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先生は17歳!?
作:takuto



第57話親友であるが故に


レクリエーション大会開幕
体育館内が生徒達の応援、歓声に包まれる中
作戦会議終了後、俺は体育館の壁に寄り添いながら、自分のクラス名が
コールされるのを一人、黙々と待ち続けていた。
目の前では女子の試合が行われており、クラス応援かはたまた女子の姿でも
見に来ているのか、男性の姿が多く見える。
しかし俺の感心は目の前の試合などにはなく、今日の試合……
詳しく言えば、優勝賞品のことで頭がいっぱいだった。それしか考えてないと
いっても過言ではないだろう。
こうなってしまった理由……それはさきほど葉月先生から放たれた一言、衝撃すぎる一言
その一言は氷点下だった俺のやる気を一瞬にして灼熱の炎へと変換させた。
何しろ葉月先生は俺に向けて……


「今回の優勝賞品は和菓子セット……だって」


と言い放ったのだから……
これだけ聞いたら、間違いなく皆の気持ちは「えっ?それだけ?」と思うだけなので
少し解説を加えようと思う。
そして、内なる心の中で高らかにカミングアウトしよう!
俺、伝馬和弥は生粋の和菓子好きであること!!

――――和菓子

それは日本が生み出した芸術品とも言える代物
多彩な種類……一つ、一つに込められた日本の伝統、歴史
俺の頭の中にはその三文字の言葉はどんな言葉よりも甘美で美しく
羊羹、最中、饅頭、きんつば、どら焼き……
代表的な和菓子が俺の頭の中を縦横無尽に駆け抜けていき
脳内を多彩な和菓子が埋め尽くす。
そう……だからこそ今日は何があっても、どんなことがあろうと勝たなくてはならないのだ!
個人の感情、私欲。そう言われて仕方がないだろう……
それでも俺は優勝賞品が欲しい!なにが何でも欲しい!
俺はただ単純に和菓子が食べたいからっ!
そのためにクラス全員を集め、全員に作戦を指示するように見せかけて
俺の所属しているドッジボールメンバーをスポーツの出来る
優秀なメンバーに変え、揃えることにも成功した。
後は本番、力の限りやるだけである。
元々乗りやすいクラスなので、俺の無理矢理とも言える気合の入れ方で
メンバーのやる気は嫌でも上がっていることであろう。


「………っちゃん……ズちゃん、カズちゃん!!」
「……うん?」


遠くへと飛び去っていた精神が飛鳥の言葉で現実世界へと戻ってくる。
やっ、ヤバイ……和菓子のことを考えすぎて、軽くトリップ状態に入っていたようだ。


「カズちゃん!ボーっとしてないで、もうコールされてるよぉ」


飛鳥に言われてコートを見てみると、チームのメンバーは俺の除いて全員が揃っている。
その様子を見て、俺はゆっくりと体を起し、コートへ向かって歩き始める。


「頑張ってね〜カズちゃん!」
「おっ、応援してます!頑張ってください!」
「期待はしていないが、やるだけのことはするんだぞ!伝馬氏」
「みんなが爆笑するような姿、期待してるからね♪」


2-Cのクラスの女子……飛鳥、奏、朝倉、芹澤が俺に向けて声援を送ってくれる。
………一応、約二名の言葉は遠まわしの応援の言葉としてとっておこう
コートへ向かう間、ラブコメ漫画などに良くある特有の男子生徒たちの妬み、嫉妬心のような
鋭い視線が四方八方から飛んでくるものの、今の俺はいつも通りの雰囲気を装いながらも
マグマのように沸々と燃え盛る気持ちを内に潜めており、いつものように怯えたり
慌てたりするような行動は取らない。
今日の俺は一味違う。そう自分で思えるくらいに信じられないほど高ぶる思い
溢れ出てしまいそうな熱い、ギラギラとした感情を感じていた。
コートの中心から右側、俺の所属するチームメイトのいる所まで歩を進め……止まる。
そして、視線をメンバーである7人に向けて一言


「……勝ちに行くぞ!」


7人の生徒、メンバーに向けて言い放った。
すると応えるように生徒達も俺に向けて、首を縦に振り
一人の生徒が一歩前に出る。


「伝馬……どういう理由でこんなにやる気があるのかは俺には分からない。しかし、俺たちも
やるからには全力で行く!伝馬の期待に応えるためにもなっ!」


笑顔で、皆の気持ちを代表するように俺に向けて言葉を送る。
皆のやる気が否応にでも俺は感じずにはいられない。


「………鈴木」
「いや、俺はさいと――」

ピ――――ッ

試合開始の合図である笛の音が体育館内に響き渡る。


「……よし、みんな行くぞ!」


試合前の最後の言葉を7人に向けて放ち、俺はチームのリーダとして
先頭でコートの中心へ歩を進める。
体育館内に響き渡る歓声、応援の声……そして鈴木の何か訴えるような
叫び声に包まれながら、2-Cの一回戦
俺にとっての長き和菓子への道のりの一歩が今、踏み出された……


しかし、俺達2-Cはいきなり、大きすぎる壁にぶち当たることになろうとは
俺も予想だにしない事態であった。
……いや、予想はしていた。考えたくなかっただけなのかもしれない
男子の種目はバレーとドッチボールの二種類
それに一回戦で当たる確立など、かなり低い確率だ。
だけれども、時としてこの世界は定められた道のごとく
まさしく偶然と言う名の必然……見えざる大きな存在によって
操られるように物事が進んでいくことがある。
まさしく今がその時なのであろう。
目の前に存在する圧倒的な存在……数ヶ月前に受けた屈辱的な敗北が
俺の頭の中に浮かんでは消えていく。
そう……今、俺の目の前には対戦相手である、あの……


「また和弥と対戦するなんて因縁じみたもの感じるわね」


あのスポーツの化身と呼んでも過言ではない、完璧超人である
我が校生徒会長にして、親友である綾月蓮が堂々とした姿でコート内という
狭い空間で風のように舞っていた。
まさかの春季レクリエーション大会決勝と同じ形が早くも初戦でぶつかってしまったのだ。
そして今、俺たちは初戦にして大ピンチを迎えている。
それも蓮一人に対して……
コート内には俺たち2-Cは3人、蓮の2-Aは蓮一人のみ
客観的に見れば、ピンチと言うよりはチャンスと言った方がいい場面なのだが……


「……ふんっ!!」


コート内にいる体つきのいい、2-Cでも1、2を争う力を持つ谷川が
蓮に向けて、渾身の力でボールを放つ。


「生徒会長!これなら取れまいっ!」


谷川の言うとおり球のスピードは尋常ではなく、真っ直ぐ蓮の元へ向かっている。
取れない……2-Aの人間すらそう思う中、蓮は……


「……まだまだだね」


信じられないことが目の前で起きている。
誰が見ても、直撃必死な谷川の球。それなのに蓮は……受け止めていた、それも片手で。
体育館内が信じられない光景に一同、固まったまま動くことが出来ず
越○君が始めてツイ○トサーブを放ったような静まり返った光景が目の前に広がる。


「谷川君、すごくいい球だったわよ。でも、私にの球にはちょっと届かない……かなっ!」
「……あっ、谷川!避けろぉぉ!!」


俺はいち早く遠くへと行っていた意識を取り戻し、谷川に向けて声を送る。
それと同時に蓮からさっきの谷川とは比べ物にならない球が
谷川自身に向けて飛んでいき


「えっ?……グフッッ!!」


俺の叫び声もむなしく、谷川はボールに直撃し吹き飛ぶように
飛ばされ、その場へと倒れこむ。


「ピ―――ッ!2-C谷川アウト」


審判にアウトを告げられ、スタッフに運ばれるように外野へと連れて行かれる谷川
こうして2-Cは残り2人……俺と鈴木のみになってしまった。


「……おい、伝馬。こりゃヤバイぜ。何か手あるのか?」


鈴木が険しい顔を浮かべながら、俺に視線を向けて話し始める。
俺の作戦は蓮一人になるところまでは完璧に上手くいっていたのだ。
外野と内野のコンビネーションを利用した連携プレイ、密集地帯を狙い、足を狙った
サイドスローの投げ方……全部が上手くいっていた!それなのに!
全て、すべてが蓮によって狂わされた。
蓮が一人になった瞬間、傷一つ付いてなかった内野陣は蓮の手によって一人、また一人
とあの球よって殲滅されてしまった。
今、俺にはあの球、破壊活動の一貫にしか見えないあれを止める手段は思いつかない。
ピンチまさしく絶体絶命であった。


「和弥、これで和弥を含めてあと2人……絶体絶命な状況ね」


蓮が俺に視線を向け、楽しそうに不敵な笑みを浮かべながら
一歩、一歩俺たちとの距離を詰めてくる。
ボールはさっき谷川に当たった際、弾いて相手の外野に入ったため
今、ボールは蓮の手中に収まっている。
距離を取るため俺は蓮の歩調に合わせ、少しずつ後ろへと下がっていく。


「おっ、おい!伝馬、マジでどうするよ?かなりのピンチだぜ!」


一緒に後退している鈴木が叫ぶように俺を呼ぶ声が聞こえてくる。
考えろ、考えるんだ……一歩ずつ後退しながらも頭の中で俺は思考を張り巡らさせる。
諦めてはいけない、どんな状況になっても!
2-Cのクラス、散っていったメンバー、なによりも和菓子のために!!
しかし、いつまで後ろに下がることは出来ずコート内ギリギリのところまで
自分の足が来てしまった。完璧に追い詰められてしまったようだ。


「和弥……もうこれでおしまい。私達の勝ちよ」


勝利を確信した笑みだ。
確かに後ろには敵の外野、前には破壊神……
鈴木の顔にも諦めの表情が漂っている。
誰が見ても完全なる負けムード一色……しかし俺は、俺の思いは


「蓮、俺はまだ諦めない。最後まで闘って勝つのは俺達のチームだ!」


消えてはいなかった。
まだ俺の心の中には灼熱に燃え上がる和菓子への思いは消えてはいなかった
勝つ!そして和菓子を腹いっぱい食べる!
それだけが俺の思いを気持ちを支えていた。


「……伝馬、お前って奴はどこまでクラスのこと思ってくれてるんだ。おっ、俺
なんか少し感動しちまったぜ」


鈴木の言葉に俺の中の良心が少し痛みを感じ、目を逸らすように視線を前に
蓮の方へと視線を向ける。


「和弥。いつもとなんかキャラ違うけれど、その台詞格好良かったわよ。でも、私は2-Aを
代表として出ている。負けるわけにはいかないの」


蓮がボールを持って左手をゆっくり上へと上げていき
ボールを、あのイ○ローのレーザビームに勝るとも劣らない砲弾を
発射する準備に入っていく。


「だから和弥には私の全力……持てる力全てを使って応えてあげる」


……えっ?全力じゃなかったんですか。蓮さん
あれより速い、それは命に関わる危険が……
そんなことを考えながらも、ちゃくちゃくと砲弾は準備を完了していき


「行くわよ、和弥。止めれるものなら……止めてみなさい!」


勢いよく、発射された。
速い、速すぎる!!
あんな大きな球で野球選手もビックリの剛速球が俺めがけて真っ直ぐ
一寸の狂いも無く飛んでくる。
頭の中に命の危険、羊羹、怪我、ういろう、敗北、最中……
いろいろな思いが頭の中を駆け巡り……そして、俺は


「……ブハァ!!」


俺は咄嗟に手を伸ばし、横にいた何かを引っ張り自分の目の前に引き寄せ

………盾にしていた

いわゆるチームメンバーの鈴木を……
ボールは腹部へと当たり、めり込むように鈴木の腹部に納まっている。


「………」


鈴木は倒れたまま、言葉を一切発しない……まるで屍のようだ。


「……っ!鈴木、鈴木!大丈夫か?目を開けろ!鈴木」


俺は地面に転がっている鈴木に駆け寄り、言葉を掛ける。


「……っく!なっ、なんとかな……っていうかこれはお前がっ……それに俺の名前は――」
「だっ、大丈夫なんだな?それより鈴木、ボールは?」
「ぼっ、ボールはここに……だから何度もいうが俺の名前はさい――ウッ」


ダメージがでかいのか、またうずくまる様に体を丸くする鈴木


「ダメだ!鈴木。言葉を発してはいけない!体に響くぞ、鈴木」
「くっ、体が……だけれど最後に、俺は伝馬に……俺の、俺の名前はさいと……」


そこまで言い残し、鈴木はガクッと倒れ、意識を手放した。


「ピ―――ッ!2-C斉藤アウト」

「鈴木―――――!!!」


俺は鈴木のアウトのコールを聞きながら、力の限り叫んだ。
俺と共に戦った戦士、鈴木の名を……


「……鈴木、お前の仇は俺が取るぜ」


鈴木に渡されたボールを右手に持ち、ゆっくりと立ち上がる。


「仇って言うか、あれは和弥がやったようなものじゃ……」
「黙れ!蓮。俺は敵の言葉などには耳を傾けない」


正直、俺が100%悪いのは十分承知ではあるが、ここは勢いで適当にごまかし
今はとにかく目の前の相手に集中するため、相手に視線を向ける。
蓮……姿は昔とは違い見た目、雰囲気共に女らしくなってしまっているが
正真正銘我が親友、綾月蓮がそこにいる。


「でも、和弥。今の状況はさっきの状況より、和弥の方が不利になったわ。言っちゃ
悪いけれど、和弥の運動神経は皆無。親友である私が身を持ってよく知ってること。
どう見たって勝ち目はないわよ?」


そう、蓮は俺のことを人一倍よく知っている。
運動神経がないことも、特にボールを使うスポーツが苦手なことを……
でも、俺だって蓮のことは人一倍よく知っていた。
だからこそ、俺は突破口を思いついた。
正攻法ではないが、蓮を倒すことが出来る。俺だからこそ思いついた唯一の方法を……
俺はボールを右手にガッシリと握り一歩、一歩蓮の方向に向けて歩き出し
……こう俺は呟いた。


「蓮ってよく見るとすごく綺麗だよな」
「……えっ?えぇぇ!?」


蓮が俺の言葉にビックリし、顔を真っ赤にさせながら右往左往し始める。
いきなりのことだったためかさっきから上手く言葉に出来ず、あたふたとした様子が
目の前に広がり、いつもの蓮とは明らかに様子がおかしい。


「すごく女の子らしいし、言葉で表すなら大和撫子なんかがピッタリじゃないか?」
「……そっ、そうかな?」
「料理だっておいしいし、掃除だって洗濯だって出来る。すごいじゃないか!」
「そっ、そんなに和弥、褒めないでよ!こんな人前で……褒めてくれるんなら、
ここじゃなくて他の所で……じゃないと私……」
「謙遜する必要はないぞ、蓮。生徒会長も真面目に頑張ってるし、まさに完璧だよ!」
「………!」


最終的に喋ることもできず、蓮は顔を真っ赤にしたまま固まってしまった。
いつもの冷静沈着、威厳のある生徒会長、綾月蓮の姿はどこにもない。
それに対して、一歩ずつ確実に歩を進めていた俺はついに蓮の目の前
一メートルの距離まで近づいた。この距離なら俺でも当てることが出来る……
未だ蓮の意識は戻っては来ず、2-Aの外野陣が蓮に向かって叫び続けるも無駄なようだ。
そして、この時はやってきた。


「すまんな蓮、弱点付いてしまって……でも、これは本音の俺の気持ちだ。嘘ではないぞ」


そう小さな声で蓮に話しかけて、俺はそっとボールを蓮に当てた。


「ピ――――ッ!2-A綾月アウト!」


蓮の弱点……それは褒められることに異常に弱いこと
これは俺が、俺だけが知っている蓮の弱点だった。

この瞬間、俺達2-Cの初戦突破が決まった。



すいません。今回で終わらせようとしたのですが……後一話続きます。それも今回より短くなりそう。早く終わらせて次の話行かないとダメなのに!!
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