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非幸福者同盟 作者:相羽裕司

第一話「思いがけない助力」

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3/今日から夏休み

 相手の背負い投げで畳に叩きつけられて、負けた、という瞬間よりも、その後しばらく会場から外に出たコンクリートの階段で、まだ続いている会場の熱量を感じていた時間が記憶に残っている。

 例えばだが、オリンピックを目指しての上位陣での克己。そこまでいかなくとも専門の雑誌に掲載されるような、強く、速く、大きい人間たちの世界。そういう世界には、自分は入れない側の人間なんだ、という理解。何度か思案して確かめて、同じ結論に達する。むしろズレたままだった何かが、カチリとハマったような気さえした。

 全身の力を出し切っていたゆえか、震える手で口をつけた水筒の水が、身体の隅々まで心地よく染みわたっていった。

 ジョーに勝利した俊敏な男はベスト十六を決める試合で敗北し、その男に勝った男もまた、ベスト四を決める試合で敗北した。その年に優勝した、同年代のその競技・その階級で一番強かった人間のことは、記憶が曖昧だ。興味も薄れていたのだ。

 以上が、アスファルトが焦げる匂いと繋がっている、ジョーが夢を追っていた時間の記憶である。高校に進学してからは、柔道部には入っていなかった。

 一番は、お金の問題だ。敵わない側のジョーでは、柔道では食べていけない。勉強をしなくては。夏休みの初日から熱心に開かれている、学校の夏季講習に向かってジョーは歩いて行く。

 ある列島の北の方に位置する街での物語。都会と言って差し支えない東側の平地に出来た中心地と、山や田園がまだ大部分を占める西方面との、中間あたり。ある程度高い建築物が散見されるからだろう。続いて行く道には、一定間隔で日陰が出来ている。

 暑い、少し涼しい、暑い、を繰り返しながら、今年ようやく一通り校舎の修繕が完了した学舎に向かって歩いて行く。

 世間的には連日の記録的な猛暑が話題の、ジョーの高校一年の夏休み初日である。
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