やっぱり人間っていうのは1人1人いくつもの運命の物語があるわけで。
俺の場合、物語の中にど派手な男が1人いた。
試験中の学生の強い味方はやっぱりコンビニ。
俺だけかもしれないけど、とにかく俺は試験中何度もコンビニに行くんだ。
コンビニを出ると、向こうから派手な男が来た。
ふと顔をあげてそちらを見ると、男がニヤリと笑った。
だけど寝不足の俺の目には誰だかわからなかった。
「よぉ ジロー」
「・・・あとべ」
俺は大きなあくびを1度して、足を止めた。
きょろきょろと周りを見ると車とかはなかった。
「歩きなの?」
「あぁ。散歩だ。」
「そっかぁ、試験中って体おかしくなりそうだよね。勉強ばっかだし。」
「お前は部活中も寝てるだろうが」
相変わらず人を見下すような態度だった。
この派手な男は跡部。
俺の入っているテニス部の部長で、超がつく金持ち。
かなりの美形で、頭もかなりいいもんだから女生徒にモテモテだ。
一方俺は超がつく一般人で、一応レギュラーだけど補欠が多い。
顔も美形じゃないし、女生徒にもモテない。
跡部みたいにきゃあきゃあと様付けで呼ばれたりもしないし、それどころか『ジローちゃん』とか呼ばれてる。
この美貌とかを少しでもわけてほしいもんだ。
俺がぼんやりと考えていると跡部がふん、と笑う。
「なんだ?ぼーっとして。眠いのか?」
「うん。あんまり寝てないんだ」
「どうせ知らない間に寝てんだろ?」
くくく、と跡部が笑う。
怒る気にもなれず、俺はため息をついた。
「しょうがねぇな 俺様が特別にお前を家に招いてやるよ」
「え?」
「ホラ ついてこい」
そう言って跡部は俺の返事も何も待たずにすたすたと歩き出した。
慌てて小走りでついていく。
こういう強引なところもあったんだった。
これが唯一の欠点かもしれない。
跡部の家に行ったのは初めてじゃなかったけど、相変わらず凄かった。
「今日は誰もいないんだ。泊まってってもいいぞ」
「勉強教えてくれるんならいーよ」
ニヤリと笑って言うと、跡部もニヤリと笑った。
強制御招待したんだからそれぐらいしてくれたっていいじゃん?
「俺様はスパルタだぜ?ついてこいよ」
「うんっ」
俺は大きく頷いて跡部と勉強机へ向かった。
「・・・だから・・・」
跡部の声が子守唄のように聞こえる。
そうだった コイツ、声も綺麗なんだよ・・・
まつげ長い・・・肌綺麗・・・
ぼんやりと考えてると、どんどん意識が遠のいていく。
ガクンッとなりそうなところで跡部が俺のでこを指ではじいた。
「コラッ寝るんじゃねぇ!」
「う・・・」
俺は慌てて顔をあげた。
「ったく・・・せっかく俺様が教えてやってるってのになんて奴!」
「だって跡部・・・この問題難しいよぉ」
「・・・お前、今まで何を勉強してたんだ?この問題、今回の試験範囲の基本だろうが」
「・・・え?」
俺は慌てて跡部の持ってた教科書を見た。
「えー!?違うよぉ!だって今回の範囲はここでしょ?」
俺は跡部の開いたページからかなり戻ったところを指差した。
跡部の眉がピクリと動く。
「ジロー」
「ん?」
「それは前回の試験範囲だ。」
「・・・え?」
俺がきょとんとしていると、跡部は大きくため息をついた。
「跡部ぇ・・・俺・・・どうすれば・・・」
「『今回の』試験範囲から急いで勉強するしかないだろう?」
「そんなの今からじゃ無理だ!」
だって試験は明後日から。
そんなの無理に決まってる。
どうして今まで気づかなかったんだろう!?
「ったく、普段の授業で寝てるからこうなんだよばぁか」
「うぅ・・・だって眠いんだよぉ・・・」
「・・・仕方ねぇな。ホラ、勉強すんぞ」
跡部はぺしん、とプリントで俺の頭をたたくとニヤリと笑った。
それから俺は試験最終日まで毎日跡部の家に泊まり、勉強を教わった。
跡部はというと、『俺様は天才だから試験勉強なんて必要ねぇ』なんて言ってた。
でもさ、跡部 俺知ってるよ?
俺が寝た後こそこそ勉強してるんだよね?
やっぱ、跡部も人間なんだよね。
最終日、お礼の1つも言おうと跡部を探していると後ろから髪の毛をひっぱられた。
「ぅわ!?」
「どうだ?手ごたえは。」
ニヤリと笑ったそういったのは跡部だった。
「跡部のおかげでばっちり!」
「ほぉ それは結果が楽しみだな。」
「跡部こそ、寝不足なんじゃないの?目の下少し黒いよ」
「俺様はぐっすり寝たさ。お前が寝てすぐにな。」
「・・・嘘」
「アーン?なんか言ったか?」
「なんでもぉ?」
俺はくすくすと笑った。
跡部は首を傾げていた。
「ジロー!跡部!久しぶりの部活行くぞ!」
向こうから友達が呼ぶ。
「跡部もジローもどうだったん?ジローはずっと跡部ン家に泊まってたんやろ?」
「うんっおかげで跡部が人間なんだなーってわかった!」
「アーン?人間に決まってんだろ?」
俺の物語を鮮やかにしてくれる友達がいる。
その中に1人ど派手な男がいる。
金持ちで、天才で、美形で。
だけど凄く優しい男。
俺はこの男が大好きだ。
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