第1話初出勤そして再会
今、俺は教室の入り口の前に立って自分の名前が呼ばれるのを待っている。
まるで気分は転校生のようだ。
いや、俺は先生としてこの高校に来たのであって生徒としてではない。
とはいえ間違いなく、この場面は転校生が一番初めに感じる緊張の瞬間であり
俺も同じく心臓をバクバクさせ名前を呼ばれるのを待っていた。
えっ?なんで俺が教室の前で待たされているかって?
まあ、それはこの学校に出勤してくるところから始まるわけだが……
俺は今日もいつもより早めの時間帯に目を覚まし、やはり転校生が初登校するときのように
ソワソワしながら学校へと向かった。
一応、これから勤める学校のことを少し紹介しておこう。
俺が勤める扇山高校は男女共学の高校で
中高大一貫校というエスカレータ式のため学力も優れているわけでもなく
部活方面もいたってズバ抜けたものもない
いわゆる普通の学校らしい。
まあ変わったところといえば割に合わないくらいの大きな校舎が特徴といえば特徴であるが。
とまあ、そんなことをしていると俺は校舎の前まで来ていた。
写真越しでしか学校の姿は見ていなったが正直そこらへんの大学よりも広い校舎に感動を覚え先生達が集まる教務室へと向かう。
「失礼します」
と一言いい教務室の中に入る。
朝の会議中だったのか先生は一同に勢ぞろいしておりいっせいに俺のほうに顔を向ける。
そして一瞬のうちに皆、怪訝そうな顔になる。
まあ、あたりまえの反応であろう。
俺みたいな歳のやつがスーツを着て教務室に入ってくれば変な顔の一つや二つあたりまえだ。
そんな中、パンフレットで見た校長が俺に向かって歩いてくる。
「きみが伝馬和弥くんかな?」
「あっ……はい!」
と返事を返す。
いきなり話かけられたので少し戸惑ったが、ちゃんと返事することは出来た。
すると校長はやさしく俺に笑いかけて教務室の中央へと俺を移動させる。
「もうみんなには事前に話をしていたと思うが、今日から数学の教師を担当してもらう
伝馬和弥くんだ。17歳という年齢だがアメリカの大学を卒業して正式な教師免許をもっている
とは言え、まだ若いからみんなからもよろしく頼む」
初めに軽く自己紹介をされた。
つうかここに来て初めて自分の担当する教科を聞いたわけだが……
周りの先生達は当初は俺の予想通り、動揺を隠せない感じではあったが
すぐに慣れてしまったらしく、途中からフレンドリーに話し掛けてくれたりもした。
ここの先生は意外と気さくな人が多いらしく、俺が17歳ということすら忘れているのでは
ないのか?と思ったくらいだ。
先生への自己紹介が終わった後
俺は校長に自分のクラスに行き、先生の紹介をすることを命じられ
さっそく自分のクラスの教室へ向かおうとするが
校長に「彼女と一緒に行ってくれ」と言われ若い感じの女の先生と教室へと
向かうこととなった。
校長曰く……
「先生には事前にこのことを話していたが、生徒はまったくこのことを知らないので
まず最初に彼女に説明してもらったほうがいいと思うんだよ」
と説明された。たしかにいきなり17歳の先生が入ってきたら間違いなく教室は
静まり返るかパニック状態に陥るのどっちかになるだろう。
そして俺は冒頭のように教室の前で、先生の紹介を受けるのを待っている状態だ。
受け持つクラスは2年C組でこれから俺は同い年の子達に数学を教えなくてはならないらしい。
「は〜い。2-Cの担任をしていた青木先生は急な転任が決まり
今日から新しい先生がくることになりました」
クラスがざわめいているのが、この扉越しからも感じる。
「新しい先生は男?それとも女の人?」
「男性ですよ!」
「マジで!?だったらかっこいいの?先生的にはどう?」
「年齢はいくつくらい?若いの?」
「どこ出身の人?」
などなどいろいろとまだ見ぬ先生のことについて質問をぶつけてくるクラスの生徒達。
つうかこの俺の姿見たらどんなリアクションをとるか
考えなくても、どう転がってもいい方向に向かう気は1ミクロンも感じられない。
「静かに!!質問は後からその先生に直接聞いてちょうだい。あとこれから起きることは
すべて現実だからそのことは注意しておいてください」
出だしから生徒達に注意した先生。おかげで気分も少しは楽になった気がする。
「伝馬先生……はいってください」
ついに呼ばれた。もう覚悟を決めて入るしかないようだ。
1回大きな深呼吸をし、俺は扉を開けた。
ざっと見て30人くらいの数の生徒達が見える。
俺はそのまままっすぐに教壇に向かい、自分の名前を流れるように黒板に書く。
「さきほど紹介してもらいましたが、今日からこのクラスを
受け持つことになりました伝馬和弥です。担当する教科は数学です。
まだ教師になって間もないですがどうぞよろしくお願いします」
昨日の準備段階から考えていた自己紹介をかまずにすべてしゃべり終え
ちょっとした充実感を感じながら、生徒達の方向に顔を向ける。
予想通りだが生徒達は戸惑いを隠しきれない状況で誰一人として言葉を発しようとはしない。
その沈黙の中、一人の生徒が手を上げた。
「すいません、伝馬先生。よろしければ年齢を教えてもらってもいいですか?」
予想していたとおりの質問が飛んでくる。
「ああ、年齢ですか。17歳です」
正直に答えることにした。
さっきまでの沈黙が嘘のように、ザワザワと騒がしい雰囲気に発展する。
今度はさっきとは違う生徒が手を上げ
「17歳ってことは先生は俺らと同年代っていうこと?」
「ああ、そういうこと。君達とは同い年で普通なら同じように高校に通っているよ」
この発言により教室はパニックになった。
「なんで俺らと同い年が先生?それも担任?訳わかんね〜!!」
「えっ?えっ?なんで17歳で先生なれるの?」
「信じられない……この学校が信じられないっ!!!」
もう収集がつかない状況だ。
まあ確かに自分と同じ年齢の先生が出来たら、俺だって間違いなく大騒ぎしてる事だろう。
こんな非常識は普通ありえないのだから……
パニック状態に陥った教室は一緒に来ていた女性の先生が俺がここにいる事情を説明し
なんとかその場の雰囲気を落ち着かせることに成功した。
そのまま生徒の顔と名前を覚えるため、出席確認をすることとなる。
「斉藤」
「……はい」
「清水」
「はっ、はい!」
「瀬川」
「はい」
という具合に名前呼び、その生徒の顔を見て頭の中に入れていく。
やはり成り行きとはいえ先生になるのだから最低限やるべきことは
やっておかなければならない。
そう思っているので真剣に名前と顔を一致させていく。
そして名前を呼び続けていると、ある名前の存在に気づいた。
宮本飛鳥
一瞬見間違いかと思い、もう一度見るがやはり宮本飛鳥と書いてある。
ついにその宮本飛鳥のところまで名前を言い終わり
その生徒のほうに顔を向けた。
そこには髪はツインテールの顔の整った少女が一人……
昔あったときとは外見はかなりの変化をとげているが昔、毎日顔を合わせていた
幼馴染の姿がそこにあった。
多少動揺してしまったがすぐに建て直し、名前を呼ぶ。
「宮本」
「……」
「宮本」
「……」
「宮本!!」
「……えっ?あっ……はい!」
3回目にしてやっと呼んだのに気づいたのか、少し大きめの返事を俺に返す。
昔から飛鳥は抜けている性格なので昔と同じようにボォ――――っとしている
のかと思ったが……違った。
さっきからずっと俺の方に向けて、にらむような視線を向けてくる。
人の目など気にせず、ずっと俺のほうに……
確実に周りの人もその飛鳥が向ける視線に気づき。怪訝そうな顔で俺のほうを見る。
正直俺は何もしてしない!!と声を大にして叫びたくなるくらい
ずっと飛鳥は俺が教室を出るまでにらみ続けていた。
今日は初出勤のためか、授業は明日かららしいので身の回りの準備や
校舎の把握などいろいろと事務的なことに時間を使った。
やっぱり驚いたのはこのドラ○エの魔王の城なみに広い校舎
かなり本気で走って周りを駆け回ったが、結局全部回ることができなかった。
マジな話、校舎にトイレだけ何十個もある建物はいらないと本気で思った。
そんなこんなしている間に放課後の時間になり、用事もある程度済んだ俺は
周りの先生にあいさつをして先に帰らしてもらうことした。
「ん?あれは……」
外に出て学校の外に出る途中校門に寄りすがって誰かを待ちわびているようにたたずむ少女
まあ率直に言えば飛鳥がそこ立っていた。
無視するのもなんだし俺は飛鳥のクラスの担任でもあるので話し掛けてみることに
「おう!宮本なにそこにつったんてんだ?」
先生とは思えないほど軽い感じで話し掛けていた。
こっちに気づいたのか飛鳥は俺のほうに向かって歩いてくる。
「伝馬先生。少し話があるんですが……」
「どうしたんだ?」
「えっと……えっと……あの……」
飛鳥は頭を抱えて悩んでいるようだ。何か言いたくてでも言い出せない感じで……
「いいから。はっきり言ってみろ!なにか俺に言いたいことがあるんだろう?」
この言葉でなにかが吹っ切れたのか表情が一変し、まじめな表情に変わる。
「伝馬先生、間違ってたらごめんなさい。でも確認しておきたくて……
先生は私と昔遊んでくれたいつか私との再会を約束してくれたカズちゃんですかぁ?」
「………」
「すいませんっ!!わたしいきなり先生に向かって
意味不明なこと言っちゃって……すいません」
「…………っはははっあはは!!」
「なっ!なんなんですかぁ!なんで笑うんですかぁ先生笑うなんてひどいですよぉ……」
あまりにも真剣なまなざしを飛鳥が俺にぶつけてくるものだから
驚かす前に笑ってしまった。
さすがにかわいそうなので真相を話すことにする。
「久しぶりだな……飛鳥」
「……えっ!」
さっきまで顔を真っ赤にして怒っていた飛鳥が目を大きく開けこちらを見る。
「本当にカズちゃんなの?嘘なんかじゃないよね」
「ああホントだ。俺は飛鳥と5年前に再開を約束した伝馬和弥だよ
こんな形で約束を果たすことになるなんて……思いもしなかったがな」
「……カズちゃん!」
言うと同時に駆け寄ってくる飛鳥。
そのまま俺の体にくっつき抱きしめてきた。
「おい!これはヤバイ!つうか俺、一応教師だから」
そんな俺の声も聞こえてないのか、さらに強く抱きしめてくる。
「あ、うわぁ、カズっ……カズちゃん!カズちゃん!すごく寂しかったんだからぁ
すごく逢いたかったんだからぁ!」
泣いているのかうわずった声で俺の文句を並べる飛鳥。
しかし、なぜかこうやって飛鳥との再会により俺はやっぱり故郷に帰ってきたんだなという
ことを改めて実感がわいてしまい感慨深い気持ちになる
俺なのであった。
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