―One Day―縦書き表示RDF


あらすじの通りですが、まぁチョタ宍なのか宍チョタなのか分からない段階の話。
でも、一応本当に念のためにBL指定にしてます。糖度は高いが、BL要素は低いはずです。
―One Day―
作:星海茅影


俺のダブルスパートナーは…
一つ年下のくせに、俺より10cm以上背が高くて、おまけにガタイもいい。
なのに、気が弱いっていうか人がいい奴で憎めねぇ。
そんな奴だ、長太郎は。

ダブルスで、俺のパートナーとして組んでくれている人は…
先輩なんですけど、やっぱり俺が大きすぎるので見た目は小柄にしか見えません。
でも、とても負けず嫌いの努力家で…すごい人です。
そういう人なのですよ、宍戸さんは。

                  *

ピィ…ガタッ!!
(はぁ…またやっちまったよ)
俺は我ながら素早い動きで止めた。
その目覚し時計を手にしたままため息と同時に起き上がった。
時刻は午前5時数秒…俺がいつも起きる時間だ。
それはいいんだ、別によ。
ただ、最初の目覚ましコールで瞬時に動いて止める癖。
なんとかならねぇかな…。
(…って、そんなこと悩んでいる暇はねぇよ!!)
どうにもならない目覚まし時計を元に戻した俺は、ベットから抜け出して身支度を始めた。
早起きは苦にならねぇ。
というか、ようは早く寝りゃいいだけの話だろ。それができねぇのは、やっぱ激ダサだぜ。
制服に着替えて、リビングに用意された朝食をとる。
これを作ってくれた母親は、今二度寝中だ。
父親は小学校で教師やってるから、俺より朝は早い。
食べおえて食器類をある程度、まとめて流し台の横に置くと次は洗面台。
こういうのを流れ作業って言うんだろうな。
毎日やってから、あんま考えなくても勝手に身体が動く。…動きすぎる時もあるけどよ。
部屋に戻って、テニスバックと一日の勉強道具が入ったスクールバックを背負って、最後はもう慣れたキャップの帽子をかぶる。
テニスバックに、ペンケースだのルーズリーフだの入れてる奴いるけどよ。
それって公私混同だろう、激ダサ。
家から一歩出ちまえば、もうトレーニング開始だ。
テニスバックとスクールバックの負荷を背負って、学校までの道のりをランニング。
でも、汗はかかねぇ。汗をかかないペースをずっと保つ。
言っちまえば簡単に聞こえるだろうが、結構難しいぜ。俺は慣れてるけどよ。
いつもの道のり。そして、いつもの場所にあいつはいる。
「オッス、長太郎!!」
「おはようございます、宍戸さん」
挨拶すると、宍戸さんに合わせて俺も走ります。
今日も宍戸さんは頑張ってます。なんか凄いなって俺は思うんですけど、おかしいのかな。
「おい、長太郎。ペース落ちてるぜ、置いてくぞ!!」
「ええっ、ちょっと待ってくださいよ。宍戸さん!!」
こんなやり取りで、俺と宍戸さんは登校するんです。
氷帝学園の豪奢な校門まで着くと、足を止めるのはもう習慣です。
「はぁ…」
「どうしたんです? 宍戸さん」
部室まで歩いていく途中で、珍しくため息をつく宍戸さん。
「今日の三限目の数学、小テストやるんだよ。普段のテストでも難問だらけなのによ、小テストまで難問尽くしじゃ、ため息もでるぜ。まったく」
と答えるわりには自信満々な宍戸さん。
負けず嫌いで努力家な宍戸さんのことです。きっと昨日、部活終わって家に帰ってから勉強してあるんだろうな。…やっぱり凄いです。
「で、長太郎。お前のほうは今日何もないのか?」
部室で着替えながら、悪戯っぽく聞いてくるのは勘弁して下さい…宍戸さん。
「ありますよ。歴史の総まとめテスト…ああ、どうしようかな」
「はぁ? 歴史? なんだよ、だったら朝練終わったら範囲見せてみろ。教えてやるから」
「ええっ、そんな悪いですよ」
「悪くねぇよ、俺が歴史得意なの知ってるだろう?」
「分かりました。お願いします、宍戸さん」
「…おう」
ジャージに着替えて部室を出ようとした時、ちょうど跡部さんと忍足さんが入ってきました。
「おはようございます。跡部さん、忍足さん」
「おはようさん〜。今日もえらい早いねんなぁ・・」
「いつものことだろうが。なぁ、宍戸?」
「いきなり俺にふるな、跡部」
「あぁ〜ん? 喧嘩売ってるのか」
「売ってんのはお前だ、跡部!!」
「まぁまぁ〜そう熱くならへんでも、そのうち勝手に暑くなるで。ほどほどにしいや」
『誰もそんなこと聞いてねぇ!!』
 見事にハモる跡部さんと宍戸さん。
「俺様の真似してんじゃねぇよ」
「誰もお前の真似なんてしたくねぇ」
勝気な跡部さんと負けず嫌いな宍戸さんは、ご覧のとおりよくぶつかります。
忍足さんは、楽しそうに見ているのが常で絶対に止めには入りません。火に油を注ぐことはしますが…。
「宍戸さん、サーブの練習したいんでつきあってくれませんか?」
ラケット片手に口論を続ける宍戸さんに俺は声をかけました。
「おう、いいぜ。それじゃ行くか、長太郎」
「はい、宍戸さん!!」
これでどうにか部室から出ることができそうです。
俺と宍戸さんが部室を出た後。
「あの二人、ほんまに仲良しやなぁ〜」
「あぁ? 忠犬と主人の間違いだろう」
いてるんとちゃうんか? 跡部」
「誰が妬いてるんだ!!」
という会話が展開されてるのに気づくことはない二人。

                  *

氷帝テニス部の朝練時間は、8時から9時までです。
でも、レギュラーや準レギュラーのほとんどはそれよりも早く着て練習します。
「サーブ練習か。俺に当てるつもりで思い切り打て」
「そんな無茶言わないでください!! 宍戸さん」
「馬鹿、当てにきても俺は避けてやるよ。本気でこいって言ってんだ」
ポーン…ポーンと弾むボールの音を聞き、
それをギュッと握りしめる自分の手の感触を確かめ、
ネットを挟んで向き合う宍戸さんを見つめて、俺は意識を集中する。
高く空へ放つトス。
落ちてくるボールをまるでスローで見るような感覚に捕らわれる。
「一球入魂!!」
全身のバネと筋力を込めた叫びと共に、スカッドサーブが放たれる。
俺のスカッドサーブは時速200km近くある。
常人ではまず打ち返せない一撃必殺のサーブ。
その分、コントロールは困難を極める。
今回は―――
一直線に宍戸さんに向かってしまった。
「危ない!!」
俺の叫びよりも速く、宍戸さんは動いた。
「まだ甘い!!」
俺の超高速ライジングカウンターは、常人の何倍もの反射能力を武器にしている。
確かに長太郎のサーブは速い。
だが、俺には取れる。
「とおりゃ!!!」
くっ…さすがはスカッドサーブだぜ。
ラケットに当てただけで、腕がビリビリしてきやがった。
だが、負けねぇ!!
ドオン!!!
俺の返球は、コートのライン際に落ちた。
「さすがです、宍戸さん」
「お前なぁ…当てるつもりでとは言ったけどよ。マジ直進で打つか?」
「すっ、すみません」
「謝るなって、怒ってねぇよ。言っただろう? 俺は避けてやるって」
ううっ…怒っていないと言われても、俺の心境は複雑です。
今でこそ俺のスカッドサーブを避けて、さらには返せてしまう宍戸さんですけど、
あの特訓の時はマジで辛かったっす。
正直、もう俺のサーブで宍戸さんが傷つくのは見たくないです。
「よし、今度はサービスエース狙ってみろ」
「ええっ、そんな急に!!」
「馬鹿、俺がいる限りサービスエースなんて取らせねぇよ。そのコースを狙えって言って
んだ」
「はい。じゃあ、いきますよ。宍戸さん!!」
「おう、来い。長太郎!!」
当然、朝練なので他のレギュラー陣もその風景を見ていました。
「へへっ、侑士。あの二人っていいコンビだよな」
「せやなぁ〜。ギブ&テイク言うたら、あいつらには勝てへんかもしれんな」
「ええっ!? 俺だってちゃんと跳んでるだろ」
「そのフォローが俺の仕事や。そういう所はギブ&テイクやな」
「それじゃあ、他はどうなんだよ。他は!?」
「…たまには自分で考えや、岳人」
そんな会話をしながら、互いのフォーメーションを確認していく。
「今日も慈郎は遅刻か、樺地?」
「ウス」
「さがしてこい、樺地」
「ウス」
こちらも普段通りの会話を続ける跡部と樺地。だが、樺地が何を言っているのかを真に理解できる者は跡部のみである。
―――数分後―――
「ん〜眠い…ZZ〜」
樺地に担がれて登場したのは、もうお分かりでしょう。
「慈郎、てめぇはいつまでそうして寝てる気だ。あぁん?」
「だって眠いC〜ZZ」
「寝てんじゃねぇか!?」
「朝練出なくても、俺はつよE〜」
「誰も弱いなんて言ってねぇよ。しっかり起きやがれ」
「Eや〜眠いC…ぐぅ〜」
――――慈郎、完全熟睡。
「どっかに置いとけ、樺地」
「ウス」
コートに隣接されたベンチへ、慈郎を運びちゃんと落ちないように寝かせる樺地。
さっと時計を確認して、跡部はチッと舌打ちをする。
「時間だ、全員練習終了」
パチンと指を鳴らせば、樺地が動く。
「ああしてりゃ、部長らしいんだがな。跡部のやつも」
ストロークを中断して、そう宍戸さんがつぶやくのを俺は聞きました。
「跡部さんらしくていいじゃないですか」
「お前はほんと人がいいな、あんま良すぎると利用されるぞ?」
「利用? 別に構いませんよ」
部室に引きあげながら、俺は不思議で仕方がありません。
利用されるとか利用するとか、あんまり考えたことがないんです。
その人が頑張って努力してるなら、それでいいかなとしか思えない。
「まぁ…いいけどよ。で、見せてみろよ。歴史の範囲」
「―――覚えてたんですね」
「当たり前だろうが、ものの五分もあればざっとアドバイスできるぜ」
早く出せとせかされて、俺はスクールバックから歴史の教材とノートを取り出しました。
ほんとに五分とかからず、宍戸さんのアドバイスは終わりました。
でも、とても分かりやすかったし…俺の苦手なところまでバレてました。なんでだろう。

                  *

氷帝学園はマンモス校なので、学年が違うだけで校舎は距離があきます。
(宍戸さん達は何してるんだろう?)
授業と授業の間にある休み時間、俺はそんなことを考えていた。
(歴史のテストは上手くいきましたよ。ありがとうございます、宍戸さんって言えたらいいのに…)
コツン!!
「…痛っ!?」
「何アホ面してんだよ、鳳」
「日吉?」
俺の頭を小突いて、現実に引き戻した犯人は同じクラスの日吉でした。
「四六時中。ボケッとした顔して、下克上のしがいがなくなる」
「日吉はいつでも、下克上なんだな…」
「…フン」
そっぽを向いて来た時と同様に、あっけなく戻っていく日吉。
(まぁ…確かにこうしてても、しょうがないか)
不器用でいつもいつも下克上って言ってばかりの日吉だけど、悪いやつじゃないから。
俺は俺の中の未練がましい気持ちに、さよならを言った。

――同時刻――
「へっくしゅん!!」
なぜかくしゃみが出た俺がいた、激ダサだ…。
「なんや、宍戸。風邪ひいたん? 移さんといてや」
「まったくだ。馬鹿ししどは風邪ひかねぇはずなんだがな」
「なんだと、跡部!!」
…ったく、なんでよりにもよってこいつらと俺は一緒のクラスなんだよ。
「あぁ・・今頃、犬が鳴いてるか。宍戸さん〜って」
「跡部、てめぇ…いい加減にしろ」
俺が馬鹿だとかアホだとか言われんのは、ムカツクけど別にかまわねぇ。
けど、長太郎のことを犬呼ばわりされんのは許さねぇ。
跡部が辺り構わず、そうやって言うことだけは許せねぇ。
「また始まったんか〜景ちゃんのヒガミ節」
「その呼び方は止めろ!! 誰もひがんでねぇ!!」
「またまた〜景ちゃんの照れ隠しや」
「や・め・ろ!!」
険悪モードになりかけた俺をよそに、ふと忍足が跡部をからかい出す。
「跡部のことは任せや、気にすることあらへんで」
怒鳴る跡部をあしらいながら、口パクでそう告げる忍足。
――――さすが、氷帝の天才。
(なんか馬鹿らしくなってきたぜ…)
跡部がどう言おうと、俺と長太郎の何が変わるんだって思うと馬鹿らしい。
「…激ダサだな」
誰にも聞こえない、俺だけのつぶやき。

                  *

               ――昼休み――

「宍戸さ〜ん!!」
自分の弁当と飲み物を持って、俺は三年のあるクラスの前で叫んでいた。
「ああ、叫ばなくても聞こえてるって」
いつもの大音量に苦笑しながら、俺も自分のを持って長太郎の所へ行く。
「気色悪ぃ…男同士で食うのかよ」
「言ってろ、跡部」
もう気になんねぇ。激ダサだな、跡部。
出て行く俺達を無言で見送った忍足はと言うと…
「そういう自分は誰と食べてるん?」
面白そうに跡部に問いかけていた。
「はぁ? 別に誰でもいいだろう」
「そうなん? じゃあ、俺と一緒でもかまへんの?」
「うぜぇ…ヤメロ」
「なら、誰でもじゃないやん。誰なん?」
「てめぇに教える必要はねぇよ、忍足」
「まぁ、わざわざ教えてもらわんでも知っとるわ。仲ようてうらやましいわ〜」
「ちょっと待ちやがれ!! 忍足!!!」
(うちの大将は、ほんまおもろいわ…)
からかうだけからかうと、去る天才。残されたのは帝王。
                〜その頃〜

「この季節は屋上ですね、やっぱり」
「そうかもな…」
二人は屋上で弁当をつついていた。
屋上と言っても、給水塔きゅうすいとうの影。ようは穴場的スポットである。
「―――長太郎」
俺はずっと疑問に思ってたことを聞いてみたくなっていた。
「なんで、いつも俺なんだ? クラスのやつとか好きな女とかじゃなくて、なんで俺なんだ?」
「それは…ええっと」
「――――まさか」
「なんですか? 宍戸さん」
「長太郎、友達いないのか?」
「違いますよ、宍戸さん!!!」
突然、何を言い出すのかと思いました。でも、友達いないって…そんな。
「友達はいますよ。でも、なんだろう…一緒に弁当食べたいって感じがしない。それだけです」
「それは、俺と一緒ならいいってことか?」
なんか、今こいつは凄いことを言わなかったか? 
いや、待てよ。俺もなんか凄いこと言っちまった気がする。
「そうですね、そういうことです」
無邪気に笑うこいつは確信犯か? いや、こいつの人の良さは俺が一番知ってる。
「……ありがとうな」
「なんです? 宍戸さん?」
よく聞こえなかった俺は聞き返した。
「なっ、なんでもねぇよ…さっさと食わねぇと午後の単限始まっちまうだろうが!!」
「はい、分かりました」
なにやら早口な宍戸さんが、おかしかったけど素直に聞いてしまうのが俺です。

                   *

「やっと、終わったな…」
午後の授業が終われば、部活の時間だ。
さっさと教室をおさらばして、部室に向かう。そして、はかったかのようにあいつはいた。
「お疲れ様です、宍戸さん」
「疲れんのはこれからだ、長太郎」
「はい、分かりました」
「…ったく、人がいいやつ」
「ええっ、なんか悪かったですか?」
「悪くねぇよ、お前は」
「ありがとうございます、宍戸さん」
「ほんとに人がいいな…」
そんな会話をして、コートに立てば…
「コースの詰めが甘い!! 外すのを怖がって威力が落ちちまったら、意味ねぇだろう」
「すみません、宍戸さん!!」
「謝ってほしいわけじゃねぇ…本気でこい」
「はい、いきますよ!!」
「おう…」
コートでもどこでも、こいつは変わってねぇ。それでいいじゃねぇか。
汗だくになるまで打ち合って、
手のひらのマメが増えて、ところどころ擦り剥いて、
それでも、俺たちは前へ進む。
『お疲れ様でした』
二百人以上の部員が発する言葉を最後に、一日が終わる。
でも、進むことには終わりはありませんよね。
「宍戸さん…足、平気ですか?」
「はぁ? こんなのお前のスカッドサーブに比べれば痛くもねぇよ」
「ちゃんと消毒して治してくださいね」
「その前に、また怪我するぜ」
「ええっ、そんな!!」
「くっ、マジでとんなよ。でも、俺が傷だらけなのはいつものことだろう?」
「はい、そうですね……でも」
「ん?」
「ちゃんと治してください、作らなくていい傷まで作るのはやめてください。確かに俺のフォローは遅いっす。でも、ちゃんとしますから…だから、その」
「――――ありがとうな」
「えっ?」
「聞き返すなよ!! あ〜もう、家までランニングだ!!」
「ちょっと、そんな急に。待ってくださいよ、宍戸さん!!」
照れ隠し…分かってしまいましたよ、宍戸さん。
…ったく、なんで走り出すんだ。俺は?
               ―――でも、ちゃんと着いていきますから―――――
でも、嫌じゃねぇのは確かだな。
                ―――追いかけるのは嫌いじゃないです―――――
『これでいいんだろう?』 
                    『これでいいんです』

              これが俺たちなんだから  


うわ〜い、この無自覚なカップルをどうにかしてくれ!!とはこれを書いてた当時の私の絶叫です。
過去の遺作って埋もれてた話ことですが、掘り出してみましたキャンペーンです、意味不明。
当時、私は相当チョタと宍戸さんにまいっていたのが伺えるしろもの。
誕生秘話は後書きに書くようなものでないので、封印という名のながし。
こんな偏ったキャラ愛の話を読んでいただいてありがとうございました。













ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




◆BACK
小説家になろう