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『てのひら』

作者:小夜風 藍
 この度の大震災で亡くなられた方々のご冥福と、被災者の方々のいち早い救済とを、お祈り申し上げます。短めのあっさりとした文章ですので、どうかお気軽に読みすすめて下さったら幸いです。
 夏の近づくある早朝、
 私はただっ広い草原を歩いていた。まだどこか藍の色の残る、小夜風の導く方角へ。空は、刻一刻と明るさを増していく。

 思いきって拳を開くと、自分の手の平の上に、広がる世界のだいたいをメモしてみることにした。

  お話は、始まる。

                   ※

 私はふーっと大きく息をはくと、天空を振り仰いだ。透き通った青空は、私をそっと優しくつつみこんでいてくれる。空は言う、
 『離れはしないよ。ほら、どんな時も、いつも一緒だ』と。


 空に浮かぶ雲は、私に明るく声をかけては、めいめいに通り過ぎていく。
 「また、会いたいなぁ」
 私がぽつり、そうつぶやくと、
 『一周地球を巡ったら、また君に会いにくるさ!』
 と答え、恵みの雨をさっと降らせてくれた。


 どこからか小鳥達が朝の準備体操を始める。やがて、朝日が舞台をまぶしく照らし出すと、小鳥達はいっせいに歌いだした。
 『おはよう!今日も素敵な一日にしようと思っているの。あなたも、素敵な一日をすごせますように』
 彼女達の歌声は天まで届くほどにぎやかで、実に穏やかなものだった。


 太陽は、その全身を山から起こして、私に力強く話しかけてくる。
 『待たせたね。君の笑顔も泣き顔も、みんな輝く君の命そのものさ。今日も僕は君の輝きを見れて、何より嬉しいな』
 私は尽きることの無いぬくもりを、全身にあびた。

 目を下にやると、大地に生える草がおおきく背伸びをしている。青草達は、朝露を頭にのせて、めいめいに言った。
 『あなたの涙も、私達の恵みの露なのよ!一滴たりとも無駄にはしないわ』
 ……そう、私は知らぬ間に、涙を流していたのだ。

 手の平をそっと閉じると、私はその場に別れをつげた。
 「さようなら、みんなありがとう。また明日」

         ※

 物にひそむ影が昼を告げる頃、私はある町へと降りて行った。建ち並ぶ家屋の影を、猫がゆっくりと歩いていく。一見静かでのどかな町、どこにでもありそうな町なのだが、だからこそ、町は日々その鼓動をうちならし、呼吸をしていることを私は知っていた。突然だが、町にしみつく笑い声も産声も、死者を悼む声も争う声もみんな、私は好きだ。それらに潜む真理は確実に、町を愛する一人一人に染み付いてゆき、やがて人の心に、特有の優しさと勇気を芽生えさせるエネルギーとなるからだ。

 町は変わる。人も変わる。世界全体が移り変わっていく。だけど町から人へ染み付いた呼吸は、天の恵みは、永遠に変わらない。

 人は、子から子へと変わらないモノを伝えていける、秘密の魔法を持っている。その可能性を私は信じていたいと願ったとき、ふと思い出した。今朝、手の平に書いたメモについてだ。私は手の平を開け、見た。そうして朝のメモに少し、書き足してやった。赤いハートをつけ加えてやった。私はふっと笑顔になると、駆け出した。嬉しそうに手をふる、あなたの方へと。


                                       おわり
 想いは、とどきます。だから、あなたはあなたのまま、生きていて下さい。たいした事も言えなくて本当に恐縮です。被災地のいち早い復興を心より祈っています。

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