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今宵恋塚の鎖
作:秋時雨



第拾捌話 『彼女の秘密。 忍び寄る聖なる影。」


 俺は意識もなかった。

 死んだはずの桜花が生き返って

 現れた無数の鎖。空間は一気に血で染め上げられてしまった。

 敵は倒されたが、その時の桜花…それは

 鬼神

 のようだった…。





「黒、大丈夫かしら?」

 俺が正気にもどった時は、屋上は元通りになっていて、一番はじめに見たのはいつもの桜花。

「お、桜花…。」

「・・・見たのね。暴走した私。生き返った私。」

 静かに顔を頷くと、桜花は桜の方を見つめた。それは悲しい顔で、過去に何かを背負い込んでいるように。

「見てしまったからには、黙る理由がなくなってしまったわね。」

 俺はゆっくりと立ち上がる。桜花の横まで歩いていった。



「私の魂は…あの桜と繋がっている。」

「大昔、父が施した術なの。魂同士を繋げることによってお互い寿命を共有する術。」

「私に何か起きたときは桜から生命力を頂いているから私は死なない。逆に、成長し続けて生命力を蓄え切った私も、桜に少しずつ分け与えているから桜も死なない。そうやって私は何百年と生きて来た。」

「そう・・・私は、呪われた妖怪、と言えばいいのかしらね。ほら、あの桜も一気に舞い散ってしまったわ。」

 俺は現実的にあり得ない話を黙って冷静に聞いていた。あの桜の伝説はこんなに身近にいるなんて思わなかったけど。確かに死なないのであれば、ユエと戦ったときの傷が一日で復活していたと気のことが納得できる。

 

「お前の父は…どんな奴だったのか?」

「偉大な人よ。私の尊敬する人…。」

 その時桜花はまた悲しい顔をする。…?今は詮索するべきではない・・・か。

「そうか・・・。しかし、これが俺の知る必要がなかったことなのかよ。」

「不老不死、気持ち悪いとは思わないの?」

「なんだ、そんなこと気にしていたのか。そうは思わないぜ。逆に興味がある。」

「え?」

 俺はニヤリ、と笑う。
 不老不死は誰もが憧れる。みんな死を恐れているから。

 生きるというのは幸せであり、誇りでもある。
 永遠に生きられたら、どれだけ自由なんだろうな。だがその場合は誇りも何もないが。禁忌だし。

「不老不死って…どんな気分だ?」

「貴方の思っている通り、何処にでも勇気を出していけるわ。でもね…。」
「でも?」

「いつか体が朽ち果てそうで怖いの。いくら永遠に生きられても、この体がもたないと意味がない。」

 俺は難しい顔をした。

 それは確かにそうだ。いくら死ねなくても、体が死んでしまえば動けなくなってしまう。

「だって私──────。」


 その時、放課後のチャイムが鳴った。つまり、放課後まで寝ていたわけだ。

「ってもう放課後か!?長い間寝ていたのか。」
「そうなのよ。少し残念な気分だわ。さあ、帰りましょ。」

 桜花はそう言って笑顔で俺の腕を引っ張る。

「おっとと、痛いぞ!」
「ふふ、我慢しなさい。」


 もしかして桜花は、その笑顔で色んな過去を隠して来たのかも知れない。時々見せる彼女の悲しい顔も。

 今日は、俺にとって忘れられない一日となってしまった。



       ◆

「さっきの戦い、しっかりと見せてもらったわ。あれが桜花ね。」

「ええ。禁忌を犯してまで生きて来た、哀れな仔なのよ。」

 聖服を来た二人組が別の建物からさっきの出来事を見ていた。

「暴走したときの鎖・・・あれが要か。どうするの?」
 
「おびき出すしかないわね。仕方がないけど…黒君を使って。」
「はは…。貴方も結構邪道なことするのね。神の怒りくらうわよ。でも、いいのかしら?もしもばれたら軽蔑されるわよ。」

「・・・忘れたのかしら?神父様はどんな手を使ってでも暗殺しろ、と。そして妹の為に…。世界の繁栄の為に。選択肢は一つしかもうないもの。」

「まあまあ、そう焦らないことよ。時間だっていくらでもある。彼女の身に何かが起きない限り、いつだって殺すことが出来る。・・・その時まで待ってなさい。那雪 桜花。刹那の桜よ。」







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