先生は17歳!?(80/100)縦書き表示RDF


えっ、バレンタインデー?
タイトルを見てそう思われた方をいると思います。
大丈夫です。作者は間違えたわけではありません。
作者にあまり関係ない日だからって勘違いしたわけではないので(笑)
書いて欲しいストーリ募集してます。
ちょっとした思いつきネタでも良いのでよろしくお願いします!!


先生は17歳!?
作:takuto



Another Episode2 St. Valentine's Day Eve


バレンタインデー
あるいはSt. Valentine's Dayと呼ばれる日
それは、世界各地で男女の愛の誓いの日とされている一日
バレンタインの形は世界様々であり、国ごとに決まった祝い方がある。
彼女が住んでいるアメリカは男性も女性も、花やケーキ、カードなど様々な贈り物を
恋人同士、夫婦、家族に贈る。日頃の「愛」を表現する日というイメージが強い。
しかし彼の長年住んでいた、私の生まれ故郷でもある日本はアメリカとは
明らかにこのイベントの捕らえ方が違っていた。
日本では女性が男性に向けて愛の告白をする日……
真っ赤お鼻のトナカイと煙突からの侵入を好む赤服のおじさんが登場する冬の一大イベント
と並ぶ、か弱気乙女をバックアップしてくれる特別な日!
そんなことを知った日には、活かさない訳にはいかないのが私、一条麻衣の性分であった。
現在の時間は、もう深夜を過ぎ朝へ向けてカウントダウンしそうな時間帯。
そんな中で私は薄暗い台所の下、慣れないチョコ作りに格闘していた。


「ふふふふっ……完成だよ♪」


あまりの睡眠不足に頭のネジが2、3個抜けたのか不適な笑みが勝手にこぼれてくる。
目の前には我ながら中々の完成度感じさせるハート柄のチョコが……


「これで準備はOK。あっ、後はカズくんに……そしたら、あんなことやこんなことがぁ……
うふふっ……カズくん恥ずかしいよっ♪」


妄想の世界へI can flyされているご様子の彼女
これが世界的に認められたピアニストなのだから、恋する乙女は盲目と言うのは
あながち間違えではないのだなと改めて感じる。
こうして朝日が昇り、今日一日が始まる……

バレンタインデーと言う、特別な一日の始まりであった。


私の中には何事にも「先手必勝」がモットーなため
どんな物事であっても、出来るだけ一番……先手を取っておきたいのが理想である。
それはこのバレンタインデーでも一緒の事であり、そうとなればすることはただ一つ……
私は朝、8時前からカズくんの家の離れでスタンバッていた。


「まだかなぁカズくん。早く来ないかな♪」


雪が降り積もる外の中、私は胸をときめかせながら
もうすぐ出て来るであろうカズくんに向けて、思いを馳せていた。
左手に握られているバックの中には、今日受けるはずの授業に必要な物など入っておらず
さきほど完成したチョコが入れられている、ラッピングされた箱オンリー……
今日一日の予定はカズくんにチョコを渡すのみしか頭に入っておらず
それのみがこの睡眠不足の私を突き動かしていると言っても過言ではないだろう。


「カズくん、チョコ渡したらどんな反応するかな?あの性格からしてモテた経験
少なそうだからチョコもらった事なさそう……嬉しくて、泣いちゃうかも♪」


案外ヒドイ事を口にし、ほくそ笑む私。
自分でも考えられないほどのテンションにビックリするも
睡魔という名の悪魔がいつ呼び起こされるか分からない
今、この状況を防ぐのにはこの状態がベストではあった。

……時計の時間が八時半を迎える

カズくんのいつも予定されている登校時間だ。
私は視線をカズくんの家の入り口へと一瞬の隙も逃さない雰囲気で眺める。
更に鼓動が速くなっていく。感じたことのない緊張感
ピアニストである私は、1000人以上の前でピアノを弾くことなど
日常茶飯事のことであった。だからこそ、今日のような状況はそれに比べれば
天と地、月とすっぽんなくらい明らかに楽なシチュエーションであるのにも関わらず
私の緊張感は留まる事をしらない。
まるで自分の体が自分でないような、そんな不思議な感覚……


――――ギィィィ……


そして、その時は来た。
カズくんの家、特有の古ぼけたドアの開く音
その先に見えるのは、毎日のように見続けているカズくんの横顔。
あの未だ幼さを残す顔を眺めた途端、私の中の体温が急速に沸点を越えて
思考能力が完全に停止、真っ白になっていく。
視覚はカズくんの顔に釘付けで、聴覚はなぜか国生さ○りさんのバレンタイン・○ッス
のサビがエンドレスで流れる始末……
……このままじゃ、ダメ!
本能的にそのことを理解しても、私は肝心な一歩を踏み出せずにいた。
戸惑い、不安、恥ずかしさ、焦り
様々な感情が入り混じり、私の頭を悩ませる。

どうすればいい?私は何もしないの?それとも……

かばんの中、ラッピングされたチョコへと視線を向ける。
……そうだ。私はカズくんに渡すためだけにこれを
カズくんの喜ぶ顔が見たくて、慣れない作業だって必死にやったのではないか!
バラバラに散らばっていた思いが、一つの形へと戻っていく。
覚悟は決めた、後は勇気だけ……
余計なことは考えはしない、単純に私の思いをこのチョコに乗せて、カズくんに伝える。
私は一呼吸入れて、ゆっくりと口を開いた。


「かっ、カズ―――」
「カズくん!妹からのバレンタインチョコだよ!どうぞ!」
「カズ。わっ、私もチョコだ!ありがたく受け取れ!」
「………えっ?」


なぜか、カズくんの目の前には見知った顔の少女が2人


「おっ、泉は毎年ありがとうな!今年は沙希も俺にくれるのか?いやぁ、マジで嬉しいよ」


2人にチョコを貰い、少し有頂天気味のカズくん
……あっ、あれ?もしかしていや、もしかしなくてもこれは、タイミングを私ミスった?


「泉、カズくんのために一生懸命作ったんだよ!それに沙希ちゃんなんて、カズくんの
和菓子好きなのを知って、凄い工夫した和風チョコ作ったりして……」
「いっ、言うなっ!泉、恥ずかしいだろうが!違うぞ、決してカズの嬉しい顔が
見たいのではなくてだな……」
「俺のために一生懸命頑張ってくれたのなら、とても嬉しいよ。
2人とも本当にありがとな!」


2人の頭をナデナデするカズくん
泉ちゃんの顔は小動物のように元気満点な笑顔を浮かべて
沙希ちゃんは顔を真っ赤にして、文句のような言葉を述べ続けているが
あからさまに顔のニヤケが止まらないのが、アリアリと分かる。
……なんだろうか、あの2人を見ていると沸いて来るこのモヤモヤ感は
と言うか、イライラ感?
何かは分からない。カズくんに一番にチョコを渡せなかった残念感?
もう少し早く行動しておけば良かったという後悔?
わかってはいる、この気持ちは先ほど上げた二つのどちらでもないことを
それは、この気持ちは……


「あっ、おはよう!麻衣さん!」
「おっ、そこにいるのは麻衣さんじゃないか!おはよう!」


考えを巡らせていると、泉ちゃんと沙希ちゃんが私の存在に気づく。
すると、もちろん当たり前の事であるがその後ろにいる人物、カズくんも気づくわけで


「本当だ!おっ、おはよう―――」
「バカぁぁぁぁ!!」
「……えっ?グフッッ!」


そして、私はカズくんの挨拶が終わるのを待たないまま
近くに落ちていた野球ボールを力の限り、思いっきり……投げた。
それも綺麗にカズくん腹部へと、人間の急所である水月へ向けて
いずれ気づく事とのなる嫉妬心という名の憎悪を込めて……


「馬鹿ぁあぁぁ!!」
「……っ!ちょっ、麻衣……さん!?」


私はチョコを渡すことも出来ず、走り去っていった。
聞こえるのは、カズくんが私の名を呼ぶ声
でも、私は振り返ることなく、走り続けたのだった。


それから時間は過ぎ、昼休憩……
私は午前中の授業の間に気持ちを落ち着かせて
今、珍しく一人カフェで昼食を食べているカズくん姿をこの目で捕らえる。
最大のチャンス到来であった。周りを見ても、泉ちゃんや沙希ちゃんの姿は見えない。
まさしく千載一遇の時!神が今しかないと告げている気さえする!
というか、私にはそんなには時間が残されてはいなかった。
もう、昼休憩は終盤に差し掛かる時間帯……授業終了後は現在、研究で忙しいカズくんには
今日中に出会えるのは、今この瞬間が最後といっても過言ではない状況であった。


「……よし、行こう!」


ちゃんと左手にはチョコは携帯済み、抜かりはない。
次こそは……そう心の決めて、私は突入した。


「こっ、こんにちわ♪カズくん」
「こんにちわ……まっ、麻衣さん」


明らかに警戒した目を向けるカズくん
当たり前であろう。よく考えなくとも、あの後のことだ。
警戒する気持ちは仕方がないことである。
だからまずは誤解を解かなければならない。
それが最初のステップ、チョコ渡すまでの道のり……


「朝のことは、本当にごめんなさい!わざとではなくて、って言うか私にもよく分からないん
だけど、2人を見ていたら何か手が出ちゃったって言うかぁ……とにかく、ごめんなさい!」


なんとも纏まりにない言葉
こんな大事な時でも、先走って喋る癖は健在のようで
後悔の念が私を襲う。
……これじゃ、カズくんに嫌われちゃう
ネガティブな思いが重なっていき、絶望感すら漂ってくる中


「気にしてませんよ」
「……えっ?」
「気にしてませんって言ったんですよ。麻衣さんが謝ってくれただけで十分すぎます。
何があったか知りませんが、意味のない行動はあなたはしませんから」


向けられたのは、怒りや軽蔑と言った予想していたものではなく
優しさが満ち溢れているカズくんの笑顔であった。

―――あっ、これなんだ……

私はその笑顔を眺め、改めて認識する。
カズくんの魅力、それはハリウッドスターにも勝るとも劣らない美貌な訳でもなく
どこかの社長のように莫大な金を持っているわけでもない。
多分、普通の人達は目もくれないような存在……
だけれど、カズくんには優しさがある
自然に包み込んでくれる優しさがあった。
本人は一生理解する事のない、気づく人間にしか分からないこの魅力
でも、私はそれに惚れてしまったのだろう……


「カズくん♪」
「……何?麻衣さん」
「渡したいものが、あるの!」


だからこそ、渡さなくてはならない。
今日はバレンタインデー。男女の愛の誓いの日
この思いを、伝えるために……


「こっ、これを―――」
「探しましたよ、和弥くん!」
「……えっ?」


あえて空気読まない少年の颯爽たる登場であった


朝から嫌な予感はしていた……
今日はバレンタインデー。それほど顔がイケメンでもない俺、伝馬和弥ではあるが
ここがアメリカという土地で、日本というチョコを渡すという習慣がないことを
知っていながらも、期待してしまうのが男なのだと思う。
朝から予想通りに泉から、予想外に沙希からチョコを貰い
嫌な予感は杞憂かと思った瞬間に、まさかの麻衣さんからの野球ボール攻撃
やはり嫌な予感は、現実に……
そう思っていたのだが、その後には伊織お姉ちゃん、橘お姉ちゃん
葉月お姉ちゃん、三人からのまさかチョコを頂き
そして、麻衣さんと2人で良い雰囲気……
今度こそ、これは杞憂だと思いかけていた。
しかし、俺は侮っていた。油断していたといっても良いだろう。
今日一度も出会うことのなかった、あの男に会っていないことを


「なっ、何か用事か?恭介」
「当たり前じゃないですか、中々和弥くんと出会えなくてどうしようかと
思っていたところ所ですよ」


我が親友、東恭介の存在を
このタイミング、こいつの性格、今日という日、用事がある
嫌な要素が所狭しと浮かんでくる。
……おい、頼むぞ親友。空気を、空気を読めよぉぉ!!
心の中で祈るように、恭介に視線を向ける。
それを知ってか、知らないでか次の瞬間恭介は俺の目の前に


「今日は何と言う日か知っていますか?」
「バレンタインデー」
「その通り!ですから僕はアメリカではなく、和弥くんの故郷……日本に習って
ある物を準備しました、受け取ってください」


目の間に差し出されたのは、パティシエもビックリな完成度を感じるチョコ
もしかして、これ……


「もちろん、手作りです!ハッピーバレンタイン、和弥くん」


爽やかな笑いを浮かべて、恭介は俺に向け、そう言い放った。
その笑み、完璧なタイミング……完全にヤラレタ
さすがは策士恭介。AKY、あえて空気読まないは健在というべきか。
勢い良く誰かが立ち上がる音が聞こえる。
……ごめん、現実逃避したいんだけれど無理?
そんな合図を恭介に送るも、不適な笑みを浮かべるだけ
俺はゆっくりと麻衣さんの方向へと顔を向ける。


「……カズくん?私、もう笑えないよ」


最後に見えたのは、女神のような笑みを浮かべた死神の笑顔だけだった……



「……うわぁぁぁあああああ!!」


俺、伝馬和弥は飛び跳ねる勢いで寝ているベットから起き上がった。
体中から流れる汗、耳元に聞こえるのは朝を知らせる小鳥達の鳴き声


「ゆっ、夢かぁ」


徐々に冷静さを取り戻していき、先ほど体験が夢である事を
過去に経験したことであることを思い出していく。
いろんな意味で封印していた思い出……
あの後のことは意地でも思い出してはならない。そう、本能が言っていた。
時間を見ると、ギリギリという訳ではないが、それほど余裕がない時間帯
俺は立ち上がり、朝食の準備を始めるため一階へと降りた。

彼が見た夢

彼は気づいてはいなかった、今日が何の日であることかを

今日は2月14日。そう、バレンタインデー

あれは予知夢であったことを……

これから起きる悲劇を伝える信号だったのだと

彼は一切気づきもしなかった……









で、続きます。
予定通りに行けば明日、更新する予定です
今回は麻衣さんを軸に書いてみました。
本編ではどんなキャラか分かりにくかったと
思いますが、これで少しは分かりやすくなったのではと……
感想、評価お待ちしております!!ちょっとしたことでも二部、外伝への活力となりますので、どうぞよろしくお願いします!!






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