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非幸福者同盟 作者:相羽裕司

第三話「拠り所の守り人」

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54/美味しいお酒を注文する

 ジョーとアスミが、非日常の世界にまつわる真剣な話をしている頃。志麻は一目には普通の少女の姿をした陸奥に背中を押されて、日常の人達が集う居酒屋へと入って行った。給仕をやっているアスミの父親に案内されて、志麻は個室にもオープンスペースにもなる角の席に通される。現在はオープンになっており、店内の様子やそこに集う様々な客たちが見えるようになっている。

「今日は、そっち方面の話かい?」

 席に着いた時に、アスミの父親が耳打ちしてきた。家ではオントロジカの研究者、外では復興事業の従事者。お髭に年齢のわりに愛くるしい眼差をしていて、朗らかな雰囲気を纏ったおじ様である。アスミの父親は一般社会とオントロジカを巡る世界との境界にいる人間であるが、「そっち」とは、この場合守人関係の活動を指す。

「分かりません。でもおじ様は普通にしていてください」

 志麻も、率直な所をひそひそ声で返す。陸奥がいる点で、オントロジカを巡る世界はすぐ目の前にあるが、なんだか雰囲気はただの会食のようでもある。宮澤ジョーの姉にいたっては未知数。とりあえず現時点で無難な判断を下すしかない。

「生ビールをお願いします」
「私は、こちらのお酒を」

 お通しを回しながら、カレンと陸奥は自然にアスミの父親に注文を頼んでいく。メニューの地域特産の吟醸酒を指差す陸奥に、カレンは特にツッコミも入れないでいる。この場合、カレンの方は悪い意味での大らかさからのスルーであったが、志麻としても、よくよく考えてみると頭が混乱してくる。見た目は中学生くらいの少女だが、正体は遥か昔の戦艦である。年齢的には、OKになるのか?

「志麻ちゃんは?」

 アスミの父親としても、志麻に言われた通りに、普通に接するしかない。この父親も本質能力を持たないなりに、数多のオントロジカを巡る戦闘なり事件なりに関わってきた経験を持っている。そうそう動じるでもなく、いつも通りに客をもてなすように振る舞う。

「じゃあ、オレンジジュースで」

 もう、流れに任せるしかないある種の諦観が志麻の心に漂っている。ただ少しだけ、頼んだ飲み物に関して、自分は二人に負けてる気がする。そんな夜の会合の始まりである。
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