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非幸福者同盟 作者:相羽裕司

第十話「夏の雪明り」

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204/259

204/八月十三日1~死霊のように歩く

  ◇◇◇

 明けて八月十三日。

 大白山神社の地下祭壇にて真実を知った後、ジョーはトボトボとS市一級河川の河川敷を歩いていた。

 アスミが家で休むと告げたので、昨夜は解散となった。しかし暗黙のうちに、八月二十日にアスミの「マグマ」で真実大王を葬り去ると。「正しい」流れに事が進み始めているのを感じた。志麻と中谷理華はアスミに付いている。本当は、ジョーも側にいた方が良いはずだった。それでも、ジョーはアスミと離れて、こうして日が照らす河の側を、ただ死霊のように歩いている。

(何をやってるんだ。俺は)

 アスミに対して、苛立っていた。本当なら、助けてあげなくてはならないのに。助けることができないのなら、せめて残された時間、近くにいるべきなのに。

 空を見上げると、遠くにツインタワーが見える。そこで、空から落ちてきた戦闘機を幻視し、とある事実に気づく。

 そうだ。大王の攻撃で、市民に大勢の犠牲が出た。今、こうしている間にも、瓦礫の下で救助を待っている人がいるのかもしれない。アスミのことばかり考えていたが、自分も、一人でも多くの市民を助けるために、今すぐ駆けだすべきなのではないか?

 しかし、ジョーは駆けだすことができない。こんな今の自分でも、少しは役に立てることがあるはずなのに。

(けっきょく、はかりにかけているんだ)

 自分は、そういう人間だったのだ。

 傷ついた街の人々を颯爽と助けて回るヒーローなどはどこにもいない。アスミの事で頭がいっぱいで、市井の他人のことなんて忘却している人間。

 気が付けば、左手首の昇竜のアザの痛みが消えていた。それは喜ばしいことのはずだった。

 何も感じない。堤防に吹く優しい風に触れても、肌が刺激された以上のことを感じない。

 歩きながら、おもむろにスマートフォンをズボンのポケットから取り出し、リンクドゥのアプリを立ち上げる。

 ジョーとアスミと志麻の三人のグループ。『非幸福者同盟』に新しい投稿は、なかった。
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