先生は17歳!?(77/100)縦書き表示RDF


Hello Goodbye……それは出会いと別れ
人は皆、数え切れないほどの出会いと
辛い別れを繰り返し、成長していく……
彼は越える時が来た
さよならを越えるその日を……
次に来る新たなる出会いために……


と前フリしておいて、最終話です!長いお話を終わりを迎えます
ゆっくりとお読みください。一応ですが、今回はあとがきまで読んでいただくと
ありがたいです。
先生は17歳!?
作:takuto



最終話Hello Goodbye,Goodbye Hello?


アメリカ某空港
私、宮本飛鳥は飛行機から降りた後、旅行用の鞄を背負いながら
多数の人々が行き交う空港内を唖然とした表情で眺めていた。


「……すごいよぉ」
「そりゃ、アメリカでもトップに入るほどの大きさと利用度を誇る空港だからな
これくらいの人数は日常茶飯事だ」


自然に出てきた呟きに、横にいた沙希ちゃんが当然とばかりに言葉を返してくる。
お金持ちである沙希ちゃんにとっては、海外旅行などは数え切れないほど
それにここは昔、住んでいた場所でもあるのだから驚くことなんて
何もないのが当たり前なのだが………
海外旅行が今回でまだ2回目となる私にとっては、未知なる領域に立たされている気分だ。


「ほらっ、飛鳥と沙希!ボーっとしてないで置いて行っちゃうわよ」
「そうですよ。私達は遊びに来たのではないのですから」
「2人とも、こっちだよ♪」


私達を呼ぶ蓮ちゃん、奏ちゃん、泉ちゃんの声が聞こえる。
……そうだった。私達は何も観光で、この地に足を踏み入れたのではない。
確固たる目的を持って、ここに来ていたのだった。
何時までも海外の凄さに圧倒されてなどいられない。


「よし……行こうか、飛鳥」
「……うんっ!」


今、私達がいるのは日本から海を越えた地……アメリカ
ここはカズちゃんの第二の故郷でもあり、過去の記憶が、思い出が眠る地
カズちゃんは現在、この地のどこかにいる。
私達は、カズちゃんに再会するため……
そのためにこの地へと足を踏み入れていたのだった。
入国審査を済ませ、空港の出口を向かうと
そこには、一際目立つ車……リムジンと言うのだろうか
お金持ちが乗っているイメージのある車の姿が見え
その傍には見たことのある顔の男性が……


「お待ちしておりましたよ、皆さん。ようこそ、アメリカへ」


ジャ○ーズ張りのにこやかスマイルで私達を出迎えてくれたのは
カズちゃんの友達である、東恭介の姿であった。
この人は、カズちゃんの手紙でしか知らない人なのだが
……うん。確かにカズちゃんが、なぜか異様にムカつくと言う気持ちが
分からなくもないと思う私がいる。
東恭介はその笑みを崩すことなく、紳士的なエスコートで
私達を車の中へと誘う。


「一通りの話は和弥くんから聞いてます。では、僕が案内しましょう。
あなた達を和弥くんのいる居場所まで……」


その言葉に反応するように、私の平常を保っていた鼓動が
徐々にスピードを上げていった。


なぜ、私達がアメリカの地を踏む事になったのか……
それを語り始めるには数日前、カズちゃんが日本から去って
約一ヶ月の月日が経った時の出来事からすべては始まる。
カズちゃんがこの地を去ってから、いろいろなことが変化し始めた。
私の一番不安に思っていた4人の友達との友好関係は
カズちゃんの予想通り崩れることはなく、より親密な関係になり
毎日のように5人で、カズちゃんの話で盛り上がる日々が続いた。
カズちゃんがいない……それは無性に不安ではあったが
皆の気持ちは一つ、カズちゃんを信じて待つことだけだった。

そして、数日前ある一つのニュースが世間を騒がせ始めた頃
私の元に、それ以外の4人も同じくカズちゃん宛ての手紙が届いた。
中に入っていたのは、アメリカに来て欲しいと書かれた手紙とアメリカ行きのチケット
まるで、あの時のことを思い出してしまう擬似感を感じたのだが
その不安は一瞬で吹き飛ぶ。何しろ手紙に書かれた文字は短いながらも
長年見続けた特徴的な文字であり、カズちゃんの直筆であることを
私の心の中に、直感付ける。
生まれてくるのは、すぐにでもカズちゃんの下に飛んで行きたいという
どうする事も出来ない、抑える事のできない感情の爆発
それは皆も同じだったんだと思う。私達はその日にアメリカ行きの準備を済ませ
アメリカへと旅立ったのであった……



「……到着です。ここが和弥くんのいる場所です」


車に乗せられて数時間、一面に緑が広がる
まるで妖精の国にでも来てしまったのではと勘違いするほどの
幻想的な空間が広がる場所で、私達は車から降りた。


「うぁ……すごいよ、この場所」


車から降りた私の視界に、5メートル以上あるであろう木々達が
目の前を覆い、映画などのフィルターを通して眺め続けた
日本では味わう事のできない特有の自然環境が生む風景が
より一層、アメリカへと来た事を実感させる。
まるで別世界に来たような感覚にすら捕らわれていく。


「こんな場所が、アメリカにあるだなんて……」
「本当に、綺麗な場所です」
「長年、世界を回っているが、まだ私が見たことのないこんな場所があるなんて」
「すごい……それしか言葉に出ないよ」


皆がおのおの感想を述べつつも、一律で驚きを隠しきれない様子だ。
でも、いつまでもこの風景を眺めてなどいられない。
私達がここに来たのはカズちゃんに会うため
ここのどこかにいるカズちゃんを……


「すごいだろう?俺の初めて来た時は驚きっぱなしだったぜ」


懐かしい、一ヶ月ほどだというのに
本当に懐かしい声が、私の耳元に囁きかける。
突然の事で体中が震え、その衝撃に私は息を呑む。
高鳴るように弾む鼓動を抑えながら、私は声の聞こえるほうへと
ゆっくり視線を向けた。
そこには私が望んでやまなかった、大切なモノが
唐突に、拍子抜けするほどいきなり、姿を現した……


「……よっ、久しぶり。元気にしてたか、皆?」


久しぶりの再会にしては、あまりにも軽い言葉
でも、それはとてもカズちゃんらしくて信じられないほどの安心感が生まれる。


「………」


何も言葉が出てこない。
それは私だけではなく、それ以外の4人も同じく言葉を紡ぐ事が出来ずにいた。
何を私は、カズちゃんに言えば良いのだろうか?


『会いたかった』
『すごく心配してたの!』
『傍から離れないで』
『大好き』


色々な言葉が浮かんでは、消えていく。
最も的確な言葉が思い浮かばない。
どうすれば……そう思っていた瞬間、私はもう動き始めていた
カズちゃんに向け、全力で出せるすべて力で走り始めていた。


「カズちゃん!」
「和弥!」
「和弥さん!」
「カズ!」
「カズくん!」


皆が伝馬和弥の名を叫び、和弥に向け駆け寄っていく。
考えは皆同じ……誰もが、自分の手で和弥の存在を確かめたかった
後先のことなど考えてなどいない
ただ、純粋に己の思いに忠実に動いたまで……


「……えっ?おっ、おい!待つんだ!俺に駆け寄ってくれるのは嬉しいが、一斉に来られても
俺は……とにかく一人、一人でじゃないと俺―――」


これから起きる事態にやっとのことで和弥は気づくが
すでに遅し……和弥の悲痛な叫びがこの風景に広がっていく。
ムードも、ロマンティックの欠片もない再会……
でも皆の表情は笑顔で満ち溢れていたのだった……


……再会
俺、伝馬和弥は自分の予想を遥かに上回るスピードで皆と再会を果たした。
あの日、日本から旅立った日のことから俺は、恭介と我が母と協力し
あの事件の証拠となる物を集める日々が続いた。
俺の証言だけではあまりにも弱い証拠である事は、明確だったため
約一ヶ月と言う月日を掛けてその資料を、物的証拠を準備し
我が母校……マーティン教授の元へと俺は赴いた。
しかし、そこには自分の予想裏切る展開が待ち構えていた……


『自殺』


研究室には死後数日経った教授の死体が見つかった。
それと同じくして、教授が書いたであろう遺書も……
そこには、麻衣さんのあの事件の犯人であると認める内容や懺悔の言葉
大学への謝罪などいろいろな思いが込められた文章が書かれていた。
研究者としての苦悩、恐怖、戸惑い、暴走
天才と呼ばれた人間しか分かる事のない心の叫びが、弱弱しい文体で
己の意思を残すように記されていた。
そして、最後には……


『我が親愛なる弟子、伝馬和弥よ……ここに言葉を残す。私は、お前の才能に惚れ
このアメリカの地へと連れて来た。偉大なる可能性を持つ君を狭い視界へと留めておくなんて
私には出来なかったのだ。最初はそんな純粋な気持ちであったのに、どこで道は
違えたのだろう、犯罪にまで手を染める人間になってしまったのだろう……
何時の間に、君を操り人形として見るようになってしまったのだろう……
今となっては信じてもらえないだろうが、私は君を本当の息子のように思っていたのだ。
毎日のように成長する君を、父親のように眺めるのが私の楽しみだった。
でも、君が私に追いつくほどの才能になってから、君に向けるのは親心ではなく、嫉妬心
今から考えると、どれだけ小さな人間だったのか良く分かるよ。君が私から離れてから
そんな昔の気持ちが今になって蘇って来るよ。どれだけ謝ろうと罪は消えることはない
許して欲しいなどは思わない……
ただ、一人の師として君にこの言葉を最後に送る……
君の未来に輝かしい光があらんことを……私は切に願っていると……』


俺に向けて、贈られた言葉であった。
それを俺は震える手、混乱する感情の中

生きて償って欲しかった教授への怒り

あっけない結末で事件が終わった脱力感

後始末を終えた、妙な開放感

どれにしても、後味の悪い思いが渦巻いている。
でも、心の隅に感じていた師である教授を失った悲しみが溢れ出し
憎むはずの人間に俺は涙を流したのだった。

でも、俺はもう立ち止まってなどいられない

過去を乗り越えて、別れを乗り越えて……

先へと、未来へと進まなくてはならないのだ

だから俺は、もう一つ……最後にやり残したことを実行する


囲まれた木々から抜け出した先には一面に野原広がる場所へと出る。
ここが、最後にやり残した場所……


「……ここはぁ、どこ?」


飛鳥が周りを世話しなく眺めながら、俺に向けて質問する。
俺はあらかじめ見つけておいた場所に近づき、飛鳥に知らせる。


「……これだよ」
「まい、いちじょう……これって」
「あぁ、麻衣さんのお墓だ」


俺が最後にやり残したこと、それは麻衣さんのお墓参り……
先日、やっと発見したお墓の前で俺は何も喋ることなく、祈り続ける。
あの事件から今までの出来事、事件の終焉、教授の最後
昔のように話しかけるようにして、俺は麻衣さんに報告していく。


「和弥は墓参りを最後にしたかったのね?」
「……あぁ、報告もかねてな」
「でっ、でもそれなら私なんかは場違いじゃ……」
「そんなことはない」


確かに奏の言うとおり、蓮や奏はこの件に関して
巻き込まれただけで、直接的には関わってはいない。
でも、ここに来たのはそれだけではなく……


「麻衣さんがよく俺に言ってたんだ。信頼できる仲間を作れって、自分の誇れる仲間を
作れって……そして、麻衣さんに自慢できるほどの仲間を作れって……だから」


視線を後ろへと向ける
そこには飛鳥、蓮、奏、沙希、泉、恭介の姿見える。
これが、俺の誇れる仲間、信頼できる人物達


「紹介するよ、麻衣さん。これが、俺の自慢の仲間達だ……」


俺は麻衣さんに向け、懐かしい約束を果たすように伝えたのだった……



「アメリカに……残る?」


帰りの某アメリカ空港内
全ての用事を俺は終了し、俺達は日本へと帰ることとなり
日本行きの便を俺達6人は待っている際、泉から驚愕の言葉が伝えられる。


「えっ!?どういうことなの、泉ちゃん。日本には帰らないの?」
「……うん。ここに残って勉強しようと思って」


飛鳥の泣きそうな声で放つ言葉に、申しわけなさそうな顔を浮かべ
泉は、はっきりと言い切る。


「どういうことなのよ、泉。突然すぎるんじゃないの!」
「そうですよ!理由くらいは言って貰わないと……」


蓮と奏まで飛鳥に乗りかかるようにして言葉を放つ。
沙希だけはさっきから何も喋らず、黙っているので奴は事情を知っているのかもしれない。
とは言え、確かに説明なしじゃ、誰もが納得しないであろう。
こうなることが分かっていたかのように、泉は理由を述べ始めた。


「私は元々、こっちの学校の人間だし……昨日調べてもらったら、まだ編入試験さえ
受ければ、入りなおせるっていわれたから。一番の理由はカズくんに追いつきたいってのが
本心なんだけれど……カズくんと同じ立場に立ちたいから!」


明確な意思を持った言葉を泉は述べ、俺へと視線を向ける。


「でっ、でも!こっちだって―――」
「落ち着け、飛鳥」


4人が納得する中、飛鳥がただ一人、駄々をこねていたので
俺は抑えるように、手で飛鳥を止める。
視線を泉へと向けると、小さい頃病弱だった時には考えられないほどの
強い感情を持った、意欲を持った表情が感じられる。


「……泉、お前はそれでいいんだな、後悔しないんだな?」
「うん。私は後悔しないために、この選択を選んだのだから」


……本当に、俺が見ない内に大きくなったものだ
空港内アナウンスが、俺達の乗る便の時間を知らせる。
もうすぐで出発の時間だ


「だったら、一生懸命頑張れよ!」
「……うん♪」


昔と変わらない、妹の満面の笑顔が視界に広がる。


「……さぁ、行くか」


後ろでは別れを惜しむように、5人の我が生徒達が話に花を咲かせているが
俺は振り返ることなどなく、前へと進み続ける。
もう、兄から妹に伝える言葉は告げた……
また会う日まで、別れを告げる必要などないのだ。


「……お兄ちゃん!」


懐かしい言葉が聞こえてくる。
昔、呼ばれ続けた……妹である泉だけが呼ぶことを許された呼び方
俺が振り返るよりも早く、泉は俺に抱き付き
そして……


「お兄ちゃん……私に勇気、ちょうだい」


気づいたときに俺の唇に柔らかい感触が
触れるだけの軽い、優しいキスが送られる。
耳元には4人の叫ぶような声……


「……妹だからって、諦めないからね」
「えっ、何が……」


何のことか聞く前に泉は俺から離れる。
顔は真っ赤で古典的な表現であるが、リンゴのような雰囲気


「また、会う日まで!お兄ちゃん」
「……うん。また会う日まで」


俺達2人は言葉を交し合う、伝馬家特有のさよならの仕方……

俺は一歩を、さよならを越えるため歩き始める。

麻衣さんとの思い出が眠る地、アメリカ……

麻衣さんの分まで、俺はひたすらに頑張り、生き続けなくてはならない

俺という、伝馬和弥という存在をこの世の中に残さなくてはならない

後悔のない、自分に納得の出来る人生を……

それが、教師なのかは分からないけれど、麻衣さんの残したモノを引き継いで

己の意思で、運命を探していこう


―――大丈夫、カズくんならきっとできるよ


「……えっ?」


あの人の声が聞こえた。

麻衣さんは今でも、俺を見守ってくれているのかもしれない

なら、麻衣さんの言葉を信じよう……

きっと麻衣さんの心だけは、ずっと永遠を生きるのだから……

俺は新たなる時を刻むページを開く

新たなる時はもう、動き始めているのだから……





M学園
浮き上がった問題の不祥事で、現在学園は休校状態となっていた。
その事件の中心となったのはこの学園の教授マーティン……
そして、その事件の中心にいたのは一人の少年


「……伝馬、和弥」


少女は少年の名を呟く。
そこに書かれているのは、少年の動向が細かく書かれた資料
少女は一つ点に、目を向ける


「就職先……扇山高校、数学教師」


……風が吹いていた
凍てつくほど、凍えるような冷たい風が……
少女は視線を遥か彼方へと向ける


「日本……か」


その先に見える、日本
忌まわしき存在、伝馬和弥の姿を……


END?





あとがきに続く






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