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今回は月のターン
その9 月・詠編3~メイドの看護~
お昼になり、厨房で昼ごはんを作っていた月が戻ってきた。手には大きめの土鍋と小皿が3つと、お茶の入った瓶をお盆の上においている。扉を開けたまま、月が中に入るのを確認して詠は扉を閉める。机にお盆を載せながら、月は訊ねる。

「詠ちゃん。もう誰か来た?」
「ううん。まだ誰も来てないわ。このまえの桃香の“あの”騒動もあって仕事が忙しいんじゃないかな?」
「ふふ、そっか。それで、ご主人様はどう?」
「相変わらず寝たまんま。そろそろ起きるんじゃないかな」

などと言って、そろって一刀の方を見てみると……目があった。ぼんやりとこちらを見ている一刀の目に。ばっちりと。

「……や、おはよ」

そう言いながら、気だるそうに腕を使い上半身を起こそう一刀。が、腕に力が入らないのか支えきれずに崩れ落ちてしまう。それを見た詠と月はすぐさま駆けつける。

「ご、ご主人様! だ、大丈夫ですか!? 今起こします! うんしょっ……詠ちゃんそっちを支えてもらっていい?」
「わ、わかった。ほら、いくわよ。せーのっ!」

非力な少女である月と詠は、2人がかりでなんとか一刀の体を支える。そして、左右から背中を手で支え脇に腕を通して上半身を持ち上げる。触れる腕に熱い体温を感じながら、2人はなんとか一刀の背中を寝台にもたれさせる。もちろん、背中が痛くないように枕を差し込むのも忘れない。

「はは、ごめんな。詠、月。情けないけど、全然力が入らないんだ。まるで蛸になった気分だよ」

冗談を言いながら、笑う一刀だがその顔はまだ赤く、汗もかいている。けれども、朝の様子に比べれば幾分か楽そうであった。その様子に、月は安堵の息を漏らす。

「月、水はあるかな? すごく喉が乾いてさ」
「あ、こちらに水差しがありますから……どうぞ、口を開けてください」
「あ、いや、さすがに飲ませてもらうのは……何か恥ずかしいし」
「あんた、自分の状態を確認してからいいなさい。腕に力入らないんでしょ。全く、ありがたく飲ませてもらいなさい」

気恥かしいのだが、まったくもってその通りなので、反論できない。大人しく月が差し出してくれる水差しを口に含む。すると、冷たすぎない丁度いい温度の水が喉を潤す。すぐ目の前には優しく微笑んでくれる月が、ゆっくりと傾けてくれる。ごくごくと喉を鳴らし、気がつけば水差しの水を全て飲み干していた。

「ありがとう。月」

率直に感謝され笑顔を向けられた月は照れてしまい、風邪とは違う意味で赤くなってしまった。

「い、いいえ。これくらいなら。ところでご主人様、食欲の方はありますか? 一応、ご飯の用意はしてあるんですけど……」
「正直、あんまりないんだけど」
「無理する必要はないわ。ただ、少しは食べないと体がもたないから、お皿一杯分だけでも食べるべきよ」
「そっか。それじゃあ、少しだけだけどいただこうかな。月が作ってくれたの?」
「は、はい。その、お粥ですけどお口に合えばいいんですが……」
「大丈夫よ。月の食べ物がおいしくないはずないでしょ。あんただってそう思うでしょ」
「ああ。もちろんだ。喜んでいただくよ」

2人から惜しみない称賛をもらい、さらに照れてしまった月はごまかすように準備を始める。お盆ごと土鍋を持ってきて蓋を開けると湯気とおいしそうな匂いが立ち込める。中には、卵と少量の塩を混ぜたお米に刻んだネギをのせたお粥が湯気を立てている。
その匂いを嗅いだ一刀は、病床の身ながら食欲が湧いてくるのを感じた。
月はそれを小皿にわけ、レンゲで掬ってからゆっくりと一刀の口元に持っていく。

「へぅ~。それじゃあ、ご主人様、その……あーん……」

照れもあり、夢中になってやってしまったが、これはものすごく大胆な行為なんじゃないかと気付く月。とはいえ、いまさら伸ばした手を引っ込めるわけにはいかない。
一刀の方も恥ずかしいが、一生懸命自分の世話を焼いてくれる月を放ってはおけない。口を開けて租借しようとするが、思った以上にお粥はまだ熱く、噎せてしまう。

「あちっ! はふはふはふ……」
「あ、ほら。これお茶お茶」

詠が差し出してくれたお茶を慌てて流し込む一刀。少し喉に熱さを感じるが、問題はないようだ。が、月はひどく慌てた様子でこちらを覗きこんでくる。おろおろとする月を一刀はやんわりと落ち着かせる。

「ご、ごめんなさい。私ったら……」
「いいから、大丈夫だよ。それより、もう一口もらえるかな?」

熱で苦しいのに、それでも笑って自分を励ましてくれる一刀のやさしさに月は涙ぐんでしまう。

「あ、は、はい! 今度はちゃんと冷ましますから」

すくったレンゲを自分の口元にやり

「ふ~……ふ~……はい。どうぞ、あーん……」

あーんと開けた口に程よい熱さのお粥が流れ込んでくる。その味は、卵と塩がお米に絶妙にマッチしており、柔らかさも丁度よくできた最高のお粥であった。

「うん。すごくおいしい。さすが月だね。」

仕える主人、そして愛する男性から最大の賛辞をもらい月は嬉しさでいっぱいであった。
その後、結局一刀は少し残してしまったが、余りは月と詠でいただいたので土鍋はすっかりからっぽになった。その後、3人で他愛もない話をしながら穏やかな時間を過ごすことができた。
一刀が風邪で倒れている状況で不謹慎だが、今すごく幸せを感じている月であった。
結構、月に大胆な行動をさせてみました。
が、実力不足ゆえに月の魅力を存分に引き出せなかった……悔しいです。月のかわいさはこんなものではないはず!!

要反省目指せ能力向上!

次で月・詠編はラストの予定です。

さて、その次は誰にするべきか……


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