第3話親衛隊の存在と俺の受難
「………疲れた」
今、俺はやっとのことで授業を終えて疲れきった体を引きずりながら
教務室へ戻り着いた所である。
なんとか体を自分の机のところまで持っていき、体を落ち着かせる。
「伝馬先生……ずいぶんとお疲れのご様子ですが大丈夫ですか?」
隣のほうから話しかけられたので体を持ち上げ、そちらほうに体を向かせる。
俺に話しかけてくれたのは伊織先生だった。
伊織先生は最初のクラスの挨拶に付き添ってくれたり、隣の席ということもあり
新人の俺のことによく気をかけてくれる。
「なんとか……やっぱりまだ慣れていないのか、授業中変な力が入ってしまって……
授業終わった後にはどっと疲れが押し寄せてきますよ」
「そうなんですか……でも伝馬先生、無理は禁物ですよ!体が資本なんですから。
何か困ったことがあるならすぐ私に相談してくださいね」
と優しい言葉をかけてくださる伊織先生。
さすが男性教師&男性生徒の間でお嫁さんにしたい先生No.1に選ばれていることはある。
「ありがとうございます。でも大丈夫なんで」
「そうですか……本当に本当に大丈夫ですか?
どこか痛むとか、生徒にいじめられているとかないですか?」
今、伊織先生は過保護な姉と化していた。
心配してくれるのはうれしいがちょっとこれは度が過ぎている感じがする。
「大丈夫ですから!!体中どこも痛んだりしてませんし、生徒からも
いじめられたりされてません!伊織先生が心配するようなことは起きてませんから」
安心させるため少し大きめな声で言う。
「そうですか?それならいいんですが……でも、先ほど言ったように
何かあったらすぐに私に相談してくださいね?絶対ですよ」
なんとか伊織先生を落ち着かせることに成功。
やはり伊織先生は俺のことを自分の弟のように見ているところがあるらしく
時々こんな事態になってしまうことがある。
まあ俺の年齢からしてなかなか先生として見るのは難しいからこういう状況が生まれてしまうのかもしれないけど。
ちょっと伊織先生と会話をすると疲れが……
悪気があるわけではなく好意によることだし、俺自身もこの状況に少し嬉しさを
感じてるのも事実。
弟のように見られていても伊織先生のような美人と話をすることだけでも
よしと思わなければならないなっと思う俺。
姉弟の会話とも言える会話を伊織先生と繰り広げているといつのまにか時計は12時30分を指し
もう昼休憩の時間になっていた。
伊織先生との会話を中断し弁当を持ってきてない俺は食堂行くことに
「カ――ズ――ちゃ――ん――」
いやな声が聞こえた。正直幻聴であってほしいと切に願うほど
この声はここでは聞きたくなかった。
だが俺の意思とは反するように声は徐々に大きくなり、クリアに聞こえてくる。
「カズちゃん!!!」
この声とともに声のぬしは俺の背中に激突してきた。
いきなりぶつかってくるとは思ってなかったので息ができず、背中を丸めうずくまる俺。
「どうしたのぉ!?カズちゃん!うずくまって……おなか痛いのぉ?」
さっき自分がやったことはまるで関係はないという感じで話しかけてくる。
ゆっくり息を吸い、呼吸を整える。
「みっ、宮本!いきなりぶつかってくるんじゃない!!それに学校ではカズちゃん
って呼ぶのはやめろとなんども言ったはずだが……」
激突少女もとい飛鳥は俺の言っていることに納得がいかないのか頬をふくらませ
「だってぇ〜先生って呼びにくいだもん!それにクラスのみんなだって
先生なんて呼んでないよぉ!」
「たしかに……そうだが。でもカズちゃんは学校ではやめてくれよ。恥ずかしいから」
「だめぇ!!カズちゃんはカズちゃんなの!!」
飛鳥は断固俺のことをカズちゃんと呼ぶのをやめないらしい。
昔から呼び続けているあだ名なので、飛鳥自身それなりに気に入っており
変えたくないのだろう。
とはいえこの歳になってちゃん付けはないだろう……と思うのも事実。
正直クラスでそのあだ名で呼ばれたときは一時期生徒の間でも「カズちゃん」という
俺の呼び名がはやり、クラスの過半数から「カズちゃん」と呼ばれたときにはさすがの俺も
全力に止めにかかった。
「カズちゃん!カズちゃん!お昼もう食べた?」
俺が少し前の死闘を思い出してるのも露知らず能天気に俺に話しかける飛鳥。
「昼ごはんか?昼ごはんならこれから食堂行こうと思っているところだが」
「そうなのぉ!なら私も行く〜!!カズちゃん早く行こう!」
と俺の手をつかみ、引きずりながら俺を食堂へ連れて行く飛鳥
昔からそうだったが基本的に俺の話は無視で超マイペースを貫くそれが飛鳥だ。
そして昔も今も変わらずトラブルメーカーであり俺に災難をもたらす存在。
今、俺は飛鳥と一緒にいる。それも仲良く手をつないで……
……ってことはやはり噂のあいつらが現れるのは時間の問題―――
「待ってぇぇぇえええい!伝馬和弥!!」
すごい巻き舌に感動を覚えつつ声のほうに体を向ける。
するとやはり俺の予想通り
「我の名は飛鳥ちゃんファンクラブ会員第1号会長 須藤太郎なりっ!!」
そこには30代おっさんのような風貌をした身長2メートル近くの男子生徒がそこにいた。
後ろには飛鳥LOVEというハチマキを巻いた集団がパッと見40人近くいた。
「すまんが……本当に高校生?」
「やっかましぃぃ!!伝馬和弥!!早く飛鳥ちゃんから離れ、
正義の鉄槌をくらいがいいぃぃ!!!」
「本当に高校生?」発言がやばかったのか殺気に近い視線を俺にぶつけてくる。
こいつらは非公式同好会飛鳥ちゃん親衛隊の集団でこの学校で飛鳥ちゃんが
暮らしやすい学校生活を作り上げる&飛鳥ちゃんを崇めるのを目的とするものらしい。
まあ簡単に言えばただの追っかけにかわりない。
この学校に勤め、数日経った頃にクラスの生徒から聞いたのだが
飛鳥はこの学校ではいわゆるアイドル的な存在らしい。
まあたしかに顔は綺麗なほうだし人気があってもおかしくないとは思ってはいたが
一つ変わったことを生徒達から耳にした。
それが親衛隊の存在
その生徒いわくかなりやばい集団らしく、飛鳥のためなら命を捨てる覚悟すらあるらしい。
そして集団内ではある掟があるらしく
例をあげれば自宅乗り込まない、呼び捨ては禁止、話しかけるときは常に2人以上で
などなどがあり俺はそれをことごとく破っており
俺が親衛隊から目の敵とされてるから気をつけたほうがいいと生徒が話してくれた。
そしてその生徒の予想どおり今、目の前にはその親衛隊が立っている。
「ちょっと待て!ただ一緒にいただけで制裁をくわえるなんて理不尽すぎるぞ!!」
俺は弁解を試みてみる……が
「黙れぇぇぇぇぇ!!伝馬和弥!お前はなぁ!飛鳥ちゃんにかっかっカズちゃんとあだ名で呼ばれているだろうがぁぁぁ!!俺だってなぁ!一回でいいからたろうちゃん!って呼ばれて見たいわぁぁぁ!!」
あまりにも身勝手すぎる……
そんなことで殺されそうになる俺って……
とはいえこのままじゃ俺の命がやばいのでなんとか説得を試みる。
「お前な……何か間違ってないか?たしかに宮本からはあだ名で呼ばれてるがそこには何の感情もなくただ昔からの習慣から出てきたものであって好きとかそんなもんは1ミクロンも含まれておらず脳の中に刻み込まれた記憶を反映させ反射的にいっているのであってだな……」
などと長々と難しい言葉を織り交ぜつつ説得を試みる。
するとさっきまで赤い顔して怒っていた会長は少しずつ冷静さを取り戻していったのか
まじめな顔をして俺の話を聞いている。
説得はうまく親衛隊をおとなしくする方向に向かっていく。
自分に意外な才能を見つけ、少し驚きつつ
最後の一押しにかかろうとすると……
「えっ!違うよぉ〜私カズちゃんのこと好きだもん!ずっ〜と前から好きだったもん!
なのにカズちゃんどうしてそんなこというのぉ!」
――――――パキッ
イレギュラーが発生した。
つうか俺も予想できない事態が発生。
さっきまで俺の話をまじめに聞いていた会長も今は体を震わせて俺のほうに殺気を……
「やはりぃぃぃ!!伝馬和弥には我が正義の鉄槌をぉぉぉぉ!!」
「違う!この好きというのはな、友達や家族愛のような好きであっていわゆる
loveではなくlikeだから君達が思っているようなものでは……」
「死ねぇぇぇ!!同士よ!伝馬和弥に鉄槌を!」
「「「「「「死ねぇぇぇぇ!!伝馬和弥!!!」」」」」
もう説得は無理だと判断し、この場からの脱出を図るため俺は全力で走り始めた。
「ちょ、ちょっとぉ!カズちゃん!食堂は〜?」
飛鳥が俺に話しかけていたみたいだが、返す余裕もないので無視することに……
「死ねぇぇぇぇ!!」
「殺せぇぇぇぇ!!」
「お前達!俺は先生だぞ!こんなことしたら退学ものだぞ!」
「そんなものは怖くないわぁぁぁ!!飛鳥ちゃん親衛隊は飛鳥ちゃんのためなら退学
くらい痛くもかゆくもないわぁぁぁ!!!」
マジでこの集団は飛鳥のためならどんなことでもできるらしいな。
この根性は尊敬に値する。そう思いつつ先生らしかなる廊下を全力疾走し
昼休憩の間親衛隊から逃げ続けた。
なんとか逃げ切ることの出来た俺だが
結局昼食も食べることが出来ず空腹と信じられないくらいの疲労を背負い
次の授業に向かった。
今日の放課後にでも伊織先生に相談に乗ってもらうかなとまじめに考える俺であった。
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