最近は寒くなりました。
朝は布団に包まって朝食を食べてます。
早く炬燵が欲しいです。
あんまりオリジナル性を出せないのが不満です。
とは言っても、僕の実力だと弄ったら大変なことになりますし。
弄りすぎて後のストーリーと繋がらなくなるのが怖いです。
試召戦争編 第六問
さて、今日から、と言うか今から『対Bクラス戦』が始まるわけだが。
その前に、よくあるリーダーからの激励というか演説というか。
まぁそんなものをやっている。
壇上に立つのはもちろん雄二。
そして、その隣に何故か私。
……。
もう完全に副代表だな、これ。
「さて皆、総合科目テストご苦労だった」
っとまぁ、こんな感じで。
あとは、「殺る気は充分か?」だとか「負けるわけにはいかない」とか。
ありきたりな、しかし確実に士気を上昇させる言の葉を紡ぐ。
「前線部隊は姫路瑞希に指揮を取ってもらう。御門澪はその補佐だ。野郎共、きっちり死んで来い!」
「か、頑張ります」
「お前達の活躍に期待させてもらう」
男のノリについていけてないらしい瑞希は若干引いているが。
士気は十二分。いまのところ、不安要素はない。
今回の戦争は廊下で行う。
ここで負けてしまうと話にならないため、Fクラス50人中40人を戦力として注ぎ込む。
さらに上乗せで私と瑞希という兵器を搭載。
瑞希は校内3位の成績を持つ優等生であり、私も伊達に『戦神』なんて呼ばれていない。
しかし、心配事もある。
Bクラスの代表は根元 恭二。所謂『卑怯な野郎』だ。
どんな手を使ってくるか、わかったもんじゃない。
充分に警戒しておくべきだろう。
キーンコーンカーンコーン
根元について考えているとチャイムが鳴る。
それはつまり、
「よし、行って来い! 目指すはシステムデスクだ!」
『サー、イエッサー』
戦闘開始の銅鑼でもあるわけだ。
今回の作戦では勢いが重要視される。
事前に説明してあるので、全員がほぼ全力で廊下を駆け出してくれた。
ただ、身体能力的に劣る瑞希は少し遅れているので私はそれに付き添う。
「いたぞ、Bクラスだ!」
「高橋先生を連れているぞ!」
どうやら戦闘が始まったようだ。
「生かして帰すな!」と、何とも物騒な台詞とともにBクラス戦開始。
『Bクラス 野中長男 VS Fクラス 近藤吉宗
総合 1943点 VS 764点 』
どれだけの実力差があるのか、遠目で見ただけでも理解できる。
正しく桁が違う。
圧倒的戦力差で第一陣がことごとく粉砕されている。
危険な状態になる前に、なんとか瑞希が追い付くことができた。
「すまん、遅れた!」
息を切らせている瑞希の背中を撫でながら味方に到着を知らせる。
今更だが、抱えて走った方が速かったな。いや、その方法はもう行うべきではないか。
なんせ瑞希には、好きな人がいるのだからな。
密着するのは避けた方がよかろう。
っと、こんな思考はどうでもいい。問題は眼の前の敵軍だな。
「おい、『阿吽の夫婦』が来たぞ!」
「誰が夫婦だゴラァ!!」
「グハァッ!」
はっ、思わず瞬殺してしまった。しかし仕方が無いことだと思う。
今までは特に気にしなかったが、今は状況が違うのだ。
瑞希の想い人に、『夫婦』なんて呼ばれているのを聞かれたら。
その場合、告白がうまくいかないかもしれんのだ。
よって、私のしたことは正しいこと。
異論は認めない。
ちなみに『阿吽の夫婦』、『阿吽の呼吸の夫婦』の略称らしい。
どうでもいいかそうか。
とにかく、私と瑞希の登場でBクラスの目つきが変わった。
やはり私達を警戒しているのだろう。
「澪、姫路さん。来たばかりで悪いんだけど……」
「は、はい。行って、きます」
「ああ、任せろ」
明久の頼みに頷き、敵軍に近づく。
さっそく、女生徒が飛び出して瑞希に勝負を仕掛けた。
「長谷川先生、Bクラス岩下律子です。Fクラス姫路瑞希さんに数学勝負を申し込みます!」
「あ、長谷川先生。姫路瑞希です。よろしくお願いします」
「律子、私も手伝う!」
さらに1人追加で瑞希の相手が増える。
苦戦するようならば援護に出なければならんが。
どうだろうか……。
「「「試獣召喚!!」」」
3人の声が重なる。
魔方陣が展開し、おなじみに試験召喚獣が姿を現した。
瑞希の召喚獣を目撃した瞬間。
私は瑞希の援護をするという選択肢を――
――破棄した。
代わりに今にも殺されそうな仲間を援護する。
とりあえず、瑞希が集中できる状況を創りあげることにしたのだ。
「あれ? 姫路さんの召喚獣ってアクセサリーなんてしてるんだね?」
なんていう明久の疑問が聞こえた。
まぁ、なんだ。私が瑞希の援護をしなかった理由はコレだ。
召喚獣の腕輪。
それはつまり、
特殊能力を持っていることを意味する。
「じゃ、いきますね」
「ちょっと待ってよ!」
「律子! とにかく避けないと!」
キュボッ!
瑞希の召喚獣の腕輪から光がほとばしり、相手の1体を火だるまにした。
『Fクラス 姫路瑞希 VS Bクラス 岩下律子&菊入真由美
数学 412点 VS 189点&151点 』
召喚獣の腕輪というのは、一定の得点を超えた者の召喚獣に装備される。
瑞希にもあれば、当然。
私にもあるワケだよ、諸君。
「長谷川教諭。Fクラス御門澪、姫路瑞希と同時進行でBクラス残敵に数学勝負を申し込みます」
残党といっても、捕らえられなかった人数の方が多い。
相手は3人。瑞希より1人多いが、問題ない。
『Fクラス 御門澪 VS Bクラス 3名
数学 547点 VS 122点&143点&117点』
さて、点差は充分。
焦る事はない。
私は、だがな。
「な、コイツも腕輪があるぞっ!」
「なんだと!?」
「クッ、勝てねぇ……」
馬鹿な奴等だ。
勝敗を決めるのは点数ではないことを、コイツ等は理解していないらしい。
点数が高ければ有利なことは違いないが。
「さて、瑞希が能力を披露したのだし。私も1つ、お見せしようか」
――一心同体 始動――
視点が、正確には左眼の視点が低くなる。
私ではない、なにか別の者に『私』が入り込む感覚。
そしてその別の者が、『私』が入り込んだことを喜んでいる感覚。
そう、私は。
私の召喚獣、通称ジャックと同化したのだ。
とは言っても、精神だけだが。
この能力のおかげで、ジャックの感覚をダイレクトに理解できる。
つまり、より精密な操作が行えるわけだ。
「欠点は、感覚がダイレクトに伝わるが故に痛みもフィードバックしてくるところだがね」
しかも明久より酷い。
ポツリと呟くように情報を漏らしながら、『私』の体を動かす。
狙いは首。丁度良く、というか。馬鹿なことに一直線に並んでいるため、一気に片付けることにした。
刀に手を掛け、一閃。
振り上げられた武器を弾く。
そしてもう一閃。
3つの首が、ゴトリと落ちた。
こう表現すると、なんか殺人を犯してるみたいだな……。
そんな前科は持ってません。
「な、3人が一瞬で……」
「しかも的確に急所を突いてるぞ、あいつ!」
危険な表現について少々悩んでいると、3人が驚愕の声を挙げた。
「い、岩下と菊入が戦死したぞ!」
「こっちは3人が瞬殺だ!」
「なっ! そんな馬鹿な!」
「御門澪と姫路瑞希、噂以上に危険な相手だ!」
私と瑞希の実力に怯えるBクラス。
ちなみに、瑞希の戦闘と私の戦闘にはほとんどタイムラグはない。
描写ではわかりにくいので、一応。
コレってメタ発言?
メタ発言って言ってる時点でメタ発言とか、聴こえない聴こえない。
「瑞希、一旦退くぞ」
「あ、はい。皆さん、頑張ってください!」
およそ指揮官らしくない指示。
しかし、瑞希のような美少女であるが故に効果は絶大だ。
「やったるでぇーっ!」
「姫路さんサイコーッ!」
「御門の強さに惚れたっ!」
「兄貴と呼ばせてくださいっ!」
「いやむしろ姐御と呼ばせてっ!」
信者急増中。
瑞希どころか私の信者まで。
まぁ兄貴だろうが姐御だろうが、好きに呼ぶといい。
私は男にも女にも見えるこの容姿にコンプレックスは持っていない。
父と母から授かったこの肉体。嫌になるはずもない。
だから、姐御と呼ばれても。
というか、女扱いされても別に気にならないわけである。
まぁ昔は着せ替え人形になるのだけは嫌だったが……。
昔は、な。昔は。
男としての尊厳はどこへ行ったのだろうか?
もとからないのかそうかむかしはいやだったんだけどないまはまったくていこうがないんだぜふぇっふぇっふぇ。
「中堅部隊と入れ替わりながら後退! 戦死だけはするな!」
っというBクラスの叫びで正気に戻った。
ありがとう、何処の誰とも知れない人よ。
思わずダークサイドに堕ちるところだった。
「明久、ワシらは教室に戻るぞ」
「ん? なんで?」
Bクラスの誰かに感謝していると、秀吉の声が聞こえた。
教室に戻る、か。ふむ。
警戒しているのか?
「Bクラスの代表じゃが……」
「うん」
「あの根元らしい」
やはり警戒しているようだ。当たり前か。
なんせアノ男、目的の為なら手段は選ばない、と評判が悪い。
『喧嘩に刃物は基本装備』だとか『球技大会で相手チームに一服盛った』だとか。
真偽はわからんが、警戒しておくのが当然。
っというわけで。
「とっとと行け、2人とも」
「わかった。澪はどうするの?」
「瑞希はこの部隊の指揮官。そして私はその補佐だ。抜けるわけにはいかんだろう」
「まぁ、当然じゃな。澪、ここは任せてよいかの?」
「無論、任せておけ」
何人かを連れてFクラスの教室を目指す2人。
その背中を見送り、Bクラスに眼を向ける。
瑞希に指揮を任せて、私は大暴れすることに集中した。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「……ここはどこ?」
っと言うのは明久だ。私ではない。
あの後、一応任務も終了して教室に戻ってみると。
「お前、なんで生きてるんだよ」と言いたくなるような傷を負った明久が居た。
何でも島田にやられたのだとか。
詳細はわからんが、人質にされた島田を、明久は偽者だとして全力無視。
そのまま攻めたらしい。
無視した理由は島田が明久を心配していた事。
「あの島田さんにそんな優しさがあるわけがない!」
とは明久の弁。
まぁ、普段が普段だからな。仕方ない。
ツンデレはデレるタイミングを間違えると、悲しいことになるんだよな。
瑞希に心配されている明久に、秀吉と共に近づく。
「まさかお前自身が怪我をするとは思ってもいなかったぞ、明久」
「いくら試召『戦争』じゃからといって、本当に怪我をする必要なないんじゃぞ?」
聞くところによると、あれはもはや『戦争』ではなく『一方的な虐殺』だったらしい。
どんまい明久。
「ちょっと色々あってね。それで試召戦争はどうなったの?」
「今は協定どおり休戦じゃ。続きは明日になる」
「戦況は?」
「一応計画通り教室前に攻め込んだ。もっとも、こちらの被害も少なくはないがな」
雄二にこちらの被害が書かれたメモを渡された。
まぁ想定内だが、被害が大きいのは痛いな。
後の戦力に不安が残る。
「……(クイクイ)」
メモに眼を通していると、裾を引かれた。
振り向いてみると案の定、やや小柄の男子、康太がいる。
「ん、康太。どうかしたか?」
「……Cクラスに何らかの動きがある」
「動き? ……漁夫の利でも狙う気か?」
「……そこまではわからない。しかし」
「ああ、警戒するには充分な要素だ」
疲弊している軍を狙うのは定石だ。
なんせ潰しやすいのだから。
精神面でも体力面でも、かなりキツイ。
とりあえず、雄二に報告しておく。
「Cクラス、か。漁夫の利を狙うとは、いやらしい連中だな」
「そうでもあるまい。あまりにも筋の通った、常識的な手段だ。お前とて立場が逆なら、そうしていただろう?」
「まぁな。だが、それをやられるとたまったもんじゃない」
邪魔されるわけだしな。
チラリと時間を確認する。
まだ遅い時間ではない。
「協定を持ちかけてみるか?」
「そうだな。Dクラスを使って攻め込ませるぞ、とか言って脅してやればどうにかなるか」
「僕らが勝つなんて思ってもいないだろうしね」
FクラスがBクラスに勝負しかけているのだからな。
勝てるなんて、そうそう思わないだろう。
いや、正しくは思えない、だろうか。
「よし。それじゃ今から行ってくるか」
「そうだね」
よいしょ、と明久が立ち上がる。
体の調子でも確かめているのだろうか、腕を動かしたり屈伸したり。
あれだけ動けるのならば、一先ず安心か。
しかし、何かが引っ掛かる。
Cクラス、Bクラス。
この二つが関係した何かであることは間違いないのだが。
……。
だめだ、わからん。
「秀吉は念の為ここに残ってくれ」
「ん? なんじゃ? ワシは行かなくて良いのか?」
「お前の顔を見せると、万が一の場合にやろうとしている作戦に支障があるんでな」
「よくわからんが、雄二がそう言うのであれば従おう」
秀吉を使った作戦、か。
1番単純なのは、秀吉を優子として暗躍させることであるが。
実際はどうなのだろうか?
途中で須川と島田(明久の返り血を洗い流したらしい)を集団に引き入れる。
人数は多いほうが良い、うん。
しかし、思い出せないな。
Cクラス、Bクラス。
代表?
代表が、なんだ?
何だったかな……。
悩んでいる間にCクラスの教室に到着。
何故だろう。ここで思い出しておかなければ、とても痛手を負おう気がする。
なんらかの危機感があるが、思い出せないが故に扉に手を掛ける雄二を止めることができない。
「Fクラス代表の坂本雄二だ。このクラスの代表は?」
「私だけど、何か用かしら?」
推測通り、Cクラスにはまだそれなりの人数が残っていた。
その人垣を掻き分け、代表が出てくる。
たしか、バレー部のホープ。名前は小山だったはず。
「Fクラス代表としてクラス間交渉に来た。時間はあるか?」
「クラス間交渉? ふぅん……」
妙に警戒心を高ぶらせてくる笑みを浮かべる小山。
眼を細め、警戒心を限界まで引き絞る。
っと、その時。
「あ、思い出した」
「え? なにをですか?」
「ちょっとな……」
瑞希の疑問に少し言葉を濁らせ、教室に視線を走らせる。
可能性はある。奴の性格、行動パターンから読み取れば、居ないほうがおかしいのだから。
「ああ。不可侵条約を結びたい」
「不可侵条約ねぇ……」
その僅かな間に、雄二は小山との会話を進めていたらしい。
慌てて、雄二に叫んだ。
「雄二! 今すぐ撤退だっ!」
「あ? 何だって?」
振り返り、疑問の視線を投げ掛けてくる。
そんなことをしている場合ではない。
とっとと逃げなければ、危ないのだから。
「どうしようかしらね、根元クン?」
「当然却下。だって、必要ないだろ?」
「なっ!? 根元君! Bクラスの君がどうしてこんなところに!」
遅かったか……。
奥から取り巻きを引き連れて現れたのは、Bクラス代表の根元恭二だった。
思い出すのが遅すぎた。
コレは私のミスだ……。
「酷いじゃないかFクラスの皆さん。協定を破るなんて。試召戦争に関する行為を一切禁止したよな?」
「根元、貴様――」
「先に協定破ったのはソッチだからな? これはお互い様、だよな!」
根元の言葉と同時に、取り巻きが動き出す。
その背後には、小柄な長谷川教諭が隠れていた。
「長谷川先生! Bクラス芳野が召喚を――」
「させるか! Fクラス須川が受けて立つ!」
「援護する! Fクラス御門澪!」
「「試獣召喚!」」
いま須川という戦力を失うわけにはいかない。
須川を1人で戦闘に出すには不安がある。
突っ込んでいく須川の相棒を二丁銃で援護。
そうしながら雄二に指示を出した。
「雄二、全員退避させろ!」
「わかってる! 全員退避だ! 教室に戻るぞ!」
「澪! 僕たちは協定違反なんてしてない! 話してみれば――」
「無駄な行為はやめろ明久! 条文には『試召戦争に関する一切の行為を禁ずる』とある! 奴はそれを盾にしらを切るつもりだ!」
「ま、そゆこと♪」
「屁理屈だ!」
「屁理屈も立派な理屈の内ってな」
「明久、早く行け!」
「くそっ!」
明久が悔しげに退避するのがわかる。
早くこの戦闘を済ませて、追い駆けなければならない。
だからこそ、腕輪を使う。
「とっとと沈めっ!」
――一心同体 始動――
『Bクラス 芳野孝之 VS Fクラス 須川亮&御門澪
数学 161点 VS 41点&540点 』
「こ、コイツ! 腕輪が!?」
「須川!」
「了解!」
二丁銃で動きを止め、接近。
刀で相手の武器を叩き落し、須川と2人掛りでとどめを刺す。
須川に頼らなくても問題なかったのだが、万が一ということもある。
被害を最小限に抑える手段は悩むでもなく行うべきだ。
1人を戦死に追い込み、すぐさま撤退。
今は戦う時ではない。
「逃がすな! 坂本を討ち取れ!」
背後から根元の指示と複数の足音が聞こえる。
正直に言おう。かなりまずい状況だ。
Fクラスである須川や島田では、Bクラスの集団に勝てない。
ということは必然的に、私と瑞希が相手をしなければならないのだが。
私と瑞希は点数の消費を抑えなければならない。
さらに言うと、あの人数を相手にして生還するのは難しい。
特に、瑞希を守りながらでは。
打開策を考えながら走っていると、瑞希が遅れているのがわかった。
「はぁ、ふぅ……」
「姫路、大丈夫か?」
遅れる瑞希に雄二が声を掛けている。
やはり体力的に劣る瑞希には、この全力疾走がキツイらしい。
このままではマズイ。
……。
1つ、瑞希の遅れを取り戻す方法がある。
しかしそれは、あまり褒められたやり方ではない。
瑞希には想い人がいるのだから、あまりこの方法は。
だが、仕方がない。
今は生き残ることが最優先事項。
瑞希を戦死させるわけにはいかない。
「瑞希、先に謝っておく。すまん」
「え? なん……ですか?」
息を切らせる瑞希から投げ掛けられた疑問は無視。
その場で一歩、バックステップ。
他の者は走っているため、急激に前後の順番が変わる。
あっという間に最後尾になった。
計画を実行するために重要なのは、両腕の位置と私の体の傾き。
目測で微調整し、固定。
その体勢のまま、脚に力を込めて走る。
「ひゃっ!」
可愛らしい悲鳴と共に、瑞希の体が私の腕の中に納まる。
横抱き、俗称お姫様抱っこと呼ばれる体勢だ。
瑞希を追い抜くように走り、掬い上げるように抱え上げた結果だった。
瑞希が走るよりも私が抱えて走った方が速いと判断した行動だ。
そしてその判断は正しかった。
赤面し、硬直した瑞希を抱えたまま雄二に並ぶ。
「お前、意外と大胆な行動するんだな」
「そんなことはどうでもよかろう。それより雄二、後ろの集団はどうする気だ?」
「どうもこうもねぇよ。このままじゃ、全滅するのが眼に見えてる」
だろうな。
どうするべきか。
悩んでいると瑞希を落しそうになったため、慌てて抱えなおす。
このままでは危ないので首に手を回すように指示。
指示に従い、おずおずと手を回してくれた。
瑞希の体が安定し、走りやすくなる。
落す危険性がなくなったため、打開策を考えるのに集中できた。
さて、どうする……?
「雄二!」
「なんだ明久!」
「ここは僕が引き受ける! 雄二は皆を連れて逃げてくれ!」
先行していた明久が足を止め、振り向く。
思考――明久に任せて大丈夫だろうか?
結論――問題なし。
明久は点数を観点から外せば、私に近い性質を持っている。
だからこそ、任せても問題ないだろう。
「……わかった。ここはお前に任せる」
「無茶だけはするなよ、明久。必ず帰って来い」
「もちろんさ。僕も補習室は嫌だからね」
擦れ違いざまに明久にエールを送る。
大丈夫だとは思うが、やはり不安はあるのだから。
「……(ピタッ)」
「いや、ムッツリーニも逃げて欲しい。多分明日はムッツリーニが戦争の鍵を握るから」
明久なりに考えているのだろう。
心配したらしい康太が立ち止まると、首を振って断った。
そのタイミングで、島田が立ち止まった。
「んじゃ、ウチは残ってもいいのかしら。隊長どの?」
「……頼めるかな?」
「はーいはい。お任せあれっと」
島田は笑いながら、追っ手が来る方へ体を向けた。
それを見た康太は戻るべきと判断したらしく、グッと明久に親指を立てて私達の後に続く。
とりあえず、これで後ろの集団は問題ないだろう。
無事に教室に到着できる。
あとは明久と島田が生き残れるかどうか。
あの2人は部隊長と副隊長なのだ。
戦死してしまえば、部隊の士気が低下する。
なんとしても生き残ってまらわなければ。
『こいつ馬鹿だぁーーっ!』
おお、なんか大合唱が聞こえる。
「やれやれ、明久がなんかやらかしたんだな」
「個人的にはなにをしたのかが気になるんだがね」
「アイツのことだ。どうせ協定のことを持ち出して」
「それでもダメだったから、『万事尽きたか』なんて言ったんだろうな?」
「そうだな。絶対そんな感じだ」
後ろからの大合唱に、思わず苦笑しながら雄二と推理する。
なに、あながち間違いではないだろう。
そういう奴だ、明久は。
「あの、澪君」
「ん、どうした?」
「吉井君と島田さんは大丈夫なんですか?」
当然の疑問だろう。
Fクラス2人が、Bクラスの集団に勝てるとは思えない。
だが、明久と島田なら心配なかった。
腕の中で赤面したままの問い掛けに、私は微笑してやった。
「心配するな。他のバカならともかく、あの2人ならば問題ない」
「ですが……」
「瑞希、これは戦争だ。点数で全てが決まるわけではない。明久にも島田にも、学力が低いという短所と共に、長所がある」
「そ、それって……?」
「明久は《観察処分者》であり、島田は明久関連のことなら数倍の力を発揮できる」
だから、なにも問題ないさ。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
教室で明久と島田の帰りを待っている。
私は雄二と今後のことを話し、秀吉と康太は談笑しているが。
やはり不安が拭えないのか、瑞希は落ち着きなく教室の扉に視線を移していた。
小動物のようにキョロキョロする瑞希をみて、私達は苦笑する。
「そう心配すんな、姫路。アイツらは絶対に帰ってくる」
「不安なのはわかるが、あの2人じゃからのう。苦戦はしても、敗北はないじゃろう」
「……お茶でも飲んで落ち着くべき」
「そ、それはわかっているんですけど。やっぱり気になってしまって」
3人の励ましで少し落ち着きを取り戻したのか、康太から渡されたお茶をゆっくりと口に含む。
感謝を込めて3人に会釈しておいた。
今度は瑞希も含め、5人で談笑。
いつの間にか人数分用意されたお茶を飲みながら。
康太、いつの間に用意したんだ?
というか、どこからお茶を出した?
そんな疑問を抱えてもしょうがないので思考の片隅にポイすると、足音が聞こえた。
音が重なっていることから、1人ではないことがわかる数人
数は多くない。むしろ少ないようだ。1、2。2人か。
ということは、
「帰ってきたぞ、あの2人」
「あー、疲れたー」
まるで図ったかのように扉が開く。
言葉通り疲労した明久と、何故か機嫌が良さそうな島田が姿を現した。
「2人とも! 無事だったんですね!」
1番心配していた瑞希が駆け寄る。
もちろん、お茶を卓袱台に置いて。
明久の視線が瑞希の胸に行っているのがわかるが、まぁ許そう。
今回の褒美だ。
「うん。このくらいなんともいだぁっ!」
「容赦ねぇな、島田」
足先を踏み抜かれる明久と踏み抜く島田を見て、雄二が嬉しそうに呟いた。
明久の不幸を見るのが楽しくて仕方ないのだろう。
……コイツら、なんで友達やってるんだろうか?
そんなことより、アチラでは(痴話)喧嘩が始まっていた。
「し、島田さん。僕がなにか悪いことでも」
「(キッ!)」
「あ。い、いや。美波」
怒気を通り越して僅かながら殺気を感じる視線に、明久は眼を逸らした。
いや、そんなことはどうでもいい。
明久は今、何と言った?
「明久、島田の名前を呼ばなかったかのう?」
「呼んだな。俺も確かに聞いた」
「……驚きの進展」
「相手が島田だからな。今回はタイミング良くデレたのかもしれん」
4人で円を作り、コソコソと密談。
うむ、私の聞き間違いではなかったらしい。
しかし、あの島田が、ねぇ。
「随分2人とも仲良くなったんですね?」
「え? コレで?」
ニコニコと嬉しそうな瑞希に、滅茶苦茶不思議そうに返す明久。
あの鈍感バカには自覚できていないらしい。
……。
「普段の態度がアレだから、仕方ない、のか?」
「どうじゃろう? 明久以外にはわかりやすいと思うのじゃが」
「姫路も一発で気付いたしな。やっぱ明久が鈍感なだけだろ」
「……ツンデレは正義」
密談継続中。
明久の発言でさらに拍車が掛かった。
あの2人がくっ付くには、まだまだ課題が多いようだ。
あと康太。よくわからん発言はやめなさい。
さて、とりあえず。
生還を喜ぶことにしようかね。
「戻ったか。お疲れさん」
「無事じゃったようじゃな」
「ん。ただいま」
「敵も追い駆けて来なかったし、随分と頑張ってくれたようだな」
「まぁね。あそこで抜かれたら、雄二が負けるかもしれないからね」
「お前、そんなに俺のことを心配して……」
「違う! 戦争に負けるのが嫌だったんだよ! だから顔を赤らめるな!」
瞬時に赤面してみせる雄二は役者になれると思う。食っていけるかどうかはわからんが。
今度演劇部にでも誘ってみることにした。
主に女性キャラを演じる役で。
見物だな、コレ。
「さて、お前ら」
真面目な表情になった。
相変わらず切り替えが早いな。
「こうなった以上、Cクラスも敵だ。同盟戦がない以上は連戦という形になるだろうが、正直Bクラス戦の直後にCクラス戦はきつい」
正直じゃなくてもキツイ。
まぁ、向こうはその気で来るのだろうからな。
さらに厄介だ。
「それならどうしようか? このままじゃ勝ってもCクラスの餌食だよ?」
「そうじゃな……」
「心配するな」
頭を捻る明久達に、雄二は野性感たっぷりの活き活きした顔を向けた。
凄く楽しそうだ。
なんかエグイことでもやるのかもしれん。
「向こうがそう来るなら、こっちにだって考えがある」
「考え?」
「ああ。明日の朝に実行する。目には目を、だ」
思いっ切り企んでいた。
視線が少し秀吉に移ったのがわかるから、おそらく彼を使うのだろうが。
この日はコレで解散。
続きは翌日だ。
召喚獣のことがよくわかりません。
原作、井上さんの描写では
腕や足を刺された程度なら点数が減るくらいで済む、首や心臓をやられたら即死――つまり補習室行きだ 一巻P73
とあるんですが。
即死とかあるんですかね?
それとも島田さんと清水さんの点数差があったから、この描写になったんでしょうか?
あと1つ。
一呼吸置いて、工藤さんの召喚獣が全身から血を噴き出して倒れた 一巻P257
井上さんの描写ではこう書かれているんですが、P259の葉賀さんの挿絵では出血なんてないんです。
鼻血はセーフだけど刃傷沙汰の血はアウト、みたいなのがあるんでしょうかね?
やっぱり井上さんの描写を重視するべきでしょうか……。
そうすると、今回の澪君の首狩り。
大変なことになりますね。
霧島さん、どうするかな~。
一応伏線は(無理矢理)捻じ込んでますので、フラグも立てることはできますが。
原作バカテスでは、雄二君や明久君が
「ギャアアアアァァァッ!」
とか言ってますけど、澪に言わせるとなんか変じゃありません?
うちの子の性格だと、あの制裁を素で受け流しそうで怖い。
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