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今宵恋塚の鎖
作:秋時雨



第捨陸話 『不死の桜』


 桜花もクラスになじんできた頃─────暦の月はもう5月となっていた。
「黒ー。起きなさ〜い。」

 いつものように桜花が起こしにきてくれる。そのせいで遅寝早起きの癖が付いてしまった。学校で張り切ってるのは分かるがな桜花…。一つ言っておく。はしゃぎすぎだ。

「いてて・・・。筋肉痛だ。」
「あら、何かキツい運動でもした?」

 とぼけるな、と言いたいところだが言っても彼女には実感がないだろうから言わないけど・・・。
 体育の授業キツ過ぎ。ここシーズンはずっとあのドッジボールをやるらしい。おかげで桜花はボールぶつけまくって皆保健室行き。噂では桜花が先生に「あのドッジボール止めたら、死ぬより痛い目に合うわよ・・・?」と笑顔で脅迫したらしい。

「ほらほら、ぼー、としていないでさっさと着替えなさい。」

 そして桜花に無理矢理着替えさせられた。筋肉痛で動きにくいのに俺を引っ張りまくって全てのことを無理矢理させられた。

「痛いっ痛い!そんなに強く引っ張るな!」

「大丈夫、死にはしないから!」

 腕を引っ張っただけで死んだら凄いな。どんな馬鹿力だっつーの。






 あれこれあって桜花が先に家を出ていった。桜花から解放された俺は、いつもの坂を上って学校へ向かっていた。

「いてて…。更に痛みが酷く。」

 右腕を押さえながら、両端に立っている桜を見ていた。

「・・・ん?」

 俺はその時異変を感じた。そう、何かがおかしい。しばらく考えながら歩いていると気が付かないうちに学校へ付いてしまった。俺は自分の教室へ入ると、珍しく月と美香がいた。

「よお、黒。妖子ちゃんなら屋上だぜ。」

 それを聞いて俺は桜花が戻ってきていないか確認して、美香と目で挨拶をする。

「なあ二人とも…。一つ聞いていいか?」

「え、どうしたの?」

『あの坂の桜…何で5月なのにまだ咲いているんだ?』

 おかしな異変というのはこのことである。普通桜は5月の中間まで咲いているなんてことなど無いはず。(多分)

「・・・は?あの桜は前から枯れない桜で有名だぜ?」

 月が余裕もってそう答える。枯れない桜・・・そんなの聞いたこと無いぞ?大体去年枯れてたはず…?自信もって言えるぞ。

「そうそう、この街の伝説なんだよね。枯れない桜…一体誰が植えたんだろうね〜?」

 美香までそんなことを言う。何故だ?俺だけ知らなかったのか…?俺はちゃんと覚えている。ちゃんと桜が枯れ果てているところも見たし、別に俺は記憶喪失してるわけでもないのに。桜花に聞いた方が良いのか?

「そ、そうだっけなぁ?俺は忘れてしまった。」

 そう言って笑い誤摩化す。美香と月の二人は首を傾げた。


「あら、来ていたのね。遅いじゃないの。」

 桜花が屋上戻ってきた。

「良いところに来た。ちょっとこっちに来てくれるかな?」
「な、そんなことは家でたっぷりやらせてあげるわよ!」
「違うっつーの!聞きたいことがあるんだ。」

 あの桜について聞こうと桜花を呼び寄せる。

「あの坂に咲く枯れない桜…。何か知っていることはあるか?」

 その瞬間、桜花の顔つきが変わる。

「・・・そのことはいずれ話すわ。今は話せない。」

 と、言うことはあの桜について何か知っているようだ。

「何か話せない訳でもあるのかよ。」

「・・・。今の貴方には、知る必要がないのよ。」

 桜花はただ、その一言で全てを片付けてしまった。

「・・・っ!」




 あの桜の秘密は、とんでもないということを黒はまだ知らなかった…。







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