奥田民生に便乗した伝記です。蛭川陽介というのはごはんライスの本名。半分ノンフィクションです。つまり半分フィクション。民生ファンが読むと面白さ倍増!(やったー)民生ファンじゃない人が読むと面白さ半減!(しょぼーん)では、どうぞ。
蛭川陽介が大学生時代の話である。当時好きだった子が結婚してしまった。
蛭川は腹が立って剃刀をその子に送った。今で言うストーカーだネ。
すると、何ということ! 彼女が怒って蛭川に爆弾を送ってきた。
要するに、まぁ書かなくてもわかるか。つまり、手紙の封を開けると爆発する仕組みになっていたのだ。つまり、今で言うテロリズムだね。
蛭川は病院で生死の境をさまよっていた。そして、ついには半分ロボットになってしまったサイボーグ蛭川。警察に事情聴取されるもいかんせん真実が言えない。彼女のことをしゃべると剃刀を送ったことがバレる。
警察は「お大事に」と言って帰ってしまった。そんだけかよ! どんだけ!
とにかく蛭川はむかっ腹が立ってたまらない。何とかして彼女を恐怖のどん底に陥れたかった。
その夜、入院中のベッドで友人が差し入れしてくれた奥田民生のCDを聴いていた。
木のかげで泣いている 美しい人の悲しい姿
彼女のつらいわけなど きっと僕にはわからないので
「恋のかけら」というミディアムテンポのロックラブソングである。
これを聴きながら蛭川は名案が思い浮んだ。
木のかげに誘い出して犯してやろう!
蛭川は病院を抜け出し彼女に電話した。
木のかげで二人は会った。
「もう蛭川くん。いいかげんにして。あたしダーリンとラブラブなんだからジャマしないでちょーだい」
「ひっひっひ。香里ちゃん。のこのこ出てきたお前さんが悪いんですぜ。きっきっき」
蛭川は若妻に襲いかかった。
すると、女は「きゃー」と叫び、蛭川のキャタピラを蹴飛ばした。
すると、キャタピラが外れてすっとんでいってしまった。
なんという欠陥品!
あの医者、手ぇ抜きやがったな・・・・
蛭川はバランスを崩し、木のかげにあった階段を転げまわった。
「わあああああああああああああああああ」
そのまま九十九段の階段を転げまわりその先を走っていたダンプカーにはねられ銭湯の煙突にゲキトツし、蛭川はまたしても入院してしまった。
友人が大学の講義ノートと奥田民生のCDを持ってきてくれた。
他にすることがないので聴いてみた。
さすらいもしないで このまま死なねえぞ
「さすらい」という、ギターの音色が美しい曲だ。蛭川は興奮した。
「香里ちゃんを犯すまで、このまま死なねえぞ!」
彼女はすでに引越していた。年賀状には子供の写真。くっそー。自分だけ幸せになりやがって腹が立つ!
海を渡り、彼女の家まで行った。めちゃ遠い。なんで旦那、海外赴任すんねん。
道の途中で外人の警官にボコボコにされた。カネがなくなったので、店先の物を勝手に食ってたからだ。ちきしょう。香里の住所を言って引き取ってもらった。
「よっくん。大丈夫だった?」
「君が蛭川くんか。香里から聞いてるよ。サイボーグなんだって?」
ふっふっふ。その通りさ、旦那さん。この胸から飛び出すミサイルでこの幸せな家庭を地獄の三丁目に叩き落としてやる!
とその時、幼い香里の息子が這い這いしながら「わーロボ、ロボー」と言って蛭川に近づいてきた。
「あ。たけしがしゃべった」
「ほんと。ロボって」
たけしは蛭川の胸を触ってきた。
「あ。コラ。いかん。やめろ。このガキ」
「ふふふ。よっくんは子供に好かれるね」
蛭川は、やばいやばいと思っていた。胸には自爆ボタンがあるのだ。今で言う自爆テロだね。
案の定、たけしがボタンを押した。
ずがどおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおん。
自爆装置は文字通り自爆装置でボディの内側で爆発する仕組みになっている。だから、たけしは無傷だった。
その代わり、蛭川は動作不能になって止まってしまった。目が白い。よだれを垂らしてる。
「よっくん? よっくん?」
「こりゃいかん。香里。救急車だ!」
「けらけらけら」
たけしはそれを見て無邪気に笑っていた。
帰国した蛭川はまたしても病院の上で憂鬱に過ごしていた。あまりに入院が長かったので同級生はみな卒業していた。
「ちきしょう。もうこりごりだ」
そんな時、また友人が差し入れにフルーツと、今度は、ダウンタウンの浜ちゃんのCDを持ってきてくれた。「春はまだか」という曲で奥田民生が作詞作曲編曲をしてる。
宇宙の地球の小さな国のどこかで
一人の男が はるかな何かを作るのでしょう
蛭川はまたしても感動してしまった。その夜は何度も何度もそのCDを聴いた。
「くそう。簡単にあきらめるところだった。ようし。こうなったら、ものすごい核兵器を作って今度こそ香里ファミリーをぶっとばしてやる」
蛭川は退院してから、実家に引きこもり、両親には内緒で割り箸やペットボトルを買ってきて核兵器作りに没頭した。
しかしなかなか製作がはかどらない。輪ゴムの止め方が悪いのだろうか?
一回、国連が視察に来たのであわてて隠した。
やばい。きっとアメリカ政府にはバレてる。何しろ今でさえ家の前を数十人のCIAがウロウロしてる。
「くそう。うっとうしい」
公衆便所で用を足してる時も尾行してきやがる。このストーカーども!
そんな折り、香里の旦那さんから一通の手紙が。
その文面は悲しみに満ちていた。香里が死んだらしい。何でも、息子が拳銃で遊んでたらうっかり発砲してしまったのだそうだ。香里が引っ越した国では銃保持がオッケーなのだ。
蛭川は奈落の底に叩き落とされた。何てことだ。殺そうとしてる相手が死んでしまうとは。オレは一体これから何を生きがいに生きていけばいいと言うのだ!
蛭川はやけになって飛行機をハイジャックしニューヨークの世界貿易センタービルに突っ込んだ。
蛭川は直前にパラシュートで脱出したので助かったが、その後、アメリカが怒ってイラクを攻撃し、たくさんの子供たちが死んだ。
蛭川はやりきれない。刑務所から出た後、罪滅ぼしに塾のバイトを始めた。子供たちの笑顔を取り戻さねばならない。それが香里ちゃんへの弔いになると思ったからだ。
そう信じてやってきたら、気づけば、数年があっという間に過ぎ三十路の童貞アルバイター。年収150万円。死ぬか生きるかの生活をしてる。
何でこんなことになってしまったのか。となれば、やはり、小説のせいだ。小説を書いて子供たちを元気にさせたい。その想いが強くこのような過酷な生活に突入したのであろう。
その生活は今でも続いている。
蛭川の最近のお気に入りの曲は奥田民生の新曲「無限の風」だ。
荒野の上に立って 砂漠の上に立って
花のように開いて ダイヤのようにまたたいて
荒野の風になって 砂漠の風になって
はるかに腕を伸ばして 空に叫ぶのさ
あいつは風 あいつが風 リズムを取りながら 太陽を背負って
蛭川の名前は陽介。しかも日本人。背負え日の丸を太陽を。闇の狭間で。
子供たちの幸せなしにオレの幸せはない。何。臭い? 臭くてもいいんじゃい!(了)
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