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その8 月・詠編2~メイドの看護~
会議室にて。
『ええ~!! ご主人様が倒れた!! それで、ご主人様は大丈夫なの、ねえ!?』
『落ち着いてください。桃香様。……それで、どうなんだ、詠。ご主人様の容態は? 無事か? 何かいる物は! いや、すぐに看病に行かねば……』
『お主が先に落ち着け、愛紗。とはいえ、どうなのだ詠よ? 主の具合は?』
『言い方が悪かったわね。そこまで心配する事じゃないわ。ぼくのみた感じじゃただの風邪よ。ただ、若干熱は高いみたいだけど。』
『なんだ。ただの風邪か~。んじゃ後で、皆でお見舞いにでもいってやろうぜ』
『翠の言うとおりなのだ。きっとたくさん食べればおに~ちゃんはすぐによくなるのだ。鈴々、い~っぱいおいしい物を持っていくのだ』
『………………恋も行く。ご主人様、心配』
『恋殿がいくのであればねねも行きますぞ。……まあ、あいつのためというのがちょっと気にくわないのですが』
『あっ、ちなみに、看病は必要ないわ。あと、見舞いも…………って、ちょ、ちょっと待ちなさい! なにほとんどこっち向いて殺気を出してんのよ!? ちゃ、ちゃんと理由があるんだってば!』
『む~。あっ、さては、ご主人様の看病を一人占めする気だな~。あ、でも、月もいっしょだから二人占め?』
『ふん。あんなやつを気にする必要はない』
『まあ、焔耶よ。そう言うでない。蒲公英も皆も、まずは詠の話を聞くべきじゃろうに』
『そうね。と言っても、私には心当たりがあるんだけど……誰かがうつったら問題だから、でしょ? 璃々が風邪引いた時も、周りの人にうつって大変だったのを覚えているわ』
『……ありがとう、紫苑。ほんと助かったわ。ん、まあ、そういうこと。あんたらは蜀の要人なんだから、うつったりしたら政務に直接影響が出るわ。あいつの場合は桃香がいるから大丈夫だと思うけど……。とにかく、うつったら大変だから看病はぼくと月でやるわ。……で、朱里に雛里。あんたらはさっきから下向いて何読んでるの?』
『はわわわわっ!? いえ、これは、その、医療に関する本で決して怪しいものではありませんよ!?』
『あわわわわ……は、はい。刺せばたちまち元気抜群になる針とかで、元が房中術用などでは決してないです』
『語るに落ちてるわよ。言っとくけど、そんな怪しいのはやっちゃ駄目……って、あんたら、ひょっとしてそれを実践しているんじゃ……』
『と、とと、とにかく! ご主人様の部屋には行かないほうがいいんですね! わかりました!』
『……あっ、でもお見舞いの品を持っていくくらいなら、その、大丈夫でしょうか……?』
『んー、まあそれくらいならいいわ。けど、自分の仕事が終わってないのに来るのは厳禁よ。それじゃ、見舞い禁止の意味がないからね。わかった?』
『『『『は~~い』』』』
『それじゃ、ぼくは戻るわ。何かあったらまた伝えるから』
『よろしくね。詠ちゃん。ご主人様のこと頼んだからね』
『ん。わかってるわ』

「ってなことがあったわけ。全く、こいつ一人が倒れただけで大騒ぎなんて……この国の行く末が不安だわ」
「それだけ、皆心配してるんだよ、ご主人様の事……私だって心配だもの。詠ちゃんもそうでしょう?」
「ま、まあ確かに心配はしてるわよ。だけどね、月。それで月まで風邪ひいたらぼくはやだからね。無理は駄目よ。それに……」
「ご主人様も望んでないだろうしね。きっと、それなら放っておいてくれ、って言いそうだもの」
「まあ、ぼくたちの立場からすれば別にかまわないんだけどね。こいつはそんなことおかまいなしだからね」
「そうだよね。詠ちゃんが風邪ひいたら、すごく心配するよ、ご主人様は」
「……ふん。げ、原因はこいつなんだから、お礼なんて言わないけどね」

と言いつつ、詠は顔が赤くなっていくのを自覚する。周りにいるのが、月だけだからこそこの態度だ。他の人間がいたら、意地でもこんな赤面した姿は見せない。
それほど、月のことを信頼しているし、まあ、こいつのこともそんなに悪く思っているわけではない。こいつにそれを言うつもりは毛頭ないが。

「それじゃあ、手分けして看病しよう。私は、ご飯つくってくるね。何か食べないとお腹もすくだろうし」
「ん、わかった。ぼくは部屋の換気とか、あとはこいつの様子をみとく。……うわ、こんなに汗かいてる。全くもう……」

どうやら思った以上に、具合は芳しくないようだ。手拭いで拭いてやりながら、ますます心配になる。額の手ぬぐいも既に温くなっている。少なくとも、暇になることはなさそうだ。
慣れない手つきで看病している様子を、月が微笑みながら見ていたことに、一生懸命手ぬぐいを水で絞っている詠は気づかなかった。
詠はデレ過ぎでしょうか? もっと、ツンツンさせたほうがいいのかな?
でも、いちゃいちゃさせたいしなあ……
塩梅がほんと難しいです。


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