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非幸福者同盟 作者:相羽裕司

第四話「サヨナラの色」(後)

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86/ダイビング

「ジョー君!」

 天魔(てんま)の攻撃によって揺らいでいた意識をかろうじて持ち直していたジョーは、周囲に突然現れた濃霧に対して、どこか冷静にアスミの存在(そんざい)変動律(へんどうりつ)を感じ取っていた。

 あるいは、幼少時に共に時間を過ごした長さゆえなのか、名前を呼ばれた声色だけで、現れたアスミは一時撤退する気なのだとジョーは理解した。自分の思考も天魔の強さの前に興奮からは冷め、自然と、陸奥(むつ)がいない状態では勝てないと考えていた。

 無様でもいい。まずは生存をと地面を這うようにジョーも建物の出口に向かって駆け出す。霧の中、巨大生物群が自分を追ってくるのを感じる。がむしゃらな逃走の中、触れ合う距離までアスミと志麻と合流したのは出口の一歩手前。ラグビーでダイビングのトライを決めるかのように、三人、出口に向かって飛び込む。

 濃霧の中から、夏の光に照らされた外へと飛び出した三人は各々にアスファルトの地面で受身を取る。さらに駆け出す前に、自然と振り向いて確認する。超女王は、天魔を始め使役された男たちは、そして生物群は、結界の外までは追ってこなかった。

 S市中心地を本格的な戦場にしてまで戦う気は、まだ超女王にはない、ということだろうか。

 アスミがくいっと(あご)でうながしたので、志麻もジョーも走り始める。

 撤退の手際の良さ。アスミと志麻は、あるいはこれまでも経験したことがあるのかもしれない。ただ、ジョーにとってはスポーツではない本物の戦闘における、初めての完膚なきまでの敗走であった。
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