先生は17歳!?(76/100)縦書き表示RDF



彼は再会を果たした、過去を知る者達と
彼は真実を知った、隠された人々の思いを
だけど、すべてはまだ完全に解けてはいなかった
最後の欠片を握るのは、一人の少女
少女は語る、自分が放った優しい嘘の出来事を……
先生は17歳!?
作:takuto



第75話優しい嘘


――――風が吹いていた


澄んだ色をした蒼と白の空から、もうすぐ来るであろう冬の冷たさを乗せて
冬を運ぶ秋風が、俺の頬に触れるように吹き続けていた。
寒さと、僅かな暖かさが入り混じった空気
空を見上げれば、視界が霞むほどの眩い太陽の輝き
数日前、あんなにも暗黒な雲が、雨が降り注いでいた風景が
まるで夢の中での出来事であるかのように
晴れやかな天候が広がっている。


「……もうすぐ、冬……だな」


俺は視線を空へと向け、歩きながら
そんな独り言を小さな声で放つ。
現在、俺が歩いているのは病院内の外……芝生や樹木などが広がる庭のような一帯
ある一人の人物を探して、俺は歩き回っていた。

記憶を取り戻した瞬間から感じていた違和感

それは恭介が語った、一連の出来事についての真相で
大部分の謎は、解決されていた。

だけれど、未だ心の隅に残る微かな違和感……

その最後のピースとなり得る、記憶の欠片を
彼女は握っているのだと、俺は直感的に思っていた。
目覚めてから、一度も姿を見せない彼女に会うことで
何かが分かるのだと、何の根拠もない自信を俺は感じていた。

彼女に会わなくてはならない……

そんな思いだけが、今の俺を突き動かしていた。
周りに視線を向けると、秋を感じさせる落ち葉が風に舞い
吐く息は、白く曇っていく。
目の前には、そこら中に存在している木々の中でも
一際大きく、存在感を見せる木が視界全体に映り込み……


「……あっ」


……見つけた
眩む視線の向こう、大きな木の下、傍に置かれたベンチに座る少女の姿
まるで一枚の絵画のように美しく、それでいて可憐なその姿……
間違えようのない、長年見続けた彼女の後ろ姿
……幼馴染である、宮本飛鳥の姿を俺はついに見つけたのであった。



「……寒いね」


飛鳥は近づいてくる俺の姿に気づいたのか、こちらに視線も向けず
呟くように、俺に向け、そう声を掛けてきた。


「あぁ、寒いな」


俺もいつも通りの会話をするように、言葉を返す。
冷たい風が吹き、飛鳥のさらさらとした髪が合わせて揺れる。
その様子は妙に印象的であり、幻想的なイメージを俺の中に浮かばせる。


「カズちゃん、どうしてここに来たのぉ?寒いんだったら中に入らないとぉ……
元気そうみたいだけど、何事も治り始めが重要なんだよ」
「……だったら、逆に聞くが飛鳥はなんでこんな所にいるんだ?それも一目に付きそうもない
こんな場所で、一人……」
「………」


飛鳥が俺に向け、注意を促すような言葉を送るが
これもいつものように、俺はうまく飛鳥に向け言葉を跳ね返す。
動揺したのか、その後の言葉を飛鳥は紡ぐ事ができず
沈黙の時が流れていく。
これでも俺達は幼馴染だ。長年のブランクがあったとしても
口喧嘩の勝負では、飛鳥に負けたことなど一回もない。
だからこそ、もう一つの幼馴染だからこそ分かる事もある。
飛鳥が現在も、その癖が治っていないとすれば、この行動は……


「飛鳥……昔からお前、本当に困った事、隠し事があったら一人で閉じこもる癖あったよな?
何か、俺に隠していること……あるんだろう?」


俺は確固たる自信を持って、飛鳥に向け言葉を放った。
一瞬、飛鳥の体がビクッと震えたように見え
明らかな動揺が感じられる。
昔からそうだった。飛鳥は本当に素直な人間だった。
性格はいつも明るく、ムードメーカと言う言葉がもっとも似合う人物
人も悪い所よりも、良い所ばかりを見つけるのが得意で
当然のごとく、嘘を付くのが大の苦手であった。
だから、今ならわかる。何かを偽ろうと、隠そうとする飛鳥の思いが
はっきりと俺にはわかった。


「飛鳥……俺に話してくれないか?お前が知っていることを」


その内容は、予測であるが俺の過去に関すること
飛鳥は何かを知っている、それを俺は知らなくてはならない。
そして、すべてを見つめ直さなくてはならないのだから……


「……もう、カズちゃん記憶、アメリカ時代のこと思い出したの?」
「あぁ、思い出したよ」


長い沈黙を開けて、飛鳥が俺に質問をぶつける。
俺はその質問に対し、なんのためらいもなく答え、飛鳥の言葉を待った。
……再び訪れる沈黙の時間
どれだけの時間が経ったのだろうか、飛鳥はゆっくりと口を開き


「それなら、もう……隠す必要なんてないよね。話すよ、私が知っていることを
私がしたあの行為のことを……」


その時のことを思い出すように、語り始めた。



それは私がカズちゃんとお別れをして、数年の月日が経ち
もう、すでに中学生になっている時のことだった。
その間、カズちゃんと会うことは予想通りではあるが、一度もなく
繋がっていたのは、数週間に一度送られてくるカズちゃんからの手紙だけだった。
それだけが今のカズちゃんを知ること出来る唯一の手段
私は一日たりとも忘れることなく、姿見えぬカズちゃんのことを考え
生活する日々が続いた。
いつか帰ってくると約束したカズちゃんの言葉を信じながら……


「でも、ある日を境にカズちゃんから手紙は来なくなったの」


私は混乱した。最初は、学業が忙しいなど事情があるのだと
心の中で思うようにしていたのだが、日を追うごとに思いは積もっていくばかり
どうにかしたい……そう思うも、何も出来ない歯がゆい気持ち
そんな気持ちを私は抱えながら、問題やトラブルに巻き込まれたのかと心配する日々が
過ぎていき……ある日、ついに待ち望んだ手紙が送られてきた。
私は喜びを隠しきれない様子で手紙を開き
カズちゃんの手で書かれた手紙へと目を通そうとした。
しかし、その手紙は私の予想を大きく裏切り、中には


「アメリカ行きの航空券と百合さんから送られた、アメリカに来て欲しいと書かれた手紙が
私の元へと届いたんだ」


私はそれを見た瞬間、体が震えるほどの驚きを感じながらも
母に頼み込むようにして、すぐにアメリカへと飛び立った。
頭の中には不安と言う感情が爆発しており、とにかく嫌な予感しか脳内に浮かんでこなかった
一秒でも早く、私はカズちゃんの姿を確認したかった。
そして、その嫌な予感は見事に的中してしまった。


「そこで見たのは生気のない、私の見た事のないカズちゃんの姿だった」


始め、私は己の目を疑った。目の前に映し出されている風景を
すべて否定したい気持ちに惹かれた。
百合さんから、この出来事の詳細を聞き、いろんな思いが私の中に渦巻くも
でも何度見返したとしても、そこには暗黒しか広がってはいなかった。
その姿は私までを絶望感に誘い込み、今まで作り上げた何かが
崩れてしまいそうな、そんな気持ちが私を包み込んでいく。
どうする事もできない、最悪のイメージが私の頭の中を侵食していった。
……もしかしたら、この私の悲痛な叫びがそれを引き起こした原因なのかもしれない
次の瞬間、奇跡のような出来事が私に降り注いできた。


「カズちゃんが、私の姿を見て……飛鳥って、呼んだんだよ」


死んだような虚ろな目、ダランとした体
でも、確かにカズちゃんは私に向けて、私の名を呼んだ。
記憶喪失であるカズちゃんにとって大きな一歩、復活への一歩でもあった。
でも、それと同時に私はこんな感情が生まれてきた


「それは、過去の記憶まで思い出して……また、カズちゃんが塞ぎ込んじゃうって思う
体中から震えが感じるほど恐怖感」


それを私は心の底から感じていた。
もう、私の事を……宮本飛鳥のことを忘れて欲しくなかった
カズちゃんの記憶の中に、私という存在を留めて欲しかった
どんなことをしても、私だけは忘れて欲しくなかった
だから、私は……


『……もう、あの人のことは忘れてしまっても、いいんだよ』


言ってはならない言葉を、優しい嘘をカズちゃんに向けて放った。
それは現実を逃避し、幻想を受け入れる事を了解する優しい言葉
目を背けることを、了承する合図となるモノ
決して言って良い言葉ではない。だけど、私を……宮本飛鳥の存在を
カズちゃんの記憶に残すために、自己の欲求のために私はこの言葉を述べた。

これが、私の知っているすべて……

奇跡の始まりとなる日の出来事であった


「……これが私が知っているすべてだよぉ」


飛鳥はすべてを語り終え、何かすべてを出し切ったかのように
大きな溜息を一つ、浮かべた。
俺はその様子を彼女の背を見つめながら
一言も言葉を発することなく、黙ったまま聞き続けていた。


「これで分かったでしょ?私はすごく嫌な女なんだって……カズちゃんがここに来てからも
過去を知る沙希ちゃんや泉ちゃんとは出来るだけカズちゃんと2人っきりさせないように
ばれないように私は行動していたの」


己の言葉を自虐するように、投げやりに言葉を紡いでいく。


「私は本当に小さな人間なんだぁ……過去の事なんて、嫌なことなら忘れてしまえば
いいだって勝手に思ってた。途中、それじゃダメなんだって思ったときもあったけれど
嫌われるのが、変わってしまうのが嫌だったから、無理矢理でも私は押し通してきたの」


一つ、一つの言葉が飛鳥の今まで背負ってきた
悲痛な思いを乗せ、俺にぶつかってくる。
俺の心の中には、いろんな思いが渦巻いてくる。


「でもぉ、それも今日でおしまい……カズちゃん、私のことを軽蔑してもいいんだよ?
私はそれだけの事をしたんだから。私は自分のことだけしか考えてないそんな人間だから」


飛鳥の声が段々と小さくなっていく。
いつも見つめていた飛鳥の小さいけれど、存在感のある大きな、自信に満ち溢れた背中は
今となっては本当に小さい、消えてしまいそうなほど小さい……
あの小柄な体で、飛鳥は何年もこんな思いを感じていたのだ。
本人がどう思うかなんて関係ない、周りがどう思おうなんて関係ない
今、俺の気持ちは飛鳥を助けたい、その一心のみ……
だから、俺は……


「……えっ?」


後ろから包み込むように飛鳥を優しく抱きしめた。


「なっ、なんでそんなこと……私は、あんなにも嫌な事を……」
「気にする必要はねぇよ、あれはお前のせいじゃない。弱い心を持った俺の責任だ」
「でも!私は皆の事騙して―――」
「そんな気にするメンバーじゃないだろうが。話せばわかってくれるさ」
「でっ、でも……でも……」


次々と叫ばれる飛鳥の言葉。それを俺は抱きしめながら
思ったままの言葉で答えていく。
でも、飛鳥は未だ自分を責め続けていた。
悪いのは、誰でもない。目の前の楽さに目の眩んだ俺の責任
飛鳥はもう、自分を責め続ける必要などないのだ。
俺がやるしかない。飛鳥が長年苦しめられたその絡められた責任の糸から
解き放たなくてはならない。そのために俺は飛鳥に向け言葉を送る。


「……飛鳥、俺はお前を軽蔑などしない。周りの人達も飛鳥を見捨てることなんてない
もう、お前は気にしなくていいんだ!過去に縛られる必要なんて……ないんだ。
だから飛鳥……今まで溜めてたモノ、全部出しちまえよ」


飛鳥に重くのしかかっていたモノを引き剥がすように
俺は優しく言葉を述べた。


「かっ、カズちゃん……わっ、私……」
「泣きたい時は泣けばいいんだ。全部……俺が受け止めてやる」
「……うっ……かっ、カズちゃん……っちゃん」


飛鳥の泣き声が俺の耳に聞こえてくる。
心の奥底に溜まっていた、いろいろなモノが吐き出されていく
今は全て、飛鳥は空っぽにするべきだ……
俺はそれを傍にいて、優しく包み込んでやるだけ
涙は心を浄化する重要な現象……俺は今まで感じてきた飛鳥の痛み、苦しみを感じながら
耳元で聞こえ続ける泣き声に耳を傾けていた。



病院前入り口
俺は飛鳥が泣き止んだ後、一人にして欲しいという言葉聞き
病院の前まで戻ってきていた。
すると、入り口に佇んでいる男性……東恭介の姿が見えた。


「……ずいぶんと遅いお帰りのようで、心配しましたよ」


にこやかな嫌味に感じる恭介スマイルを俺に見せつけ、恭介は言葉を述べる。
この雰囲気だと、帰るのを事前にわかっていたような感じだ。


「恭介、お前さっきまでこと見てたんだろう?」
「何のことやら、僕は和弥くんが教え子である飛鳥さんと抱きついていたなんて
スキャンダル的なこと知りませんよ」


隠す気がない所が、とても恭介らしい


「まぁ、そんなことは置いておくとして、これからどうするおつもりですか?」


聞かれると思っていたが、確信的な質問が恭介から浴びせられる。
俺は考える事もなく……


「アメリカへ、教授に会いに行くよ」


最初から決めていたこと、そっくりそのままひねる事もなく
恭介に向けて伝える。恭介もその言葉が来るのをわかっていたのか


「……やっぱり、そうですか。飛行機のチケットは一応のため用意しておきましたので
今日にでも、ここを発つことが出来る準備はしてあります」


俺が聞きたかった理想的な言葉が返って来る。
さすがは、俺の親友……今は相棒、そう言った方がしっくり来るかもしれない。
後ろから車の音が聞こえてくる。


「ついでではありますが、車の準備も……」


相変わらずの手際の良さである。
あまりにも完璧すぎて、多少の恐怖心すら感じるが……


「……で、一応聞いておくが恭介、お前も俺と一緒に着いて来るのか?着いて来るって事は
お偉いサンを敵にまわすことになるんだぞ?」
「何を言っているんですか、そんな当たり前のこと……僕は言ったはずです。あなたが
困っている時は、全力であなたに力になると……あの時、果たせなかった約束を
今、僕は果たすときなのですよ」


予想通り過ぎる親友の言葉……
確かにこれから先、社会的に権力のある恭介の力なしではいろいろとキツイ
それだけの事を俺は、これからしなくてはならないのだから……
俺は一度、病院へと視線を向け、車の方へと歩を進める。


「……お言葉ですが、あの人達にお別れの言葉はしなくていいのですか?」


恭介が俺に向け、もっともらしい言葉を述べる。
でも、俺は振り向くことはしない。


「いいんだよ……お別れの言葉なんて、絶対俺はここに返って来るんだからな!」


お別れの言葉など言いはしない。
ひと時の旅立ち……


「そう、ですか。あなたらしい考え方ですね」


いつもの、だけれど少し嬉しそうな恭介の笑い声が聞こえてくる


「さぁ、行こうか親友!何年も前に残してきた後始末をしに!」
「そうですね……これは私達が片付けなければならないことだ」


俺達2人は意気揚々と車へと乗り込んでいく
目指すは、海越えたアメリカの地……
残してきたモノ、後始末をしに俺達は一歩を踏み出した








まさかの更新完了……
今日が休みと知らず、昼頃から眼を覚まし
今頃になって完成です……
後は最終話を残すのみ!!
この小説の終焉?に向けて頑張って書いていきたいです。感想、評価お待ちしております。ちょっとしたことでも参考、作者のやる気に繋がりますのでよろしくお願いします!!






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