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先生は17歳!?
作:takuto



第36話記憶の邂逅


「……どうするよ、俺」


冒頭からすまないが俺は今、ものすごく焦っている。いや、悩んでるというべきか。
言うなれば某カード会社のCMの「どーすんの!?オレ」状態である。
微妙な表現をしたような気もするが……
とにかく、何を俺がここまで頭を悩ませているのかというと……
その原因の根本である人物達がいる方向に体を向ける。


「やっぱりお姉ちゃんとしておいしい料理作らなきゃね!」
「それは私の台詞よ伊織。私が伝馬くんに栄養バランスもちゃんとした料理を作ってあげるんだから!伝馬くんのお姉ちゃんとして!」
「二人ともいいのよ……知ってるでしょ?この中で私が……一番料理がうまいことを……
だからかーくんを満足させられるのは……私だけ」


調理場が……戦場と化している!!
その戦場と化した台所で同僚である先生の3人は今、俺のために料理を作っている最中だ。
なぜ、こんなことになってしまったのか
それを振り返るには今日の朝の職員会議までさかのぼる事になる。


朝の職員会議
俺はいつものように席に座り、ボーっと教頭が伝える連絡事項を頭に入れながら
今日は授業が少ないから楽だな〜とか言うありきたりなことを考えていると


「伝馬先生。ちょっと話が」


と職員会議の終わり頃教頭から呼び出しを受けた。
職員会議が終わり、何か用事でもあるのか?と思い、教頭の元へ向かうと


「いきなりですが……今日、あなたに宿直というものをしていただきたいのですが」
「……はい?」


いきなりのことで変な応答になってしまった俺。
詳しく説明を聞くと、この学校は勤務者が交替で泊り込んで夜の警備にあたらなければならないシステムがあるらしい。
俺は17歳ということでどうしようかと校長と頭を悩ませたのだが、とは言ってもここの先生である以上仕方がないがやってもらおうと言う意見に達したらしい。


「ということになったんだが、よろしいかな?」
「あっ、はい!わかりました」


俺はすぐに了解の返事をする。


「それで宿直のことなんだが、伝馬先生には一応17歳という年齢ということもあって、一人では危ないと思ってね、誰か他の先生と一緒に宿直してもらうことにしたんだが、その先生を誰にするかはまだ決めて―――」
「「「私がします!!!」」」


教頭の話の途中に割って入る大きな声
何かと思い教頭と同時にその声の聞こえる方向に顔を向けると
伊織先生と橘先生と葉月先生が手を挙げていた。
その後はみなさんも予想がついていると思うが3人の言い合いが始まる。
あーでもない、こーでもないと三者三様の言い方で言い合う。
そして、結局のところ教頭の「3人とも宿直すればいい!」という一言により
3人の問題は解決し、今の現状となっている。
それで今は、先生達3人が俺に夕食を作ってくれるというので
宿直室のテレビを見ながら、完成を待っているのだが……
3人の尋常ではないプレッシャーが俺にダイレクトに伝わり、テレビどころではありません。
そんなプレッシャーと俺の戦いながら夕食完成を待ち続けた。


「ご飯できたよ!!」


伊織先生のその言葉により、やっとのことでこのプレッシャーとの戦いとも終止符を打ち
少し肩を落としながらテーブルへと向かう。


「あら?そんなに疲れた顔して伝馬くん、そんなにお腹減ってたの?」


それはあなた達のせいです。
とそんなことも言えるわけもなく「はい、お腹すいちゃって」と無難な返答をして
テーブルへと座る。


「…………すげぇ」


俺はテーブルに座った瞬間
目の前に広がっている光景に目を丸くさせて、固まってしまっていた。
なんと目の前にはフランス料理のフルコースのようなメニューが並んでいる。


「どうぞ、食べてみてください伝馬先生。私達の自信作です」
「三人で分担して作ってみたの。オードブル、サラダは伊織。魚料理、サラダは私。
メインの肉料理、スープは葉月ってなってるから」
「……どうぞ……めしあがれ」


ああ……神よ……俺を見放してはなかったのですね
ここに来て初めての喜びを感じ、涙まで流れてきそうな勢いだ。
俺はすぐさまナイフとフォークを取り出し、「いただきます」と言い食事を口に運んだ。


「…………」
「「「……どう?おいしい?」」」


3人が俺の顔を伺うように聞いてくる。


「……おいしい……おいしいよ!」


俺は純粋にすごくおいしいと感じていた。いままで食べたどんな物よりも何か違う
異彩の放ったおいしさをしていた。それになんだか……


「何でだろう……とても、とても懐かしい味がする……」


そうこの料理はなんとも言えない、表現することのできないなつかしさを感じる味がした。
昔……記憶の中……霞んだ思い出……いろいろな思いが自分の中で交錯している。


「……かーくん……どうしたの?」
「あっ、すいません。少しボーっとしていたみたいで……」
「そうじゃないよ伝馬くん……」
「……えっ?なにかおかしいですか?橘先生」
「伝馬先生……涙が……」


伊織先生に言われて初めて気づいた。
俺の目から流れ出る、止め処なく流れる涙……
拭っても、拭っても流れ出てくる……


「あっ、あれ?……おっ、おかしいな……料理がっ…おいしすぎるからって……
涙まで流さなくても……いいのに」


頭が混乱してくる……混沌が俺の頭で渦を巻く
なぜ?なんで?どうして?
自分に問いただしてみるもののはっきりした答えなど見つかりはしなかった。
今あるものは言いようのない強大な恐怖と……マッチ棒ほどのほんのちょっとした
温かさを感じさせる懐かしさ。
どうすることも出来ない、抑えることのできない感情の起伏


「すっ、すいません。どうっ、どうしたんだろう……感情のコントロールが……
うまくできな…い。早く…なんとか―――」
「泣いて……いいのよ」
「……いっ、伊織先生」


伊織先生はそう言って俺をやさしく抱きしめてくれた。


「我慢することはない……格好悪くもない……無理することも無い……
だから、泣きたければ……泣いていいんですよ?」


その言葉を聴いた瞬間
俺は声を出して泣いていた……
格好なんて……外面なんてどうでも良かった。
ただ俺は……泣き続けた。
言い知れない恐怖と懐かしい悠久の思いを抱きながら……



「寝ちゃったね……伝馬先生」
「そうね……子供みたい。いや、17歳だから子供みたいなものかな。久しぶりに会って
伝馬くん、すごく大人っぽくなってると思ったけれど……やっぱり」
「かーくん……やっぱりまだ……覚えてたね。麻衣のこと……あの料理は
麻衣がよく好んで作った料理だから」


3人は眠っている和弥を見ながら、思い出すように語り始める。


「あの時はびっくりしました。学校で自己紹介をされてまさか新任の先生が
伝馬ちゃんだったなんて……あの時はどんな顔で会えばいいか焦りましたね」
「でも、伝馬くんは覚えてなかった……麻衣の記憶とともに私達の記憶も……そして麻衣と関係したすべての人物の記憶までも」
「だけど……このごろかーくんは記憶を取り戻しつつ……ある」


そう……和弥の記憶は戻りつつある。
あの事件から閉ざされた記憶……止まったままの時間……


「伝馬ちゃんを助けてあげたい!そう思うんですけど……」
「私達ではどうにもできない。伝馬くん自身がどうにかしなければならないモノだから」
「かーくんには……辛い事だって……分かってるけど」


もう……都合のいい幻想世界に留まることはできない


「だけど!私達は仮ですけど、お姉ちゃんという立場で伝馬ちゃんの支えになってあげたい」
「見せ掛けかもしれないけれど、年上ではなくお姉ちゃんとしての温かさを伝馬くんに」
「かーくんは……絶対に……乗り越えてくる……そう、信じてるから……」


運命の歯車は動き出し、刻々とその時へ近づいていく

奥深くに閉ざされた記憶の扉はもう留めておくことなど出来はしない

だから彼女達は願う

和弥の未来が輝かしいものであることを……

過去という絶望に飲まれないためにも



前半はコメディで後半はシリアスって難しい……
この頃多いんですが、今回も先生達と和弥のつながりを書くだけだったのに
こんな流れに……この回の話は19話と同じで本筋に必要なもので流れとか考えずに書いてしまっているので微妙な感じがするかもしれませんがそこはお許しを。次からはコメディ中心で行くと思います。当分は……コメディが好きな人には申し訳ありませんでした。
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