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先生は17歳!?
作:takuto



第58話因縁、再燃、再び


強豪クラス2-Aの勝利
その出来事は2-Cクラス内だけに限らず、扇山高校生徒全てに大きな衝撃をもたらしていた。
2-A……それは扇山高校きっての優秀クラス
クラス内成績は常にトップに君臨し、レクリエーション大会を含む
勝負事が絡む行事は常に上位はたまた優勝を掻っ攫っており、非の打ち所のないクラスとして扇山高校内では有名な話であった。
だからこそ今回のレクリエーション大会……特に無敵を誇る生徒会長、綾月蓮が所属する
ドッジボールチームは優勝間違いなしと誰もが信じて疑わなかった。
しかし、確信にも近い予測は全校生徒の予想を大きく裏切り
脆くも崩れ去る結果となってしまった。

変わり者揃いで有名なクラス2-C相手に……

この出来事がきっかけになったのだろう
この後、俺達2-Cドッジボールチームの快進撃が始まった。
優勝候補である1年、3年のクラスが俺達の行く手を阻んでくるものの
強敵である2-Aを倒したという精神的の余裕のためか
一人、一人の持ち味、俺が考えた作戦全てが面白いようにかみ合い
圧倒的な勢いで目の前に立ちはだかる敵をなぎ倒していき……


「ピ――――ッ!1-E伊藤アウト!試合終了、勝者2-C!」


2-Cの応援、歓声に包まれる中……ついに決勝まで俺たちはコマを進めた。


「すごいよぉ!カズちゃん。私ずっと大声上げて応援しちゃった!」
「まっ、まあ私達のクラスに勝ったんだから決勝までは行ってもらわないとね」
「和弥さんお疲れ様です。なんだか今日はすごくカッコいいです!いっ、いや、普段は
かっこ悪いって訳ではないんですけれど、今日は一段とかっこよく見えるっていうか……」
「まさか決勝まで行くとわな。誰もこんな風になるとは予想もつかなかったぞ」
「本当にまさかの事態だよね♪でも、これはこれでカズくんの普段見れない姿
見られたからよかったかも♪」


昼食時間
俺達ドッジボールチームは見事決勝進出を果たすことに成功し
対戦相手が決まるまで、ひと時の休息……いつもの5人と一緒に
テーブルを囲んで、昼食を食べているところだ。
予想外の2-Cの活躍っぷりに同じクラスである飛鳥、奏、朝倉、芹澤はもちろんのこと
負けたはずの蓮まで嬉しそうに午前中の試合の話で盛り上がっている。
俺自身も和菓子のためとは言え、こうやって行事ごとで活躍して
お世辞ながらも、カッコいいなどと言われるのは気分は悪くない。
それに日本に来て、アメリカとは違う健康的な生活をしていたためか
自分が思っているよりも運動能力が飛躍的に上がっており、初戦こそセコイ手段で
勝ち上がってきたものの、その後は少数ながらも敵にボール当て
チームに貢献することもでき、ある種の満足感を感じていた。

すると、校内放送からドッジボール決勝のコールが聞こえてくる。
場所は体育館ではなく、グラウンド……決勝専用の特設コートで行われるようだ。

―――準備は整った

俺は椅子からゆっくりと体を上げ、決勝が行われる場所
グラウンドの特設コートへと足を向ける。


「後は決勝のみ……カズちゃん!頑張ってよぉ!」
「そうですね。ここまで来たら、2-Cに優勝トロフィーを持ち帰って欲しいです」


飛鳥と奏が俺に向けて決勝戦のエールを送ってくれる。
もちろん俺もそのつもりだ。ここまで来たなら優勝……それ以外に求めるものはない


「……ああ、ここまで来たんだ。チーム一丸となって勝ちにいくよ」


あまり感じることのない、勝つということにこだわる思い
長い間俺の奥底に沈んでいた勝ちにこだわると言う感情、勝ちたいと思う気持ちが
今、止め処なく俺の心の奥底から溢れている。


「でも、和弥。いくらチームの調子がいいからって油断は禁物……応援してるから!」


蓮からは経験者らしい、的の得たエールを送ってくれる。


「わかってるよ、蓮。絶対勝ってくるから!」


俺達2-Cは蓮のクラスに勝った。それだからこそ、蓮の分も俺は頑張らなくてはならない


「私も特設コートに直接行く。私が応援するんだ!負け許さないぞ、伝馬氏」
「カズくん♪この際だから面白い姿は期待しないよ。どうせなら、とびっきり
カッコいい姿……期待してるから♪」


いつもは俺を弄る対象としている朝倉と芹澤も激励のエールを送ってくれる。


「まかしておけ。カッコいいかは分からんが、意地でも勝ちに行くよ」


俺に送られた5人の言葉……それを俺は一心に受け止めて
決勝の舞台へと歩を一歩、一歩進めていく。
これが最後の戦い、優勝という栄光への最後の壁……
今、俺はグラウンドいう名という戦場に足を踏み入れていく。

……さぁ、いざ!戦場へ

優勝と言う言葉……やはり、そしてなにより和菓子を求め
俺は今、戦場へと降り立った。


因縁……それは前世から定まっている運命、宿命
初戦同様、定められたかのように物事が進むことがある。
レクリエーション大会……それもドッジボール
最初からおかしいと薄々感づいてはいた。
こんな、またとないチャンスにあいつらが何もしないわけがないと
絶対何かしでかすに決まっている……それなのにあいつ等は
この決勝戦まで姿すら見せず、音沙汰なしであった。
しかし、その答えはグラウンド、特設コートに来てすべてを俺は理解した。
そう、この時を奴らは待っていたのだと……
決勝と言う大舞台で奴らは俺、伝馬和弥を倒そうとしていたのだと
グラウンドに悠然とした姿で立っているその人物
後ろには数十人いるであろう同じ服装、同じ装着物を付けた怪しげな集団。
決勝の相手……それは飛鳥親衛隊会長で有名なあのお方


「待っていたぞぉぉおぉ!!伝馬和弥!」


須藤太郎率いる2-E組の姿がそこにあった。
2-Aの蓮と同じく、春季レクリエーション大会2回戦と同じ対戦カード
それが決勝の、2-Cの相手であった。


「久しぶりだなぁぁ。伝馬和弥」


大きく一歩を踏み出し、俺との距離を縮める須藤氏
身長が2メートルを越えてるため、完全に見下ろされている状況だ。


「本当、久しぶりだな。予想はしてたとは言え、まさか決勝で当たるなんてな……
須藤、まさか予測していたのか?俺達2-Cが決勝に来るのを?」
「そんなぁぁことを予測できるわけない。ただぁ、我が敵伝馬和弥がこのレクリエーション
大会にドッジボールで参加することはぁぁ部下の情報から得ていたがなぁ。しかしぃ、まさか
決勝で合間見えるとはぁ神も我を見捨ててないと言うことかぁぁぁ!!」


相変わらずの巻き舌、そして暑い口調は変わらず
秋に突入してグラウンド上は少し肌寒さを感じるのだが、須藤は季節感無視の状態で
額に汗を浮かべ、叫び続けている。


「レクリエーション大会……覚えているかぁぁ我が敵、伝馬和弥。お前が俺と闘ったぁぁ
春のバスケの試合のことぉぉぉ」
「……ああ、覚えてはいるが」


春季レクリエーション大会。俺と須藤は一度対戦を行っている
その時の競技はバスケで、俺達2-Cが勝利を収めたはずだが……


「そうあの時、俺はぁぁお前に負けた!!それも屈辱的すぎる敗北でぇぇ!!」
「でも、確か俺の記憶ではお前がバスケという競技内で殺しに掛かったよう―――」
「お前のことなどは知らんわぁぁぁ!!とにかくあの時の屈辱、そして積年の恨みぃぃ!
それを晴らすため、俺はお前をぶっ潰す!!」


見下ろす形で俺に鋭い視線を向けてくる須藤
さすがこの歳にして厳ついおじさん顔、迫力満点である。
普段の俺、いつも俺ならば逃げ出すこと間違いのだが……


「そうか須藤。ならかかってこいよ!俺だって優勝が掛かってるんだ!!
本気で、全力を持って俺はお前を、2-Eを倒す!!」
「……っ!いっ、いつもと迫力が違う?」


いつもとは違う俺の迫力に、須藤が一瞬体を引く。


「ピ―――――ッ!」


決勝を開始する笛の音がグラウンド全体に響き渡る。
睨みあいを続けていた俺と須藤は笛の音ともに視線を外し、チームメイト達が
集まっているコートへと足を向け、そこには俺と一緒に戦い抜いた6人戦士が
堂々とした様子で俺に視線を向けている。


「……伝馬、ついに決勝だな。もうやるしかないようだ」


谷川がゆっくりとかみ締めるように言葉をもらす。
俺を含め6人の体は激戦のために体中は傷だらけになっており
特に2-A戦の時には途中離脱者が出るかもしれない事態だったときもあった。
しかし、諦めることなく俺達2-Cドッジボールチームは決勝へと勝ち進んできた。
後は皆も同じ気持ちであろう……見えているのは優勝という二文字のみ
全力で目の前の敵を倒すのみだ!!


「あと一勝……頑張ろうよみんな!」
「ここまで来たら勝つしかないですよね。なんのためにやっていたか分からなくなりますし」
「もう優勝!それしか俺には見えない……絶対勝つ!!」
「成り行きでここまで来たけど、たまにマジになるってのもアリだよな」
「伝馬!色々あったがあと一試合、あと一勝だ!体ボロボロだが、意地でも勝ちに行こうぜ」


一人、一人俺に向けて言葉を送る。
チーム内が今、この瞬間一つになれた。そんな気が俺の心の中で感じられる。


「谷川、清水、五十嵐、池田、関、そしてすず……いや、佐藤!」
「……ちょっと待て。近くはなったが俺の名前は――」

「よし、みんなあと一勝!頑張るぞ!!」
「「「「「「オォォォ――――!!!」」」」」」」


6人の叫び声がグラウンド内にこだまする。
外だと言うのに耳に響くほどの歓声……何かまた訴えるような佐藤の声を乗せて
レクリエーション大会ドッチボール決勝が幕を開けた


ドッチボール決勝
それはまさしく総力戦であった。
どちらのチームも2-Aなどのようにずば抜けた運動能力を持つ人物などおらず
拮抗した試合展開が続いていく。
両チームの戦力は全くの互角……その中でも谷川、須藤は運動能力が他の人達
よりも抜き出てるため、その2人を主軸に両チームは戦いを組み立てていった。
作戦と技術面に力のある2-C、ただ単純に力のみでゴリ押していく2-E
コートを囲む歓声、応援の声……時間は流れるように過ぎていき
そして………


「くらえぇぇぇぇ!!」
「………っ!しまった!」


谷川が須藤から放たれたボールを捕りそこね、ボールが地面へと落ちていく。


「ピ――――ッ!2-C谷川アウト!」


審判にアウトを告げられ、悔しそうに顔を俯かせて谷川は外野へと歩いていく。
それもそうだ。谷川のアウト……それはこちらのチームの主軸を失う
危機的状況になったということなのだから


「グッフフフフフッ!!あとそちらは2人……それもぉぉ主軸である谷川はもういない」


二メートルの巨人がニタリとモンスターのような笑みをこちら向け
今の状況に対して、俺達にプレッシャーを掛けてくる。
相手2-Eの内野は須藤一人、こちらの内野は俺、佐藤の2人が今の現状だ。
先ほどまで主軸である須藤を基点に須藤に向けて攻撃を仕掛けていたのだが
まさかの須藤退場で有利だった戦況は一気に2-C劣勢の状況に変わってしまった。
須藤の球は蓮の球ほどではないが、俺と佐藤ではまともに受け止めることは難しい……


「くらえぇぇ!!伝馬和弥!!」


勢いよく放たれた球は俺に向かって真っ直ぐ飛んでくる。
それを俺はなんとか寸での所で……かわす。


「……チッ」


須藤の球はなんとかかわすことは可能だが、取るとなると難しく
逃げることしか出来ない。完全に防戦一方だ。
それに待つ暇を与えないつもりなのか、内野の須藤と外野の人間にずっと狙われている
状況が続き、頭を使い作戦を練ることすら叶わない。


「……っく、くそ!よけることしか出来ないのか!」


俺は止め処なく投げられるボールを避けながら、苦言を洩らす。
元々少なかった体力だ。もう残り少なく、あと何分も避けてられない。
それは佐藤も同じのようで体育系の部活に所属してると言え、もう長くは持たないであろう。
………負け。そんな言葉が脳裏を過ぎる
頭を振り、邪念を振り払おうとしてもその考えが俺の思考から離れない。
もう……ダメなのか?
そんなマイナスの感情まで出始めた、その瞬間


「……伝馬!俺はバレーをする。そしたら伝馬、お前はサッカーをしろっ!」


唐突に佐藤が叫ぶように意味不明な言葉を放った。
佐藤がバレー?俺がサッカー?
ボーっとした頭の中、佐藤の言葉がリフレインするように頭の中で何回も再生される。
バレー、サッカー、バレー、サッカー、バレー、サッカー………


「………っは!まさかお前!」


俺はある一つの仮説に行き着いた。
それもかなり強引な、突拍子もない一つの結論を……
佐藤が俺が今、思っている考えと一緒である可能性は正直低い気がする。
一般的には思いつかないし、なによりこれを行うには……


「どりゃぁぁぁ!!」


須藤から渾身とも取れるボールが勢いよく飛んでくる。
考えている暇はない!俺は佐藤の行われるだろう作戦のため、持ち場へ移動する。
ボールは力を入れすぎたためか、真っ直ぐ飛ばず、狙う予定であっただろう
佐藤の右側に向けて、勢いよく突き進んでいる。
この状況では誰にも当たることなく、外野へと飛んでいく
そう普通は思う状況……しかし、その時!!
佐藤は自ら体をボールの来るであろう方向へを持っていった。
完全なる直撃コースへ


「……伝馬、あとは頼んだぜ!」


佐藤はそういい残し、バレーのレシーブ体制に入る。
そして、ボールが弾丸のごとく佐藤の元へ飛んでいき……


「……グッ!!」


球の勢いに押され、弾き飛ばれる。しかしながら


「佐藤、よくやった!!」
「最後までそれかよ!!」

佐藤に当たった球は真上に上がっており、ゆっくりと地面へ向けて落下しつつあった。
まさに佐藤が思い描いたであろう状況がまさしく今、目の前で起きている。
俺は落下するボールに合わせ、足を後ろへと引き
サッカーで言うシュートの体制に入る。
そう、佐藤が言っていた作戦……それは足で蹴って相手に当てると言う方法
足の力は手の力に比べて何倍もの威力を持つ。
当たるかどうかわからない。一発勝負のギャンブル
その一球に思い込めて、俺は腰の辺りまで引き付け
出せる力すべて使い……渾身の蹴りを放った!!


「いっ、いっけぇぇぇぇぇ!!!」


放たれた俺のシュートは須藤目掛けて真っ直ぐ飛んでいく。
スピード、距離感……なによりも意表をついた攻撃
その球は理想的な放物線を描き……


「なっ……グッ!!」


須藤の腹部へと華麗にゴールを決めていた。


「ピ――――ッ!2-E須藤アウト!優勝、2-C!!」


その言葉を聞いた瞬間、俺の意識はゆっくりとフェードアウトしていった。


「……ぅん?」


意識がゆっくりと戻っていき、目の前の景色が真っ暗な状態から
徐々に明るさを持っていく。


「……あっ、カズちゃん!目覚めた?」


そう言って、俺に話しかける少女……飛鳥のようだ。
視界、嗅覚、思考。止まっていたものがゆっくりと正常の回転へと戻っていく。


「やっと目を覚ましたようだな。おはよう、今日のヒーロー」
「ヒーローって言っても、勝ってすぐにその場で寝ちゃうなんて
ちょっとかっこ悪いヒーローだけどね♪」


朝倉と芹澤の顔が見える。よく考えるとここは保健室のベットの上
さっきの芹澤の言葉から考えるに俺は試合終了後に疲れのためか
意識を手放してしまったようだ。


「かっ、勝った……のか?」
「そうですよ、和弥さん。和弥さんの力で勝利に導いたんです」


近くにいたのか奏も顔を出し、俺に向けて言う。
勝った、勝ったのだ。俺は今頃になっていわゆる勝利の美酒に酔いしれている。
感じたことのない達成感、満足感。それが俺を包み込み今までにない
嬉しさを感じていた。いや、初めてではない気がする。
昔、いつかはわからない。だけれど、確かに感じたことのある
このやり切ったと言う達成感。一体どこで、いつごろ、どうやって……………


「……あっ、優勝賞品!」


考えているうちに今度は優勝賞品である和菓子セットのことが
俺の頭の中に浮かび上がって来た。


「優勝賞品?」
「そう、一位のクラスがもらえる賞品!!」


飛鳥が首を傾げている中、俺は急かすように優勝賞品について
ここにいる4人向けて聞く。途中からは勝ちにこだわり、忘れてはいたが
元々はこのために頑張っていたのだ。その輝かしい和菓子の姿を一目でも早くみたい。


「えっと、それは和弥さん和菓子セットのことですか?」
「そう、それのことだ!」
「それなら今、箱が私の手元にあるが……」


そういって朝倉が取り出したのは、玉手箱のような模様に描かれている
割かし大きめの箱が俺の前に姿を現す。


「そっ、それが和菓子セット……」


この中に入っているであろう和菓子のことを考えると嫌でもテンションが上がって来る。
俺はゆっくりと箱を開き、中の桃源郷を拝もうとすると……


「……あれ?なっ、中身がからっぽなんだけれど」


中を開ければそこには、和菓子のパラダイスなど広がってはなく
まさしく何もない、からっぽの状態が……


「えっと、申し訳ないんだけれど……さっきクラス内全員で全部食べちゃった♪」


その言葉を聞いた瞬間、俺の意識はまた遠く……遥か彼方へと飛んでいった。



なんと書き終わりました。秋季レクリエーション大会編……正直長かった。やっとのことで次の話へと進むことができます!!つうか展開がかなりゆっくりになってるので少し早くしようかな?とか思っています。感想、評価お待ちしております!!どんな些細なことでもいいので感想、評価、メールなどお待ちしています!!






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