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先生は17歳!?
作:takuto



第69話交わした約束


「僕達、親友通しになりましょう」
「………はぁ?」


何時の日だろうか。その日は奴のお気に入りであるショパンの曲を弾きながら
いつものように雑談、無駄話に花咲かせている時、演奏が終了した途端
乗り出すように俺に視線を向け、意味分からんことを奴は言い始めた。
………すまんが、お前顔が近い
その発言に俺は間抜けそうな顔をしながら、疑問符を返す事しかできなかった。


「そう、親友です!親友。僕達のこの関係性をどう言葉で表せば良いのかずっと
一日中考えていたのですけど、やっと見つかりました。もっとも適切な言葉が」
「……本当に一日中考えてたのか?」
「あぁ、当たり前です!僕は何事にも一生懸命ですからね」


馬鹿がいます。ここに芸人もビックリの馬鹿がいます
相変わらずの性格である。初めて会ってからもう、どのくらい月日が経ったのだろうか
とにかく奴の第一印象は変な奴、例えるのなら胡散臭いイケメン詐欺師……
と言うのが俺の中での位置づけではあったが、今となっては


「僕は最初BEST FRIEND。これが頭に浮かんだのですが、やはりアメリカに住んでいるとは言え
僕達2人は日本人。そうとなれば、日本語で表すのが、基本……そう思いましてね。その中で
友人、朋友、知友、知己などいろいろと言葉が合ったわけなのですが……」


ただのバカへとクラスチェンジ。そう感じ始めたのは、あなたはドラ○エ派ですか?
それともF○派ですかとあの美形顔で真面目に聞いてきたのが決定的だったと思う。
分かりきっていることではあるが、この学校にいるのだ。
奴も俺と近い存在……頭が良い、優等生なんかでは済まされない天才と呼ばれる人間
この時ほど、天才とバカは紙一重と言う言葉に納得しそうになったことない。


「すいません。聞いているのでしょうか?」
「……えっ?あぁ、聞いてるよ。続けてくれ」


一瞬、怪訝そうな顔を浮かべるものの、また政治家張りの独特の言葉の言い回しで
俺に向けマシンガンのごとく喋り始める。
外の光が黒塗りのピアノに反射し、俺の顔を照らしつける。
鳥の鳴き声が微かながら聞こえ、ゆっくりと時が流れているような、そんな思いに捕らわれる
無駄な時間……少し前の俺なら、そう言って切り捨てていたであろう。
現在のこの空間。でも、今の俺には何物にも換えること出来ない、大切な時間。
研究漬けになっていた俺にとって、もっとも必要とすべき
かけがえのない、他愛もない語らい。
言葉にはすることはないが、もう奴と俺は………


「だから約束を、2人だけの約束を結びませんか?」
「やっ、約束?」


そこの部分だけ俺の耳に届き、聞き返すように俺は言葉を返した。


「そう、約束です。僕は和弥くん、あなたが困っている時、助けを求めている時
絶対に和弥くん、あなたの力となりましょう。だから、逆に僕が困っていたりしたのなら
和弥くん。あなたが僕の力になってください」


そう言って奴は右手を俺に向け、伸ばしてくる。
これは約束……言わば、ちょっとした契約。その印を奴は握手でしようと言っているのだろう
俺は一度、奴の顔に視線を向け、その憎たらしい笑顔に目を向ける。


「わかったよ……よろしくな」


そして俺はゆっくりと右手を伸ばし……奴と握手を交わす。
互いの視線が行き交い


「一応言っておくが、固い約束を結んだ友の事を盟友って言うんだぜ」
「……えっ?」


満面の笑みを俺は浮かべた。

懐かしい、本当に懐かしい昔の夢であった………


「これから、今年度第34回扇山高校学園祭を開催いたします!」


マイクから発せられる生徒会長、綾月蓮の開催のあいさつ
それを皮切りに集められた生徒達のボルテージは最高潮へと達していった。
そこらかしこで叫ぶような男性、女性様々な声が響き渡り
誰一人として、先生の言うことなど聞いていない。
まさしくお祭りモード……この状況を止められる人間などいる訳などない。
解散の指示が蓮から飛び、散るように生徒達がおのおの持ち場、回りたい場所へと
走り去っていく。何と言えば良いのか、とにかく異様な光景……

それが毎年のように行われる、扇山高校の開会宣言……らしい。

現在はその開会宣言から数時間後、窓の外から威勢の良い生徒達の声が
メイン会場の方ではバンドでも演奏しているのか、けたたましいほどのギター音
ドラム、ベース、シャウトするような男性の声が聞こえてくる。
多分校舎内、校舎外は漫画などでよく見る典型的な学祭の雰囲気が広がっている事であろう。
そんな賑やかな声が耳元に届く中俺、伝馬和弥は学祭の雰囲気とは程遠い場所
誰も通る事ない特別教室棟の教室の一つ。そんな所でただ一人
俺は壁に寄り添い、座り込んでいた。


「はぁ、はぁ……こんな調子だったら無理して……参加するんじゃ、なかったな」


独り言のように苦言を洩らし、視線を上へと向ける。
体中から流れる汗、鉛のように重たい体、締め付けられるような頭の痛み
言葉一言で今のこの状況を表すのなら……最悪
これ以上のコンディションはないのではと自分で思うくらい
言う事の聞かない今の状態を俺は呪った。
静かな教室内、聞こえるのは己自身の荒々しい呼吸音のみ。
このシチュエーションでも気分は底辺近くの状況だと言うのに
窓から広がる外の風景に視線を向けると、黒くよどんだ雲が一帯を包み込み
多分ではあるが、もうすぐ雨が降る……そう思わせる天候が
俺の気分を更に害した。


「ちょっとは雲も……俺の気持ち……考えて欲しいよな」


いつもの俺らしくもない、理不尽にもほどがある発言がこぼれる。
でも、そう言っていないと俺はやってられない
あの天気、雲を見ていると、こんな頭痛の中でも思い出される
この現状を作り出した二日前の出来事が思い起こされ……


―――バイバイ……カズくん

「……っ!くそっ!!」


あの時浮かべた芹澤の泣き顔、その言葉がフラッシュバックのように蘇り
俺は教室の壁に己の拳を叩き付けた。


「……いてぇえよ。手が」


自分の行動に意味が分からない。バカみたいな行動をする自分に嫌気が差す。
いくら風邪がヒドイとは言え、ここまで感情に左右される珍しい自分に
………いやここ最近、感情のコントロールが出来ない自分に疑問符を浮かべざるを得ない。


「どうして、こうなっちまったのかな」


本当に、心の奥底から出てきた言葉……
こんなにも弱くなってしまった己に泣きそうになる。情けなくて仕方が無い。
事の発端は確か、あの奏の弁当作りからすべては始まった気がする。
あの時、奏の言葉から毎晩のように見るようになった過去、昔のちぐはぐな夢
毎朝のように襲う、頭の痛み……

憎たらしいほどの美形顔の青年、2人で作り上げる空間……

雨。打ち付けるような豪雨、雷声が響き渡る俺の一番嫌いな風景……

嘆き、悲しみ、祈り、そして怒る人々の中、投げかけられた優しい言葉……

気の強い、だけれど気高く、それでいて眩しい少女……

雨の中、一人の少女のために走る俺……

あの時から、毎日のように見続けた夢。
夢とは本来……己の中にある思いを具現化する現象
それならば、この夢は内なる俺が投げかけたメッセージ?
もう、気づかなければならない。現実に背き続ける日々は終焉を迎えなければならない。
夢から集められたピースを繋ぎ合わせ、最も内なる俺が伝えたかった
その一つの思いに気づかなくてはならない。その先に見えるのは……


「ピ……アノ?」


その瞬間、視界がブレた……
頭の中がグラグラと揺れ始め、周りの風景が歪んでいく。
立ちくらみかと思い立ち上がってみるも、予想以上に足がおぼつかず
何か捕まっていなければ、立つ事も間々ならない状況。
……何なんだ?何が起きてる?
冷静に保とうとするも、いままでに感じた事のない現象に
精神的に余裕を持つなど、不可能に近い。
もう、どうすることも……そう思い始めていたその時、廊下を歩く音が
コツコツっと靴の音が聞こえてくる。


「……様子を見るために学園祭に来たんですが、あなたの姿が見えなくて……
どうかしたのかと思って探してみれば、僕が思っている以上に体はもう、ガタが来ていた
ようだ」


靴の音が止み、誰かの声が聞こえる。視線を向けるも、ぼやけた視界では
顔はもちろんのこと、姿すら確認ができない。


「また、あなたは一人で何でも抱え込んで、自分一人で解決しようとしている。それはあなた
の長所でもあるが、同時に欠点でもありますね」


余計なお世話だ……
そう言いたいが、言葉が出ない。視界が先ほどよりぼやけ始め、意識も遠くなっていく。
何かを思考する事すら、出来なくなってくる。
だけれど、この声。聞いていてムカつくような丁寧な口調、どこかで……


「和弥くん……あなたは本当に覚えていないのですか?あの、約束を……」


自分の聴覚、視覚、思考が言う事を聞かなくなっていく。
体の機関が、ブラックアウトしていく。そして、意識も………


「もう……俺は」


この言葉を最後に俺は意識を完全に夢の世界へと手放した。
だから聞こえてなかったであろう。
彼の、東恭介の伝馬和弥を支えながら、放った言葉を……


「今度こそ、あの約束を果たすために……僕は君の力になるためにここに来ました」


決意に満ち溢れたその言葉を……






更新……かっ、完了。めずらしい三日連続更新……短めだけれど書くのにどえらい時間が掛かった。つうか学園祭の描写ゼロですね。仕方がないとは言え、寂しい……感想、評価お持ちしております!!ちょっとしたことでも作者の参考、やる気UP繋がりますので、よろしくお願いします!!






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