甘い甘い、
けれど、ほろ苦い味の、
チョコレートの香り。
カラダに染み付いて、とれない。
だけど。
「チョコの匂いがする」
君に指摘されるまでぜんぜん気づかなかった。
チョコレートの匂いが充満する部屋に
ずっといたからかな?
雪が降り積もる屋根の下、
君を見つけて。
嬉しくて、嬉しくて我知らず
頬が緩んだ。
一度だけ、大きく深呼吸をして。
「バイバイ」
さよならをした。
「バイバイ」
最後に聞いたうつむく君の声は、
震えていて、泣いているのだと
知らされた。
男のクセして情けないなと。
笑ったけれど、それが限界だった。
こらえられなかった。
熱い雫が両頬を伝っていっては、
服に吸い込まれていく。
寒い寒い白の世界の中。
ふたりは、ただ ただ、泣いていた。
なにが どうして どうなって
悲しいのか。
自分たちで決めたことなのに。
自分たちが決めたことなのに。
本心と反対の答えをだした。
まだ、互いのことを好きでいる。
まだ、互いのことを愛している。
本当は、
本当の本当の言葉は、
お互いに言えずにあって。
鼻をついた香りが、
チョコレートだと
知って、
知られて。
抱き締めあった。
強く、強く。
抱き締められたカラダが
痛かったけれど 構わなかった。
ただ、すごく寒いのを言い訳に。
君を感じていたくて。
君の温もりを
甘受していたくて。
目を閉じた。
もうひとりの自分がいて、
つぶやく。
もっと もっと 全然、足りない。
もっと 君が欲しい。
ふたりは、最後だけだからと、
これで、もう最後だからだと。
涙でにじむ視界を閉じ切って、
くちびるを
重ねた。
君を忘れない。
けれど。
君を忘れたい。
そう思ってしまうのを許してくれる?
『本当はもっと、もっと一緒に居たかった。
ずっと、ずっと一生傍で生きたかった。
好きだよ。
ずっと、ずっと、いまも愛してる。』
深く重なり合わせたくちびるを
そっと
放して。
互いに背を向けた。
頬を伝った涙はまだ乾ききらないのに、
涙は意思に関係なく、
その頬を伝っては濡らしていく。
ふたりは別れる代わりに、
強い 強い
深い 深い
絆を手に入れた。
今のふたりをつなぐのは
見えない糸。
決して切れない、切ない絆。
『ずっと ずっと 好き。
ずっと ずっと 愛してる。』
子供の頃の約束。
子供の頃の秘め事。
|