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進め戦車よ!VRなど恐るるに足らず! 作者:トクメイさん

Es braust unser Panzer Im Sturmwind dahin.

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誤射

「・・・貴方は何?モンスター?」

 焚き火の残り火が、パチパチと弾ける頃。そう問われた。自分はモンスターではない。砲塔を左右に振る事で答えた。

「じゃあ・・・生き物?」

 生き物。その定理はなんだろうか。意思の有無?血液等の有機物?まぁ、自分は生き物ではなく戦車、兵器である。この問いにも砲塔を振る事で否定の意を伝える。

「・・・へぇー」

 やる気の無い返事。・・・この子は突然どうしたんだ?唐突だな。自分の事が気になるのは分かるが。前置きはどうした。

 自分の砲塔に座っていた彼女が動き出した。砲塔から立ち上がり、地面に下りる。するとしゃがんで足回りをジーっと見だした。転輪に触ったり、履帯を揺らしたり。・・・二号戦車F型のサスペンションはリーフ・スプリング式だ。鉄板の撓みを利用して、衝撃を吸収するという仕組みである。彼女はそれを理解できるだろうか。

「・・・これ、鉄板を束ねたもの?・・・撓ませる・・・のかな?」

 凄い。もう分かるか。まぁ、誰でも観察してたら大体の仕組みは判るか。
 飽きたのか、立ち上がって今度は車体後部へ回った来た。背面には排煙と排熱を行ってる。特に何も無い・・・と思う。

「・・・あつっ!」

 ちょ、そこ触るな!火傷するから!大丈夫か・・・?

「・・・大丈夫」

 ・・・火傷はしてないな。良かった。自分の魔法では治せるとは思えんからな。
 次は・・・また自分を登って、砲塔を調べ出した。砲塔には機銃と機関砲、あとは戦闘室に入る為のキューポラ、ハッチがある。

「ここからあの攻撃が出てたっけ」

 機銃と機関砲に興味津々のご様子。砲口を覗くのは危ないので、覗く仕草を見せたら砲塔を回して阻止する。

「・・・むー」

 そんな可愛い顔しても駄目なものは駄目だ。危ない。もし誤射してしまったらどうするつもりだ。頭吹き飛ぶぞ。
 暫くお互いに攻防を繰り広げていると、諦めたのか折れてくれた。まぁ、興味の矛先が逸れただけだが。砲塔上面にあるキューポラに興味が移ったようだ。

「・・・何、これ?」

 キューポラを様々な方向から観察する彼女。暫くするとキューポラ中央のハッチへ手を伸ばし、それを開けた。

「えっ」

 ハッチを開けちゃったかー。特に何かある訳ではないが、何となく嫌だ。あれを連想する。火炎瓶投げ込まれる図を連想するから嫌だ。まぁ、車内で燃えても弾薬が爆発しない限り痛くも痒くもない。ついでに弾薬内の炸薬は薬莢で確りと保護されている。正直意味無いんだけどね。

「中・・・がある?」

 戦闘室を覗く彼女。中には特に何もないぞー?操縦席と砲手席、無線手席があり、それらが操作する機器があるだけだ。多分、観察してもよく分からないと思う。特に無線機はね。

「・・・ねぇ」

 ん?どうした。

「貴方は・・・兵器?」

 その問いに、砲身を昇降する事で答えた。







 朝を迎えた。自分の答えに満足したのか、あの賢そうな子は美人さんを起こして眠りについた。美人さんは特に何かするでもなく、真剣に寝ずの番を務めていた。そして、そのまま朝を迎えた。

「さぁ出発!」
「しゅぱーつ!」

 双子の元気な声を合図に前進を始める。彼女達によれば、後2日で住処らしい。それまで敵mobが現れないとは言えない。確りと護衛する所存。

 足元の石を乗り上げ、重量で砕く。土に履帯の跡を刻む。エンジンの音と排煙を神聖な森へ撒き散らしながら、前進を開始した。



 ・・・そういえば、彼女等って森に生きる者達だろ?森汚されたら起こるよな?・・・排煙、大丈夫かなぁ。




 お日様は真上まで昇り、我々に降り注ぐ。木々と葉で程よく遮られた日光は心地良いだろう。自分はあまり感じないがな!
 ・・・視界に波紋が生まれる。音源が接近している証拠だ。何かが来るな。波紋のサイズからして、かなりの大きさか。戦いに巻き込む訳にはいかない。ここで荷車を切り離す。木に引っ掛け、力任せに引き千切る。

「うわぁっ!?」
「きゃっ!」
「ゆ、揺れる!?」
「おっと・・・」

 目の前の木々の隙間から、敵の大きさが伺える。赤い何かが向かってきているようだ。・・・熊か!
 木々を薙ぎ倒しながらその熊は現れた。4m程の高さの、とても大きな熊だ。今まで遭遇してきた熊は2m程度だった。大きすぎる。色も違う。今までは黒か茶色。こいつは赤い・・・いや、地の色は茶色か!あの赤は血だ。所々黒く変色している事からそれが分かる。
 ・・・こいつ、エルフか何かと戦闘したな?体の至る所に矢や切り傷がある。あの砲弾のような鉄製の矢も凄いな。・・・この熊、逃げてきたという事か。

 ・・・エルフと戦ったって事は、もしかしたらこの熊、人の味を覚えたか?・・・ならば駆逐せねばなるまい。三毛別羆事件のような事件は御免だ。彼女等を守る為にも、ここで屠る。


・ビックベアー
 その名の通りとても大きな熊。気性が荒く、自分より小さなものを襲う。一度標的にしたものに対してとても強い執着心を持ち、人の味を覚えたビックベアーならば早急な処理が求められる。


 ふん。やはり駆逐すべきか。砲塔を旋回させ、砲身及び銃身を突きつける。目標はでかい。正確に狙わずとも当たる。照準を続けながら射撃を行う。

 大気を切り裂く怒涛の連打。音速を超える鉛球はビックベアーの体へ突き進む。が、機銃の毎分800発の連撃は、その毛皮の装甲で明後日の方向へ弾かれてしまった。

(なっ!?弾かれた!?)

 機銃弾が弾かれた!?20mmは弾かれてないが、機銃を弾くだと?どんな毛皮だ!装甲レベルの毛皮なんて聞いた事がないぞ!?
 しかし、20mmは弾けまい。500m先の30mmの鉄板を突き破る鉛球だ。30mmだぞ?30mm。毛皮程度紙に等しい。それに、現在彼我の距離は100mも離れていない。余裕だ。

 20mmは左腕へ命中し、その太く逞しい腕に風穴を開ける。突然の衝撃に呆然としていたビックベアーは、その次にやってくる左腕の違和感に戸惑い、最後に脳を突き破るかのような痛みに大声で泣き叫ぶ。
 躊躇はしない。ここで殺す。次は足だ。機動力を削ぐ。
 足の骨を折られ、大地へ膝を突くビックベアー。残念だったな。自分の前に出てきたのが運の尽きだ。あと、遠距離攻撃に対する対処法が無かったのも敗因だな。
 頭へ照準。射撃ペダルを押し込む。ビックベアーは白い粒子と化した。

 よし。やはり、遠距離攻撃ができる、というのは強いな。とても便利だ。この剣と魔法の、ファンタジーな世界の敵は、近接攻撃を主体とするものが多い印象がある。それに対しアウトレンジ戦法が取れる。とてもいい事だ。願わくば、自分より射程が長く、自分より防御力に優れる敵が現れない事を・・・無理か。絶対ドラゴンとか硬い。

 さて、彼女等の所にっ――




 視界の端から迫る黒い影。それは、金属特有の光沢を放ち、形状は鋭く尖っていた。金属の矢・・・いや、まるでそれは砲弾であった。



 それは自分の側面に突き刺さった。砲塔と車体の隙間に突き刺さったそれは、正面に比べて薄い側面装甲を突き破り、車内の座席や砲室をぐちゃぐちゃに蹂躪し、反対側の装甲を突き破って外界へ飛び去った。



 ・・・が、がぁあっ!?クソっ、痛い。痛い痛い。物凄い痛みが脳内を駆け巡る。

(うぉおおお!!この程度で参ってられるかっ!)

 気合で痛みを捻じ伏せる。痩せ我慢だ。痛みに狂ってる暇は無い。直ちに攻撃が飛んできた方向へ車体正面を向け、防御の体制を整える。
 次弾。時間の流れがゆっくりになったかのように、砲弾の動きが遅く見える。車体を傾け、擬似的な装甲増加と受け流しを試みる。弾いた。砲弾は傾けられた正面装甲へ直撃し、一部を削りながらも弾かれていった。
 第三弾。砲塔へ向かってくる。砲塔を回す。回らない。何故だ?いやそんな事を考えている暇は無い。車体を回し傾ける。弾いた。機関砲の砲身が吹き飛んだ。
 第四弾。右足回りへの弾道。ここで足を失う訳には行かない。車体下部にて受け止める。車体下部へ突き刺さったが、貫通は防いだ。
 第五弾。次は左足回り。同じく車体下部で受け止める。貫通した。変速機にまでの貫通は防いだ。実質被害なし。
 まだいける。第六弾に警戒する・・・。む?飛んで・・・来ない?

「あ、あの矢は・・・っ」
「・・・不味い!」

 ん?エルフ達が・・・まて、出てくるな!また敵が攻撃してくる可能性があるのだぞ!
 前に出す訳には行かない。後退し、エルフ達の前へ・・・くそ、避けられた。何故前に出る!

「「やめてっ!」」
「この方は私達を守ってくれている!」
「壊さないで!」
「・・・次を撃ってみろ。返してやる」

 ・・・どういう事だ?今の攻撃を知っている?という事は彼女等は攻撃をしてきた者達も知っている?・・・まさか、エルフか!?って、ちょっと待て、賢そうな子、その手の上で展開している魔方陣はなんだね。物騒だから仕舞いなさい。刺激するんじゃあない。

「攻・・・や・・・!」
「ど・・・す・・・」

 ぬ?誰の声だ?男の声だった。彼女等ではない。という事は、やはりエルフか?

「おい、あれ・・・・・・・・・娘さ・・・じゃ・・・」
「・・・ぁ、そ・・・・・・あの双子・・・」
「・・・護す・・・」

 正面の草むらから、何かが出てきた。エルフだった。顔立ちの整った男性が複数。動きやすそうな皮の鎧で身を包んでいた。手には弓、腰には剣、背中には矢筒があったが、手に大きな鉄製の矢、先程自分を突き破った砲弾を手にした者もいた。そして、最も重要視すべき特徴、耳が尖っていた。エルフだった。

 ・・・味方、か?

「生きていたのか!」
「良かった・・・」
「よし、これから帰還しよう!」

 男達が騒ぎ出す。どの顔にも笑顔が浮かんでいる。どうやら、彼女等の住んでいる場所の住民と見て良さそうだ。

「嫌です!」

 ・・・え?

「い、今なんて・・・」
「嫌ですと言ったんです!」
「ちょ、ちょっと。いきなりどうしたの?」
「いやだー!」
「いーやーだ!」

 ちょ、妹ちゃん。何言い出してるんだ?双子ちゃんも。帰りたくないのか?

「・・・私も嫌だ」

 君もか!

「ほらほら、ふざけてないで・・・」
「ふざけてません!帰る前に、謝って下さい!」
「あ、謝る?」

 ・・・?誰に謝るんだ?

「あれにです!」

 ちょ、何故自分を指差す。

「そうだー!謝れー!」
「謝れー!」
「・・・謝罪を要求する」
「あらあら。これには私も同意見ですわ」

 美人さんもですか!・・・これって、彼女達からかなり良い印象を持たれているって解釈していいのだろうか?

「ど、どういうことだ?」
「あれに謝れと?」
「そういえば、私達を守ってくれているって言っていたか?」
「・・・恩人ってことか?」

「「「そう!」」」

「お、おい。俺達、かなり不味い事してないか?」
「長の娘さんやこの子達の恩人に攻撃したって事だろ?」
「・・・や、やばいやばいやばい!」
「す、すみませんでした!」
「「すみませんでしたぁぁああ!」」

 ・・・謝られたけど、どうすれば良いんだ?正直、怒っていないのだが。何でだろう。・・・ゲームだから?いや、突然の攻撃に混乱しているのかもしれない。
 さて、返答ができないんだが。砲塔は何故か回らないし、砲身も昇降できないんだが・・・。返答の仕様が無いという。

「ほら!許してもらうまで謝ってください!」
「「謝れー!」」
「「「すみませんでしたぁああ!」」」
「・・・小さい!」
「「「すみませんでしたぁああ!!!」」」

 ・・・これ、いつまで続くんだ。

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