第55話嵐の前の静けさ
扇山高校某校内部室
中は闇を彩る黒のカーテンで多い尽くされ、部室内には外から注がれる
一筋の光すら侵入を許されない。
電気を付ける訳も無く、明かりを灯すものといえば弱く、儚げに燃え続ける数本のロウソク
そして、ロウソクのジリジリと燃える音のみが部室全体に響き渡る。
そう……まるで時が止まってしまったような変な感覚に陥ってしまい
これってどこの封○?と突っ込みたくなること満々なのだが……
「みんな、集まってくれようだなぁ。これから今日の作戦会議を開始するぅ」
そう言ってさっきの静けさは何だったのかと思わせるほど、豪快に椅子から
立ち上がったのは……みなさん覚えているだろうか?
飛鳥親衛隊会長、貴重な名前付き男キャラ、身長2メートル近くでおっさん顔という
濃いすぎる風貌、インパクトのある巻き舌な喋り方などなど
こんな何気にキャラスペック高めのキャラなのに全く持って登場してない人物のことを!!
そう……勢いよく立ち上がった人物、それは飛鳥親衛隊会長、須藤太郎
である!
「なぜかすごく失礼なことを言われた気がぁぁ……いやぁ!そんな場合ではないぃぃ!
集まってくれた同志たちよっ!まず、こんな狭苦しいところまで集まってくれたことぉ
感謝するぅ。よく来てくれたぁ」
相変わらずの巻き舌で声の雰囲気はテレビのナレーション、声優でお馴染みの
若本○夫さんを彷彿させるような喋り方でこの場にいる
飛鳥親衛隊会員の方向へと視線を向ける。
約数十人の会員達がまるで優秀な生徒の授業姿のように取り付かれているような雰囲気で
視線を一点、須藤太郎に向けて微動だにせず、話を聞いている。
もちろん須藤を含む全員の頭には飛鳥LOVEと書かれたハチマキは
当然のごとく装着されている。
ロウソクだけの暗く、定員ギリギリの空間に似たようなカッコをした集団……
はっきり言って傍から見たらめちゃくちゃ不気味な状態である。
「みんな覚えているかぁ……数ヶ月前いきなりのぉ生徒会長、伊織先生から下されたぁ
親衛隊活動の禁止および我が敵、伝馬和弥への攻撃禁止令……」
部室内にさびしい秋風のような雰囲気が全体を包みこむ。
「こうなってからというものぉ、俺たちは飛鳥ちゃんを影から見守ることしか
できなくなってしまったぁぁ!それにあの伝馬に飛鳥ちゃんが無理矢理手を握られたりぃ
抱きしめられたりしてもぉぉ!俺たちは歯を食いしばって我慢するしかできなかったぁ……」
一言、一言気持ちを込めながら、この頃の記憶を思い出しつつ須藤は涙ながらに……
否、大粒の涙を流しながら会員に向けて語り続ける。
会員も皆涙を流しながら、大きく頷き同意するように話を聞き続ける。
ちなみに和弥が無理矢理手を握ったり、抱きついてるわけではなく
飛鳥自身が自分の意思でその行動を行っているのだが……
この集団の人達にはそうは見えてはいないようだ。
「とは言え、もし伝馬に行動を及ぼうとすればぁぁ……おっ、思い出したくもない
まさか本当でリアルに半殺しにされるとはぁ」
須藤を含む全員が体をブルブルと震わせながら、あの時の惨劇を思い出す。
中には「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい……」とうわ言いのように
その言葉を繰り返す人物も現れ、まるでひぐ○しのような独特の暗く、重い
鬱な雰囲気が全体を覆う。
「おかしいだろうぅぅ!!いきなり呼び出せれて行ってみればぁ、私は剣は飛○御剣流から
格闘技は北○神拳まで精通してるから大丈夫……どんな死に方がいい?ってあの先生
どんな超人なんだよぉぉ!!」
頭を抱え、須藤は叫びながら言葉を放つ。
周りもその時の記憶を思い出したのか、悲鳴に近い心の叫びを上げる
人間まで出てくる始末だ。
「俺たちは完全にどうすることもできない、身を引くことしかできなかったぁぁ!!
生徒会、先生達……特に葉月先生が怖すぎるからぁ。しかし、しかしだぁ!諸君!!
そんな俺たちもぉぉ天は見放さなかったぁぁ!!」
さっきの鬱モードとは一転いつものテンションに戻る須藤&会員達
須藤はモチロンのこと座っていた会員達まで立ち上がってオールスタンティング状態
ロックバンドのライブ会場のような雰囲気になっている。
「そう!今日集まってもらったのは他でもないぃ!我々は今日という日、
今日しかチャンスがないのだあぁぁ!!我らが敵、伝馬和弥を生徒会、先生達の
目を気にすることなくぅ、正義の鉄槌を入れることが今日だけは出来る!!
なにしろ今日は、今日の授業はぁぁ――――」
「今日の授業は秋季クラス対抗レクリエーション大会……」
出勤し、教務室に入って突きつけられた現実
俺、伝馬和弥は職員用連絡板に書いてある緊急事項を眺めながら、呆然と立ち尽くしていた。
「おっ、俺聞いてないんだけれど……」
春季、秋季の二回レクリエーション大会を開催することは学校の予備知識として
知っていた俺ではあったが、行う日は決まってないので、生徒会で決定後
おって連絡するというはずだったのだが……
「しかし、間違いではないよな。なにしろ教務室いるの俺だけだし」
事実、教務室は俺一人であり、この前のように遅刻したわけでもない。
体育館や外のグラウンドで声が小さいが声が聞こえてくる。
予想ではあるが、先生と生徒会のメンバーで準備を始めているのであろう。
そうなると残る疑問は、なぜ俺一人に伝えなかったのかだが……
「なお2-C担任の伝馬先生は生徒として参加、必須事項。逃げたらどんな目に合うか
わかっているよね?by伊織、橘、葉月」
自分の机に置いてある一枚の紙切れを読み上げて、俺はすべてを理解し……絶望した。
まんまとハメられてしまったようだ。あの三人の女性教師の策略に……
よくよく考えてみれば思い当たるふしは所々にあったような気がする。
教務室内の俺に理解されないためにか隠語を使って会話する先生達
今日の朝の登校時、いつもの5人組と一緒ではなく、一人での学校の道のり
それに昨日は伊織先生から電話でジャージを持ってくるように電話もあり
俺の鞄の中にはジャージがしっかりと入っている。
完璧な俺の負け……例えるなら先生達3人に思う通りに手のひらで踊らされた
操り人形のような感じだ。
正直な話、スポーツは苦手な俺なので出来れば参加ではなくて審判とかが望むのであれば
それが理想であったのだが、こうなっては仕方がない。
時間を見ると開始時間まであと十分と迫っており、俺はさっそく着替えるため
教務室近くにある更衣室へ……
「……ぅん?メモに続きが書いてある。もしよかったらかーくんはこのジャージを
着て参加してくれると嬉しいby葉月」
机の下を見てみると、白い袋が一つ
俺はソッと中を開けてみる……中には短パンで上着には大きくひらがなで『てんまかずや』
と書かれた体操服が入っており、俺はそれを見て……そっと元の場所に戻した。
「……さっ、さぁ!俺も早く着替えないとなぁ〜まあ何の競技か知らないが
いつものようにそこまで不幸になることはないだろう!」
さっきのことを俺は頭の中から完全に消し去るようにして教務室を後にする。
先生達の策略により強制参加が決定した俺……
裏で動き始めた飛鳥親衛隊の影……
いろいろな人物の策略、陰謀、思いをのせ秋季レクリエーション大会は
静かに開幕する。まさしく嵐の前の静けさのように……
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