真昼の日差しが照り付ける校舎の屋上に、一人の若い青年が立っていた。
その青年はすらりと背が高く、金髪に碧眼という外国人じみた特徴を持っており、端から見れば美形と呼ぶに相応しい顔立ちをしていた。
が、そんな美的な印象を跡形もなく相殺してしまうくらい彼の服装は奇抜なものだった。
――青年は、銀色のマントに身を包んでいた。
とても現代社会で着こなして歩けるようなマントではない。むしろ御伽話に登場する魔法使いが着ていそうな面妖な装いのマントだ。
そんな奇妙な服装で首から足先までを覆い隠しながら、青年はまるで本の中から抜け出してきた魔術師のように唐突かつ不自然に屋上に佇んでいた。
「……歯車を動かすのも『ギフト』であれば、歯車を狂わすのもまた『ギフト』。どちらに傾くかは、まさに天秤のようにゆらゆら揺らめいて分からない……」
詩的な言葉を呟く青年の顔には憂いが浮かんでいた。一見派手な様相の銀マントも、日光を浴びてキラキラと煌めくその様はどこか涙を零しているように見える。
美形な顔立ちよりも、奇抜な服装よりも、何よりも先立って『悲しみ』が青年の周りを漂っていた。
「巡り巡ってこの街に戻って来てしまいましたが……いつの世も天秤は人の心を揺さぶるものですね」
誰の耳に届くでもなく、青年の声は夏風に乗って飛んでいく。独り言は意味を持たずに消えるしかない。
青年は静かに溜め息を吐き――再び吹いてきた風と共に音もなくその姿を消した。
誰もいなくなった屋上に、銀マントの青年がいたという事実は残らない。
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