第54話新学期、朝の風景
ピピピピピピッ………カシッ
現時刻4時00分
「………う〜ん、もうこんな時間かぁ。早く手伝いにいかないとぉ」
宮本飛鳥は眠気が抜け切れていない状態のまま、なんとかベットから体を起こし
昨日準備しておいた調理用の作業着に急いで着替える。
夏休み中は家の喫茶店のウェイトレスとして働いていた私であるが
学校がある平日は何もしないというわけではない。
私が学校に行っている間、手伝うことができない分は朝のモーニングメニューの
準備……いわゆる朝の仕込みを私は手伝うことにしている。
そのため私の朝は早い。
もう慣れてしまって苦に感じることは少しもないのだが
それをやり始めた当初は睡魔に襲われたまま、包丁などの刃物を扱うため
指に多少の切り傷を受けることなんて日常茶飯事のことであった。
「おっはよぉ〜!!」
「……はい、おはよう。飛鳥」
「あっ、おはようございます!飛鳥さん」
もう朝の仕込みを始めていたお母さんと従業員の人が私に向けてあいさつしてくれる。
ちゃんと時間どおりに調理場へ来ることが出来たと思っていたのだが
今日もいつも通りというべきか私よりも早く来て、仕込みの準備を始めている二人。
二人は何時に起きて準備してるだろぉ?
と言う疑問が沸いてくるものの、やらなくてはならないことが山のようにあるので
無駄口は厳禁である。すぐに手を洗い、持ち場に着く。
大量に置かれた大小様々な野菜の数々……
それをお母さんに指示されたとおり迅速に切り、慣れた手つきでテキパキこなしていく。
少し前まであった眠気など、この作業に入れば何かが私に乗り移ったかのごとく
別人のように集中力が増していく。
その作業を一言も喋ることなく数時間……
調理場の窓から太陽の光が差し込み始めた頃
「………うん、よし!これで今日の仕込みは終了です」
このお母さんの最後の確認で今日の私の仕事は終わりを告げる。
その後は学校に行くための準備である。
昨日アイロンを掛けておいた制服をしわが付かないようにゆっくりと着て
部屋においてある上半身が映るほどの鏡で髪を整える。
そこに映るのはまだ子供っぽさが残るが、贔屓目に見てもそれなりに整った顔をしている
自分の顔と制服を着た上半身部分が鏡に映る。
「やっぱり……まだ子供っぽさが抜けないなぁ。特に体の方が……」
自分の体を触り、まっ平らすぎる自分の体に軽く鬱になる。
それなりに努力はしているつもりなのだが……
全く持って進歩が見られない。
「飛鳥〜、朝ご飯よ!今日は早めに出るって言ってたんじゃないの?」
母の言葉で遠くに行っていた意識をなんとか取り戻す。
「りょ、了解〜。すぐ行きます!!」
そうであった。今日は新学期ってこともあって早めに学校へ行こうと
みんなで約束していたのであった。
母の指摘により今頃になって思い出し、急いで鞄の中に夏休みの宿題
今日持っていくものを入れ込んで下へと降りていく。そして……
………よし!今日から乳製品を多めに取ろう!そうしよう!
とそんな新たな決意に燃える私であった。
現時刻4時40分
綾月蓮は目を開けるのと同時に枕元にある時計のスイッチに手を置いた。
シンプルなデジタル時計は一瞬電子音を響かせ、おとなしくなる。
「………よし。理想的な起床ね」
気持ちのいい目覚めであった。
時たまにではあるが、目覚まし時計より早く目が覚めると私は無性に気分が良くなる。
中には鳴る前に起きてしまって、寝る時間を無駄にしてしまったと思う人もいるだろうが
私はこの行動をしたときは本当に気分がいい。
その気分が良いまま私は軽く体を伸ばしながら、洗面所へと向かう。
顔を洗い、シャワーを浴びるためだ。
目が覚めているのだから、シャワーまではいいかと一瞬思ってしまったが
昨日は少し暑かったため多少ではあるが寝汗をかいているし
体を綺麗にしておいて損はない。
シャワーを浴び、ドライヤーで髪を乾かすと朝食、昼食のお弁当の準備を開始する。
冷蔵庫の中から昨日の残り物、後は軽く作れるものを手早く作り
お弁当箱の中へと入れていく。
その次は朝食作りだ。今日は私に気分的にめずらしくパンだったため
それに合う簡単なスープ作りの準備に入る。
「………こうして朝食作ってるなんて、昔から考えたら絶対ありえないことよね」
朝食を作りながら、ふと思いついたように独り言を述べる私
今から考えれば小学校5年生まで、包丁すら持ったこと私が料理をしようなんて
よく決断したものだと思う。
あの時の母の顔は今でもリアルに思い出せるほど、見せたことのない驚きの表情を
していたのを覚えている。
好きな人……それも男の人を好きになり、少しでも女らしくなるために料理を教えて欲しい
そんな発言をし、母はどう思ったのだろうか。
未だにその母の心情を完全に読み取ることは出来ない。
しかし、母は何も言わず私に料理を洗濯を掃除を……昔ながらのいわゆる大和撫子と
呼ばれるための必要な知識と技術を母は余すことなく私に教えてくれた。
父だってそうである。
私が髪を伸ばし、女性物の制服、洋服を着ようとも何も言わず
昔と変わらずいつものように仲良く話しかけてくれた。
こんな私でも家族は普段と変わりなく、月本蓮として父母は私を見てくれた。
あまりにも普段どおりの対応されて、逆に私の方が戸惑ってしまいくらいに……
そのため私は数年前、こんな質問を父母に向けて言ったことがある。
―――私がこんな格好をして二人は何も思わないの?
…………と
すると父母は互いに軽く視線を向け、二人とも微笑を浮かべながら
私に向けて
「……蓮、お前は私達の自慢の子供だ。自分の思ったとおりに進みなさい」
「そうよ蓮。後悔だけは……しないようにね」
自分の予想と反した返答が返って来た。
この瞬間、どれだけ私がバカだったのか、愚か者だったのかを知った。
私は怖かったのだ。自分の身近である人物……親に嫌われてしまうことを
今まで普段どおりに過ごしていた環境を壊すことを……
普段どおりに生活しているように見えて、この生活は嘘が入り混じられた
空想の世界だと私は感じられずにいられなかった。
だけれど……それは違っていた。
私がそう勝手に思っているだけであって、家族である父と母は何も
変わらず、私を……綾月蓮を見続けていてくれていたのだ。
外見が変わろうとも中身である私を……
「……っ!何を私は朝から暗い雰囲気になってるのよ!ポジティブ、ポジティブ!!」
昔の事を唐突に思い出し、暗くなる気持ちを言葉で元気付かせる。
そうだ!今日から新学期なのだ。暗い気持ちでいてはいけない。
生徒会としての仕事も始まるし、今日の朝は皆と一緒に登校しようと約束もしている。
時間を見ると、我が母と父を起す時間に差し迫っていることに気づき
三人分の朝食をテーブルの上へと置き準備完了。あとは……
「お父さん、お母さん。二人とも朝よ!!早く起きてきて!!」
いつも通り目覚まし代わりのモーニングコールだ。
今日もこうして私の一日が始まる。
現時刻5時45分
水城奏はピアノの音に誘われて、寝ていたベットから体を起す。
一応目覚まし時計としてセットしていた時間は6時
それよりも少し早く、私は目を覚ましてしまったようだ。
軽くあくびをしつつ自分の部屋から出て、まだフラフラする体をよろめかせながら
音の聞こえる方向へと一歩、一歩進んでいく。
聞こえるピアノ音は近づくにつれてよりクリアに、それでいて優雅な音色を奏で
私の耳を刺激し、霞んでいた視線をハッキリとさせていく。
朝……確かそんな名前の曲だったような気がする。
オリジナルの曲で即興だから適当に作った物だよ……昔、笑いながらそう言っていたが
私はとても大好きな一曲であった。
柔らかな太陽の日差し、そこに流れるように入り込むさわやかな風の音
自分の理想的である朝の1ページが、頭の中でその景色とともに旋律を奏でる。
そして、私がピアノが見えるところまで歩いてきた所で演奏は終了を迎え
演奏をしていたのであろう一人の男性は立ちあがり、私に視線を向け
「……おはよう、奏」
軽く微笑を浮かべながら、朝のあいさつを私にしてくれる。
そして私も……
「おはようございます!そしてお帰り……お父さん」
我が父に向けて自分が出来る最大限の笑顔で言葉を返した。
「こうして三人で朝食を食べるなんて本当に久しぶりですね、あなた」
「……そうだな。この頃は忙しくて家にもろくに帰れない状況だったからな」
久しぶりに家に帰って来た父と母は朝食を食べながら、そのような言葉を口々にもらす。
父と母は有名なピアニストとヴァイオリニストのため海外の公演なども多くこなしており
毎日家に帰ってくることはできない。特に今回の海外公演は5ヶ月と言う
長期の日程が組まれていたため長い間、私は一人で暮らす生活が続いていた。
そのため今の3人そろっての朝食は無性に嬉しい。
私にとってはとても、とても大切な時間……
「奏ちゃん。今日はお母さんが車で学校まで送ってあげましょうか?あんまりないことだし
それにお母さん、少しでも奏ちゃんとお話したいし」
母はにこりと笑顔を向けながら、私の方に視線を向ける。
私の方ももっと母と話したいことが一杯あったため、同意の言葉を口にしようとするが
「……あっ、すいません。今日は友達と一緒に行く約束を」
そうなのだ。昨日みんなと朝早く一緒に学校行こうと約束していたのであった。
いくら母のお願いとは言え、友達の約束を破ることは出来ない。
とは言え、母には申し訳ないことをしてしまった……そう私は思っていたのだが
母は顔を歪ませることのなく、さっきと同じく笑顔で私の方を見つめている。
「奏ちゃん。あなた昔より生き生きしたいい顔をしてるわね。それにとっても楽しそう」
唐突に母は私に向けてそのような言葉を述べる。
当然のことで私は固まったまま、何も言葉が出てこない。
「それに綺麗になった。本当に綺麗に……私達がいない何ヶ月もの間どんなことがあったかは
私は知らないけれど、本当に充実した生活を送っていたみたいね。そう思わない?あなた」
「………たっ、確かにな。綺麗になったとかは良くわからないが、雰囲気は昔と変わったな」
母はとても嬉しいそうに父は少し照れくさそうに横に視線を向けながら
それぞれ私に向けて言葉を放つ。
私が変わった?
2人に言われて初めて気づいたことである。私自身は一度すら
何か変わろうなどと思ったことは決してない。
しかし、環境……周りの人たちは昔と今とでは大きく変化していた。
本当に友達と呼べる飛鳥さん、蓮さん、沙希さん、泉さん
そして私が人生初めて、あの感情を感じた私にとってかけがいのない……
「もしかして奏ちゃん好きな人でもできたのかしら?」
「えっ………」
あまりにも的確な母の一言に顔を真っ赤にして黙り込んでしまう私。
「なっ、母さん!!奏にはまだそう言うのは早すぎると前々から言ってるではないか!!
それに付き合うとかそういうことの前にな、私に顔を見せるくらいは………」
「はいはい……あなた、興奮しすぎて言ってる事がめちゃくちゃよ。未だにあなたは
娘離れできないんだから」
外にまで聞こえるほど大きな声で2人は言い合いを始める。
久しぶり騒がしい水城家の朝のひと時であった。
現時刻5時58分
朝倉沙希は、目覚ましが鳴る2分前に目が覚めた。
長針と短針のみのシンプルなアナログ時計を持ち上げ、けたたましい音が鳴る前に
スイッチを切る。
「……ふっ、勝ったな」
そしてなんという訳ではないが、時計に向けて勝利宣言なんかしてみる。
………信じられないほど虚しい
布団から体を起し、寝ていた体を起すため軽く柔軟運動始める。
余談ではあるが、私はベット嫌いだ。ついでにいうと床はフローリングよりも
畳が好きな人間である。
そのため洋風建ての家にもかかわらず、自分の部屋だけは和室という
異質を放った空間で私は寝起きをしているのだ。
布団を押入れにしまうと、床一面が独特な色合いを持つ畳一色となり
藁の香りが私の鼻をくすぐる。
これこそ日本の朝という感じである。私は気分高揚のまま
朝食を食べるため、自分部屋の扉を開く。
「おはようございます、お嬢様」
「おはよう、セバスチャン」
自分専属の執事であるセバスチャンに朝のあいさつをすませ
テーブルに準備されている朝食の元へ足を運び、椅子に座る。
そこにはこれこそ日本人の和の朝食……というかあまりにもベタすぎるくらい
定番な雰囲気の朝食が目の前に存在している。
さっきの部屋の様子でお分かりだと思うが、料理に対しても洋食、中華よりも
私は和食を好む人間である。
アメリカ時代は朝などもっぱらパンやコーンフレークだったのだが
日本に来たら、米という素材に見入られ、今ではパンなどは
少し苦手な部類に入るほどダメになってしまっている。
「いたただきます」
きちんと両手を合わせ、神に感謝を捧げてから朝食を頂く。
最初は上手く使いこなせなかった箸も今となっては自由自在に言うことを聞くようになった。
「………うん、さすがだな。今日も文句なしの朝食だ」
「ありがとうございます、お嬢様」
朝食を作ったセバスチャンに礼をいい、黙々と朝食を食べていく私。
………ふと、料理のほうへと向けていた視線を真正面へと戻す。
そこには何十人と座れるテーブルと無駄に広い部屋の壁に何枚かの絵画
そして天井にはシャンデリア………
こんなにも広い空間だというのに、ここにいる人間は私とセバスチャンだけ……
今日も我が父と母は仕事のようだ。
意識せずにいたが、こうやって一人テーブルで朝、昼、晩
家族で食事したのなんて何年も経験していない。
わかってる、この私だってわかってはいる。我が父母は私のため……家族ため
一生懸命仕事に頑張っているのだと。
だから私はこのことに不満を持つなんて、二人の負担になることなんてをしてはダメだと
前々からわかっている。
だけれど……たまには……
「――っさま、お嬢様」
「………えっ!?」
「お嬢様、お電話でございます」
考え事をしていたため、意識がどっかに行ってしまっており
すぐにセバスチャンの言葉に気づかなかったようだ。
少し心を取り乱しながらも、一つ深呼吸をし電話へと出る。
「……もしもし」
「沙希か?……私だ」
「……父上?」
意外な人物からの電話であった。こうして電話で声を聞いたのも
かなり昔のようなことに感じられる。
「……沙希。今日学校終わったら暇か?」
「学校終わってからですか?たしか用事はありませんが……」
いつもと違い、物言いがはっきりした父にしては歯切れの悪い喋り方である。
何かあったのだろうか?
「そっ、そうか。なっ、なら今日母さんも私も仕事が早く終わりそうでな。どうだ?
一緒に外でご飯でも食べに行かないか?」
その瞬間、父に感じていた違和感すべてのことに合点がいった。
こういうことだったのか……あのいつでも強気な父上がこんな状態になるとはな
「………」
「……だめ、なのか?沙希」
「違いますよ、少しビックリしただけです。今日の外食には私も賛成です。楽しみにしていますよ父上……それと無理せず仕事頑張ってくださいね」
そう言って私は電話のボタンを切った。
「……セバスチャン」
「はい、何でございましょうか?お嬢様」
「今日は良い一日になりそうだ……」
「………そのようでございますね。お嬢様」
めずらしく表情を変えない私の専属執事セバスチャンが
少しニコリと笑ったような感じがした。
現時刻6時40分
芹澤泉は目覚まし時計が近所迷惑になるのでは?と思うくらいの爆音で鳴り響く中
起きることなく、体全体を蓑虫のように布団で包み込み寝続けていた。
しばらくの間その爆音だけが鳴り響く時間が過ぎていき
数分後やっとのことで私は目覚まし時計へと手を伸ばす。
そして、キャラクター物の目覚まし時計を掴むと、スイッチを押すのがめんどくさかったのか
壁に叩きつけるというパワープレーを……
時計はさっきまでのが何であったのかと思わせるほど秒針すら刻まなくなり
完全沈黙してしまう。蓋が外れ、電池も飛び出してしまっている。
「………やっちゃった〜。今年に入ってこれで4つめか……それに正確な時間
分からないけれど、時間ヤバイ?」
大きな口であくびをしながら、正確な時間を見るため時計を探す。
予想通り……約束の時間まであとわずかである
私は一応用意しておいた着るものをすべて抱え、洗面所へとダッシュで向かう。
この現状で誰もがお分かりであろうが、私は大変寝相が悪い。
悪いなんてものではない!!
アメリカの寮生活時代は二段ベットの上で寝ていて、柵があるにもかかわらず
上手い具合によじ登って何度も死にそうな目にあったし
沙希の家にお泊りした時にも、あまりにも寝相が悪いので有名だったため
私が寝る前にビデオカメラを設定していたら、寝ている間に360度回転をしていて
元に戻っている映像を撮ることに成功するなど
この寝相の悪さには自分でもほとほと困っている次第である。
まあ、よく漫画である寝ているうちにパジャマ、そして下着まで脱いでしまうという
一見変態と思われそうな特性がなかっただけでも良いと思わなくては
ならないのかもしれない。
シャワーを軽く浴び、着替えを済ませた私は鞄を持って
何か走りながら、片手間で食べれそうなものがないか探した。
「えっと……そういうのは果物類とウイ○ーインゼリーと食パン……」
一瞬食パンに手を伸ばしそうになるが、私はウイ○ーインゼリーを手に握る。
さすがに食パンはベタすぎるよね♪実際運命的な出会いなんてないし
私はその売り文句通り10秒でそれを飲み干し
鍵を持ち、外へと出る。
「………っととと。忘れ物、忘れ物♪」
私は玄関まで向かっていた体を戻し、居間のテーブルまで戻る。
そこには少し高級そうな写真たてに入れられた一枚の写真が置いてあった。
写真の中は……楽しそうに笑う4人家族の姿
「じゃあ、みんな行ってくるね♪」
私は写真に向かって微笑むといつもの登校路へと小走り気味に出て行った。
「おはようっ!!」
「みんな、おはよう」
「おはようございます!!」
「おはよう……だが、泉。何そこまで疲れた雰囲気で」
「はぁ、はぁ……なんとか間に合った。おはよう♪みんな」
約束の時間
5人全員が昨日決めておいた集合場所へと集合する。
綺麗どころである5人がそろっているためか、生徒からの視線も熱い。
だがそんなことにも気づいていないのか、気にしていないのか仲良く談笑を楽しみながら
5人はゆっくりと朝の登校を楽しんでいるようだった。
本当に仲の良い5人……同じ学校の生徒が見たとしても、通りすがりの人が見たとしても
まだ短い期間であるけれども、確かな絆をこの5人は感じていた。
こうしてまだ夏空が続く中、夏休みは終わり
今日から新学期が始まる………始まるんだけれども!!
「えっとみんな〜何か忘れてるような気がしない?」
「奇遇ね。私もさっきから変な違和感を感じて仕方がないのよ」
「何か重要なものを忘れた感じがします」
「確かにこれが無ければ、何も始まらないような気さえ感じるぞ」
「私にとっても、みんなにとっても、何においても必要なものだよね?」
「「「「「……………アッ――――――!!!!」」」」」
現時刻8時28分
俺、伝馬和弥は両手で目覚まし時計を持ちながら、正座をしたまま固まっていた。
朝のSHRは8時30分
つうか俺は教師な訳でもっと早く行かないと職員会議には間に合わないのだが……
「……かっ、完全に遅刻だぁ――!!いつも起こしに来てくれた飛鳥はどうしたんだよ!!
そんな文句言ってる場合じゃない。今日は一時間目から授業じゃないかっ!!このままでは
教頭に殺されるぅ!!」
俺は何も食べる暇もなく、スーツを着ながら階段を下りていく。
「もしいるのなら神よ、頼む!!俺に、俺に力をぉぉ!!」
伝馬和弥……新学期初出勤――完全遅刻、一時間目途中入室
反省文……50枚
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