第26話出会いと恋心
出会いと言うのは突然である。
それを強く思わされたのは小学生のとき、隣の家に自分と同じ日本人の男の子が
引っ越してくるときのことだった。
私は幼少の頃から親の事情でアメリカで育っていたため、自分と同じ日本人
それも同級生の男の子と会うなんてめずらしい、いや初めての事態であった。
私は自分の柄にもなく、緊張していた。
どうやって接すればいいのだろう?どんな話題が盛り上がるのだろう?
私の頭はパニック状態に陥っていた。
親の指導方法のおかげで日本語も話せるようになっていたとはいえ
日本なんて産まれる時にしかいたことのない国のことなど無知にもほどがあった。
そして、悩み続けて1週間……
その子との対面のときが来た。
結局のところ、あんなに事前で悩んでいろいろと考えていたのに
ずっと顔を下に向いたままで親交を深めるどころか、顔を見て話すら出来ない結果であった。
そして、その後はその男の子と接する機会もなく、2ヶ月の日々が過ぎていった。
そして2ヵ月後
その男の子と住んでいるおじさんから
その子の面倒を見ていてくれないかと私にお願いをしてきた。
その子は風邪を引いているらしく、看病をしていたいのだが特別な用事らしく
おじさんはすぐにでもその場所へ飛んでいかなければならないらしい。
私は一瞬、一切会話のしていない男の子の面倒なんて……
そう思ったが、かなり切羽詰っているおじさんの顔を見て
私は「わかりました」とその子の面倒を見ることを引き受けてしまった。
「どうしよう……」
その子の面倒を頼まれて、家の扉の前まで来たのはよかったのだが
中に入る踏ん切りがつかず、ただボーッと扉の前に立たずむ私。
こんなに私って臆病者だったのか?
そう思ってしまうくらいの逡巡っぷりだった。
かなりの時間が過ぎた後
やっとのことで私は中に入る決意を決め、扉をコンコンとノックする。
反応はなかった。よく考えれば当たり前だ。
相手は病人だ。気づいたとしてもどうすることも出来ないであろう。
私は軽く深呼吸をし、扉を開ける。
するとそこにはとても、とても寂しそうで消えてしまいそうな雰囲気の男の子が
横になって眠っていた。
私はその姿を見た瞬間
どうにも表現すること出来ない思いに捕われる。
そして、私は男の子の方へ歩いていき、男の子の手をつかみ私の両手で包み込んでいた。
「寂しくないよ……君は一人じゃない……大丈夫……私がいるから」
笑顔を向けつつ、私はこう言っていた。
「私の名前は朝倉沙希。君は?」
「……伝馬……和弥」
途切れ途切れながらも自分の名前を言う彼。
これが彼との出会いであった。
それからというもの私は彼をカズと呼ぶようになり
彼がどうしてここに来たのか、日本ではどういう生活をしていたかなど
いろいろな話をするようになっていった。
学校は天才であるカズと同じ場所に通えないとしても
家に帰ればカズと一緒に遊ぶ、カズに会える
それが定番化し、そして一番の楽しみになっていった。
それと同時にどうすることもできない熱い想いが生まれたのも……
私は周りの人が言っている恋とか愛とかは幻想で、一時の病気のようなものなのだと
勝手に決め付けていた。
だけど、私はカズに惹かれた……
理由はなかった。
そんなことはない!そういう人もいるだろう。
でも、これと言って理由は見つからなかった……
恋というものは案外理由なんていらないかもしれない……
私はそんな曖昧な恋心を持ちながら、日々は過ぎていった。
しかしある日からカズは私との会話を拒むようになった。
話しかけても無視するばかり……
理由が分からなかった。
何か私が気に入らないことを?カズが傷つくようなことを?
私は眠れない日々を過ごしていった。
数週間後……
私はカズのこの事態の理由を発見した。
知り合いの友達によると、カズは頭の良さにより周りか奇異的な視線で見られ
「サイボーグ」「アンドロイド」扱いされているらしい。
いわゆるいじめにあっていたのだ。
私はすぐにカズの元に向かった。
そしてカズにさっき聞いたことを話し、励まそうとした。
でも……カズは……
「事情が分かったならなおさらだ。沙希……お前は俺に近づくな!」
頭が真っ白になった。
分かっている……カズは私がいじめられないようにするために
こんなことを言っているのだと……わかっている。
でも、私は……私は!カズの事が好きなのに!こんなにも好きなのに!
何もすることができないの?支えになってあげられないの?
そんな思いが自分の中に生まれてくる。
しかし、カズは私に助けを求めてくることはなかった……
時は経ち、私はカズと話すこともなく
平凡な変化のない退屈な日々が過ぎていった。
あの日から私はカズに会うことなく、カズのことを忘れようとした。
でも、できなかった……一日たりとも忘れることはできなかった……
どこへいても、何をしていても……カズのことを考えていた。
結局私は自分の思いに我慢が出来なくなり
カズともう一度会うことに決めた。
だけどカズに会ってみると、カズは前とは変わっていた。
私にはいままで無視していたことを謝り、いままでがなんであったかのように
あっさりと仲直りが出来た。
私は驚いた。
私がいない間に何があったのだろう?
それはすぐにわかった。
私達が話している途中に「カズくん♪」と話しかけて親しげに話している綺麗な女性。
あぁ……この人なんだな……
私は直感的にそう思った。
この人がカズの支えになってあげてるんだなと……
正直な話、とてもくやしかった。
なんで私がカズの側にいれないの?
もう少し……もう少し私に勇気があれば!!
もしかしたら私がカズの側にいられたのに……
そう思った。
でも……それは私では……なかったのだ。
私では……だめだったのだ。
「カズくん?この人は……」
「えっ、あっ!こいつは俺の――」
「親友だ……そうだろ?カズ」
この瞬間、私の恋は一時の終わりを告げた。
その後は彼女と仲良くなり、泉とも友達になり
少し違うが、またカズと一緒に楽しい日々が過ぎていった……
カズが私の近くにいる……それだけで幸せだった……
あの事件が起こるまでは……
「ピピピピピッ!!」
「うん……朝……か?」
私はベットから体を起し、朝の光を感じる。
なつかしい夢を見ていたようだ……
もうあの時から何年の月日が経ったのだろう……
もうカズには昔の記憶はもう……ない……
でも、カズの近くにはいられる。
それだけでいいではないか。ぜいたくは言ってられない。
「さぁ、学校へ行かなければ……遅刻してしまう」
そういって私は学校へ行く仕度を始めた。
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