第4話魅惑の生徒会長!?
「おっ、重い……」
今、俺は両手に大量の資料を抱えて廊下を歩いている。
その量は尋常ではなく特に体力のない俺にとってはかなりの重労働である。
だが1回でも地面に下ろせば、パズルのごとく噛み合っている資料は雪崩のごとく
崩れていき、修正が困難になるので我慢し持ち続ける。
俺がなぜこのような労働をしているか、それは朝の職員会議までさかのぼることになる。
今日も早めの出勤で今日やる数学の授業の準備をし8時から開始される朝の職員会議を待つ。
やっとのことで最近先生の職にも慣れ初め、授業もスムーズに進むようになって
俺はある種、この先生と言う職業の満足感を感じるようになっていた。
最初はなりゆきでなってしまった先生だが、なってしまうと人にものを教えるということに
やりがいを覚えるようになってきて、生徒が納得する説明や問題の解法を教えて
理解してもらうことが快感になりつつある。
しかし、生徒たちが「伝馬」やら「伝馬くん」など先生扱いしないところは変わらず
飛鳥に到っては「カズちゃん」と所かまわず呼んでおり、そこが今最大の悩みといえよう。
いや……まあ親衛隊もいまだに「伝馬和弥抹殺!」をスローガンとし活動してるが
伊織先生などの喝もあり今は派手な動きを止めている。
このように俺の先生としての学校生活は徐々にではあるが上向きの方向に向かっている。
そのことに喜びを覚えつつ、朝の職員会議は校長の入場とともに始まった。
「伝馬君。すまないがこちらに」
職員会議終了後、授業のあるクラスに向かおうとするとき校長に呼び止められた。
「どうしたんしたんですか?」
「ああ、すまないがこちらの資料を生徒会室まで運んでくれないか?」
と指をさした方向には膨大な資料の数が……
「こっ、これを全部ですか?」
「そうだ。すまないがこの資料お願いするよ」
正直多くない?とツッコミを入れたくなるほどの多さではあったが
そう校長に言われたらやるしかない。
「昼休憩にでも運んでくれ。生徒会室では会長である綾月君が待っている。
まだ伝馬君は会ってないから顔合わせしておく必要もあるだろう」
「わかりました。午前中は無理なんで校長に言われたとおり
昼休憩にでももっていきます」
「そうか、すまないな。お願いするよ」
これで会話終え、俺はまた授業の準備に取り掛かる。
「そっか〜伝馬先生。ついに綾月さんと会うんですね」
と話しかけてきたのは伊織先生。
「すいませんが、伊織先生。生徒会長の綾月さんってどんな人なんですか?」
さっきから思っていたことを聞いてみる。
「綾月さんですか?綾月さんはね、とても女らしくて綺麗な方ですよ。
人望もあって、男女問わず人気者でもあるんです」
自分の子のようにうれしそうに語る伊織先生。
「すごい人みたいですね……でも興味わきましたよ。昼休憩会うのが楽しみです」
「それはよかったです!是非お話してみてください。でも……」
「あっ!!」
時計を見ると時間は8時58分。1時間目まで後2分になっていた。
「すいません!俺1時間目から授業なんで失礼します!」
と伊織先生との会話を止め、授業クラスへ向かう。
だが後になってから俺は伊織先生の話を最後まで聞けなかったことに後悔することとなる……
そして冒頭へ
今、俺は生徒会室まで100メートルを切るところまで来ていた。
教務室から生徒会室までの距離は約400メートル。
このときほど馬鹿でかい校舎の実用性を校長に聞こうと思ったことはない。
それほど俺の両腕はダメージを受け、もう限界寸前だった。
「カズちゃん?なにしてるのぉ?」
救世主が現れた。
「いいところにきた!飛鳥。頼むからこの資料少し持ってくれ!」
もう限界が来ていて学校であるにもかかわらず、飛鳥と呼んでしまう俺。
その様子を飛鳥は見て
「え〜!!いやだよぉ〜そんな重いもの持つのぉ……
でも、カズちゃんが今度週末デートに連れってくれたらいいかな〜?」
なんて奴だ……この場に及んで交渉してくるとは
しかし、俺の両腕はもう限界手前まで来ている。どうするか……
「わっ、わかった。週末のデートのことは考えておく。
だから早くこの資料持つの手伝ってくれ!」
プライドなんてへったくれもなく早々に根を上げ助けを求める。
「ホントに!!やったぁ〜。週末はカズちゃんとデートだぁ〜」
両手を挙げ喜ぶ飛鳥。しかし俺は考えておくといったまでで行くとは一言も言ってはいない。
うまく騙し、負担を減らすことが出来たことに感謝し、飛鳥と二人で生徒会室へ向かった。
そしてなんとか生徒会入り口まで到着。
途中、放送で飛鳥が呼ばれるという緊急事態が発生したが、距離にして後20メートル
もなかったので後は一人で運びここまで来た。
「頼まれていた資料を持ってきた。すまんがドアを開けてくれないか?」
ドアの中にいるであろう生徒会長に話しかける。
「は〜い。今開けます〜」
鈴の音のようなきれいな声が聞こえて、ドアが開く。
「どうぞ〜あっ、資料は机の上にお願いね」
そう言われて、持ってきた資料を机に置き一息つく。
マジで両手が鉛のように重い、普段運動をしない人間が陥ることだ。
「大丈夫?その手。すごく赤くなってるわよ。あっ!傷跡まで……」
近づいてきて俺の両手をいたわるように自分の両手で包む生徒会長。
つうか近すぎる!!やばいって!
柑橘系の匂いが俺の鼻をくすぐり、俺の心を動揺させる。
「後から保健室に言って治療してもらいましょ。私も付き添うから」
なんとか手を離してくれた生徒会長。
「いいよ。これくらい平気だから」
「だめ!そうやって意地張って……後からひどくなったらどうするの?」
伊織先生並の心配性ぶりである。
まあひどくなっても困るのでここは大人しく従うことに……
すると、校長の言われていたもう一つの仕事を思い出した。
「そういえば、校長から生徒会長に俺のこと紹介しとけって言われてたの忘れてた。
今更ながらだが、俺の名前は――――」
「伝馬和弥でしょ?で担当教科は数学」
先に名前を言われてしまった。驚くことにていねいに担当教科まで
「よく知ってるな。教科まで知ってるなんて」
「あれ?先生有名よ。この学校で知らない人なんていないんじゃないかしら?
17歳の先生が高校生に数学教えてるってそこらじゅうで話題になってたわよ」
まあ普通に考えれば、自分の学校にそんな先生がいれば話題の一つ、二つなるだろう。
俺が気づかなかったのは多忙や疲労が激しく、そんなところまで構ってられなかった。
「じゃあ、私の紹介。私は扇山高校2年綾月蓮。
ここの生徒会長やってるわ。今後ともヨロシクね!」
笑顔を俺に向け自己紹介をしてきた。
その笑顔は魅惑に満ちており、人を虜にしてしまう笑顔だった。
伊織先生の言うとおりとても綺麗で清楚な方だった。
水城とは違う意味での綺麗さをしており少し棘のあるような感じはしたが
間違いなく美人である。
そのためか俺は……
「綺麗だ……」
と小声で無意識のうちに言ってしまった。
「……えっ!」
綾月は目を大きく広げ、俺のほうを見た。
俺もようやく自分がおかしたミスに気づく。
「いやっ!これはなんというか。ボソッと出てしまった言葉というか―――」
「本当!私って綺麗?さっき言ったこと本当なの!?」
体を俺の方向にググッと近づかせて、聞いてくる。
いきなりのことで気が動転しそうになるが、もう取り繕うのもだるいので正直に言う。
「ああ。綾月さんはきれいな人だよ。雰囲気も清楚な感じで
こんなきれいな人見て……びっくりした」
そのことを言った瞬間……
綾月さんはさっきと様子が一転し、目を爛々と輝かせていた。
「どうしよう!どうしよう!和弥に綺麗って言われちゃった〜!
すっごく、すっごく嬉しい!どうしよう夢みたい〜!!」
さっきまでとは一変。ありえないくらいハイテンションで周りを駆け回る綾月さん。
っていうかさっき俺のこと和弥って呼び捨てに……
「ちょっと待って。綾月さん。さすがにいきなり呼び捨ては……」
「どうして?っていうかまだ気づいてないんだ〜。それはそれでちょっとショック……」
肩を落としさっきまでハイテンションはどこへやら……
「っていうか綾月さんとは今日はじめて会うんだが……」
「何言ってるの!和弥!もう私の顔忘れたの?バカ和弥」
「どっ、どうしてその呼び名を……」
昔、呼ばれていた呼び名を言われ驚き、綾月さんの顔を見る。
――――――――ピンッ!
頭の中で一つの結論に行き着いた。
しかし、それには一つ大きな違いが……
確認のため聞いてみる。
「もしかして……蓮か?俺と幼稚園と小学校の間遊んだ」
「やっと思い出してくれた!うれしい!和弥!」
飛びついてきて俺に抱きつく。
「まてぇ!!でも俺が知ってる蓮は男だ!!」
そう、顔はそっくりだが最大の違い、それは性別。
ここにいる蓮は女なのだ。だから俺の知っている蓮ではないはず……
「まだ、そんなこと言ってるの?じゃあ見せてあげる!ハイッ!これ」
そういって見せてくれたのは生徒証。そこには
綾月蓮 性別男
「どういうことだ!!これはなんでお前女装してるんだ!?」
今の蓮の格好は女子の制服を着ていて、髪もロングで
だれが見たって女性にしか見えない。
「そんなの和弥に綺麗って言われるために決まっているでしょ!!
こんな所で再会できるなんて夢に思わなかったわ。もう離さないんだからぁ!!」
「おいっ!蓮!」
「大好きっ!和弥!」
より強く俺を抱きしめてくる蓮。
俺の親友であった蓮との再会は正直とてもうれしいが
その親友の大きな変化にいまだに頭がついていかず頭を悩ませる俺であった。
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