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よ、ようやく完成。
長かった……。
ちょっとしたスランプとネタの無さが招いた更新日の遅れですハイ。
いや、待たせてしまって申し訳ないです。
試召戦争編 第五問
Dクラス代表 平賀源二 討死


『うぉぉーーっ!』

その報せを聞いたFクラスの勝鬨とDクラスの悲鳴が混ざり、耳をつんざくような大音量が校舎内を駆け巡る。


『凄ぇよ! 本当にDクラスに勝てるなんて!』

『これで畳や卓袱台ともおさらばだな!』

『ああ。アレはDクラスの連中の物になるからな』

『坂本雄二サマサマだな!』

『やっぱりアイツは凄い奴だったんだな!』

『坂本万歳!』

『オイ、御門の射撃見たか? 凄かったな!』

『姫路さん愛しています!』


雄二を褒め称える声が聞こえる。
そして、最後に発言した奴。いい加減出て来い。
瑞希にふさわしくないような男ならば排除せねばならん。

雄二は、がっくりうなだれているDクラスの生徒たちの奥でFクラスの皆に囲まれているようだ。


「あー、まぁ。そう手放しで褒められると、なんつーか」

「坂本! 握手してくれ!」

「俺も!」


やれやれ、英雄扱いだな。
どれだけアノ教室に不満を持っていたのかが理解できる。


「坂本君の扱いが凄いです」

「当然だ。Fクラスである自分達がDクラスを打ち破ると言う結果は、アイツがいなければ達成できなかったのだからな」


いや、Dクラスに挑もうという機会すらなかったかもしれん。
隣にいる瑞希の呟きに、そう返してやった。


「私達も英雄に会いに行こうか、瑞希」

「あ、はい」


瑞希を従え、生徒達の間を縫って雄二に近づく。
と、奇妙な光景が広がっていた。

明久の手首を捻っている雄二

雄二に手首を捻られている明久

足元に落ちている包丁

――意味不明だ

瑞希も首を傾げている。


「奇妙な行動をしているな、お前達」

「おお、澪、ちょうど良かった。ペンチ持ってないか?」

「いや、ないな。刃物ならば腐るほど持っているが」

「じゃあ、それでいい。大きめの刃物を四本貸してくれ」

「ああ、構わんぞ」

「!? す、ストップ! 僕が悪かった!」

「……チッ」


後に聞いたことだが、何故大きめの刃物四本だったかというと。
四肢を貫いて磔にするつもりだったらしい。
雄二、私が言うのもどうか思うが……

――おまえ、実は悪魔だろう?


「まさか姫路さんと御門がFクラスだなんて……信じられん」


背中から誰かの声。

振り向くとそこにはヨタヨタとこちらに歩み寄る平賀の姿があった。


「あ、その、さっきはすいません……」


従者のごとく、私の斜め後ろにいた瑞希が謝りだす。


「いや、謝ることはない。全てはFクラスを甘く見ていた俺達が悪いんだ」


規模や方向性は違うが、これは戦争(ころしあい)
今回は騙し討ちが中心になったが、瑞希が謝る必要性は皆無だ。


「ルールに則ってクラスを明け渡そう。ただ、今日はこんな時間だから、作業は明日でいいか?」


代表は大変だな。
勝てば英雄、負ければ戦犯。
こういったところも、戦争に類似している。


「もちろん明日でいいよね、雄二に澪?」


私に聞く必要はないだろう。代表(リーダー)は雄二だ。
いつの間にか私が代表補佐(サブリーダー)になってはいるが……。


「いや、その必要はない」

「え? なんで?」

「Dクラスを奪う必要がないからだ」


キョトンとした明久に雄二がそれが当然のことのように告げる。


「えっ、それはどういうこと? 折角普通の設備を手に入れることができたのに」

「やれやれ。明久、忘れたか? 私達の目的は、Aクラスを打破する(ころす)ことだろう?」


打倒Aクラス。それこそが我々の最終目標にして到達点。


「でもそれなら、なんで標的をAクラスにしないのさ。おかしいじゃないか」

「少しは自分で考えろ。そんなんだから、近所の中学生に『馬鹿なお兄ちゃん』なんて愛称をつけられるんだ」


雄二。実は中学生ではないのだ……


「なっ! そんな半端にリアルな嘘をつかないでよ!」

「雄二。明久は確かに『馬鹿なお兄ちゃん』と呼ばれていたぞ……。あー、小学生に」

「……人違いです」

「よ、吉田君……」

「まさか……本当に言われたことがあるのか……」


スッと目を逸らす明久に、衝撃の事実に目を開く瑞希と雄二。


「とにかく、だ。私達はDクラスの設備に手を出すつもりはない……」

「それは俺達にはありがたいが……。それでいいのか?」

「無論、条件付きだがね」


このまま解放など、ありえるわけがないだろう?


「一応聞かせてもらおうか」

「なに、そんなに大したことじゃない。俺が指示を出したら、窓の外にあるアレを動かなくしてもらいたい。それだけだ」

「Bクラスの室外機か」

「設備を壊すんだから、当然教師にある程度睨まれる可能性もあるとは思うが、そう悪い取引じゃないだろう?」


悪い取引だと思うのは、真正の馬鹿だけだろう。
うまく事故に見せかければ厳重注意のみで済み、それだけで三ヶ月間あの教室で過ごすという状態から逃れられる。


「それはこちらとしては願ってもない提案だが、何故そんなことを?」


もっともな疑問だ、Dクラス代表。
だが、こちらとしては対Bクラスの作戦に使うとしか言うわけにはいかん。
情報が漏れるのは喜ばしくないからな。


「次のBクラス戦の作戦に必要なんでな」

「……そうか。ではこちらはありがたくその提案を呑ませて貰おう」

「タイミングについては、後日我々の方から連絡をする」

「ああ、ありがとう。お前らがAクラスに勝てるよう願っているよ」

「ハッ、ご冗談を。そんなこと、お前が思っているはずがないだろう」

「それはそうだ。AクラスにFクラスが勝てるわけがない。ま、社交辞令だな」


じゃあ、と手を挙げてDクラス代表の平賀は去っていった。
しかし、平賀よ。知っているか? この世に『絶対』なんて存在しない。
『もしかしたら』という可能性が0.1%でもあれば、それはもはや『絶対』ではないのだから。

――お前のその考え、私達が粉砕(ころ)してやる


「さて、皆! 今日はご苦労だった! 明日は消費した点数の補給を行うから、今日のところは帰ってゆっくりと休んでくれ! 解散!」


雄二の号令に従い、我がクラスメイトは自分のクラスへと向かい始めた。


「雄二、澪。僕らも帰ろうか」

「そうだな」

「ああ、そうするか」


私はあまり動いていないから疲労は無い。
しかし、体が弱い瑞希が心配だ。送った方がいいだろうか?
そんなことを考えていると、


「あ、あのっ、坂本君っ」

「ん?」


瑞希が雄二を呼び止めた。


「お、姫路。どうした?」

「実は、坂本君に聞きたいことがあるんです」


胸に手を当て、少々興奮気味に話す瑞希。
ふむ、私と明久は席を外した方がいいかもしれん。


「さて、明久。私達は席を外そうか。なにやら重要な話になりそうだ」

「うん、そうだね」

「雄二、荷物は持って行く。直接玄関に来い」

「おう、たのむ」


瑞希と雄二に背を向け、教室へと向かう。
……前に、秀吉に声を掛けられた。


「澪、伝言を頼まれてくれんか?」

「相手と内容による」

「姉上にじゃよ。少し遅れると伝えておいてほしいのじゃが」

「理由を聞かれたら?」

「演劇部に用ができてしまってのぅ。少し時間がかかってしまうのじゃよ」

「了解した、我が妖精よ(マイ・フェアリー)

「……澪、その妖精(フェアリー)女神(ゴッテス)という名前を付けるのは止めたほうが良いと思うのじゃが」

「文句があるのならば私の父に言うんだな。これはアノ人の血のせいだ」


呆れたように言う秀吉だが、コレばかりはどうしようもない。
特殊な名前を付けるという行為は血であるうえに、もはや癖なのだから。


「まぁ、伝言の件は心配するな。しっかり伝えておく」

「うむ、たのむぞい」


用事を済ませに行ったのだろう、小走りで去る秀吉を見送り、明久の肩を叩く。


「というわけだ。私の荷物も頼む」

「うん、わかった。任せといて」


明久はFクラスの教室へ、私は優子が所属するAクラスの教室へと向かった。



・・・・・
・・・・
・・・
・・




「木下優子はいるか?」


Aクラスの教室へ入室し、そう発言する。
誰か個人に聞いたわけではなく、教室内に響き渡る程度の声量での発言だ。

突然だが、人間は気になる音に対して無意識に反応してしまう、ということをご存知だろうか?
例えば、どこかで小銭が落ちた音。例えば、授業中に教室のドアが開いた音。
この音を聞いたとき、無意識にその音の方へ顔を向けている、という経験が皆様にあるはずだ。

閑話休題
そんなわけで教室内にいた生徒達の視線をモロ浴びてしまう。
自分で言うのはどうかと思うが、私の容姿は優れているらしい。
あの二人の子なのだから容姿端麗でなければ逆におかしいとは思うが。
……男か女か判断できない容姿では、あまり嬉しくはないのだが。
とにかく、そのおかげで視線をいうものには慣れている。
慣れてはいるが、やはり心地が良いというモノではない。
好奇の視線に少しばかり顔を顰めていると、優等生っぽい、大和撫子という呼び名が似合いそうな女生徒が近づいてきた。


「……あなた、誰?」

「人に名を聞くときは自分から、と返すのがテンプレートだが、どうでもいいか。Fクラス所属、御門澪だ。アンタは?」

「……Aクラスの代表、霧島翔子」

「ほう、アンタが主席の霧島か。よろしく、代表さん」


別に媚びを売る必要もないので、挨拶は軽い。
さて、とっとと用件をすませるか。


「で、私は木下優子の……友人? なのだが、彼女の弟君から伝言を預かっている。本人さんはどこにいる?」

「……今は教室にいない」

「どこにいるかわかるか?」

「……ちょっと待ってて」


そう言って私から離れ、短髪のボーイッシュな女生徒の方へ向かった。
やる事もないので、とりあえず霧島の後ろに付いていく。


「……愛子、優子がどこにいるか知ってる?」

「ん? ああ、優子ならお手洗いだよ」

「……呼んでくる?」

「ああ、頼む」


霧島は優子を呼びに教室から出た。
待つしか選択肢は無くなったようだ。
教室内で待つか、外で待つか。
さて、どちらにしようかと考えていると、愛子とやらが話しかけてきた。


「ボクとしては、優子より君に興味があるんだけど」

「単なる好奇心としての興味か、性的対象としての興味か。後者ならば失せてくれ。面倒だ」

「サラッと凄い事をいうね、君。ご心配無く、前者だよ」


少なくとも、今はね。と、クスクスと笑う。
今は、ときたか……。
私の行動が、この女を妙に刺激しなければいいのだが。


「あ、ボクの名前は工藤愛子だよ。よろしくね」

「御門澪。こんな容姿だが男だ、よろしく。縁があれば、の話だが」

「酷いなー。そんなにボクのこと、嫌い?」

「いや、嫌いというわけではない」


というか、なにもされていないのに嫌うとは思えん。


「じゃあ、なんでそんなに冷たいのかな?」

「面倒くさそうだからだ」

「ふ~ん、まぁいいよ。好きになっちゃったら、本気で君の心を奪いに行くだけだから」

「……」

「ん、どうかした?」

「いや。この私を相手に、そんなことを言った者はお前が初めてだからな。驚いただけだ」


男か女かわからない私に、面と向かって「心を奪う」なんて告げたのはコイツが初めてだ。
何と言うか、喜べばいいのか悲しめばいいのか、そんな感慨に浸ってしまう。
少しばかり談笑していると、霧島が優子を連れて戻ってきた。


「遅かったな、女神(ゴッテス)

「その呼び方は止めなさい。誤解されるでしょ」


どう誤解されると?
お前が女神で私が天使とか?
この髪ならそんなことを言われても仕方ないかもしれん。


「そんなことはどうでもいいわ。秀吉から伝言があるんだって?」

「ああ、そうだった。今日は遅れるらしい。部の急用で呼び出されたとか」

「そっか。わかった、わざわざありがとね」

「友人の為だ。この程度のことは構わんよ」


さて、これで用は終わった。
明久達が待っているかもしれん。玄関に向かうか。


「そういえば、聞いたわよ。Dクラスに勝ったらしいわね?」

「ああ、殺してきた」

「物騒な言い方は止めなさい。で、訊きたいことがあるけど、いい?」


内容は予想できる。
コイツのことだ。私がFクラスに入った理由も知っているのだろうし。


「Fクラスの最終目標って、Aクラス(ココ)?」

「さあな。そうかもしれないし、Bクラス止まりかもしれん」

「教えるつもりはないってことね?」

「当然だ。情報を教えて、コチラに利益になることがない」


言葉を濁しながら、わかりやすい言の葉で情報を渡す。
私は優子に情報を隠す気は無いし、優子もコノ情報を広める気は無いだろう。
ソレくらいの信頼はある。


「さて、女神(ゴッテス)。そろそろ帰らせてもらうぞ」

「だから、ソレはやめなさいってば」

「あー、ねぇ優子。女神(ゴッテス)って、なに?」


今まで蚊帳の外だった工藤が優子に問いかける。
霧島も気になるのか、優子の答えを待っていた。


「コイツの趣味というか、癖なのよ。こういう変な……二つ名? みたいなのを人に付けるの」

「むしろ血筋だ」

「血筋?」

「父が、ちょっとな」


何故そんな癖がついたのかは知らんが。
職業がアレだったからだろうか?
ん? アレは職業と言うのか?


「ちなみにさ、ボクや代表だったらどんな二つ名にする?」

「そうだな。まずお前は――わんぱく小僧(エルフ)

「あの、ボク女なんだけど……」


流石に抵抗があるのか、困ったような顔で文句を言う。
まあ安心しろ、冗談だ。


「冗談だ。そうだな、女帝(エンプレス)、なんてどうだ?」

「女神の次は女帝なのね。理由は?」

「権力を使って男を囲っていそうだ」


私の発言に工藤は顔を引き攣らせ、優子と霧島は顔を見合わせる。
ボソボソと対談したあと、コチラに顔を向け、


「間違ってはないわね」

「……むしろ納得」

「ちょっ! 二人ともっ!?」


効果音があれば、『ガーンッ!!』とでもあるだろうか?
それくらい工藤は驚いていた。


「なんで納得するの!?」

「いや、だって……ねぇ~?」

「……愛子、エロいから」

「うわっ!? 代表にエロいって言われたっ!?」


トリオで漫才を繰り広げ始めた。
ボンヤリと眺めていると、一通りやり終えて満足したのか、コチラに顔を向けてきた。


「漫才は終わったか?」

「漫才じゃないわよ」

「いや、どう見ても漫才にしか見えんだろう」


見ろ。私の発言に、一連のやりとりを見ていた連中が頷いてるぞ。


「う、うるさいわね! そんなことはどうでもいいのよ!」

「なぜ私が怒られる……」

「ほら、早く代表に二つ名(?)を付けなさい」

「……理不尽だ」


そもそも二つ名(?)を付けられて嬉しいものなのだろうか?
自分で付けていてなんだが、さっぱり理解できん。
まあ、二つ名を付けろと言うなら付ける。当人である代表さんも気になるのか、私を見ているようだし。
しかしなんだ。こう、懐かしい気もするな。二つ名(?)を付けるのは久しぶりだ。
さて、どうするか。


「決まった?」

小さな聖母(リトル・マリア)

「は?」


三人娘は目を丸くする。ああ、私も自分で驚いた。


「なんで『リトル』なのよ?」

「代表は言うほど小さくないよね」

「いや、私にも解らん。こう、自然と出てきた」

「…………そう」


間が大きいな、代表さん。
だが、怒っているのでは無いようだ。
むしろ、驚愕と困惑……希望? なぜだ?
疑問が浮かぶが、理由がわからない。
ならば考えてもしかたないだろう。
というか、早く帰りたい。


「さて、私はそろそろ帰るぞ。家が恋しい」

「ホームシック?」

「ある意味な。具体的に言うと、ベットが恋しい」

「眠いだけなのね」

「そうだ。というわけで、もう帰るぞ」


じゃあねー、という陽気な声を背に受けながら、私は踵を返し教室を出た。



・・・・・
・・・・
・・・
・・




ハイ到着。
私のカバンを持った明久と雄二がいた。
どうやら待っていてくれたらしい。


「ようやく来たか」

「遅いよ、澪」

「うるさい。私とて用があったのだ。遅くなったぐらい許せ」


明久から荷物を受け取りつつ、文句に文句を返す。


「瑞希はどうした?」

「姫路は用があるらしくてな。先に行ったぞ」


ふむ。送って行こうかと思っていたのだが。
仕方ないか。
私達は帰りの方向が同じだ。そのため、こうして共に帰ることが多々ある。


「それにしてもさ」


呟くのは明久だ。


「どうした?」

「Dクラスとの勝負って本当に必要だったの? 別にエアコンくらいなら他の方法でも壊せたと思うけど」

「ああ、そのことか」


なるほど。何もわからないコイツでは不思議な疑問か。


「理由は他にもある。クラスの皆を試召戦争に慣れさせる為だとかな」

「ふーん。それじゃ、Dクラスの設備を手に入れなかったのは?」

「目的はAクラス。Dクラスに用はない。ここで褒美を与えれば、一部の人間が満足して戦争に反対する輩が出る可能性も否めない

「そうなったら厄介だからな。不満によるモチベーションを維持する為でもある」


考えてはいるのだよ、色々とな。
安心しろ。戦時での人心掌握は得意分野だ。


「Aクラスに勝てるかな?」

「無論だ。俺達に任せておけ」

「問題ない。戦は私の独壇場だ」

「……ありがとう。僕のわがままの為に」

「気にするな。明久が言わなければ、その台詞は私か雄二の台詞だっただろうからな」

「そうだな。第一、試召戦争は俺がこの学校に来た目的そのものだからな」

「へぇ……。澪はなんでこの学校に?」

「私か? 瑞希がココに来たからに決まっているだろう」


私の答えを聞いて、雄二と明久は黙り込んだ。
何か考えているようだ。


「ねぇ、雄二。澪ってさ……」

「いや、それはないな。コイツは興味ないからな、そういうの」

「なんだ。私がどうした?」

「いや、あー……澪ってさ」


明久が悩むように首を傾げ、微妙な顔をする。
雄二も奇妙な顔をしている。
「ありえん」と言いたげな表情と、「いや、もしかしたら」と言いたげな表情が綯い交ぜだ。


「その……」

「なんだ? さっきから微妙な顔をしやがって」

「えーっと……。姫路さんのこと、好きなの?」

「……は?」


思わず足を止める。
眼が丸くなっているかもしれん。
ふむ。予想外の質問だな。
いや、ある意味当然の疑問か……?


「その問いの答えはYESだ」


ただし、


「女としてではなく、娘や妹のような感じでな」

「つまり、恋ではないと?」

「当然」


まぁ、瑞希が最優先であることに変わりはないが。
そんな事を考えながら、なんとなくポケットに手を突っ込む。
違和感。
あるはずの物が無かった。


「あー。落としたか」

「ん? どうしたの?」

「マガジンを一つ落としたらしい」

「ドジだな、お前」

「雄二、どっちがいい?」

「なにがだ?」

「刻まれるのと磔にされるの」

「すまんっ! 許してくれ!!」


脅しって、楽しいよね?
私だけか? いや、そんなことないはずだ。
皆脅すのって、大好きだろう?


「そういう訳で、取りに戻るぞ」

「あいよ。俺らは先に帰っとくぞ」

「また明日ね、澪」



・・・・・
・・・・
・・・
・・




何処に落したのかわからないため、来た道を辿って行くと、教室に付いてしまった。
どうやらココに落したらしい。……多分。
無かったら暴れるかもしれん。

シパーンッ!!

思いっきり扉を開けると、大きな音がする。


「ひゃあうぅっ!!」


音に驚いたらしく、声がした。
声? 誰の?


「瑞希?」

「み、澪君!?」


そこにいたのは私が姫君と呼ぶ瑞希だった。
驚いた拍子に飛び上がったのか、髪が逆立っている。


「あ、あああのそのえっと!?」

「OK、落ち着こうか瑞希。何が言いたいのかわからん」

「は、はい」


すー、はー
と言う呼吸音が聞こえる。
深呼吸をしているようだ。


「落ち着いたか?」

「い、一応は……」

「そうか。で、なぜココに?」

「そ、それはその……」


なぜかモゴモゴと口ごもる。
なにか言いづらいことでもしていたのだろうかね。


「み、澪君は何故ココに?」


あ、誤魔化した。まぁ、構わんがね。


「マガジンを一つ落したらしくてな。道を遡っていたら、ココに着いた」

「そうなんですか」

「で、お前は?」

「あ……うぅ……」


余程言いづらいのかねぇ。瑞希の視線が泳いでいる。
待っている間やることもないので、とりあえずその視線を追ってみた。
ん? あれは……。
瑞希の席に、便箋と封筒が置いてあった。随分と可愛らしいものだ。
瑞希は私の視線に気付いたらしく、突然あわあわし始めた。


「こ、これはですねそのっ」

「??」

「えっと――ふあっ!」


コテン、と卓袱台に躓いて転倒する瑞希。
その拍子に隠そうとした手紙が私の前に飛んできて、その一文をしっかりと目撃した。


《あなたのことが好きです》


the・world

時が止まった。


「…………」

「…………」


空気が凍った。
現在進行形で……。


「…………」


顔を真っ赤にして俯く瑞希。

あー、どうしたものか……。


「ん、んー……おめでとう?」

「ふぇ!?」


私の言葉に敏感に反応し、ビクッ! と体が跳ねる。
いやはや、どうしたものか。
まさか、こんな場面に遭遇とは思わなかった。
とりあえず、何故かポケットに入っていたキャラメルを瑞希の口に突っ込む。
眼を白黒させるが、大人しくキャラメルを舐め始めた。


「ハァ……瑞希、これはやはり……」

「あ、はい。……その、ラブレター、です」

「相手は……いや、コレを聞くのは無粋か」

「あ、いぇ、……そのぅ」


普段ならラブレターを渡す相手を見定めるが、彼女自身が決めたのならば文句はない。
しかし、やはりまぁ気になるところ。
ってなわけで、


「そいつのどんなところが好きなんだ? やはり外見か?」

「あ、いえ。外見じゃなくて、あっ、もちろん外見も好きですけど!」


う~む。瑞希には春が来たか。
私の春は何時来るのかねぇ?
まぁ、興味ないのだけれど。


「外見も、ということは内面もか?」

「ええ。いつも冷静で。とても厳しいのに、慰めて欲しいときには優しくて。頼りがいもあって。……私の憧れなんです」


やれやれ。


「その手紙」

「は、はい」


本当に純粋で、綺麗な娘だ。
私なんがか隣にいることが、申し訳なくなる程に。


「良い返事がもらえるいいな。応援してる」


そう言って私は、自分の席の近くに落ちていたマガジンを取り、教室を出て行く。
偶然にも瑞希のラブレターを見てしまい、忘れようとは思ったが。
あの娘は妹分だ。応援したくもなるものよ。

嬉しそうに笑う彼女に愛されて、相手は幸せなのだろうと思う。
瑞希程の美少女だ。まず断られることはなかろう。

そのときは、私はもうお役御免かねぇ。

なんとなく、感傷に浸ってしまう。
やれやれ、らしくない。



・・・・・
・・・・
・・・
・・




雄二 side



溜め息が出る。こんなに悩んでいるんだ、溜め息ぐらい許されるだろうさ。
ベットに身を投げながら俺は今日のことについて考える。
試召戦争のこともそうだが、今回は姫路の相談についてだ。

いや、予想はしていた。態度からして予想するのは難しくなかったし。むしろ簡単だった。
しかし、まさか『男』としてとは思ってなかった。『兄』や『父』に対するような好意だとばかり思っていたからな。
まぁ、めでたいと言っておこう。羨ましいかと聞かれれば、当然の様に羨ましいが。
やれやれ、


「やってくれるなぁ、相棒」


お前の魅力は老若男女に有効だからな。
まぁ、自覚している分だけマシか……。
もっとも、内面の魅力は無自覚のようだが。


好意といえば、今週末も『アイツ』に手伝わされるのだろうか?
……。手伝わされるんだろうなぁ。
『ヤツ』が何者なのか、手がかりがあればいいのだが。
あるといえば、『ゴスロリ服(黒)』と『ロングコート(黒)』だけだしな。『ゼロ』って名乗ったが、明らかに偽名だし。
無理だろ、探すの。
や、俺も礼は言いたいから探すがね。


「澪の親父さん、なんか知ってるかもな」


あれだしな、元ヤクザ。
奥さんが元警官ってのはありえないと思う。
結婚のきっかけはバカバカしいと澪が言ってたっけな。
何度か会ったことがあるが、あの桃色空間は凄い。
将来、澪が結婚したらあんな状況が見れるのだろうか?

ククッ、ありえねぇーな。

あいつはそんな柄じゃねーし。
ま、それはそれで面白そうだが……。


side out



・・・・・
・・・・
・・・
・・




登校には何も面白い事がなく、すんなりと教室前に到着。
つまらんとは思うが、何時までも突っ立ってるのもどうかと思う。
面白い事があるように祈りながら、教室の戸を開けた。
ボロい畳と卓袱台。
衛生上に悪い。
早くどうにかせねばならん。瑞希は体が弱いのだし。


「おはよう、雄二」

「おう、澪か」


既に到着していた雄二に挨拶。
卓袱台の上には英語の教科書がある。テスト前の勉強だろう。
私もしようか。英語はヤバイ。


「おはよう、御門」

「ああ、おはよう、島田」


島田から私に挨拶をしてきた。
少し邪険なオーラがある。機嫌が悪そうだ。


「機嫌悪いな。どうかしたのか?」

「実はね。アンタが待機してる時、吉井が消火器のいたずらをして窓を割って、さらにそれらの件をウチがやったことに仕立てあげたのよ……」


……。
わかっていたことなのだが、アイツはバカだ。マジでバカ。
私としてはどうでもいいのだが、島田の士気が下がっては困る。
何か罰を与えるか……。
考える私の横でグチグチ文句を言う島田に相槌を打ちながら考える。

ふむ……どうしたものか。



・・・・・
・・・・
・・・
・・



ガラリと開かれる扉。
明久が来たようだ。


「おはよう、明久」

「おう明久。時間ギリギリだな」

「ん、おはよう雄二に澪」


挨拶を終えて、明久が席につきこちらへと体を向けます。


「皆には何も言われなかったの?」

「ん? 何がだ?」

「Dクラスの設備のこと」

「ああ。皆にも説明した。問題ない」

「ふーん」


素直に言うことを聞いたのは昨日の雄二の働きを評価してのことだろう。
まだ上が狙える可能性があるならば、Dクラス程度の設備には興味はない、ということだろうか。
っと、コイツに罰を与えねばな。


「それより明久」

「どうしたの?」

「いや、お前はそのままでいいのかと思ってな」

「え? なにが?」


顔を見る限り、本当にわからないらしい。
思わず溜め息がでる。


「なんで溜め息なんか――」

「吉井っ!」

「ごぶぁっ!」


明久の台詞が島田の拳に遮られた。
まぁ、その程度なら許容範囲か。


「し、島田さん、おはよう……」

「おはようじゃないわよっ!」


パンチが綺麗に決まった。悶えている明久。


「アンタ、昨日はウチを見捨てただけじゃ飽き足らず、消火器のいたずらと窓を割った件の犯人に仕立て上げたわね……!」


怒るのも当然だろうな。


「おかげで彼女にしたくない女子ランキングが上がっちゃったじゃない!」


誰が作ってるんだよ、そんなランキング。
女に見える男ランキングとかありそうで怖いじゃないか。
ちなみにトップは秀吉。次が私。
ここで仲裁に入る。


「まぁ、落ち着け島田」

「なによ、ウチはまだ満足してないわよ?」


ナイスサディスティック。
しかし、まぁ待て。


「罰なら私が考えてある」

「甘っちょろいもんじゃないでしょうね」

「当然。罪には罰だからな」


そうして、明久に向き直る。


「さて、大丈夫か明久」

「ううん。さっきから鼻血が止まらないんだ」

「そうかい。だが一つ忠告しておこう」

「何? あまり重要なものじゃなかったら、鼻血が止まってからにしてほしいんだけど」

「いやいや、かなり重要だぞ。お前にとって」


――一時間目のテストな。



「監督、船越女史らしいぞ」


それを聞いた瞬間、明久は扉を開けて逃亡を開始した。


「ま、コレでいいだろう」

「ええ。ちょっとスッキリしたわ」



・・・・・
・・・・
・・・
・・




秀吉 side



ようやく四教科のテストが終わり、ワシは席から立ち、皆が集まりやすい澪の席へ向かう。


「ハァ……」


最後が英語だったからじゃろう、澪が顔を顰めて溜め息をついた。
明久は机に伏せている。船越先生とひと悶着あったらしい。
ワシにはどうも自業自得だと思うのじゃが。


「疲れたのう」

「…………(コクコク)」

「同感だ。英語はどうも……ハァ」


すぐ傍にいるムッツリーニの頷きとワシの言葉で、澪が愚痴る。
しかし、奇妙なものじゃな。他は完璧じゃというのに、英語だけダメじゃなんて。


「よし、昼飯食いに行くぞ! 今日はラーメンとカツ丼と炒飯とカレーにすっかな」


勢いよく立ちあがる雄二からは全然疲れを感じさせぬ。
テストの後だというのにどういう体の構造をしておるんじゃ。昼食のメニューも含めて。


「全部高カロリー。しかもメインの物ばかりじゃないか」


そんな雄二の昼食のメニューに突っ込むのは澪。
毎日カロ○ーメイトだけのお主が言うセリフかのう。
アレはアレで問題があると思うのじゃが……。


「ん? 吉井達は食堂に行くの? だったら一緒していい?」

「ああ、島田か。別に構わないぞ」

「それじゃ、混ぜてもらうね」

「…………(コクコク)」


ムッツリーニ、お主は島田に下心を抱いておるのじゃろう。
そこまで己の心情を貫くを逆に清々しく思えるのう。
姫路にやったら、澪に潰されるのがオチじゃろうが。


「吉井、なんかウチの悪口考えてない?」

「滅相もございません」


明久も全く。
まぁ、とりあえずは昼食じゃ。今日は何を食べようかの。


「じゃ、僕も今日は贅沢にソルトウォーターあたりを――」

「明久。一体それのどこが贅沢なのじゃ……」

「明久。お前は泥水で十分だろう?」

「うわ、澪ひどっ! さすがにそれはないでしょう!?」


澪が明久を虐めておる。珍しいのう。
明久が文句を言っている間に、澪はカバンから弁当箱を取り出した。


「澪。まさかと思うのじゃが、その中身は全てカロ○ーメイトか?」

「お前は、私をカロ○ーメイト信者かなにかだと思っているのか? 普通に弁当だ」


ワシの問いに、ジト目で答える。
その言葉に、ムッツリーニの眼が輝いた気がした。


「……澪の、弁当 (ジュルリ)」


唾液を啜るのもわかる気がするのう。
澪の作る料理は美味じゃから。
期待の眼差しに気が付いたのか、澪は苦笑する。


「安心しろ、分けてやる」

「それはありがたい」

「……感謝」


さて、食堂に行くとするか。


「あ、あの。皆さん……」


全員が立ち上がり、食堂に行こうとしたところで声をかけられる。


「うん? あ、姫路さん。一緒に学食に行く?」

「あ、いえ。え、えっと……、お、お昼なんですけど、その、昨日の約束の……」


姫路はもじもじしながらワシらの方を見てくる。

そう言えば、昨日姫路にお弁当を作ってもらう約束があったような。


「おお、もしやお弁当かの?」

「は、はいっ。迷惑じゃなかったらどうぞっ」


と、身体の後ろに隠しておったバッグを出してきた。


「迷惑なもんか! ね、雄二!」

「ああ。ありがたい」

「そうですか? 良かったぁ~」


嬉しそうに笑う姫路。皆に御馳走するのが嬉しいのじゃろうな。


「むー……っ。瑞希って、意外と積極的なのね……」


むくれて睨むのは島田。何が気に入らないんじゃろうか、ワシにはわからぬ。
澪ならわかるかもしれんが……。
ん?


「澪? 大丈夫か? 顔が青ざめておるぞ」

「……顔面蒼白」


しかも、こころなしか震えているような気もするが。
む、なにかブツブツ呟いておる。


「ああそうだった何故私はこんな命に関わるような重大な問題を忘れていたのだそうかあれかイヤなことは記憶から消し去る本能のせいかまぁ今更どうしようもないがイヤしかし瑞希の厚意を無碍にするわけにはいかんしどうしようかヤバイヤバイヤバイヤバイッ!!」

「み、澪? なにをそんなに怯えておるのじゃ?」

「……余程重大な問題」


あの澪がココまで怯えるなど。尋常ではない問題なのじゃろうな。


「秀吉、康太」


いや、救いを求めるような眼で見られても困るのじゃが。


「後で、説明する」


ガタガタ震えながら言われても……。
そんなやりとりをしている間に、屋上へ移動する事が決まったらしい。


「お前らは先に行っててくれ」

「ん? 雄二はどこか行くの?」

「飲み物でも買ってくる。昨日頑張ってくれた礼も兼ねてな」

「あ、それならウチも行く! 一人じゃ持ち切れないでしょ?」

「悪いな。それじゃ頼む」

「おっけ!」


ふむ、明久なら警戒心しか出さんのじゃろうな。確信できる。


「きちんと俺達の分をとっておけよ」

「大丈夫だってば。あまり遅いとわからないけどね」

「そう遅くはならないはずだ。じゃ、行ってくる」


雄二と島田が財布を持って出て行った。
一階の売店に行ったんじゃろう。


「僕らも行こうか」

「そうですね」


明久が姫路のバッグを受け取ると、全員で屋上まで歩いて行った。
相変わらずカタカタと震える澪の隣を歩く。


「澪、お主一体どうしたのじゃ? らしくないぞ」

「ああ、秀吉」


恐ろしく弱りきっておるの。
とりあえず、話題を作るか。


「しかし、澪が弁当を作ってくるとはのう。珍しいこともあるものじゃ」

「まぁ、瑞希が作ってくるのだからな。私が作らないわけにはいくまい」


なるほど。澪ならばそれだけで十分な理由になる。
しかし、なんというか。


「おもしろくないのう」

「ん? なんか言ったか?」

「いや、何も言っておらんぞ」


さて、もうすぐ屋上じゃ。
屋上に出ると、澄み渡るような青空があった。


「天気が良くてなによりじゃ」

「そうですね!」

「今日は風も気持ちいいからな」


青い顔のまま気丈にフェンスの方まで行った澪がいつもと変わらぬ調子で言う。


「あ、シートもあるんですよ」


そう言い、姫路がバッグからビニールシートを取り出してきた。
皆で準備を始める。

うむ、準備も万端じゃな。

幸い屋上には他に人がいなくてワシらの貸し切り状態じゃった。
ビニールシートの上に足を投げ出す。


「あの、あんまり自信はないんですけど……」


姫路が重箱の蓋を取る。


『おおっ!』


ワシらは一斉に歓声をあげた。澪以外は。
澪ならば一番に歓声をあげそうなものじゃがな。
姫路の料理じゃし。
………。
自分で考えておいてなんじゃが、やはりおもしろくないのう。

いや、今はどうでもいいことじゃが。
美味しそうじゃのう。
から揚げやエビフライにおにぎりやアスパラ巻きなど、定番のメニューが重箱の中に詰まっておった。


「それじゃ、雄二には悪いけど、先に――」

「…………(ヒョイ)」

「あっ、ずる――」

「っ! よせ、康太っ!」


動きの素早いムッツリーニがエビフライをつまみ取りおった。
その動きを見て澪が声を張り上げる。

しかし、ムッツリーニは流れるように口に運び――


「…………(パク)」


バタン  ガタガタガタガタ


豪快に顔面から倒れ、小刻みに震えだした。


「…………」

「…………」

「…………」


沈黙が続く。

ワシと明久は顔面蒼白な澪の顔を見る。


「わわっ、土屋君」


姫路が途端に慌てて、配ろうとしていた割り箸を取り落とす。


「…………(ムクリ)」


ムッツリーニは起き上がり、


「…………(グッ)」


そして、姫路に向け親指を立てる。
『美味しいぞ』と伝えたいのじゃろうと思う。


「あ、お口に合いましたか? 良かったですっ」


ムッツリーニが言いたいことが伝わったのか、姫路が喜ぶ。
しかしムッツリーニ。なぜ足が未だにガクガクしておるのかワシらに教えて欲しい。
それほどまで美味しくて歓喜しておるのか、それとも――


「良かったらどんどん食べてくださいね」


姫路が笑顔で勧めてくる。
お弁当を勧めてくれるのは素直に嬉しいのじゃが、ワシにはどうも目を虚ろにして身体を震わせるムッツリーニが忘れられぬ。
恐ろしく不安な予感がするのじゃが……。


(……秀吉。あれ、どう思う?)


明久が姫路には聞こえないくらい小さな声でワシに聞いてきた。


(……どう考えても演技には見えん)


それは、ワシの目から見た感想。
アレが演技ならば、ムッツリーニは役者として活躍して、しかも生活していける。
そこで澪に眼を向ける。


(スマン。あれが瑞希の料理だ……っ!)


うっすらとじゃが、冷や汗が見えておる。


(明久、澪。お主らは体は頑丈か?)

(正直胃袋には自信がないよ。食事の回数が少なすぎて退化してるから)

(冗談じゃない。私の父ですら二日間寝込んだのだぞっ! 私が耐えられるわけがない)


ワシらの表情は笑顔のままじゃ。下手に姫路を不安がらせる訳にもいかん。
姫路が泣いたりすれば、即地獄行きじゃしのう。澪の手によって。

あの父上殿でもか耐えられなかったのか。
しかし、食わないわけにもいかんしのう。


(ならば、ここはワシに任せてもらおう)


ありったけの勇気を振り絞って、囁く。


(そんな、危ないよ!)

(よせ秀吉! お前では無理だ!)

(大丈夫じゃ。ワシは存外頑丈な胃袋をしていてな。ジャガイモの芽程度なら食ってもびくともせんのじゃ)


因みにジャガイモの芽は毒じゃ。


皆は食べてはいかんぞ☆


コホンッ。電波が入ったらしい。
気を取り直して覚悟を決めたとき、


「おう、待たせたな! へー、こりゃ旨そうじゃないか。どれどれ」


雄二が現れた。


「あっ、雄二」


と、明久が止める間もなく素手で卵焼きを口に放り込み、


パク  バタン――ガシャガシャン、ガタガタガタガタ


ジュースの缶をぶちまけて倒れた。


「さ、坂本!? どうしたの!?」


遅れてやってきた島田が雄二に駆け寄る。


――コイツは、本物じゃ……っ!!


倒れたまま激しく震える雄二を見る。
すると、雄二は倒れたまま明久の方をじっと見て、アイコンタクトを始めた。


――お前、盛ったな?

――盛ってないよ。……僕は。

――澪、お前か?

――スマン。コレが瑞希の料理だ。


こういう時はすごく便利じゃな、アイコンタクト。


「あ、足が……攣ってな……」


姫路を傷つけまいとウソをつく雄二。かなり顔が真っ青じゃったが。


「あはは、ダッシュで階段の昇り降りしたからじゃないかな」

「うむ、そうじゃな」

「そうなの? 坂本ってこれ以上ないくらい鍛えられていると思うけど」

「最近身体を動かしてないんじゃないか? ランニングでもしておくといい」


事情のわかっておらぬ島田が不思議そうな顔をする。


「ところで島田さん。その手のついてるあたりさ」


明久がビニールシートに腰を下ろしておる島田の手を指差す。


「ん? 何?」

「さっきまで虫の死骸があったよ」

「ええっ!? 早く言ってよ!」


慌てて手をよける島田。


「ごめんごめん。とにかく手を洗ってきた方が良いよ」

「そうね。ちょっと行ってくる」


席を立つ島田。なるほど下手なことを言われぬよう退場させたわけじゃな。


「島田はなかなか食事にありつけずにおるのう」

「虫の死骸とは、何と不運な」

「全くだね」


はっはっは、と男四人で朗らかに笑う。
その裏では必死のやりとりがあった。


(明久、今度はお前がいけ!)

(む、無理だよ! 僕だったらきっと死んじゃう! 澪は?)

(無茶を言うな。秀吉、お前はどうだ?)

(流石にワシもさっきの姿を見ては決心が鈍る)

(澪がいけ! 姫路は澪に食べてもらいたいはずだ)

(そうじゃのう。確かにそう見えるし)

(私を贄にするつもりか!? 明久、やれ!)

(了解!!)


「あっ! 姫路さん、アレは何!?」

「えっ? なんですか?」


突然明久が明後日の方向を指差し、それを姫路が見る。


(おらぁっ!)

(もごぁぁっ!?)


その隙に明久が雄二の口の中一杯に弁当を押し込んだ。
そのまま目を白黒させておる雄二の顎を澪が掴み、強制的に咀嚼させている。
澪……。唇が歪んで顔が愉悦に染まっておるぞ。


「ふぅ、これでよし」

「任務完了。犠牲者は最小限に抑えられた」


ふぅ、と汗を拭う仕草をする二人。


「……お主ら、鬼畜じゃな」


そんな二人に戦慄する。
まだ倒れておる雄二の震えがさらに酷くなってきておった。


「何かの見間違えだろう。鳥でも見たのではないか?」

「そうかも。ごめんね、姫路さん」

「あ、そうだったんですか」

「お弁当美味しかったよ。ご馳走様」

「ああ。美味だった」

「うむ、大変良い腕じゃ」


雄二の大活躍により料理(ダークマター)は無事始末を完了。
ワシらの気持ちはこの青空のように晴れやかじゃった。
うむ。清々しい。


「あ、早いですね。もう食べちゃったんですか?」

「うん。雄二なんか『美味しい美味しい』って凄い勢いで食べてたよ」


視界の隅で倒れておる雄二がフルフルと力なく首を振る。
なかなかヤラレているようじゃな。


「そうですかー。嬉しいですっ」

「いやいや、こちらこそありがとう。ね、雄二?」


明久が倒れておる雄二に問いかける。
その隅では、姫路にバレないように澪が刃物を雄二に押し付けていた。


「う……うぅ……。あ、ありがとうな、姫路……」


ヤバい。雄二の目が虚ろじゃ。
というか澪。姫路の事になると容赦ないな。


「そういえば、美味しいと言えば駅前に新しい喫茶店が――」


上手いぞ、明久。

ここで『それじゃ、また作ってきますね』なんて言われたら――。
危険すぎるっ!!


「ああ、あの店じゃな。確かに評判が良いな」

「ケーキが美味いと聞いたな。私はショートケーキが好みだが」

「え? そんなお店があるんですか?」

「ああ。今度皆で行こうか。代金は明久持ちで」

「い、いや。雄二がおごってくれるってさ」

「てめ、勝手なこと言うなっての」


ようやく平和が訪れた。


「あ、そうでした」


姫路がポン、と手を打った。


「ん? どうしたの?」

「実はですね――」


ごそごそ、と鞄を探る。


「デザートもあるんです」


ワシ、泣いてもいいじゃろうか?
澪はさらに血の気が引く。


(覚悟しておけお前等。瑞希の料理は、前菜(オードブル)主食(メインディッシュ)よりデザートの方が凶悪だ……)

(((何っ!?)))


あのカオスな状況を作り出す物よりも凶悪なのか!?
さ、さすがにヤバイすぎじゃろう……。
恐るべし、姫路の料理っ!!


「ああっ! 姫路さんアレはなんだ!?」

「明久! 次は俺でもきっと死ぬ!」


雄二が命がけで明久の作戦を止めにかかる。


(明久、俺を殺す気か)

(仕方がないんだよ! こんな任務は雄二にしかできない! ここは任せたぜっ)

(馬鹿を言うな! そんな少年漫画みたいな笑顔で言われてもできんもんはできん!)

(この意気地なしっ!)

(そこまで言うならお前にやらせてやる!)

(なっ! その構えは何!? 僕をどうする気!?)

(拳をキサマの鳩尾に打ち込んで後で存分に詰め込んでくれる! 歯を食いしばれ!)

(いやぁー! 殺人鬼――!)


ここまでのようじゃな……。
よし、覚悟を決めよう。


(……ワシがいこう)

(秀吉!? 無茶だよ、死んじゃうよ!)

(俺のことは率先して犠牲にしたよな!?)

(大丈夫じゃ。ワシの胃袋はかなりの強度誇る。せいぜい消化不良程度じゃろう)


「どうかしましたか?」

「あ、いや! なんでもない!」

「あ、もしかして……」


マズイ! もしや、バレたか!?
このまま『姫路が泣く → 澪による断罪』パターンか!?


「ごめんなさいっ。スプーンを教室に忘れちゃいましたっ。取ってきますね」


そう言い残し、階下へと消えてった姫路。


「焦ったな」

「ああ。で、どうする」

「うむ。ワシが――」

「いや、待て」


ワシの決死の覚悟を遮るのは澪じゃった。


「秀吉に危険な任務を任せるわけにはいかん」

「でも、だったら誰が……」

「当然――」


沈黙。
ゴクリとのどを鳴らしたのは誰じゃろうか?

そして澪の答えは。


「私だ」

「あ、おい澪!」


雄二の制止の声を聴かず、デザートを取り上げて一気に口に入れた。
そして、

ドサリ


「澪っ!?」


その顔は真っ青で、身体はガタガタと震えおる。
その後に急に目をクワッと見開いき、カフッと息を吐いてガクリと崩れ落ちた。


「…………」

「…………」

「…………」


勇敢な戦士が散っていった瞬間じゃった。

ワシらは気絶した澪を見て、姫路に料理を頼むのは止めようと誓った。



side out



・・・・・
・・・・
・・・
・・




私の父すら気絶に追い込んだ強烈な食物兵器を食して倒れた私は、髪を撫でられる感触で眼を覚ました。
どうやら、瑞希に膝枕をされているらしい。
柔らかな太股と滑らかな手の感触が心地いい。

しかし、あんなにレベルの高い兵器だとは思わなかった。
父が二日も寝込むのがわかる。
デザート マジ ヤバイ。

瑞希に礼を言い、体を起こして周りを見る。皆してのんびりお茶を啜っていやがった。
刻むぞ貴様等。


「おお、起きたか。まさかあんなところで貧血を起こすとはのう(感謝するぞ、澪)」

「いや、良かった。ここで澪が抜けたらヤバイからな(後でなにか奢ろう)」

「少しヒヤヒヤしたね(澪、お疲れ様)」

「……お茶(……貧血で倒れたことになっている)」


なるほどな。


「心配かけたな(今度飲み物でも頼む)」




「そういえば坂本、次の目標だけど」

「ん? 試召戦争のか?」

「うん」


康太からお茶を大量にもらって飲み干す。
少しでも誤魔化したいのだ、うん。


「相手はBクラスなの?」

「ああ。そうだ」

「どうしてBクラスなの? 目標はAクラスなんでしょう?」


もっともな疑問。
目標はAクラス。なぜ通過点に過ぎないBクラスを相手にするのか。理由がわからないのだろう。


「正直に言おう」


雄二が真剣な表情を浮かべる。


「どんな作戦でも、ウチの戦力じゃAクラスには勝てやしない」


シミュレーションしたのだ。何度も何度も。だというのに。
どう考えても無理だった。
いくら作戦を変えても、ポジションを変えても。

まあ仕方が無い。
ココはAからFの六クラスが成り立つ。
そして、FとAでは格が違いすぎたのだ。
特にあの代表。

霧島翔子

彼女の能力は恐ろしく厄介だった。
奇襲であろうとFクラスで彼女一人を取り囲んだ多対一であろうと。
ことごとく弾き返される。


「それじゃ、ウチらの最終目標はBクラスに変更ってこと?」

「いいや、そんなことはない。Aクラスをやる」

「雄二、さっきと言っていることが違うじゃないか」


明久が台詞を遮るように間に入る。


「クラス単位では無理だ。どんな作戦も兵の質でAクラスが勝る」

「間違いないの、それ?」

「ああ、澪のお墨付きだぜ、コレ」

「そんなお墨付きは勘弁してほしいものじゃな」


秀吉が首を振る。
こういう状況での私のお墨付きがどれだけ信用できるか、わかっているのだ。


「だがな、明久。クラスでだめなら、一騎打ちならどうだ?」

「一騎討ちに? どうやって?」

「Bクラスを使う」


その問いに、私が答える。


「試召戦争で下位クラスが負けた場合の設備はどうなるか知っているな?」

「え? も、もちろん!」


明久……知らんのだな。


(吉井君、下位クラスは負けたら設備のランクを一つ落とされるんですよ)

「設備のランクが落とされるんだよ」

「……まあ、いいだろう。つまりだ、BならCの設備に落とれる」

「そうだね。常識だね」

「ならば、上位クラスが負けた場合は?」

「悔しい」

「雄二、私のカバンに入ってる物を出してくれ」

「ああ、コレだな。うおっ! これ実銃!?」

「ちょっ! ダメ、それは死ぬから!!」


悔しいってなんだよ。
間違ってはいないだろうが。


「相手クラスと設備が入れ替えられちゃうんですよ」

正解(ビンゴ)だ、瑞希」

「つまり、うちに負けたクラスは最低の設備と入れ替えられるわけだね」

「ようやく理解したか馬鹿者」

「で、だ。俺達はそのシステムを利用して、交渉する」

「交渉、ですか?」

「Bクラスをやったら、設備を入れ替えない代わりにAクラスへと攻め込むよう交渉する。設備を入れ替えたらFクラスだが、Aクラスに負けるだけならCクラス設備で済むからな。まずうまくいくだろう」

「ふんふん。それで?」

「それをネタにAクラスと交渉する。『Bクラスとの勝負直後に攻め込むぞ』といった具合にな」

「なるほどねー」


Aクラスといえど学年で二番手のクラスと戦った後に休む暇もなく戦争。
これはきつい。
なにより精神的に。

Fクラスも連戦になるが、幸いコチラには原動力(ふまん)がある。
だが、Aクラスはそうではないはずだ。
勝ってもメリットはない。Fクラス相手に時間を潰されるのも気に食わないだろう。
要はモチベーションの差だ。


「じゃが、それでも問題はあるじゃろう。体力としては辛いし面倒じゃが、Aクラスとしては一騎打ちよりも試召戦争の方が確実であるのは確かじゃからな。それに――」

「それに?」

「そもそも一騎打ちで勝てるのじゃろうか? こちらには姫路と澪がいるということは既に知られているのじゃろう?」


FがDに勝ったとなると、勝ち方に注目が集まるものだ。
瑞希と私の存在はもはや周知の事実。
となると、私と瑞希への対策が練られているはずだ。

私には英語一本で絞れば、問題ないだろうしな。


「そのへんに関しては考えがある。心配するな」


皆の不安とは対照的に自信満々な雄二。


「とにかくBクラスをやるぞ。細かいことはその後に教えてやる」

「ふーん。ま、考えがあるならいいけど」



「で、明久」

「ん?」

「今日のテストが終わったら、Bクラスに行って宣戦布告をして来い」

「断る。雄二が行けばいいじゃないか」


明久は宣戦布告を拒否する。
あんな痛い目にあったから行きたくはないだろうな。
普通に考えて。


「やれやれ。それならジャンケンで決めないか」

「ジャンケン? ……OK。乗った」

「よし。負けた方が行く、で良いな?」


明久は雄二からの提案に乗り、頷く。


「ただのジャンケンでもつまらないし、心理戦ありでいこう」


雄二からの提案。


「わかった。それなら、僕はグーを出すよ」


ジャンケンの構えを取りながら雄二に告げる明久。


「そうか。それなら俺は――」


さて、雄二はどうするのか。


「お前がグーを出さなかったらブチ殺す」


理不尽すぎる要求だった。
悪魔がいるぜ。


「行くぞ、ジャンケン」

「わぁぁっ!」


パー(雄二)  グー(明久)


「決まりだ。行って来い」

「絶対に嫌だ!」


負けた明久がぐずる。
すると雄二から追撃が入った。


「明久、Dクラスの時みたいに殴られるのを心配しているのか?」

「それもある!」

「それなら今度こそ大丈夫だ。賭けてもいい」


私も賭けよう。
殴られる、に1000円。


「Bクラスには美少年好きが多いらしい」

「そっか。それなら確かに大丈夫だねっ」


アホがいる。
悪魔の隣にアホがいる。


「でも、お前不細工だしな……」


雄二が溜息混じりに呟いた。


「失礼な! 365度どこからどう見ても美少年じゃないか!」

「5度多いぞ」

「実質5度じゃな」

「ドンマイ、美少年(笑)」

「三人なんて嫌いだっ」


一年間の日数と間違えるなんて。
小学生でもそんな間違い方しないと思うのだが。


「あ、でもさ。だったら澪が行けばいいじゃん」

「明久、お前なぁ」


バカバカしい提案に溜め息が出た。


「え? なんで溜め息つかれるの?」

「当然だ、馬鹿者」


頭を振りながら、膝立ちで秀吉の隣に移動した。
そして、秀吉の肩に顎を乗せて問う。


「どうだ、明久。コレでも私に行けと言うのか?」

「うん、ゴメン。僕が間違ってた」


私と秀吉は異分子なのだ。
片や、男にも女にも見える、外見では性別判断不能の男。
片や、美少女に見える男。

異分子過ぎる。


「そういうわけで、お前が行け」

「うん、わかった」

「頼んだぞー」


昼食はお開きになった。
秀吉が顔を赤くして硬直していたのが気になったが。



あ、私の弁当は瑞希と島田と秀吉が食べたらしい。

口直しさせて欲しかった。



・・・・・
・・・・
・・・
・・




「……言い訳を聞こうか」


あー、午後のテストも終了して、放課後。
明久はBクラス生徒の暴行で千切れかけた袖を手で押さえながら雄二に詰め寄っている。


「予想通りだ」

「くきぃー! 殺す! 殺し切るーっ!」

「落ち着け」

「ぐふぁっ!」


雄二が明久の鳩尾に一発与えて黙らせます。
今のは痛いな、うん。いいとこ入った。


「先に帰ってるぞ。明日も午前中はテストなんだから、あんまり寝てるんじゃないぞ」

「やれやれ。行くぞ、明久」

「うぅ……。ありがと、澪」


さすがにそのままにしておくのもどうかと思い、明久の荷物を持って本人を担ぎ上げる。

ん?
瑞希がまだ教室に残っている。

彼女は鞄を抱え込んでキョロキョロとあたりを見回しているのだが。
かなり挙動不審だ。
何かを警戒している小動物のようだな。

……ああ、そういえば昨日手紙を書いていた。それをどこに置くか迷っているのかもしれん。


――がんばれよ、姫君(プリンセス)


彼女の邪魔にならないように、足早に教室を去る事にした。







ん?

ということは、瑞希の好きな男は(頭が)Fクラスなのか?

こ、これは……。

瑞希の父親(おじさま)が不満を持たなければいいが……。

い、いや。うん。

で、出来る限りは援護射撃するからな、瑞希。

うん。出来る限り……。
恋愛的な要素ですが、とりあえずハーレム方向で決定。

確定したメンバーは
・姫路さん
・木下姉弟
・玲さん
の四名。

悩んでいるのは、
・霧島さん
・工藤さん
のお二人
まぁどちらでも対応できるように、無理矢理伏線ねじ込んだんですが……。

明久君は美波さんとくっ付いてもらうし。
雄二君は独り身にするかどうか悩みます。


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