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非幸福者同盟 作者:相羽裕司

第二話「ジョーとアスミと志麻」

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28/控えめに光る

 ジョーと陸奥とで、現在推測している『構築物の歴史図書館』に関する情報をアスミに伝える。

 一区切りすると、陸奥は片手を挙手し、試してみたいことがある、と告げた。

「なんだ」
「それなんですが、この図で説明してみます」

 陸奥はそう言ってしゃがみこむと、先ほどジョーが地面に描いた図に、一か所描き加えた。電池と電球の間の配線に横線を一本。

「オントロジカから供給を受けるにあたって、ここが繋がれば私は現界し、繋がってなければ現界できません、これを決める権限は、ジョーさんにあります」
「スイッチってことよね」

 アスミが自身の理解を示す。ジョーとしてもその例えは納得で、おそらく、「共存・開始」の言葉がそのスイッチをオンにする働きを担っているのだろう。

「一方で、一度スイッチがオンになった後に、電球である所の私がどれくらい光るかは、私に権限があります」
「どういうことだ?」
「つまりアレじゃない、陸奥が蛍光灯だとしたら、全開で光るか、普通に光るか、あるいは豆電気にするかは、陸奥が決められるってこと」

 またしてもアスミが理解をうながす。

「それです。その例えだと現在私は普通に光ってるのですが、試してみたいというのは豆電気です。オントロジカの供給に一日あたりの制限があり、私の現界時間は限られているわけですが、豆電気モードにすれば、もっと長い時間こっちにいられる気がするのですよね」
「ああ、なるほど。豆電気の方が消費電力が少ないから」
「やってみたら? 出力を押さえても長時間いてほしいってケースもこれからあるかもだし」

 ジョーとしても色々試しておくのに異論はないので、頷いた。

「じゃあ、やってみますね」

 陸奥は両の掌を開いて、肘を曲げたポーズを取ってみせる。

「豆電気モードっ」

 そう口にすると、赤色の光が陸奥を覆い、数度明滅する。そして……。

 光が消滅すると、陸奥は全裸になっていた。

 なまじ両腕を開いたポーズを陸奥が取っていたので、乳房が正面からジョーの目にとまる。

「あれ、あれれ?」

 一方で陸奥は、恥じらいよりも先に、自身に起こった変化を確認するように、ポーズを変えては自身の裸体の様々な部分をしげしげと見つめている。

「なるほど、赤い和装は戦闘用で、纏っているには普通に光るくらいのオントロジカの供給が必要ってことね。豆電気モードにすると、消えちゃうと……って、何見てるのよっ」

 アスミが両手でジョーの顏を左右からロックすると、グキっとなりそうな勢いで強制的にジョーの首の向きを変える。

 見た目がジョーたちより少し年下の少女なせいか、肢体が、特に乳房が幼い、などと印象が脳を駆け巡っていたジョーは、我に返る。

「うちの敷地内で良かったわ。陸奥ちゃん、公的な場で全裸になると、現代では捕まるから覚えておいてね」

 アスミは陸奥の首根っこを掴むと、私の服を貸してあげるから、とそのまま引っ張って敷地内の自宅に向かって行く。一方陸奥は、何かやらかして保護者に連れて行かれる児童のように少しシュンとしている。

 陸奥が着替えている間、かなりの体感時間、ジョーは御神木の下で待っていた。やがて、アスミの服を着た陸奥と、アスミが再びやってくる。

 僅かな時間に落ち込んだ状態から立ち直った様子の陸奥は、既に瞳を輝かせて、ルンルンと身に着けたアスミの服をひらめかせている。陸奥は、薄い青のノースリーブのブラウスに、縦縞模様のミニスカートを身に着けていた。ジョーの前でくるくると回ってみせるので、感想を求められていると気付く。

「なんというか、本当に女の子みたいな感じだ」

 陸奥はしばらくアスミに視線を送る。

「アスミさん。ジョーさんは、ややデリカシーに欠ける男性ですよね」
「そうね」

 ジョーは最大限に可愛いということを伝えたかったのであるが、表現力が足りない自身を呪うのだった。そして、ナチュラルに陸奥に同意するアスミに、どういうこと? と思った。

「それじゃ、ムっちゃん、後はよろしくね」

 そう言い残して、アスミは自宅に戻っていく。呼び方がえらくフレンドリーになっているので、家で着替えている間に何が、と思いつつ、ジョーは何がどうよろしくなのか、陸奥の説明を待つ。

「アスミさんは、牛人から受けたダメージがまだ残っているので、日中は休まれるそうです。もう一人の守人である山川志麻さんにジョーさんを紹介するのは、夕方とのことです」

 今も、ダメージが回復していない所を、無理して来てくれていたのかもしれない。ゆっくりと休んでほしいとアスミの身体を気遣う。

 一方で、豆電気モードなら長時間こちらの世界にいられるという陸奥の仮説は正しいようで、陸奥も帰る気配がない。結論としてジョーは考える。夕方まで、陸奥と何をしていようか、と。

 ◇◇◇

 一連の早朝の空瀬神社でのやりとりを、上空を旋回しながら、一羽の機械鳥が観察していた。山の上から山川志麻が己の能力で放った、索敵用の機械鳥である。

 扱えるデータは、テキスト、音声、動画、などなど。

 当の志麻は現在睡眠中。

 彼女が得られたデータから、何を解釈するのかは、彼女の目覚めを待ってから。
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