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《1》むく、通信制サポート校から転校する

 むくは通信制サポート校へは週五日のうち二日しか登校しなかったので、単位取得のためのレポートをやるのが大変だったが、何とか自力でこなした。

 また本来の通信制高校ではスクーリングに参加するのが普通なのだが、このサポート校は校内で行われる行事に参加すれば代替できるシステムだったのでそれにも参加し、自分なりに頑張っていた。

 また入学当時には運良く友達ができ、一応親しくしていたので、欲を言えばきりが無いが、中学時代の不登校の生活と比べてかなり充実した学校生活を送れていると思い、かもめはサポート校への入学に賛成して良かったと思った。

 しかし一年生の終わりが近づき、二年生からの進路によってコース分けをすることになった時、むくが変なことを言い始めた。

「私は大学とか専門学校には行きたくないから進学コースには行かないけど、就職コースだとろくな勉強しないし、ど派手なギャル風の人達しかいなくて怖いから、そのコースに行くのも嫌だ!」

「大学に行くかどうか、今すぐ決めなくてもいいんたけど、そのコースに入っていおかないと、もしあとから大学とかに進学したいと思った時に困るんじゃない?お友達は進学コースに行くの?」

「一応大学に行くつもりで進学コースに行くって言ってた。あの人は私とは違って普通の人だから友達も段々と増えてるし、きっと進学コースに行っても大丈夫だと思うけど、私は友達も作れないよ」

「そのお友達も行くんならいいじゃない」

「駄目だよ、あの人は進学コースへ行く人達の中に、もう仲のいい友達ができちゃった。それに進学コースは毎日授業が夕方五時ぐらいまでらしいから、そんなに長い時間は苦痛過ぎて座ってられない。遅い時間に帰ると小学校時代の友達にも会うから絶対に嫌だよ」

「まだそんなことに拘ってるの、いい加減にしてよ」

 かもめはむくの拘りの強さにはほとほと呆れた。

 そして挙句の果て、

「コース分けとかしないような、どこか別のサポート校へ転校したい」

 むくはそうまで言い始めた。

「ちょっと、いい加減にしてよー!今のサポート校だって一生懸命探してあげたのに、また探すなんてもう嫌だからね、自分で探してよ」

 かもめは、もういい加減にしてもらいたいと思った。

 その話しをサポート校の担任に伝えるとむくの将来を考えて、「できれば同じ学校で頑張ったほうがいいです」と薦めてくれた。しかし、最終的な段階になってもむくの気持ちは変わらず、別のサポート校を探して編入することに決まった。

 その頃、二年生から別の学校へ編入するには時期的にギリギリだったので、むくに編入先を一生懸命探すように言ったが自分では殆ど動かないので、結局またかもめが中心になって探すよりなかった。

 サポート校は沢山あるようでも、むくの条件に合いそうな学校は少なかった。だがふと覗いたサイトの中に、自宅近くで比較的条件に合いそうな学校のホームページが載っているのを見つけた。

 その学校はサポート校ではなく全日制の技能連携校だったが、不登校の生徒も沢山受け入れていると書いてあったのでかもめはこれは?と思い、むくにそのホームページを見せた。するとむくもちょっとその学校が気になった様子。それで早速学校に見学の予約をし、二人で見学に行った。

 学校は少人数制でこじんまりとはしていたがちゃんと校舎を構え、先生方もアットホームな良い感じだったので、二人とも結構気に入った。

「何年も体育やったことがないのにこの学校は体育の授業があるから身体動かせる。家からも近いし、ここに編入したい」

 むくは言った。

 かもめもその学校自体は気に入った。しかしむくはそれまでも週二日、短時間の登校でもやっとなのに、全日制になんて大変過ぎる。毎日登校するなんてとても無理だと考えて、すぐには賛成できなかった。

「毎日登校するのは無理なんじゃない?でも全日制だからちゃんと出席しないと単位が取得できなくなっちゃう。やっぱりどこかサポート校のにいったほうがいいよ」

 かもめはむくを説得したが、自分自身で様々な角度から検討するのが苦手なむくは直感で思い込んだら最後、かもめの意見には耳を貸さず、その技能連携校へ編入することに決定した。

「自分で決めたことには責任を持ちなさいよ。三年生になる時に、また別の学校に編入するっていうのは駄目だからね。必ず今度の学校で卒業してよ」

 かもめは再三、念を押した。

 いつものことだが、からすには学校の事など相談しても何の頼りにもならないので、編入について相談はせずに決めたのだった。

 それから急いで編入のための願書を取り寄せ、サポート校で編入書類を作成してもらって三月の初旬に試験を受けた。

 試験は書類審査と本人及び保護者の面接のみで、それにより合否が決定された。

 数日後、むく宛に技能連携校から合格通知が届いたのでむくもかもめもホッとしたが、かもめは手放しで喜べなかった。またむくが様々な問題を振りまくような気がしたからだ。

 しかし取りあえず、制服や体操着を購入する必要があったのですぐに注文し、新学期に向けての準備を進めた。

 四月に入って初登校の日が近づくと、むくは若干緊張し始め、制服を着ることに文句を言った。

「こんな女の制服でスカートを履くなんて最悪だ!男の制服は駄目なのか?ズボン」

「駄目なんじゃない?そんなにスカート履くのが嫌なら、何で制服の無い学校にしなかったの?」

「他に行けそうな学校がなかったんだから、仕方ないよ」

 かもめはまたむくが中学の時のように、毎日制服の文句を言い続けるのかと思ったらぞっとした。

(こんなにスカートを履くことを嫌がるなんて、ちょっと可笑しいんじゃない?性同一性障害の人の中にはそういう人がいるってテレビ見たけど、もしかしたらそうなのかな?それとも小五ぐらいから声変わりしたから、本当は男の子だったりして)

 かもめはかなり疑問に感じていた。






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