはどうしてもそれが薬に見えなくて……って言うかそれ」
「チョコレートよ。見たら分かるでしょ」


あっ、やっぱり俺の間違いじゃなかったんだ。
知らなかったな〜。チョコレートが吐き気などを直す効果が


「ってチョコレートが薬になるわけないでしょうがぁぁぁああ!!」


俺は力の限り、吐き気など気にすることなく大声で叫んだ


「まぁ、伝馬くん心外だわ。私はこれでもちゃんとした医者の免許を持った人間なのよ。
チョコはね、昔から英国で開発された吐き気止めなんだって偉い学者さんが
言ってたような、言わなかったような……」
「そんなアバウト理由ですか!?明らかに嘘でしょ!」


俺は即座に、脳内がこの場から逃げろと命令しているのを感じ
その場から脱出を図ろうとするも、橘お姉ちゃんの手が俺の片腕を力強く掴む。


「逃がしはしないわよ。今日はめずらしく、美香も早苗も休みなのよ。これほど願ったり
叶ったりな日はないわ!今回、大活躍して他のキャラに差を付けて読者の皆に
私の存在を知らしめないと……私のイメージアップ、二部登場回数アップは決定ね!」


イメージアップになってませんって!怖いイメージしか付かないからっ!
不適の笑みを浮かべて、ジリジリとにじり寄ってくる橘お姉ちゃん。
正直、力の差は歴然で逃げる事は不可能に近い状態
こんな時にいつも介入してくるはずの葉月先生はここにはいなく
絶体絶命の状況……


「大人しく私のチョコを食べなさい、伝馬くん。大丈夫、変な物なんて入ってはいないから」
「ちょっと!その言い方、絶対何か入ってる!ヤバイの入ってるでしょう!?
絶対嫌だ、止めてください!!」


助けを求め、さ迷うも周りの女性教師たちは興味津々に
男性教師達は恨めしそうに眺めているだけで助けてくれる気配など、皆無。
終了……そんな二文字が浮かび上がった瞬間――――


――――キンコーンカンコーン


グッドタイミングとはまさしく、こういうこと言うのだろう


「おっ、俺次授業なので」
「えっ!?これから、やっと待ちに待った私のターン……」
「急ぐので、失礼しますっ!」
「ちょっ、ちょっと伝馬くん!待って……」


何か俺に話しかけていたようだが、俺は振り向くことなく走り始めた。
付いてくる気配はなく、程なくして橘お姉ちゃんの声は耳元に届く事はなくなったのだった


「もう、やってらんねぇ……」


それから時は流れて、昼休憩
俺は体中から感じるダルさ、節々の痛みに耐えながら
食堂の定位置になりつつある場所に座り、ひと時の休息を感じていた。
朝からの蓮、奏の意味の分からないダブルアタックから物事は始まり
教務室での橘お姉ちゃんとの一件……考えるだけで溜息が出てくる事態が連続していており
俺はもう限界、かなりの所まで体が、精神が弱っていた。
それもこれもすべてはあの、バレンタインが原因だと思うと
俺は怒りを感じずにはいられなくて


「くそぉ、何だよバレンタインって、チョコって何だよ!俺は本当は和菓子派なんだよ!
西洋の菓子なんか食ってられるか、日本人舐めんなよっ!」


文句を言わざるを得ない俺
最終的には和菓子談義になっている時点で、俺の混乱具合は
いかほどか分かっていただけるだろう。
食堂の周りを眺めてみると、カップル通しでチョコの食べあいをしていたり
女性通しでチョコの味比べをしたりする集団の姿が見える。
その人々の姿はとても幸せそうで、微笑ましくて
俺の中に妬みの感情が生まれてくる。


「他人の不幸は蜜の味、人の幸福ヒ素の味……」


最終的には先生らしからぬ、恐ろしい台詞が出てくる始末
さながら今の俺は陰と陽でいわく陰、裏和弥と言ったところだろうか。
遊○王で言う裏遊○みたいな感じ……
そんなファンタジーチックな設定を頭に描きながら
ボーッとしていると、目の前が一瞬にして暗くなった。


「久しぶりだなぁぁ、伝馬和弥。今日は一人で寂しく学食かいぃぃ!!」


特徴的過ぎる喋り方、規格外の大きさ
懐かしささえ感じる人物が目の前に立っていることに気づく。
後ろを見ると、いつのものように例のハチマキを付けた集団が……
ここまで特徴をあげれば、読者の方の大半は分かっていただけただろう。
俺はゆっくりと視線を上に向ける。


「本当に秋季の球技会以来だな、須藤太郎。姿を見ないから、学校辞めたのかと―――」
「ぶっ殺すぞぉぉお!!伝馬和弥ぁぁぁああ!寝言は寝て言うんだなぁぁ!!」


きょ、教師に向かってぶっ殺すって……
俺じゃなきゃ、停学ものだぜ?


「問題はないぃぃ。そこら辺は信頼はしているからなぁぁ」


須藤からは変な信頼感を得ているようだ。
まぁ、全く持って俺にはメリットのない信頼感のようだが


「まぁ、このことはどうでもいい。今日はぁ、ある用事があってお前の所に来たんだがぁ」
「……何だよ、用事って」
「今日はぁ、何の日か知っているかぁ?伝馬和弥」
「何の日って……バレンタインデーだろ」


俺が須藤に向け、ぶっきらぼうに言葉を返すと
その言葉を待っていたかのように、ニヤリと笑みを浮かべて
俺の目の前に紙袋を一つ、テーブルの上へと置いた。


「なっ、何なんだよ!いきなり」
「伝馬和弥ぁ、こちらの調べで今日はぁチョコを一つも貰ってないのは知っているぅ。
だから良い物を見せてやろうと思ってなぁぁ!!」


その言葉とともに、紙袋をゆっくりと倒し
須藤は中に入っていたもの達をすべて、袋の中からテーブルの上へと出していく。
出されたのはラッピングされた箱、箱、箱……箱!?
計数十個の様々な形をした箱が俺の目の前に広がっている。
こっ、これは……もしかして、信じたくはないがこの物はぁ!!


「こっ、これって……」
「チョコレェエェイトだっ!正真正銘、女子から貰った俺に向けてのチョコレートだぁぁ」
「……自分で全部買ってきたとかじゃなくて?」
「あぁ、マジだぁぁ。確認が欲しいならぁ、我が部下が取った証拠写真を見せてやるぞぉ」


……敗北
その二文字が、俺の心の中を害していく。
嘘だ、嘘だと思いたくて仕方が無い。須藤が、あんな老け顔の変態がモテルなんて!!
信じたくはなかった。でも、現実は違った。
須藤は確かに老け顔だが、取り方によってはダンディーと言う言葉が当てはまらなくもない。
体は筋肉質で逞しいと言う評価も上げられるかも知れない。
しかし、それでも俺は絶望感を感じずにはいられない。
こんな変態に負けたという事実を、俺は受け入れる事ができなかった。


「その顔ぉぉ、予想外だったか!信じられなかったか!だが、世間の評価は厳しいのだよぉお
今まで受けた俺の屈辱を感じるんだなぁぁ!!」


須藤の勝利の雄たけびが俺の耳元で響き渡る。
屈辱、たかがチョコごときのことではあるが、屈辱的であった。
主人公なのに、主人公なのに脇役に負ける……それも完膚なきまでに
須藤のニヤケ顔がやけにムカついて、何も出来ない自分が情けなくて
妙な悔しさと悲しさが入り混じった感情が俺の中を蠢く。
完全に負け犬……もう心が、勇気が折れそうになっていたその時


「あっ、カズちゃんっ!もう、食堂に居たんだ。探したよぉ」


切り札は舞い降りてくる。
俺たちの前に現れたのは俺の幼馴染であり、須藤にとって憧れの存在
宮本飛鳥その人だった。
飛鳥は屈辱に打ちひしがれた俺の近くまで寄って来て
嬉しそうにもってきた鞄から、先ほど須藤から嫌と言うほど見せられた物と似た
ラッピングされた箱が取り出される。


「はいっ!カズちゃん、ハッピーバレンタイン!昨日夜遅くまで頑張って作ったんだよ」


その言葉の後、沈黙の時間が流れる……
信じられない、ある意味完璧なタイミングでチョコを俺に渡す飛鳥。
俺はその飛鳥のチョコから視線を上へ、先ほどまで高笑いを浮かべていた
須藤の方へと視線を向ける。
そこには勝ち誇った顔の須藤などはいなく、呆然とした目で立ち尽くす姿が見える。


「ありえない、ありえない、ありえない、ありえない、ありえない、ありえない
ありえない、ありえない、ありえない、ありえない………」


呪詛のようにありえないを呟く須藤
もうその様子はホラー映画そのもの。何か、妖怪が獲りついた様なそんな感じ。
ヤバイ……直感的に俺は、身の危険を感じていた。
間違いなく、須藤はキレる一歩手前の位置に今いる。
これからの俺の一言で、状況はかなり様変わりするであろう。
俺は考える……ユーモア、シリアスの配分を考えて
もっとも適切な言葉は


「まっ、まぁこれで俺達五分五分じゃない?」


――――プチッ


何が切れる音がした気がした。


「生かしておくべきかぁぁああ!!死ねぇぇぇぇぇえええ!!」


怒りの咆哮が食堂内に響き渡る。
俺はその後に小さく鳴り響いたnice chimeの音をきっかけに
全速力で、死に物狂いで逃げた。
結局、飛鳥のチョコも貰うことなく必死に……


「……で、今に至るわけなのだが」


俺は今日一日を振り返り、大きな溜息を洩らさずにはいられない。
何という一日なのだろうか。今日という日でちょっとした映画作れそうな
嫌な意味で充実した一日。
俺は休む場所が欲しくて仕方が無かった。憩いの場所が欲しかった。
しかし、未だに須藤たちとの追いかけっこは終わっておらず
現在、家にも帰れない状況……


「どうしようか、俺」


短いながらも、本音が篭もった切実なる一言。
すると、後ろから聞いた事のある叫び声


「伝馬和弥ぁぁぁあぁぁああ!!どこだぁぁぁぁぁああ!!」


今日何度聞いたか分からない、須藤の叫び声。
俺は焦る。どこかに、身を隠さなければ……
俺は周りを見渡し……


「ここだっ!」


生徒会室と書かれた部屋へ飛び込む。
叫び声が大きくなっていき、数秒後段々と小さくなっていった。


「………っふう。一段落―――」
「伝馬先生?」
「うわぁぁあぁぁぁ!!」


いきなりの声に自分を忘れて、声を上げる。
ビビリながらも、声の聞こえる方向に顔を向けると
そこには、綺麗な顔をした見知らぬ女性が


「どうしたんですか?いきなり生徒会室に入って来られて」


違う、見知った人物。良く知っている人物がそこにいた。
その人は生徒の中でも、あの5人組に次いでいろいろな意味で関わりを持った人物で
久しぶりの出会いに懐かしさを感じていた。


「いやぁ、いろいろと……それより、久しぶりだな、薫。顔を合わすのは」
「……そうですね、私もいろいろとありましたし。本当に、お久しぶりです」


そこには少し顔を赤くして、微笑を浮かべる綾乃薫の姿があった。


「お疲れのようですし、少しお茶で飲みませんか?」
「……えっ?あぁ、そうさせて貰おうかな」


いきなりのお茶のお誘いに驚きを感じ、一瞬言葉が出なくなるが
今まで感じていた疲れがドッと全身に襲い掛かり、魅力的な提案に
俺は考える事もなく賛成の意を示す。
その言葉に彼女は応えるかのように俺に笑顔を向け、準備を始めた。
席へと座り、数分後
生徒会室全体がまろやかな、風味の良い茶の香りが広がっていく。
薫は無駄のない、熟練された動きでポットからカップへと注いでいき
目の前には芳醇な香り漂う紅茶が置かれていた。


「どうぞ、伝馬先生」
「あっ、うん。ありがとな」


紅茶など、飲みなれていないものが登場し、多少の困惑に陥るも
ゆっくりと手を伸ばし、俺は乾ききった喉を潤すため
少し緊張感を覚えながら、口に付ける。
……さっぱりとした、癖のない味
飲みなれていない俺でも、違和感なく安心して飲める
肩の荷が下りるような優しい味が口の中に広がっていく。


「……おいしい。俺はこういうのは詳しくないんだが、本当においしいよ!」


俺の口からこぼれ出てくるのは、賛辞の言葉のみ
それを薫は少し恥ずかしそうな、それでいて満足げな表情を浮かべ
次の瞬間、何か決心した表情に変わり、自分の持っている鞄から何かを取り出す。


「そっ、それと次いでと言っては何ですが、お茶請けにこっ、これを!
今日はバレンタインですし……」


そう言って、出されたのは今日俺を悩ませ続けたアレ
今日と言う日を尊重する物、ラッピングされた箱が薫の手から取り出される。
まさしくバレンタインチョコ……
夕日に照らされて、顔を真っ赤にした薫の顔が
自信なさ気に視線を下に向ける表情が、俺の視界全体に写りこんでいく。


「先生に渡そうと思ってたんですが、中々踏ん切り付かなくて……本当、すいません。
めっ、迷惑ですよね!私からこんな物渡されたって、私雰囲気に流されちゃって
馬鹿みたいに手作りなんてしちゃって……関係ないのに、必死に―――」
「そんなことないよ」
「……えっ?」


驚きを隠しきれない、そういった表情の薫
だけれど俺ははっきり断言した。そうではないと、迷惑ではないと……


「でっ、でも!私は先生も知っているとおり……」
「だけど、薫は俺のために作ってくれたんだよね?」
「……はい、そうですけど私は―――」
「関係ないよ。俺のために頑張ってくれた、それだけで十分だよ。とても、嬉しいよ」
「そっ、それじゃあ……」
「ありがたく受け取らさせてもらうよ。ありがとう、薫」


俺は薫から渡されたチョコを、思いも受け取るかのように
大事に、その両手で包み込む。
突然ことに体が震え、自然と涙が零れる薫
その姿はとても印象的で、本当の女性のように可憐で、美しかった。
俺はその様子を微笑むような眼差しで眺め、薫の頭を優しく赤子のように撫でる。


「それじゃあ、このチョコでも食べながらお茶の続きでもしようか!」
「……っはい!お茶、もう一杯いれますね」


夕日が2人を包み込む中

2人だけのお茶会がひっそりと開かれる

涙で顔を濡らし、無理矢理笑みを浮かべる薫

本当に楽しそうに彼女に向けて、優しい笑顔を向ける和弥

彼はこの日始めての、充実した時を過ごしていたのだった

だけど、彼はまだ知らない

これから数時間後、彼の家で和弥の帰りを待ちわびる女性達の姿を……

チョコを持った悪魔達のことを……

彼は知りなどする訳がなかったのだった






今回は薫の一人勝ちと言うことで……
それ以外のファンの皆さん、ごめんなさい。
一部で少し薫は扱いが悪かったので
まぁ、バレンタインはと思いまして
感想、評価お待ちしております!!ちょっとしたことでも二部、外伝への活力となりますので、どうぞよろしくお願いします!!






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