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先生は17歳!?
作:takuto



第66話あの頃の僕、今の私


校舎内の窓、そこから降り注がれるオレンジ色の眩い光
誰もいなくなった教室、黒板に書かれた俺に送るクラスメイト一人、一人のメッセージ
それを俺は、自分の席……今日で最後となる席に座り、クラス内の周りを眺める。
扇山小学校。五年間在籍したこの学校とも、今日でお別れだ。
明日、俺はアメリカへと旅立つ……
ランドセルの中には、数時間前行われたお別れ会で皆から送られたプレゼント
先生から渡された手紙、寄せ書きが入っている。
もうこのクラス、友達との別れは済んだ。感傷など浸っている場合ではない
気持ちを切り替えなければ、そう思うのだが……


「俺、まだ悩んでいるのか?」


ふいに言葉がこぼれる。とっくの前に転校することに決意を固めたはずなのに
前日となると、いろいろな思いが錯綜し、揺ぎ無い思いが鈍る。
今回の俺の転校……それは一般的な場合とは違い、アメリカという海を越えるのだ。
会うことはもちろんのこと、電話すらまともに出来ない。
家族にすら、ましてや友達……特にあいつとはもう………


「……和弥!!」


突然、閉ざされていた教室の扉が開き、俺の名を叫ぶ声が聞こえる。
視線を向けるとそこには、俺の親友……綾月蓮が肩で息をしながら、立っていた。


「おい、蓮!なんでここに……それよりも凄い汗」


未だ呼吸は整っておらず、顔には流れるような汗を浮かべている蓮。
俺は持っていたハンカチで蓮の汗を拭くため、近づこうとすると


「さっき、家に……行ったらいなくて。それなら和弥はここにっ……いると思った、から」


途切れ途切れながらも言葉を俺に伝える蓮。
さすがは親友と言った所か、俺の居場所がすぐに分かるなんて……
何か喋るわけもなく、俺は蓮が息が整うのを無言で待ち続ける。
そして1分ほど過ぎた頃、落ち着きを取り戻した蓮がゆっくりと口を開いた。


「かっ、和弥。本当に今日で……お別れなの?」
「……あぁ、本当だ。明日、アメリカに行く」


蓮の言葉に俺は誤魔化すことなく、率直に事実だけを伝える。


「嫌だ……嫌だよ、和弥!もう会えないなんて嫌だ!」
「落ち着け、蓮。一生会えないって訳じゃ―――」
「分かってるよ!でも、何時帰ってくるか……分からない。1年後、5年後、10年……
もっとかもしれない!和弥自身、そう言ってたじゃないか!そんなの、そんなのって!
一生会えないのと、同じだよ………」


視線を下に向け、体を震わせながら蓮は思い、己の気持ちを叫ぶ。
その言葉に俺は何も言葉を返すことは出来なかった。


「僕は和弥がいたからここまで来れた。和弥がいじめ、友達、人付き合い……全部、教えて
くれた。だから、和弥がいなきゃ僕はもう…………どうすればいいのか分からない!
わっ、分からないんだよぉ……」


目の前には涙を浮かべた蓮の姿が、子供のように涙を流すその姿が俺の視界全体に映りこむ。
その姿はとても弱弱しく、それでいて儚い。助けなければ……そんな感情が浮かび上がった
瞬間、俺はようやく気づいた。自分がこの学校から出て行こうと思った理由を
この別れが俺のための、何より蓮のためになると言うことを……
蓮は俺に頼りすぎていた。あれだけの才能を持っているにも関わらず、俺の元から飛び立つ
ことをしなかった。そして俺も蓮と、皆が作り上げる心地よい空間、ぬるま湯のような
この居場所に離れられずにいた。そんなただ馴れ合うような日々が、俺にとって
かけがえの無い大切な宝石だったから。だけど、俺はこのままでは進めないことを
何も変わらないことを気づいたから。俺達はもう、留まってなど……いられない


「……蓮」


俺は近づき、その溢れる涙を拭う。


「俺だってここから離れたくはないよ。でも、俺はアメリカに行かなければならない。
蓮だって自分が思っているよりも本当に強くなった」
「そんなことない!僕は和弥がいないと……」
「違わない。蓮は気づいてないだけだ。だから、指切りしよう」


俺は笑顔で蓮に向けて右手を伸ばす。


「ゆび……きり?」
「そうだ。絶対に俺はこの場所に帰ってくる。必ず……だから、蓮。お前も強くなるんだ!
俺なんかが必要ないくらいに、帰ってきた俺をビックリさせるくらい強く……俺もアメリカで
頑張る。そして、蓮。お前も頑張るんだ!」


これは約束。また出会うために結ぶ、二人だけの誓い
……数秒間の沈黙、視線を下へと向けていた蓮がゆっくりと顔を上げ
ぎこちない笑顔をこちらに向ける。


「そんなの……卑怯だよ。和弥にそう言われたら、うんって言うしかないじゃん」
「そうだな、卑怯者だな俺は」


2人とも視線を違うことなく、笑い続ける


「つかの間のさよならだ。絶対に帰ってくるから」
「うん。さみしいけれど、僕頑張る。強くなるよ!」


夕日が差し込む教室、その中で2人だけの約束が結ばれた。

そこで俺の夢は終わりを告げた。


秋の行事……そう考えれば、皆はまず何が思い浮かべるだろうか?
中には運動会、体育祭と言う意見を述べる方も大勢いることだろう。
それもイベントでは大きく取り上げられるものだが、そっちではない。
漫画や小説などでも必ずと言っていいほど、上げられるこのイベント
年に一度だけの学校のお祭り……学園祭
これに向けて現在、我が扇山高校もあと一週間と迫り、そこら中でクラス内の出し物
メイン会場の準備などで賑わっていた。世話しなく動き回る生徒達、溢れかえる校舎
その中でも「生徒会」と書かれた腕章をつけた人々は本当に忙しそうに、場所、場所へと
飛び回っていた。この時期の生徒会、それは一年の中でもっとも忙しい時期。
扇山高校は自由な校風のためか、文化祭など行事ごとすべて、生徒任せになっている。
そのため、生徒会は生徒達の中心となって行動するため、とても忙しく
重要な役目を担っていた。逆に言えば、先生達は自分達の出し物以外やることはなく
毎年楽なもの、そう俺は聞かされていたはずなのだが……


「和弥!学祭のパンフの完成まだ!?それと各クラス経費の資料も」
「ちょっ、ちょっと待ってくれ!もうすぐで完成する!」
「急いで!そんなにゆっくりしている時間はないわ。見回りの時間はもうすぐよ!
スケジュール通りに事が進まないとダメなのよ!」


先生と言う立場である俺はなぜか、生徒会長蓮に急かされるように
生徒会室で縦横無尽に走り回っていた。
資料、ファイルを片手に四苦八苦……そして、腕に付けられた「生徒副会長代理」
と書かれた腕章。


「うぉぉぉお!燃えろォォ!!俺の何かぁぁぁ!!」


叫ぶように目の前に置かれた仕事を片付ける俺。
目線には忙しそうに動き回る蓮の姿も見て取れる。生徒でもなく、生徒会顧問でもない
この俺が、なぜこんな所で叫びながら作業を行っているのか、それはほんの数時間前……


「お願い、和弥。生徒会の仕事手伝って!」


自分のクラスの出し物の出来具合を確認するため、廊下を歩いている所
突然現れたのが、手を合わせてお願いする蓮の姿だった。
何事かと事情を聞いてみると、生徒会の重鎮である生徒副会長、綾乃薫が今日風邪で
休んでいるらしい。それは生徒会としては大きな打撃らしく、代わりとして
俺に代理を勤めてくれないか?それが蓮のお願いであった。
少し考え、薫、蓮の頼みとあれば……そう思い、俺は軽い気持ちでOKの言葉を口にした。
それが今思えば、俺のミスであった。


「なんだよ、この膨大な仕事の量は!?こんなの聞いてないぞ、蓮!!」


俺は片手で資料をめくり、もう片方の手でパソコンのキーボードに手を置く


「当たり前でしょ!そんなの言ったら、和弥絶対断るもん。良いから、喋るくらいだったら
手を、手を動かして!!逆らおうなんて考えちゃダメよ。ここでは私の天下なんだから」


後ろからバタバタと動き回る音に交えて、不適な笑い声が聞こえてくる。
そうなのだ。相手は生徒会長……この学祭準備期間中、蓮は誰よりも強い、最高権力者となる
生徒はもちろんこと、先生すら生徒会長の言葉に絶対従わなくてはならない。
例えるなら、これはハ○ヒの「団長命令」と同じように有無言わせぬ効果があり
絶対王政もビックリのまさしく今、蓮はこの学校のキングなのだ。


「ほらっ!手が止まってるわよ、和弥。時間内に出来なかったら罰金だからね!」
「ちょっと、それは……勘弁!!」


ペースを一段階ギアチェンジし、作業スピードを上げる。
罰金とは……発言までハ○ヒらしくなっているような雰囲気さえする。
俺は心の中で名も無き主人公に同情の思いを感じつつも
罰金とやらに逃れるため、一心不乱に作業を進めていった。


扇山高校校舎内
俺達は資料を片手に周りに目を向けながら、二人肩を並べて廊下を歩いていた。
先ほどのパンフ製作などの仕事は、なんとか蓮が規定した時間内に完成し
例の罰金からは逃れることができたのだが、それも束の間……次の仕事、学内見回りに
俺は引き連れられるように生徒会室を後にし、現在に至る。
疲れた顔をしている俺とは対象的に楽しそうな笑みを浮かべる蓮
これが長年積んできた生徒会の経験者と素人の俺との差であるのだろうか。


「楽しそうだな、蓮。俺はもう、正直一杯、一杯だぞ」


年寄りじみた発言を蓮に向かって述べる。すると、蓮は嬉しそうに笑いながら
視線を俺の方向へと向けてくる。


「そう?私だって慣れているとは言え、多少は疲れているわよ」
「本当か?それにしては楽しそうな顔を浮かべて……やっぱり学祭が楽しみなのか?」
「それもあるけれど、それよりも今は、和弥が横に立っていられるのが、幸せ……かな」


頬が少し赤くなり、恥ずかしそうに蓮は笑みを浮かべる。
俺はその様子を眺め、?を浮かべる事しか出来ない。


「良く分からんが、とにかく仕事だ。どこの見回りするんだ?」
「ちょっと待って………えっと、まずは先生達の出し物、たこ焼き屋さんね」


資料を開きながら、蓮は俺に向かって言い、俺も自分の手元にある資料で
行われている場所、参加している先生達の名前など確認する。今回の先生の出し物
たこ焼き屋に参加する先生の名前は……


「あれ、伝馬先生。何時の間に生徒会の人間に?たこ焼き作るの
手伝ってもらおうと思っていたんですけど……」


中に入るとそこにはたこ焼きを作っている伊織先生のお姿が……となれば、いつもの展開で


「伊織。試作でバナナチョコたこ焼き作ってみたんだけど……あら?伝馬くん。なんでここに
それも生徒会の腕章なんて、生徒会顧問とかじゃ無かったわよね?」
「伊織……スーパーデラックスアルティメットたこ焼き作ってみたんだけど……試食を……
あれ?なんでかーくんがここに?それも偉そうなもの……付けて」


予想通り奥から橘先生、葉月先生の姿が現れる。
先生達……一言、言いたい!バナナチョコって……中がバナナじゃ!たこ焼きじゃない
でしょうがぁ!!それにスーパーデラックスアルティメットたこ焼きって何?
一昔前の必殺技ですか!?


「馬鹿にするなら……かーくんにはハバネロ入りのたこ焼きを……」
「すいません。俺が間違ってました、お許しください」


高速のスピードで謝った。陰口は良くないね。


「とっ、とにかく!生徒会から見回りに来ました。周りは眺めた所、異常や問題はないですね
何か困ったことや、こうして欲しい点は無いでしょうか?」


埒があかないと思ったのか、会話に入り込む込むようにして話を始める蓮
その姿は生徒会長、上に立つ者として堂々、悠然とした佇まいであった。


「はい、大丈夫です。せっかくなんで食べていきませんか?蓮さんも伝馬先生もお一つ
お店の味を確認しておくことも一つの仕事だと思うので」


蓮の言葉に対し、伊織先生はいつものようにテンポで返し、たこ焼きを食べることを
進めてくる。そう言われたら、断る理由も無いため、俺達は一つ貰い、伊織先生が作った
ノーマルのたこ焼きを口へと運ぶ。
大粒のたこ、カリッとした表面、たこ焼きに詳しい訳ではないが、確実に美味しいことは
明らかで、蓮もビックリしたような顔で口の中に入れた、たこ焼きに感動している。


「満足いただけたようで……それじゃあ」


そう言って、なぜか伊織先生は爪楊枝に刺された、たこ焼きを俺に渡し


「……じゃあ、私にも食べさせてくださいね!」


そう言い、俺の目の前で笑顔を浮かべる伊織先生
……えっ?どういうことですか?


「なっ、どういうことですか!?伊織先生!」


横にいた蓮がいち早く立ち直り、それに釣られて動きが止まっていた俺含め
橘先生、葉月先生が文句を伊織先生に向けて叫ぶ。すると、伊織先生は弁解するように


「だってタダでたこ焼き食べさせてあげたので、私もお礼に伝馬先生に食べさせて
もらおうかな〜って思いまして」


理屈が通ってんだか、通ってないんだか微妙な発言を飛ばす。


「と言うことで、あ〜ん♪」


周りの文句も無視し、俺の持つたこ焼きへ口元を近づけていく伊織先生
俺はどうすればいいか分からないまま、その状況のまま目の前でたこ焼きが伊織先生の
口の中に入るのを眺め……そこで唐突に横から俺の腕を掴むような痛みが
発生し、気が付くと……


「なっ、なんで私のたこ焼きを蓮さんがぁ!?どうしてですか〜」


たこ焼きは横にいた蓮の口へと自然に……いや、意図的に入り込んでいた。
呆然とする中、顔を真っ赤にし黙り込む蓮、そして本当に悔しそうに文句を言い続ける
伊織先生の姿が瞳の中に映りこみ、蓮はようやく口に入れた、たこ焼きを食べ終わった所で


「せっ、生徒会長権限です!!」


そう叫び、俺は蓮に引っ張られるようにしてその場を後にした。


2-C教室内
俺は後ろから突き刺さる刃物のような視線を感じながらも、どうすることも出来ず
周りに視線を向けることしか出来なかった。
先生達のたこ焼き屋を出た後、俺達が向かったのは我がクラス2-Cの教室であり
俺達のクラスの出し物と言うのは……


「お帰りなさいませぇ!ご主人様っ!」
「おっ、お帰りなさい……ませ。ご主人……様」
「おかえり♪ご主人様!」


入り口を開くと、そこには飛鳥、朝倉、芹澤の3人がメイド服姿で俺達を迎え入れてくれた。ここまででもう、皆さんお判りであろう……
我がクラス2-Cの出し物は、今流行りの喫茶店、メイド喫茶である。


「どうこの衣装?カズちゃん、可愛いでしょう?」
「どうだ?伝馬氏。おかしい所はないか?こんな格好したことないから
どうにも落ち着かなくて……」
「大丈夫♪凄く似合ってるよね?カズくん。モチロン私も、だよね?」


3人はそれぞれの反応を見せながら、俺に対し感想を求めてくる。
衣装は芹澤を筆頭に準備をしたもので、どこぞの店の衣装ではないのか?そう思うくらい
凝った衣装で見ている俺も感心してしまう。元々は普通の喫茶店の予定だったのだが
我がクラス男子の純粋なる(?)結束力により、反対していた女子を押しのけ
このメイド喫茶と言う状況を作り上げた。最初はどうなることかと思っていたが
意外と女子も衣装作りや衣装を着てみたりするなどを始めると盛り上がり
今となっては男子よりも積極的に準備を行っている節がある。
教室の隅を見つめると、感涙している男子達が続出しており、正直少し不気味だが
その気持ち、分からないでもないという男としての同感を俺は感じていた。


「……うん。良いんじゃあないか!皆良く似合っていると思うよ」


俺は3人に視線を向け、言葉を述べる。すると、3人は嬉しそうな笑顔を浮かべ
対象的に横にいる蓮は……


「そうなのね。和弥はメイド服好きなんだ……私だって着れば和弥くらい
すぐにメロメロに……」


と明らかな負のオーラを込めた視線と言葉が送られ、俺の心を攻め立てる。
一刻も早くここから脱出を!!そう思うのだが……


「じゃ、じゃあ俺達はこの辺で……」
「えっ!?もう行っちゃうのぉ?もう少しゆっくりして行きなよぉカズちゃん!」
「そうだぞ。少しは接客の練習台になってくれてもいいではないか」
「大丈夫、大丈夫♪後ろに鬼がいたとしてもゆっくりするのが、喫茶店でしょ?」


3人に連れられるように椅子へと座らされる。
後ろからは見なくても分かるほどの蓮のオーラがはっきりと……
気づいているのかいないのか接客を始める飛鳥と朝倉
……おい、芹澤!笑ってないで気づいてるなら助けてください!!
どうすることも出来ず、1分が数時間に感じる思いの中


『……こちらメイン会場。問題が発生したので至急応援お願いします!』


この連絡が空気を変えた……
後ろポケットしまわれていた、トランシーバーから緊急の連絡が入り
さっきまで蓮とは違い、顔がいつもの生徒会長の顔へと戻る。


「……和弥、行くわよ!」
「了解!皆、後は頼んだ!」


俺達は飛び出すように、2-C教室からその場を後にし、方向を外に設置された
メイン会場へと足を向けた。


「状況は?どういう状況か教えてくれない?」
「「「……会長!!」」」


到着するのと同時に近くの生徒会役員に声を掛ける蓮
さっきまで不安に駆られていた生徒達の顔が一気に安心した顔へと変わる。


「ライブ用の電気系の調整を行っていたのですか、いきなり落ちてしまって……それ以外にも
もう届いてなくてはならない物品が来てなくて、こんな時に限って人も少なくて作業が大幅
に遅れてしまっています」


メガネを書けた少年が蓮の元へ近づき、現状の問題点を蓮に伝える。
腕章には「生徒会書記」そう書かれている。


「そう……なら、電気系は業者を呼んで。いつもしてもらっている所ならすぐに来るから。
それに、物品はもう一度業者に連絡、念のためにもう一つの頼む予定だった所に予約を。
人は、もう準備を終えたクラスが1年と3年に二つあったはずだから、協力を要請。これで
行きましょうか。分かった?皆」


蓮の行動に、発言に生徒会役員すら纏めれなかったこの状況を一瞬にして
空気を変えた。皆の目には蓮の考えが行き渡り、一致団結する思いが戻ってきている。


「それじゃあ作業開始!」


その言葉と共に皆が一斉に散り、作業を始めていく。
さっきまで苦労していた集団だとは思えないほどの、手際のいい作業ペースだ。
それ以外にも自分のやるべきことに気づき、皆が積極的に行動を開始し始め
間違いなく、蓮の一言がすべてを変えた。そう、俺は思った。それと同時に……

もう蓮は、俺の親友は昔とは比べ物にならないくらい強くなった

それを俺は嫌というほど感じていた。
昔は俺の後ろばかりを歩いてきた弱々しく、人見知りな性格だった蓮
だけれど俺は、それではいけない。蓮はもっと上に立てる。
そう、ずっと俺は思い続けていた。それは間違いではなく、俺の予想すら遥かに
上回るくらいの大きな器を持った、リーダーシップ性、カリスマ性を持った人物であった。
そして俺との約束を、あの時立てた2人だけの誓いを守ってくれた親友に俺は
溢れ出る嬉しい気持ちを隠すことが出来ない。綾月蓮は、俺の誇れる我が親友は
今、眩いくらいに輝いていた。


「和弥!一人突っ立ってないで、手伝うわよ!こっち来て」


ボーっとした頭の中、蓮の声が俺の脳内に響く。昔の思い出に浸って
少し懐かしい思い出を思い出していたようだ。俺は足を一歩踏み出し……


「わかった。今、行くよ!」


蓮の元へと歩を進めた。


生徒会室
今日の学園祭の予定していた準備はすべて終了し、私達は生徒会室で暫しの
休憩を取ることにした。そして私、綾月蓮は今、和弥の疲れを癒すために飲み物を買い
生徒会室に帰ってきた所だ。両手には温かいコーヒーが二本、私が砂糖入りで
和弥がブラックだ。和弥は和菓子は好きだけれど、基本的に甘いものが好きではなく
コーヒーはいつもブラックしか飲まない。それに疲れたときに飲む、飲み物はコーヒーと
自分の中で決めている。それを知っているのも私だけ……
そんな微妙な優越感に浸りながら、私は生徒会室の扉をゆっくりと開く


「は〜い!お疲れの和弥のためにコーヒーを買ってきてあげた………」


そこまで言葉を述べた所で、私は言葉を切った。
視線を向ける先には、和弥の姿……椅子に持たれかかったまま、熟睡している和弥の姿あった
音を立てず、目を覚まさせないようにゆっくり和弥に近づくと
小さないびきが聞こえてくる。仕方が無いことかもしれない。
あれだけの重労働をやってのけたのだ。運動をあまりしない、和弥にとっては
とてもハードなことであったのだろう。


「それしても、本当に可愛い寝顔……」


勝手に笑みがこぼれてしまう。その寝顔は17歳という年齢とは思えないほど
子供らしく、それでいてあどけない……その顔を見てしまったのが悪かったのかもしれない。
私の中に一つのある考えが思い浮かぶ。


「えっ?でも、和弥が寝ているのに……そんなことしちゃいけないわよね?でっ、でも!
このチャンス逃したら、何時になるのか……」


私の中の悪魔と天使が闘う。良心と好奇心がひしめき合う。
そして、私は結局の所……


「いっ、今は文化祭の準備期間!だったら生徒会長権限って言えば、大丈夫!」


と言う、いつもの自分とは思えない子供らしい理屈で意見を纏める。
和弥の横に自分の椅子を並べ座り、コートを布団代わりにし、和弥にもたれ掛かるようにして
私は同じように目を瞑った。この行動に顔が真っ赤になるほど恥ずかしい思いが襲ってくるが
それ以上に和弥のそばにいる、温かさを感じていることに言い知れない
思いが満たされいく。
そして、和弥が起きているときには言うことの出来ない、己の思いを和弥に向けて伝える。


「和弥……大好き。こんな時にしか思いを伝えられない、小心者の私を許してね」


強い思いを込めながら……






更新完了……今回はこの小説の一番人気キャラクター蓮メインの話です!!感想やメールなどで蓮を活躍させてくれ!と言うメールたくさん来て、作者として嬉しい限りなのですが、他のキャラも見てくださいね?感想、評価お待ちしています!!ちょっとしたことでも作者の参考、やる気UP繋がりますので、よろしくお願いします!!






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