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非幸福者同盟 作者:相羽裕司

第四話「サヨナラの色」(後)

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92/昔、モンスターを集めていた

 ジョーがひい祖父を連れて戻ってくると、車椅子に座ったアンナお祖母ちゃんが布団に横たわるカレンを見守っていた。ひい祖父はカレンの額に手をあてると、ふむ、と頷いた。

「こういうことは、たまにあるのう」
「そう、なのか?」

 ひい祖父の口ぶりからは、病気のような症状ではなく、何か他の要因。医学的な知見からはまた別の範疇で、このような精神が衰弱した症状になった人を、これまでも見たことがあるという含意が感じられる。オントロジカを収奪された人間というのに、ひい祖父はその長い人生で触れた経験があるのだろうか。

「で、ゲームか。それもイイぞい。昔友人がなった時は、一緒にテニスして温泉入って、美味いもの食ったりしてる間に治った」

 ひい祖父は二つの旧型携帯ゲーム機を有線で繋ぎ、電源を入れると片方をカレンの枕元に置いた。

「カレン。やる? お前が昔やってたデータ、まだ残ってるぞい」

 何というか、ピコーン。ヴーーーーーンゥーーーーンンォワァ! みたいな懐かしの起動音を聴いた時である。それまで虚空を見つめていたカレンの瞳にわずかに光が戻り、カレンはゆっくりと上体を起こした。

「やる」

 そうつぶやいて携帯ゲーム機を手に取る。確か、集めたモンスターを友達同士で戦わせたりできるゲームだった。カレンはモンスターをコンプリートしていたと記憶している。昔の情熱、楽しかった記憶、そういうものが力をくれるのか。まだ生気は薄かったが、ひい祖父もいるし、カレンはとりあえずは大丈夫そうだと思った。

 対面で座してゲームを始めるカレンとひい祖父を見守るように位置どっていたアンナお祖母ちゃんの肩に手を置き、「よろしく」とそっと声をかけると、ジョーは意識を切り替え、徐々に今晩の戦いに向けて集中を始めた。

 アンナお祖母ちゃんが見ていたテレビを消そうとリモコンに触れた時、ちょうど流れてきたニュースに目がとまった。報道は、先ほど超女王と戦った市内の多目的ホールで、意識不明の昏睡状態の男性が多数見つかったことを伝えている。このように一般的なメディアで報道されることを構わないと考えているならば、超女王はもうあの拠点を放棄したと推測できた。今夜、終わらせるつもりだということか。

 映像の中の担架で運び出される男性の輪郭、体格に見覚えがあった。

暮島(くれしま)さん、か?)

 カレンと恋人関係にあったという男性は、超女王に使役され、今は敗者の(てい)で担架に横たわっている。

 先ほどの戦闘で対した、「この街で最も優れた男」、天魔の姿が脳裏に過る。今日出会ったばかりの天魔と暮島さんという二人の男。圧倒的に強く、優れた人間は天魔の方だった。

「切り捨てられた、のか」

 ジョーはテレビを消すと、一度だけカレン、ひい祖父、アンナお祖母ちゃんの光景を振り返り、そのまま拳を握りしめ、九階の部屋を後にした。
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