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進め戦車よ!VRなど恐るるに足らず! 作者:トクメイさん

Es braust unser Panzer Im Sturmwind dahin.

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施設へ

 ふぅ。落ち着いてきた。いやいや、恥かしながら年に見合わずはしゃいでしまった。近所迷惑になるからね、静かにしなくては。

 さて、受かってしまった訳だが、本当に受かるとは。案外、受かってみると呆気ないものだな。はっはっは。他の人達の反応が見たい為、掲示板へ移動する。
 掲示板では勝者と敗者のリアクションの差が明確に分かれていた。笑える。
 ふはは!君達は製品版まで待っているんだな!と謎のテンションで言いながら、掲示板を読み進める。目的は情報収集だ。いや、一度は調べたが、もう一度調べ直そうと思ってね。事前情報を確かめるのは悪くない行動だろう。少なくとも損にはならない筈だ。

 運営が事前情報として出した情報を整理すると、施設についての情報と、ゲームについての情報の二つに分ける事ができる。
 施設の情報からいこう。まず、募集に受かった人達はそれぞれの方法でその場所へ向かうそうだ。送迎はやってくれるのかと始めは思っていたが、受かった人達の分布は、北は北海道、南は沖縄と広範囲に及ぶ。その為、

『飛行機や船、バスの手配が難しいから、各自で移動手段を用意して欲しい』

 と開発者がインタビューで言っていた。『ふざけるな!』や『送迎はしてくれないのか?』、『クソゲー乙』と様々なコメントが溢れていたが、移動にかかった出費は確りと保障してくれるらしいから、自分はどうでも良い。近いし。ただ、詐欺が出ないか心配だ。出費を水増しする人が出るかもしれないが、どうするのだろうか。
 話を戻そう。それぞれでその施設に着くと各自に部屋が割り振られ、その部屋に備え付けられた最新のベッド型のVR機器にてゲームをする、らしい。・・・ベッド型?それをプレゼントするのか?いやいやいや、大丈夫か?例え貰ったとしても、どうやって運び込むか・・・まぁ、それは後で考えよう。
 ここからが大事だ。なんと、その割り振られた部屋から出てはいけないらしい。テスト期間中に、プレイヤーからゲームの情報が流出しないようにする為だとか。トイレは部屋に備え付けられていて、食事も運ばれるから心配は無いらしいが・・・。また、ネット環境も封鎖される。完全に外界からシャットアウトされ、情報交換はゲーム内でしか出来ない、と言う事だ。ただ、物の作り方などの情報を知りたい場合は、運営に申し込むと運営から情報が貰える。完全に情報統制下である。まるで戦時だ。
 これらの理由で応募しなかった人もいるが、自分は構わん。ゲームが出来れば良い。
 また、ゲーム内での出来事が編集され、現実でドラマやCMとして放送される事があるとの事。それについての同意も求められた。プレイ風景で売り込む訳か。ゲームに対する相当な自信が伺える。
 施設についてはこんな感じか。簡単に纏めると、ゲームをする為だけの部屋だな。出られない、という注意書きが付いてくるが。

 ゲームについてだが、これは情報がとても少ない。スキル方式のようだが、どんなスキルがあるのかの情報が無い。また、種族についても情報が無い。徹底した情報統制である。ただ、大体他のゲームにある種族やスキルは用意してあると、インタビューにて明言していた。それから察するに、他のゲームのようにやれば大丈夫だろう。・・・自分はVRゲームをプレイした事は無いが、実況なら何度も見ているから、大丈夫だ。・・・大丈夫だと思いたい。

 見た感じこれ以上の情報は無いか。本当に情報が少ないな。もっとこう、キャッチフレーズみたいなものとかでもいいから、情報があると良いんだがなぁ。
 PCの電源を落とし、食事を取る為に一階へ移動する。今日は何にしようか、と思いながら冷蔵庫を開ける。お、挽肉が余ってるな。玉ねぎとかは・・・うむ、材料はあるな。よし、今日はハンバーグと行こう。











「いってきます」

 返事は無い。親は既に出勤している。仲が悪い訳ではない。今日も仲良く出かける両親が悪い訳が無い。
 妹も一足先に出かけた。理由や行き先は不明。まぁ、聞くつもりは無い。年頃の女子だ、秘密にしたい事もあるだろう。・・・正直な所どうでも良いというのが本心である。

 親と妹、友人に、募集に受かった事、夏休み中は居ない事を伝えた後は、学校の一学期が終わるまで勉学に励んだ。ただそれだけの毎日だったが、楽しみな事がある為か、時間は瞬く間に過ぎていき今日を迎えた。
 集合場所である施設は、ここから歩いて2時間の所にあった。とても近い。行って直ぐに帰ってこれる距離だな。うん。

「じゃ、出発だ!」

 二時間の距離も一歩から。VR求めて歩き出す。




 途中途中、バイトで稼いだお金を使い、食べ物や飲み物を買う。出来るだけ消化しやすい物を選び、飲み物は冷えている物ではなく温いのを選ぶ。冷たい飲み物は腹を壊すイメージがある。古い考えだろうか。
 大通りの、日陰部分を選んで進む。募集の当選者発表の日のように雨は降っていない為、蒸し暑くは無い。だが、直射日光は相変わらず眩しく降り注ぐ。額を流れる汗をタオルで拭う。普段は学校へ歩いて登校し、歩いて下校する程度の運動しかしないからとても疲れる。だがまぁ、仕方ないだろう。

「ふぅ・・・よし、着いた」

 まるで病院のような建物の、丁度日陰に位置するベンチに腰を下ろす。白を基調とし、所々壁の代わりにガラス張りで出来ている大きな建物だ。その規模は物凄くでかい。床面積だけならスタジアムぐらいあるんじゃないかこれ?このものすごーくでかいのが、今回のテストの集合場所となる施設だ。調べた所、今回のテストで体調が悪くなったり、異常が出た時に直ぐ対応出来るよう、本格的な設備を揃えてあるらしい。・・・こんなに大きいのに、中身は医療機関だけ?それはありえないよな。となると、他にも何かあるな。スパコンとかか?・・・テストが終了したら、VR関係の病院になると聞いたが、それ以外もありそうだな。
 でもまぁ、医療施設としては申し分ないだろう。うむ、ゲーム中に気分が優れない時はお世話になるとしよう。

『Test World Onlineに参加するプレイヤーの皆さんにお知らせです。繰り返します・・・』
「お、そろそろか」

 ベンチから立ち上がり入り口へ向かう。自分と同じように入り口で待っていたり、他の場所で待っていたりした人達がぞろぞろ集まり始める。ざっと・・・一万名は軽く超えるな。過去のPCゲーム等では、普通に万単位がテストプレイヤーとして集まっていたが、VRでも万単位なのだろうか?

 人の流れに合わせて、施設の中へと入っていく。中は広く最上階まで吹き抜けとなっていて、とても開放感に溢れている。いや、物理的に広いのか。こんなに人がいるにも拘らず、ぎゅうぎゅう詰めになっていない。それでも、外からはどんどん人が入ってくる。初めは一万かと思ったが、これは一万では収まらない規模だ。五万だろうか?十万だろうか?
 驚きなのは、こんなに多くの人を収容しているにも拘らず、ぎゅうぎゅう詰めじゃない事だろう。あまりの多さにとても騒がしいが。

 多くの人々で溢れかえっている広場の正面に、舞台がある。ここで発表をするのだろう。舞台の上には、10つの大型モニターが設置されていた。そこには、左から順に1から10の数字が映っている。


 正面の舞台に11名の人が登る。それを見て、だんだん騒々しさが引いていく。11名のうち、1人は男性で、残りの10名は女性だった。

『本日はTest World Onlineのテストに応募頂き真に有難う御座います』

 代表と思われる男性が舞台の中央にて言葉を発する。黒のスーツを着込み、メガネをかけるその姿は、正にインテリといった風貌だ。

『挨拶は抜きにしましょう。私も面倒ですし、何より皆さんは速くゲームをプレイしたいでしょうからね』

 うむ、その通りだ。

『では、これより皆様をそれぞれの部屋へ案内します。係員の案内にしたがって下さい』

 男性の言葉に合わせて、後ろに待機していた女性たちが手にしていたプラカードを高く掲げる。
 あい判った。えぇと、係員はっと・・・。

『係員は、それぞれが対応するプラカードを掲げています。そのプラカードに書かれたそれぞれの数字の範囲内に、自分の10桁の数字が含まれていると思います。そのプラカードの係員の案内にしたがって下さい』

 ふむ、では”1851508040”は・・・あの係員か。うむ、あの係員についていけば大丈夫だろう。





『あー、あー。聞こえますでしょうかー?後ろの方ー、聞こえていましたら手を上げてください』

 拡声器で大きくされた声。それに最後尾のプレイヤーが手を振るって答える。

『はい、確認しましたー。では、これから皆さんを部屋へ案内しますので、確りと着いてきてくださいー』

 語尾を伸ばす癖があるのか、まったりとした印象の女性の係員が歩き出す。それに人だかりが着いていく。中々にシュールな光景だな。
 係員は、一度この病院のような施設を出て、外部にある似たような施設へと向かう。違うのは、ガラスによる吹き抜けが無く、白の壁で統一されている事だ。似たような建物が、始め集まっていた病院のような建物を中心に円周を描くように建てられていた。複数建てられているのは、一つの建物ではプレイヤー全てを受け入れられないからだろう。
 近づくにつれて、その建物の入り口が見えて来た。ん?入り口の上に数字が・・・”6”?建物の番号だろうか。

『この建物の中です。それぞれの階層に部屋があり、ドアの前に番号が書かれていますので、自分の番号と一致する部屋へお入りください』

 ふむふむ。了解した。回りも理解したらしく、プレイヤー達が建物へ雪崩れ込んでいく。皆が走って入って行くのだ。みんなより早く始めたいからだろうか。それとも早く部屋へ行きたいからだろうか。多分両方共だろう。
 自分も遅れたくない。少々早歩きで建物へ入った。

 中に入ると、この建物も吹き抜けになっていた。受付らしきものもある。基本的な作りは始めの施設と同じなのだろうか。
 さて、自分の部屋へ行きたいのだが、場所が判らん。見た所・・・20階はあるな。とても高い。ついでに横にも長いな。一部屋ずつ調べるのも面倒だ。何処かに階層表とかないだろうか。
 辺りを見回してみると・・・お、あった。柱一つずつに張られているな。一杯あるから込み合ってない。どれ、見てみようか。
 自分の部屋は・・・8階で端から8番目か、8.8、ドイツ語でアハト・アハトだな。うむ、とても覚えやすい。気に入った。
 では、早速向かおうか。


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