38 告白とキスと
「オレ・・・真理さんが好きだ・・・」
───秋光君・・・?
「四年前から、ずっと、好きだった・・・」
───嘘でしょう・・・?
だって、あなたは、正臣の・・・。
言ってしまった。
四年経っても尚、過去の傷に触れられる真理を見て我慢が出来なくなった。とうとう想いが抑えられなくなってしまった。
もう、引き返す事など出来ない。
秋光はそれを自分で確認するかのように、今自分の腕の中に居る真理を、より強く抱き締めた。
「真理さんが傷付くのを見るのは・・・もう嫌なんだ・・・」
秋光の声が、真理の耳元で響く。
冗談で言っているのではない。
彼の言葉の強さ。抱き締める腕の熱さ。それらは「本気だ」と彼の気持ちを真理に知らしめる。
「・・・秋・・光君・・・」
真理は両手で秋光のTシャツの脇をグッと掴んだ。
「ダメ・・・だよ・・・」
自分から離そうとその手を伸ばすが、Tシャツが伸びただけで何の抵抗にもなりはしない。
「そんな事、言ったら・・・。駄目」
自分を抱き締めて、離さない秋光。
その力は、一向に弱まらない。
「秋光君は、正臣の友達でしょう?」
戸惑いを見せるかと思われたその言葉も、抱き締める腕の強さをただ強くさせただけ。
秋光は真理を抱き締めながら足を進めて、彼女の体を後ろへ押した。
真理は押されるままに数歩後ずさる。
「・・・正臣が、見てるよ」
コンッ・・・。
店の壁に真理の背中が当たると、抱き締めたまま彼女を壁に押し付けた。
「秋光君。正臣が・・・」
「・・・見てない」
「正臣が、見てるから・・・」
「・・・見てない」
「見てるから。離して・・・」
「見てない!」
正臣が見てる。
その言葉を繰り返す真理の唇を、秋光は唇でふさいだ。
唇が触れ、真理は目を見開き、彼を押し戻そうとしていた手に力が入る。
しかし、そこまで。
触れる唇の熱さを感じながら、真理は目を閉じた。
何度も首の向きを変えて、静かに吸い付くようなキスは、何故か真理の心を落ち着かせた。
そこには、乱暴な仕草も、貪るような舌戯も、何も無い。
ただ、優しいだけのキス。
真理が抵抗すれば、その唇はすぐに真理から離れるだろうと思うくらいに、優しく静かなキス。
心の中に・・・。
泣き出してしまいたくなるほど苦しい想いが湧き上がる。
正臣が死んで、毎日泣いていた自分。
そんな自分を、毎日笑顔で慰めてくれた人が居た。
毎日見守ってくれた人が居た。
やがてその人は、自分の心のどこかで支えとなり、自分が辛い時や井関恭吾の見舞いに行った後など、必ず会いたい人になった。
───心の何処かで、常にその人に安らぎを求めた。
しかしそれを、真理の「理性」が認めない。
何故なら・・・。
「その人」は、正臣の友人だから。
真理が心の中に何かを感じそうになると、必ず顔を出すその感情。
昔、正臣を好きな自分に気付きかけた時、いつもそんな自分を止めていた感情。
真理の、「理性」。
「私達は、姉弟なんだよ」昔そう言って真理の気持ちを閉じ込めた理性が、今は「この人は、正臣の友人なんだよ」と言って、真理の心を閉じ込め続ける。
「あき、みつくん・・・」
切なく苦しそうな声が、真理の唇の端から漏れる。
いつの間にか抱き締めていた手は離れ、秋光の両手は真理の頬から肩を滑り、自分のシャツを掴む両腕をなぞって真理の手と絡ませ、壁に押し付けていた。
「・・・正臣、見てる・・・」
薄目を開けた真理の瞳に、涙が湧き出してくる。その事に秋光は気付いたが、「見てない」と言って、再び唇をふさいだ。
長い間、二人は唇を重ねていた。
やがてゆっくりと秋光が唇を離すと、真理は無言のまま肩で小さく息をして目を開ける。
我慢して瞼の奥で止められていた涙が、頬を伝ってポタポタと落ちた。
「真理さん・・・」
下を向いてしまった真理に、秋光は優しく、しかしどこか強い口調で言った。
「真理さんを好きだ、っていうのは、本当だから」
真理が顔を上げて秋光を見る。
そこに、見た事も無いくらい真剣な顔をした彼が居た。
「・・・本気だから・・・」
───彼は、正臣の友人なんだよ。
真理の心の中で、声が囁く。
───正臣が、見てるよ。
空には太陽。
月は出ては居ない。
しかし、心の中の声は囁き続ける。
───見てるよ・・・・・。
こんにちは。玉紀 直です。
今日はちょっと短めですみません。
本当はこの後、病院のシーンが入る予定だったのですが、今回はこの二人だけで締めたかったんです。
コレで多分、秋光君の気持ちは伝わったと思います。
真理ちゃんの心に中で、彼女を止め続ける「声」。
「正臣」から気持ちを離さないように、自分で自分を追い詰めます。
今回は秋光君と真理ちゃんでしたが、次回は尊さんと真理ちゃんです。
この二人、仲直り(?)するのでしょうか?
真実を知った尊さん。どうする?
次回は10月10日更新予定。(遅れても1日)
では、次回!!
* もう一回、お詫び*
前回に続いて、何回もすみません。
前回36話の修正の話を書いたのですが、もうひとつ、32話にも修正すべき点がある事をご指摘頂きました。
32話の冒頭部分でしたが、そのシーンを読んで「えっ?」っと思われた方、本当に申し訳ありません。
すでに修正済みです。
ご指摘頂いたユーザーの方、メッセージの返信は読んで頂けましたでしょうか?
ご指摘、有難うございました!
拍手&メッセージが送れます。

ランキングに参加させて頂いています。よろしければぽちっと一回押していってやってください。
+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。