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進め戦車よ!VRなど恐るるに足らず! 作者:トクメイさん

Es braust unser Panzer Im Sturmwind dahin.

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街長

今回は短いです

 貰った招待状を車内へ仕舞い、予定通り中央へ向かう。初めてゲームにログインした時と違うのは、一人プレイモードを使っていないという点である。結果は目に見えている。
 戦車、という世界観的に違和感満点の存在が街中を進んでいるのである。PCだけでなくNPCの目線も此方へ集中する。そして、戦車に加えて更に視線を集める材料が、今自分に搭乗している彼女の存在である。

「あれ戦車だよね?」
「戦車だな」
「なんでエルフが乗ってるの?」
「この世界線ではエルフが戦車を?」
「成る程、エルフは既に近代革命を・・・」
「侮りがたいな!」
「いや違うだろ!」

 それらの疑問に一々答えてやる義理はない。というか面倒だからそんな義理は欲しくない。なので、立ち止まらずに通り過ぎる。
 進みつつも、辺りへの警戒・・・という名の観察は欠かさない。街は、戦いがあったというのに、その気配を感じさせないほどの活気に包まれている。まぁ、見たところ1日で終わったからな。直ぐに終わった戦いに、あまり危機感を抱いていないのだろう。まぁ、分からなくもない。勝った戦いなのだから、危機感の前に歓喜が沸き立つだろう。・・・これでまだ敵がいたら、勝利依存症にでもなってしまいそうだ。この街の周りには、敵が少ないのが本当に素晴らしい点だな。

 進むにつれて、風景が変わっていく。売り買いの声が聞こえてくるのだ。先ほどまでのは居住区、ここからは商業区・・・というのだろうか。とりあえずそんな感じの場所に変わった。より活気に包まれ、人の視線もこちらに集中する。無論、無視して進むのだが、時々針路方向に飛び出してくる人がいる。その度に停車しては待つという作業が追加された。正直な所、面倒くさい。無視してそのまま轢くなんて阿呆な事出来る訳がないしな。
 ただ、面白いのが、轢かれそうになった人の表情だ。PCもNPCも皆、恐怖の表情を浮かべるのだ。まぁ、とても大きい存在が目の前にいる訳だからな。強さが分からないNPCでも恐怖の表情が出る位には怖い。そして、PCの顔はもっと凄い。戦車=兵器の式を理解している故、現状の理解の度合いも恐怖の差も、NPCの比ではないだろう。

 何度か轢きかけたが、ようやく雰囲気が変わってきた。人が減り、落ち着いた風景だ。建物も立派なものになり、いかにもリッチな雰囲気が漂っている。ここら辺は、様々な組織のトップが集中しているのだろう。都心部みたいなものだろう。
 ここの中心部付近に、この街のトップが存在するのだろう。そこへ向かうのが今回の目的だ。人通りが少ないから、轢きそうになる心配も無い。気持ち速度を上げて進む。
 中央へ近づけば近づくほど、建物の大きさが拡大する。手前のものは、屋敷のようなものだったが、これはどちらかというとオフィスビルのようなものだ。屋敷のようなものは裕福層、このオフィスビルは企業や組織の中枢、みたいなものなんだろうな。
 んー、この調子だと、トップの拠点?もビルのようなものだろうか。いや、皇居みたいにビル街の真ん中にドドンってのもありえるな。・・・見れば分かるだな。

「・・・あれ、かな」
『お?』

 噂をすれば、とやらか。

 場所は、始まりの街の中央に位置する噴水がある大広間の直ぐ正面。いかにも、上流階級が住んでますよと言わんばかりの豪華さ・・・は無かった。そこまで大きくない。別荘サイズ・・・と言って伝わるとは思えないが、兎に角とっても大きいものではない。んー、サイズの比較対象が思いつかないぞ・・・。高射砲塔の第一世代・・・は流石にでかいな。第二世代も十分にでかいが、それ位だろうか。いや、その前に高射砲塔なんて知っている人はどれ位いるかが疑問だな。余り良い比較とは言えないだろうな。
 それは、高射砲塔第二世代ぐらいの広さで、3階建ての洋風の邸宅だった。敷地の手前、1/3ほどは庭になってる。見た目は・・・これもまた比較が難しいな。総統官邸とは全く違うし・・・。リンダーホーフ城?いやあれより白くない。どちらかと言うと暖色系の落ち着きのある雰囲気だ。うーむ、こういうのは苦手だ。引き出しの極度な偏りを嫌でも自覚してしまうな・・・。

『では、お邪魔するとするか』
「・・・貴方、入れるかな?」
『言われてみれば、そうだな』

 見た事も無い存在が突然、庭に入り込んできたら警戒心マックスだろうな。

「門番とかいると思うから、それに取り次げばいいか」
『それがいいな。常識的だ』

 ここで塀へ突っ込んでエントリィイ!なんて馬鹿な事をする訳にもいかない。ここは常識的な方法で入場を試みよう。
 という訳で、門へ近づく。近づくに連れて、門番と思わしき人物の表情が硬くなっていくのが目に見えて分かる。まぁ、そうなるな。それが普通だ。

『適当に任せる』
「分かった」

 門の5m程手前で停車する。ここからは、彼女の役割だ。

「・・・どちら様でしょうか」
「エルフの代表として来た。面会を求める」
「え、エルフの!?し、失礼ながら、証明になる品は・・・」
「・・・これを」

 彼女が、懐から出したのは、木製の小さな板、のようなものだった。植物と花の模様が緻密に掘られているのがチラっと見えた。

「・・・確かに。中へご案内します」
「分かった」

 どうやら、あれが証明証になるようだ。エルフだけが持っているのだろうか。とりあえず価値がある物なのは確かだ。
 彼女が戻ってきて、素早く車内へ戻る。もう慣れた様子で、スムーズな動作だった。ここだけ見たら、一端の戦車兵のそれだろうな。まぁ、実際は全くじゃないのだけども。

『前進する』
「お願い」

 ヘッドホンを装着したのを確認し、前進を通達する。場所が場所だ、速度は抑える。門から邸宅の入り口まで続いている、石畳の道が十分な幅なので、芝生を耕すなんて事にならないですんだ。・・・これで、六号になると、石畳を割ってたかもしれないな。軽い四号で助かった。

 邸宅の玄関前で停車する。玄関の前には、メイドが一人立っていた。彼女が案内をするのだろう。自分も付いていきたい所だが、残念ながら自分はここまでだ。理由は単純に室内に入るのは不可能だからだ。戦車で屋内に入れる訳がないからな。彼女が戻ってくるまで、ここで待機となる。

「じゃあ、いってきます」
『貴官の武運を祈る』
「・・・なに、それ」
『良い結果をお祈りしています、って意味だ』
「・・・なる程」

 短い会話の後、彼女が降車する。降りた彼女へ、メイドが礼をし、続ける。

「それでは、街長は応接間にてお待ちしております」
「分かった。案内、お願い」
「かしこまりました」

 ・・・かいちょう?会長か。・・・いや、街長か?前者だと違和感があり、後者だと聞いたことが無いな。どっちだろうか。
 どちらにしろ、自分はここで待ち続ける他ない。エンジン停止、完全休憩タイムに入った。




「おぉ、これが・・・いや、彼がゴブリンとの戦闘で活躍したのだな?」
「そう。とっても強い」
「ほうほうほう。実に興味深いな!」

 玄関が開き、そこから彼女と一人の男性が出てきた。・・・この男性が、かいちょう、なのだろうか。

「どうやら彼も冒険者のようだな!ならばパーティに出席するのだろう?」
「・・・招待カード、私に渡されたけどね」
「それは申し訳ない事をした。貴女宛の招待カードは別に用意してあるので、心配しなくても大丈夫だ」

 高身長を黒いスーツで決め、オールバックの髪型が似合う、壮年の男性だ。俗に言う、渋い男って奴だろうか。

「彼を抜きに話をするのは失礼だ。では、ここで話し合うとしよう」
「・・・ここで?」
「あぁ、心配しなくても良い。今、椅子と机を用意させている。立ったままではない」
「いや、そういう訳では・・・まぁいいか」

 ん?今からここで話すのか?・・・自分も含めた3人でか!?マジか。こんなに早くて良いのか?この人、明らかに重要人物だよな?そんな人物とこんなに早く会話して良いのか?・・・良いな。他PCにアドバンテージを得られる。拒否する理由は何一つ無いな、冷静に考えると。

「それで、どうやれば会話できるのだ?」
「ちょっと待ってね」

 自分と会話する為の中継装置である、ヘッドホンを車内から取り出し、その男性に差し出すインテレッセ嬢。ちょ、渡すの早いぞ。まだ心の準備が

「初見になる、私はフリードリヒ。フリードリヒ・ヴィクトリアという」
『・・・自分はパンツァーという。よろしく』
「おぉ!本当に返ってきたぞ!これは凄いな!」
「・・・彼は凄いのよ」

 ・・・フリードリヒ・ヴィクトリア。・・・百日皇帝かこの人?
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