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非幸福者同盟 作者:相羽裕司

第三話「拠り所の守り人」

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60/カレンの気持ち

 東に数十分と車を走らせれば、そこは先の震災で津波被害にあった沿岸部。そこからしばし西に位置する再開発地域の進展は希望的なことだけど、平野部に広がる街は街で傾いた電柱と歪んだ道路の風景が続き、日常の風景にニュっと大型クレーンや巨大なブルトーザーが現れて、奇妙な感じ。その街の片隅の場末の居酒屋のステージで、カレンが歌いながら慈しんだ自分の中にある気持ち。

 こういう話は面白い方がいいから、イイ男と交際始めましたと、そんな笑い話にしてるけど。実際の所、カレンに求愛してきた暮島さんという男は、ジョーが感じたほど、強い類の人間ではなさそうだった。

 インターネットで少し調べれば、人の背景はある程度分かってしまうご時世。地元では最高の学府から有名企業に就職した暮島さんも、現在は苦難に喘いでいた。一昔前はパソコンの製造で名を馳せていた企業。しかし、業績が落ち込み、時代の潮流の中弱い立場へと反転していったのは、わずかここ五年から十年の間のことである。時代と連動して打ち出したサーバー事業が、ストレージ事業が、大規模海外資本のクラウドサービスの前に劣勢を強いられ、さらに到来するウェアラブルとネットワークの波には完全に後れを取っていた。大規模なリストラも少し前にニュースになっていた。より大きく、速く、強い。そんな力の前に淘汰される立場で生きているのが今の暮島さんで。例えばそう、カレンのアイドルサイトの中心的な客層。四十代後半のバツイチの人とか、日々の激務に疲弊した若き労働者たちとか、ニートに引きこもりの人とか。彼らはカレンとの交流を心の支えにしているのだけれど、そんな人たちが抱えている、自身には価値が無く、それを覆すあてもないというような感情を、暮島さんも抱えながら生きているように思えた。これが恋なのかは実は微妙。ただ、なんか放っておけなかった、それが率直な所。

 カレンの歌声は居酒屋の場を癒し、少しだけ、人々の心に安らぎを与えた。

 自分のことはまだまだ分からないけれど、せめて明日、縁ある人々が笑顔でありますように。お金も社会的な地位も人気も、ほとんどないのだけれど。そんな気持ちで今日もやりたいことと、やれることと、やるべきこととを積み重ねていく。それが、宮澤カレンという人だった。
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