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小樽殺人事件
作:健司



旭展望台


 「美味しかったね、ラーメンとアイス。」
 南小樽のラーメン店を出て車に乗り込むと、こずえが言った。
 「うん、うまかったな。じゃあ今度は、観光客より小樽市民がよく行く展望台に行こうか。」
 一樹の運転する車は、小樽築港駅の横を走っている。
 「ほら右に見えるヨットハーバー、あれが小樽フィッシャマーンズハーバーだよ、この時期はないけど、冬の夜にはヨットをライトアップしてとてもきれいだよ。」
 「そうなんだ。私も見たいな。」
 「隣にあるのが石原裕次郎記念館。明日帰るときでも寄ってみようか?」
 「石原裕次郎は興味ない。それより左側の大きな観覧車は?」
 「ああ、あれかこの小樽築港駅周辺の再開発のときに、主導したディベロッパーが作ったものだよ。ほらそのむこうに有名スーパーのトポスがあるだろう、あの会社が作ったんだ。」
 一樹はこずえに解説をしながら、車を国道5号線方面に向けた。
 「徐々に観光客の姿が増えてきただろう。右側に古い倉庫の建物があるのが分かるかい?」
 こずえがうなずいた。
 「あそこが小樽運河だよ。」
 「あっ、人力車もあるんだね。乗りたいな。でもすごい順番待ちの行列。」
 こずえは言いながら、一樹が行列が嫌いなことを思い出していた。
 「今度にしよう。」
 こずえが言った。
 「小樽運河は昔はひどい臭いところだったんだ。観光客どころか、地元の人も寄り付かなかった。一時は埋め立ての話も出ていたんだけど、保存会と行政が一体になってたてなおした。今では立派な観光地だ。」
 「ふーん。そんなにひどいところだったなんてぜんぜん見えないけど。」
 一樹の車は国道を滑らかに走っている。
 「さあ、ここを曲がって、上がっていくと目的地だ。」
 言いながら一樹が左折のウインカーを出した。交差点を折れるとすぐに”小樽商科大学”と書かれた案内板がこずえの目に留まった。
 「商大って、一樹さんの母校じゃない。」
 「そうだよ、でも母校に行くわけじゃない。」
 車は徐々に道幅が狭くなる道を上り、左側に小樽商科大学の校舎が見えてきたところで右折し、さらに細い道に入った。回りは草むらだらけ、車がすれ違えるかどうかという細い道だ。坂を上ったところ正面にベンチと木作りの東屋のようなものがあった。
 「着いたよ。」
 言いながら車を降りた一樹は黙ってベンチのほうへ歩いた。こずえが後を追った。
 「うわあ、きれい。」
 こずえの眼前には先ほど見た小樽築港の観覧車や、小樽運河そして小樽の港が広がっていた。
 「左を見てごらん。」
 こずえが言われたとおりにした。
 「あ、さっきの灯台に鰊御殿。それに私たちの今日のホテルだ。」
 「ここが小樽っ子のデートスポット、旭展望台だよ。」
 「ほんとうにきれいだね。一樹さんも学生のころよくデートしにきたんだ。」
 「こんな学校の近くじゃデートはしないよ。」
 「じゃあどこで?」
 「わすれたよ。」
 こずえが手を振り上げるのに気づいて、一樹は言いながら車へ走った。












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