第19話運命の歯車
「ただいま……」
俺はそのまま家の玄関で倒れる。
今日は朝からなかなかハードな仕事が多く、体が極限まで疲れていた。
家にたどり着くまでに何度力尽きそうになったことか……
だが、幸いなことに明日は土曜日。
そう、学校は休みなのである。
俺は最後の力を振り絞り、居間のソファーまで自分の体を持っていき、そのままダイブ。
「今日は……飯も風呂もいいよな……こんなに疲れてんだし……」
誰かいるわけでもないのだが、一応言い訳をしつつ
今日は何もせず、就寝することにした。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
俺は息切れしながらも、一人坂道を登っていた。
時計を見ると時間は「8時8分」
待ち合わせ時間は8時5分なため、もう3分の遅刻だ。
みんな怒っているだろうか?
特にあいつは「まったくカズは……このようになるのは私生活がなっておらんのだ!」
とか言って、俺に向かって攻め立ててきそうな感じがする。
そう考えていると、坂道の終わりに差し掛かり
いつもの待ち合わせ場所が見えてくる。
そこにはニコニコした顔の少女と少し怒り気味な顔をした少女……
そして……あの人がいた。
俺は少し駆け足で3人の元に向かう。
そういえば、今はこんな風に自然に登校しているが、少し前までは違う状況であったことを
俺は思い出していた。
俺は教授などのスカウトによりアメリカの学校へ入学した。
入学した当初、俺は「天才」と言う肩書きを持って入学したため
周りの人間から物珍しい視線で見られていた。
だが、しだいに周りの人間は俺のテストの成績、実験のレポート、授業などにより
俺のことを奇異的な視線で見るようになっていった。
まるで、変なモノを見るような視線で……
自分から話しかけてもまるで汚いものでもを見るような視線で逃げてしまう。
授業の時や昼食時なんかも、俺の周り5メートル以内には人が近づかなかった。
いわゆるいじめだった。
俺は急な孤独感に襲われて、人間不信に陥った。
まるで世界が俺一人になってしまったみたいに……
俺は人の目に触れられることを強度に嫌がるようになり
最終的には一人黙々と勉強に没頭していくようになった。
そのためか俺は世界中から注目されるほどの頭脳を手に入れることになった。
自分の感情と言う対価を払うことによって……
だが、転機というものは唐突に訪れる。
それは、俺が昼休憩中にカフェテリアで昼ごはんを食べているときのことであった。
いつものように俺の周りには人は寄り付かず
「サイボーグ」「アンドロイド」
などの言葉が小言で飛び交っていた。
そんな中で唐突に誰かが俺に話しかけてきた。
「すいません〜。隣、座ってもいいですか?」
その方向に俺が視線を向けると、そこには美人と言う言葉では片付けられないほどの
綺麗な少女が立っていた。
そう……これがあの人との初めて会話であった……
あの人との出会い……
それはこれからの俺の運命を大きく変える存在となる重要な人物であった。
少女と出会い、接することによって俺はふたたび感情を取り戻し
生きるための大切さと楽しみを見つけることが出来た。
「天才」と言う肩書きを気にすることのない友を持つことが出来た。
そして何より…………
「はぁ、はぁ、はぁ……すまん……寝坊した」
俺は3人の前についた瞬間、すぐに遅れたことについて謝った。
「遅いぞ!!カズ!!まったくカズは……このようになるのは私生活がなっておらんのだ!」
予想通りの言葉が返ってくる。
「まあ、まあ……落ち着こうよ。こうやってカズくん来てくれたわけだし」
「まあ……そうなんだが……」
その横ではニコニコした顔の少女が怒っている少女をなだめていた。
このように言われたら怒っていた少女も怒りは収まってしまったようだ。
「おはようございます♪カズくん♪」
そして後ろに立っていたあの人が俺に話しかけてきた。
俺は視線をあの人の方向に向ける。
正直、あまりにも可憐すぎて、俺は直視することが出来ず、真っ赤な顔をして
下を向くことしか出来なかった。
「おっ、おはよう!――――さん。さっ、さあ……学校行こうか」
「そうだね!」
「そのようだな」
「そうですね♪」
そう言って、俺達4人は学校に向かって歩き始めた。
そう……こうやって4人……いつまでも並んで歩いていける……そう思っていた。
この時の俺は間違いなくそう思っていた。
しかし……運命の歯車はもう……回り始めていたんだ。
あの……事件に向かって……
「――――っ!」
「……なん……なんだ?」
俺はいきなりの物音により、目を覚ました。
起きたばかりなので、まだ俺の頭は思うように回っておらずボーっとしている。
周りを見渡すと、目覚まし時計がなっていた。
平日の設定のまま眠ってしまったため、かなり早い時間に目が覚めてしまったらしい。
俺はソファーから立ち上がろうとする。
すると異変に気がつく。
ソファーが広範囲で湿っていたのだ。
そして俺の顔を鏡で見てみる。
すると、俺の顔は目が真っ赤にはれていて、顔には線のような跡まで残っている。
「おい……これじゃあ……まるで……」
そう……伝馬和弥は大量の涙を流していた……
未だ心の奥深くに眠る大きな傷跡の衝動……
失くした記憶……悲しみ……
それが涙として表れた……それだけのことである。
伝馬和弥はまだそのことに気づいてはいない……
だが……あの事件から止まっていた運命の歯車は……
また……ゆっくりと……ゆっくりと……動き始めたのだった。
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