第20話遊園地にて……前編
「みんなっ、みんな〜!!早く!早く!」
「こら!飛鳥。もう少し落ち着きなさいよ。子供じゃないんだから」
「急がなくても、まだ時間はいっぱいありますよ飛鳥さん」
一人ありえないくらいのテンションで走り回る飛鳥。
それを母親のごとく引き止める蓮と奏。
それを俺は他人事のように眺めていた。いや、現実逃避がしたかったのだろう。
そう……初めはこんな予定ではなかった……それなのに……それなのに!!
「なんで俺は遊園地なんかにいるんだ……」
人がたくさんいる場所と言うこともあり、小声で愚痴を言う俺。
「何を一人でブツブツとつぶやいているのだ?伝馬氏」
「なんかそうしてるとカズくん、変質者みた〜い」
と俺に話しかけてくるのは朝倉と芹澤。
今の現状を生み出した張本人達の登場である。
というか芹澤!公共の場で俺を「変質者」呼ばわりするんじゃない!
お客さんの俺を見る目が少し冷たいだろうが!!
「お前らな……本当は今日……今日こそは!!ゆっくり過ごすつもりでいたのに……
それなのにお前達は簡単に俺の希望を打ち砕きやがって……」
そう二人に向かって、俺の思いを伝えつつ、朝の状況を思い出していた。
日曜の朝。
俺はめずらしく朝6時になっても、布団から体を抜け出さず睡眠に励んでいた。
昨日から決めていたことで、家の外に出る→知り合いに合う→バットエンド
と言う方程式が成り立つことを俺は発見した。
それならば、一日中家に引きこもっていればOK!と言う結論に達し
それを実行したわけだが…………
イレギュラー発生
いきなり俺の家に大量の黒服を着たゴツイ男達が押し寄せてきて
銃を突きつけられながら、早く着替えることを要求。
俺はビビリながらも殺されたくない一身で高速で着替えを終了。
そのまま、俺はゴツイ男達に担がれる様に車に乗せられ
気づいてみれば遊園地ってことだ。
結局は朝倉が自分の家のSPを使って俺を連れてきたと言うことが後で分かったのだが……
「朝倉……そこまでして俺を連れてくることないだろう?」
俺は朝倉に向けて、今日のことの文句を言う。
「仕方がないだろう。携帯に電話をかけてみるも留守電だし……
まあ、これはもう連れてくるしかないなと言う意見に」
「ああ……そうすっか……」
俺は力なく笑うことに……
さすがは金持ち。やることなすこと一般人とは違う。
「とにかくだ!もうここに来てしまったのだから伝馬氏も久しぶりに
童心の心で遊んでみたらどうだ?ここは朝倉グループの遊園地だからお金の心配もいらない
少しはその疲れた体の癒しになるかも知れんしな」
俺のほうに向いて言う朝倉。
たしかに遊園地なんて小学校の低学年に飛鳥といった以来久しぶりである。
それに、ここまで来て何もしないというのは間抜けな話なので
今日一日、遊園地を満喫することに決めた俺であった。
「ということで何に乗るんだ?」
俺は5人に向けて、これからの行動について聞いてみることにした。
「私はぁ〜やっぱり定番のジェットコースターに乗りたいっ!」
「ふ〜ん……私も飛鳥と同じでジェットコースターかな?」
「私は怖いのはちょっと……観覧車とかがいいです」
「奏……それは最後に乗るものではないのか?
まあいいが…私はCGとか使ったアトラクション物がいいな」
「私はやっぱり♪お・ば・け・や・し・き♪」
などの希望が上がった。
俺自身は正直それといってやってみたいものなどはなかったので、俺の意見はなし。
まずは飛鳥&蓮希望のジェットコースターに乗ることに決定した。
「ねぇ〜!ねぇ〜!カズちゃん!この登っていくときの
微妙な緊張感がなんかワクワクするねっ!」
「そうだな。まあこれが一つのジェットコースターの醍醐味でもあるわけだが……
そんなことよりも……奏?大丈夫か?」
俺は横に座っている奏にむけて声をかける。
「だっ、大丈夫ですよ!?少し苦手ですけれど……これくらい……」
そう、さっきから奏は言ってるが、俺からすれば自殺間際のリストラされた
サラリーマンの顔のように見えた。
元々奏は事前から宣言していたようにこの手の乗り物は好きではないらしい。
しかし、いざその場に行くと、奏でも含めて5人がジェットコースター席決めで
争っているのだ!!
何が奏を突き動かしたのかは知れないが、奏は俺の横の席に決定した。
だが、乗ってみれば……案の定……この様である。
さっきからブツブツと独り言を言ってると思ったら
突然ガクガクと震え始めたりと忙しい奏である。
俺はそれを見ていて、いたたまれない気持ちになって
奏の手を……にぎった。
「……えっ?」
奏はさっきまでの慌てぶりは何処へやら、ポカンとした表情で俺のほうを見ている。
今考えれば、俺は奏の手をにぎるなど、すごいことをしているのだが
その時は奏の恐怖心をなんとかするためにいっぱいいっぱいになっており
そこまで俺の頭は回っていなかった。
「奏……こうすれば少しは怖いの収まるだろう?」
落ち着かせるために言葉もかけておく。
すると奏はさっきみたいなおびえた様子はすっかり消えたようで
「あっ!はい……和弥さん。ありがとうございます……」
そういって手をにぎり返した奏であった。
ジェットコースターはなんとか奏も気絶などのハプニングもなく、終了することが出来た。
しかし、降りてからも奏はまだ恐怖心があるのか俺の手を離さずに握っていたため
4人から変な目で見られたのは言うまでもなかった。
満面に広がる星空
ちょっと目線を横に向ければ、そこに見えるのは何億年も前から存在する太陽
だが、そんな余韻も与えぬまま、時は無残にも人々を戦いへといざなっていく。
彼は立ち上がらなくてはならない……未来のために……そして家族のために……
冒頭からすまないが、俺たちは今、スペースシップアドバンスとか言う
CGグラフィックを利用したアトラクションに乗っている。
これは朝倉の希望で本人もこれにはまだ乗ったことがないらしく
朝倉らしからぬ興奮具合で会場に入っていった。
まあ、また席について争いをしていたわけだが……
今度は俺の左右には蓮と朝倉が座っていた。
蓮はじっくりとこの物語の内容を読んでおり、朝倉は
「いや〜。この手のものは大好きでな!特にSFとかは
ど真ん中ストライクで好きなのだよ!!」
とかなり興奮気味にSFの良さというものを俺に語ってくれた。
そうしているうちにアトラクションは開始した。
始まるまで俺はどうせ子供だましだろ?と甘く見ていたのだが
ところが意外や意外!CGもかなり綺麗さであり、よく動く。
それに下の椅子(?)みたいものの動きも、その場の臨場感を出すのに一役買っていた。
そのまま俺のテンションもグングンと上がっていきながら
物語はクライマックスへと進んでいく。
最後は主人公とボスの宇宙船による空中戦になっていった。
もう動きは劇場版逆襲のシャ○のνガン○ムVSサ○ビーのごとく
激しい戦いを繰り広げていた。
すると、相手の攻撃が主人公の機体にヒット!その衝撃が俺たちにも伝わる。
「キャッ!……」
女性の悲鳴が聞こえる。
何かと思い横を見てみると…………
朝倉が俺の腕にしがみ付いていた。
「…………へっ?」
俺はいきなりの状況に混乱する。
抱きついているのはまさしく朝倉である。ということはさっき……女の子みたいな
かわいい声を出したのは……
「てっ、伝馬氏。すまなかった……いきなりの椅子の動きに少し驚いてしまったようだ」
朝倉は俺に向けてこうなった経緯を説明する。
「わかった。朝倉がこんなことで驚くのがめずらしいが了解したよ。
だからさ……その……もう離れてほしいだが」
俺は朝倉が抱きついているほうに目を向けて言う。
正直、さっきの奏と言い、俺は女性にくっつかれるなんて、あまりない事態なので
俺は奏での時からドキドキしっぱなしである。
「…………………」
「どうかしたか?朝倉?」
朝倉は俺のほうをじっと見つめていて、腕を放してくれない。
「伝馬氏……私に抱きつかれるのがそんなに嫌か?」
そんな質問を俺に投げかけてくる朝倉。
「ちっ、違う!!俺はな……女性に抱きつかれたことなんてあんまないんだ。
さっきからドキドキしっぱなしなんだ。どうにかなる前に離してくれ!頼む!朝倉!」
正直かなり恥ずかしいことを俺は言っているが、この状況を打破するためなので
仕方がなく自分の本音を朝倉に伝える。
するとさっきまでふてくされた様な顔をしていた朝倉がにんまりと笑った。
「そうか……そうか。伝馬氏は私に抱きつかれてドキドキしているのか……
じゃあ……これはどうだ?」
そう朝倉が言うと、さっきより体を近づけて、力強く抱きしめてきた。
これによりさっきより朝倉の体の感じが俺の体にダイレクトに伝わるようになり
俺はもういままでにない混乱が起きた。
落ち着け……落ち着け……落ち着けぇぇぇぇぇ!!!
って落ち着くわけねぇぇぇよ!!ヤバイ……俺の頭がなんかヤバイ……
「どうしたんだ?伝馬氏。顔が信じられないくらい真っ赤だぞ?顔も汗でびっしょり……
フッフッ……じゃあもっとすごいことしたらどうなるかな?」
そう、悪魔朝倉がにんまりと笑顔で次の行動に移ろうとすると……
「何やってんのよ!!!」
救世主が現れた。
横にいた蓮がやっとのことでこの危ない状況に気づいたのだ。
いつもは俺にトラブルしか持ってこない蓮。
だが、俺のピンチとなればさすがは一応親友!さっそうと助けに来てくれるのだ。
「何……なに和弥にしてるの!!私もする!!!」
何言ってるの?蓮……
その後は蓮と朝倉のいい合いである。
「和弥に抱きつくなんて何一人でうらやましいことしてるの!独り占めはよくないわよ!」
「独り占めって……そんなことより伝馬氏といい雰囲気だったのに……」
「まっ、まさか……沙希も……和弥のことが……」
「悪いのか?そうだよ!私も飛鳥や奏やあなたと一緒だ」
「予感はしてたけど……まさか……っていうか和弥ライバル多すぎ!!」
なんか俺には良く分からないが言い合いをし続けている二人。
だが……ここは遊園地のアトラクション会場である。
この騒ぎによりアトラクションは一時停止。
このまま遊園地から追放を受けそうになるが朝倉がいたおかげに注意ですんだ。
こんな調子では体をリラックスさせることなんて到底無理だな。
と一人溜息をつきながら思う俺であった。
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