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非幸福者同盟 作者:相羽裕司

第十一話「君の名前は」(前編)

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212/不夜の街、この世界

  ◇◇◇

 八月十五日。夜。

 ジョーはコンビニの飲食スペースで、フリーペーパーの裏側にメモを取りながら、宮澤家の家系図を整理していた。孤児だった父親の方はひとまず置いておいて、母方の方。

 まず、兵司ひぃじーじと陽毬ひいお祖母ちゃんが結婚した。そしてさっそくだ。その二人から生まれた息子、ジョーのお祖父さんにあたる人の記憶が、確かになくなっている。この空白を、仮にXと置こう。

 Xは日本人のはずで、そのXとアンナお祖母ちゃんが結婚した。アンナお祖母ちゃんはアメリカ人なので、その二人の娘、ハーフのカンナ母さんが生まれた。

 あとはシンプルだ。ハーフのカンナ母さんと日本人の父が結婚して、クォーターであるところのジョーとカレンが生まれた。

(Xは、何者なんだ)

 コンビニ弁当に箸をつけながら、ジョーはこれは長丁場になるなと思った。それにしても、ご飯が美味しい。夜に空腹でも、お金があれば美味の食事が取れるこの街、この国。さきほどまで虚無感に包まれていた。でも今は、ジョーを包んでいる世界、不夜の街アカリが頼もしいものに感じられる。

 とはいえ、ここ数日抜け殻になって放浪していたせいで、今のジョーはなんだかみすぼらしい。このままではパワーが出ないだろう。まずは身支度を整えることにした。

 その前に。

(アスミと志麻に、一言連絡入れておこう)

 ここからは、サクサクと動いていかなくてはならない。コンビニの充電で再び力を取り戻したスマートフォンでリンクドゥのアプリを立ち上げる。とりあえず、三人のグループ「非幸福者同盟」にこう書き込んだ。思えば、俺も動くから、その間に二人も動いていてくれと、そんな気持ちを込めていたような気がする。


「この世界にはまだ秘密がある。それは不安なことだけれど、希望的なことでもある気がするんだ」


 ジョーは立ち上がった。

 カレンによると、カンナ母さんはXに対して何か複雑な感情があるらしい。そちらはちょっと、後回しにして。これから必要になりそうなもの。ええと。

 まずは服だな。

 そう思い至ったジョーは、食事の後始末をするとコンビニの自動ドアを出て、夜でも開いている生活用品店に向かって走り出した。
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