第49話母の来日
ここまでの経緯を説明しよう。
突然の母からの電話……
急な呼び出しにくらい少し憤りを感じた俺は、思春期らしく(?)親に反抗するため
駅から遠い道のりを選ぶものの、あっさり自分の思考回路を読まれ、先回りされる……
どういう風の吹き回しか、我が母からデートすることを強要され
嫌々ながらも手を繋ぎ、百華屋へと向かう……
そこでまさかの我が母&飛鳥ママの幼馴染コンビによる策にはまり、この年齢で実の母から
イチゴサンデーを食べさせてもらうと言う罠が俺を襲ってくるも、寸でのところでかわす。
しかし、今度はその様子を見て勘違いをした飛鳥たちに囲まれるも
我が母の証言により、何とか難を逃れた。
これが俺の頭で整理した、さっき起きた事柄の全容である……
我ながらまだ一日の半分しか終わってないと言うのに
なかなかある意味、すごく充実した生活ぶりだ。
その後は、百華屋を出て母を含む、全員と一緒に我が家へと帰ってきたのだが……
「カズちゃん〜。私、コーラがいい!できればペプ○の方で」
「和弥、私はコーヒーお願い。砂糖は入れずにミルクだけでよろしく」
「すいません和弥さん。私は紅茶で……ミルクを先に入れていただくとうれしいです」
「伝馬氏、私は緑茶を頼む。分かってはいると思うが、温度は70度だぞ」
「和弥〜。ママはビールね!!」
どういう訳か、俺は5人の指示された飲み物を準備するために奔走していた。
そう、まるでマシな言い方をすれば召し使いのように……
悪い言い方をすれば、らき○たのしら○しさんのごとく奴隷のように……
つうか母よ、ビールはないだろう。時間帯的に……
まあこういうギャグは昔までは日常茶飯事だったので、俺は我が母のため麦茶を準備する。
そんな俺が一人、一人の飲み物をていねいかつ迅速に準備する中
母を含む5人は居間のテーブルを囲んで、俺の昔話など
俺に関する話題で盛り上がっているようだった。
「和弥はね〜昔はこんなに可愛かったのよ。ほら、見てみてこの写真!」
「「「「……本当だ。女の子みたい!!」」」」
母よ……息子の写真を堂々と他人に見せないでくれ。正直恥ずかしい……
その後も何処から持ってきたのか、母秘蔵のアルバムをドンドンと
飛鳥達に見せて、その時の昔話を懐かしそうな表情で4人向けて話し始める。
飛鳥と蓮はその時のことを思い出しながら、懐かしそうに我が母の話に聞き入り
この時のことは全く知らない奏と朝倉は興味津々な視線を母に向けながら
聞き逃さないように聞き耳を立てて、話を聞いている。
唐突ではあるが、ここら辺で我が母について少しばかり説明しておこうと思う。
名前は伝馬百合
身長は157センチで体重とスリーサイズは……言ったら殺されるのでノーコメント
年齢は詳しくは言えないが、息子視点から見てもかなりの幼い、子供っぽい顔をしている。
そのため我が父は交際時、ロリコンなどの罵声を浴びたと
涙ながらに俺に語ってくれたこともある。
外見はこんなのであるが、傍から見れば平凡な家庭である伝馬家の中で
最強、無敵と言う言葉が最も合う御方であり、何かあったときには百合さんに!!
と言われるくらい頼もしく、信頼感のある人物であった。
だが、子供ような可愛らしい顔をしている母ではあるが一度、「おばさん」と言われると
たちまち顔が夜叉へと変わり、一生モノのトラウマとなる拷問を受けるという伝説が
俺ら小学生の中では存在し、恐怖の対象でもあった。
これが幼少時代の俺に恐怖感を植え付け、今では全く持って頭が上がらない
状態となっているのだった。
……とまぁ、軽くであるが、これが我が母と言う人物の説明である。
こうやって母の説明や母を含む5人組が話に華を咲かせている間にも
俺は頼まれたとおり入れるもの、温度に気を使いながら飲み物を完成させ
5人のいるテーブルへと飲み物を持っていく。
「はい、頼まれた飲み物作ってきたよ。母さんはどうせ麦茶だろう?」
一人、一人の目の前に頼まれた物を置いていきながら、我が母には氷でギンギンに冷えた
我が家特製の麦茶を目の前に置いた。
「おっ!……うん、うん。ちょっと心配だったけれど和弥、ちゃんと覚えていて
くれたみたいね。いい子だ、いい子」
そう言って母は満足そうに麦茶をいきおいよく飲んでいく。
他の4人も頼まれた通りに出来たか心配であったが、おいしそうに飲んでおり
なぜかちょっと嬉しい気持ちとホッとした思いになる俺。
「……んっ。あっ、そういえば和弥。一つ聞きたいことがあるんだけど」
そのまま勢いを止めることなく麦茶を飲み干した我が母が
飲み終えてすぐに俺に向けて質問をしてくる。
「……んっ?なんだ?」
「う〜ん。聞いていいのか迷ったんだけど……和弥。今、彼女とかいる?」
さっきまで話をしていた飛鳥たちの話し声がピタッと……止まる。
えっ、何?この緊張感張り詰めた空気は……
突然の状況変化に戸惑い隠せない俺ではあるが、なんとか母の質問に対して返答する。
「かっ、彼女?彼女なんていないよ。それに俺、モテナイし……
彼女作ろうなんてことすら思ったことねぇよ」
俺がそう言ったその瞬間……
我が母は驚いたようなポカンとした顔で俺の方を見ており
周りを眺めると4人もなぜか、ハァと溜息を付きながら
何かを諦めたような視線で俺の方を見ている。
えっと………何か、俺おかしい?
そんな疑問が浮かぶものの、自分のさっきの回答におかしい点は見当たらない。
「こりゃあの子達大変だわ……我が息子ながら何と言う鈍感」
そう言って今度は母が、俺に向けて哀れむような視線を送ってくる。
何か俺がしでかしてしまったと言うことはわかるのだが
何をしてしまったのか、いまだ持って全く検討がつかない俺。
そして、その状態のまま数十秒の時が過ぎていき……
突然何か思いついたのか、我が母は不敵な笑みを浮かべ、俺の方に視線を向ける。
いっ、嫌な予感が……あの笑みは間違いなく何か面白いことを思いついた目で
特にその時に被害を被るのはいつも決まって……
「……和弥。それじゃ、今度は私がいう質問に正直答えなさい」
俺なのだから……
この母の言葉だけじゃ、安全か危険か分からないが
なんとかしてこの状況を切り抜けたい。そう思う俺なのだが……
「言っておくけど、和弥……あなたには拒否権はないの。もし拒んだりしたら……」
「わかった!答える、答えます!お母様!!」
やはり母は偉大です……
我が母の前では俺の人権すら遥か彼方へと飛んでいってしまうのだから。
そして非常に情けない姿ではあるが、無意識のうちに
正座になり、俺は母の質問をジッと待つ。
昔からの習慣で癖になってしまっており、自分でやっていて涙が出そうになる……
母はそんな俺の様子を満足そうに眺めながら、ゆっくりと口を開く。
「一つ目の質問。和弥、あなたは天真爛漫な明るいタイプの女性と
物静かでおしとやかなタイプの女性。どっちが好み?」
いきなり中々の難しい質問である。
と言うか、頭の中にギャルゲーの選択肢画面が浮かんできたのは俺の中の秘密だ。
「ええっと……これは、どちらでもっていうのは……」
「当たり前却下よ、和弥」
やっ、やっぱりね……
予想はしていたが、どっちか一つしか選べれないようだ。
だが、どちらかひとつと言われても……
俺からすればどちらも個々の良さがあって、そんな部分で人付き合いを分けるような
人間ではないので、ぶっちゃけどうでもいいってのが俺の本音ではあるのだが……
「和弥、早く決めちゃいなさいよ。相変わらずの優柔不断なヘタレっぷりね」
という選ぶのに手間取っている俺の姿を見て、不満を洩らす我が母の姿が目に浮かび
そういわれるのは嫌なので、適当に俺は……
「じゃあ、天真爛漫な明るいタイプで」
と答えた。そうすると、俺の後ろでその様子を眺めていた4人は……
「えへへ……やっぱりカズちゃんはそっち選ぶと思っていたよぉ!」
「う〜ん。私は人前ではおしとやかにしてるつもりだけれど、和弥の前ではいつも明るく
振舞ってるから……セーフ?」
「和弥さん……私のこと嫌いだったんですか?」
「ほぉ〜。私の考えでは伝馬氏はおしとやかな大和撫子タイプが好きだと思っていたのだが
意外な答えだな……でも、そうなると私はどうなるんだ?」
と、俺の返答に一人、一人が感想を述べる。
奏よ……タイプを聞いただけで嫌いと判断するのはちょっと敏感すぎないかい?
それにこの頃は俺の中ではおしとやかと言うイメージは壊れつつあるのだが………
ちなみに朝倉。お前は明るくも、おしとやかでもなく人をいじるのが好きな
小悪魔系だと俺は認識してるが。
「それじゃあ、次の質問、行くわよ!」
我が母のほうはテンション全快のようで、満面の笑みだ。
「二つ目の質問。和弥、あなたは胸の大きいスタイルのいい女性と
スレンダーでモデル体型な女性。どちらが好み?」
こっ、これは……さっきとは違い、ヘビーな質問が俺に飛んでくる。
こういう質問は漫画、アニメの世界ではよくある質問ではあるが
決まってどちらを答えてもいい結果は生み出さないと言うことは俺自身よく分かっている。
しかし、母のことだからさっきと同じく、どちらでもなんていう
答えは決して許されることではないだろう。
確かに俺の考えでは、ないよりはあったほうがいいと思うし……っていうか
大きい方がいいとは思う。しかし、そんなことを答えた日には、待っているのは
定番のお約束の展開に間違いなし!!
本当にどうするよ……俺。
「何?和弥。そんな汗かいちゃって……そんなに悩んでるの?」
尋常じゃない汗をかいて悩んでいる俺の姿を見て、そう聞いてくる母
俺は声を出さず、全力で首を縦に振る。
「じゃあ和弥は胸の大きさなんか気にしないってこと?」
「そっ、そうだよ!!」
俺は詰まりながらもはっきりと母に向けて言う。
「そうなんだ……なら和弥はロリコンだったのね」
………えっ?どうしてそこに?
唐突に俺に掛けられたロリコン疑惑……後ろにいる4人視線が痛い……
「ちょっと待ってくれ!我が母よ。なぜそんな展開に!?」
「……えっ?胸は気にしないって言ってたから、私なりの推理でロリコンかなっと」
「どんな超理論だよ!!言っとくが俺はロリコンじゃない!!」
「じゃあ和弥は胸の大きい方がいいの?」
「そうだよ!!」
…………あっ、あれ?やっちまった……俺?
後ろを向くと明らかに違うオーラを放っている人物が3人。
「カズちゃんの変態!!どスケベ!!」
「所詮、和弥も……男だったって事か……」
「さすが伝馬氏、と言ったところか。しばらくなりを潜めていると思ったら
こんなみんながいる前で言うとは……相変わらずのエロさ加減だな」
ひっ、ひでぇ言われようだ。
でもそんな中で奏一人は嬉しそうな、恥ずかしそうな顔をして俺の方に視線を向けている。
そういえば、パッと見ではあるが奏ってスタイル良かったような……
「ふふふっ……さすが和弥ね、私の期待を裏切らないわ。じゃあ最後の質問」
もう母は満面の笑みを越えて、爆笑へとレベルアップしている。
「最後に質問。この家の中にいる女性の中でもっとも理想な女性は誰?」
ちょっ、ちょっとお母様!?なんて質問を息子にぶつけるのですか!
後ろでいまだ文句を言っていた3人も急に押し黙り、視線が俺に集中しているのが
4人の姿を見なくてもはっきりとわかる。
これはさっきまで受けてきた2つの質問を軽く凌駕するくらいの難関な質問だ。
俺からすれば、東大の入試問題よりも百倍難しい……
「また悩んでるの?和弥……だったら今度は時間制限つきね。今から後、10秒の内に
この質問に答えなさい。10、9、8……」
我が母よ!どれだけ息子を追い詰める気ですか!!
ちょっと待て、冷静に考えろ。絶対になんとか乗り切れる手段があるはずだ。
俺のこの頃は一切役に立たない天才的な頭脳よ……
今こそ活躍する時だ!!
「7、6、5、4、3……」
俺はその頭脳をフル回転して考えた、考えまくった。
我が母が容赦なく読み上げられていく、死へのカウントダウン……
焦る思い、苛立つ気持ち……
一瞬脳裏によぎる、絶望という二文字。
だが、そんな希望も見えない状況下で俺に一筋の光が
みっ、見えた!
俺は心の中で大きく叫び、その内容を言葉としてみんなに伝える。
「母さん!!母さんが俺の理想の女性です!」
………あれ?反応がない?
周りを見渡すと4人から、そして母からも怪訝そうな視線が……
こうして俺はマザコンと言う称号を手に入れたのであった。
不本意ながらも……
「あははははっ!!本当に和弥の周りは面白いことだらけね」
そういって母はまた俺が準備した麦茶を飲みながら、爆笑していた。
あの後、なんとか弁明しみんなに納得してもらうも、今だ疑惑は晴れていないらしく
ちょっと一歩おかれた状態で4人見られる俺。
心がちょっと、少し、いやかなり痛い……
今はと言うと、ちょうど夕食時な時間帯になっており、4人は協力して夕食作りに
励んでおられるようだ。少し奏が心配だが……
そして、俺たちは4人の言葉に甘えて二人テレビを見ながら話をしている所だ。
「それにしても和弥もアメリカにいる時代よりは明るくなって、そういえば昔はこんなに
元気な子だったか。とにかく元気そうで何よりよ」
ここに来て、初めて母親らしい優しい言葉を俺に掛ける。
俺は少し気恥ずかしい思いが沸いてきて、「ああ」と曖昧な言葉しか返せない。
「和弥。和弥はいつもこの子たちとなかよく遊んでるの?」
「まぁ……大体はな。実言うと、もう一人俺のクラスの生徒の芹澤泉って奴の5人で
よく一緒にいることが多いな。今日は用事があるとかでいないが……」
唐突な母の質問にすばやく答える俺。
その瞬間、さっきまで明るかった母の顔から笑顔が消えた。
「そう、5人で一緒に……ね」
母の顔は俺がいままで過ごした中でもあまり見せない思いつめた表情で
俺の方に視線を向ける。
「おい、かあ―――」
「カズちゃん!!醤油が切れちゃったんだけど、どこにあるのぉ?」
いつもとおかしい様子の母に話しかけようとするものの、厨房の方から
飛鳥の呼び出しを食らってしまう。
「行ってきなさい、和弥」
「でも、さっき母さん……」
さっきの憂いを帯びた視線が頭の中から離れない。
「いいから言ってきなさい!ほら、早く!私はちょっと外にでも出て
風にでもあたってくるわ」
そう言って、我が母はソファーに座っていた体を起し、外へと出て行く。
でも俺は、なぜかその母の背中が少し物悲しい雰囲気をしていて
なんともいえない思いが俺の中に募った。
「ふぅ……風が涼しい」
外に出ると夕日が私の元に降り注ぎ、夏の終わり……秋を感じさせる涼しい風が
私の髪をなびかせる。
「もういいわよ。隠れていなくていいから出てきなさい」
そう言って、誰もいないはずの空間に向かって呼びかける。
すると、コンクリートの壁、私の視線から死角になっている部分から人が顔を出す。
その人物は……芹澤泉。
「なんだ……ばれちゃってたんだ♪上手く気配消したつもりだったんだけど」
可愛らしく、それでいて懐かしい声が私の耳に伝わってくる。
「久しぶりね。何年ぶりかしら……」
「ううんと、約2年ぶりくらいじゃない?あの時以来だと思うし」
あの時以来か……もう2年もの月日が過ぎていたとは
時間と言うのはこれほど早く過ぎ去っていくものだったのだろうか。
「なんで今頃になってこの場に現れたの?」
「それは和弥の心配の様子を―――」
「それだけではないんでしょ」
さすがは……と言ったところか。
私がなぜ、ここに来たのか大体お見通しのようだ。
「あなたに伝えなければならないことがあって来たの」
正直に私はここに来た事実を述べる。
遠まわしに言うのは、この子が一番嫌いだと良く分かっているからだ。
「泉、あなたには伝えなければならないことがあるの。
我が伝馬家の家族として、そして何より……」
私は視線を泉から外さない……泉も私から視線を外そうとはしない。
昔のような弱弱しい目ではなく、成長した強い目をしている。
今の泉だからこそ、強くなったあなただからこそ伝えなければならない……
あなたは、伝馬泉は和弥の……
「和弥の……妹として」
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