ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
第一部
異変/追究 (2)
 携帯電話の目覚ましアラームが鳴り、(うす)()()()()はベッドの上でもぞもぞと身をよじりながら目を覚ました。カーテンの隙間から差し込む眩しい朝日は寝起きの(まなこ)には少々強すぎたが、逆にそれが刺激となってルキトはスムーズな起床を遂げることができた。
 おもむろに体をベッドから起こし、緩慢な仕草で高校指定の制服に着替える。と言ってもズボンを履いて半袖のシャツを羽織れば完了だ。夏場の服装は簡単でいい。
 鞄を片手に部屋を出、リビングへ行く前に洗面所へ寄って顔を洗う。生温い水で手早く洗顔を済ませてから鏡と向き合うと、いつもと変わらぬ自分の顔が映った。
 ルキトの顔は明るいか暗いかを問われれば間違いなく暗い顔に属する。
 瞳は輝きを失ったように黒く沈み、眼差しは生気が宿っていないように虚ろげで、青白い顔は感情が消えてしまったかのように無表情だ。おまけに前髪は両目が隠れるくらい長く、陰気な顔つきにより一層重たい影をかけている。
 体つきの方は高校一年生の男子にしては特異的なほどに小柄で華奢な出で立ちだ。手足も少しの衝撃で折れてしまいそうなくらいか細く、白い肌と重ねてみるとどことなく冷たくて脆い雰囲気を湛えている。
 まるで物影にひっそりと佇む氷柱(つらら)のような少年。碓井瑠己人を一言で言い表すとしたらそんなふうになるだろう。
 静かな足取りでリビングにやってくると既に姉の姿はなかった。大学に通っている姉は一時限目から講義がある日はルキトよりも一足先に家を出るので、朝は大体入れ違いになる。それでもきちんと朝食は作っていってくれており、今朝もごはんとみそ汁と焼き魚と玉子焼きという健康的なメニューがテーブルの上に用意されていた。
 惰性でテレビを点けて椅子に座り、いただきますと小さく言ってからルキトは朝食にありつく。朝の情報番組をぼんやりと眺めながらルキトは淡々と(はし)を進めた。
 ――今朝も穏やかだ。
 ここはマンションの高層に位置する部屋であるため下界の喧騒はほとんど届かない。窓から吹き込んでくる風も真夏のものとは思えないほど涼しく、結果静かで快適な空間が出来上がっている。周囲のものに対して興味や関心を抱かないルキトであっても自宅の立地条件については素直に好感を抱くことができた。
 箸は滞りなく進み、さほど時間をかけることなくルキトは朝食を終えた。ごちそうさまと小さく言ってから空いた皿を流し場に持って行く。これにて朝の行事は全て完了である。
 テレビを消し、戸締まりを確認し、鞄を持って玄関へ向かう。靴を履いて玄関を出、扉を閉めて鍵をかける。そして学校へ出発。
 ――ルキトの行動は最初から最後まで無言かつ淡々と行われる。それは性格が明るい方か暗い方かを問われれば、間違いなく暗い方に属する人間だからだ。
小説家になろう 勝手にランキング


+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。