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非幸福者同盟 作者:相羽裕司

第九話「サヨナラの音」

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188/259

188/ワシントン海軍軍縮条約下にて建造された存在

 午後の日光を遮る「何か」が上空に現れ、四号公園は暗くなった。アスミが見上げると、エッフェル塔が呼び出したその存在は、またしても戦艦であった。

(大巨神の時のとは、違う?)

 アスミが、ジョーが、志麻が地面に伏せる中、上空から大戦艦が落下してくる。このエッフェル搭最強の概念武装として降臨した大戦艦の名を、ダンケルク (Dunkerque)と言う。戦艦陸奥と、あるいは戦艦リシュルーと時代を共にする、先の戦争におけるフランスの大戦艦である。戦艦リシュルーの前級に位置するが、概念としての強靭さを歴史と物語の蓄積に見出したエッフェル搭は、このダンケルクこそを切り札とした。

 その戦艦ダンケルクに向かって、大王は勝鬨(かちどき)をあげるように、拳を突き出した。

 アスミは、戦う人間としては、ネガティブに仮定して戦略を立てるタイプであった。

(おそらく、この戦艦も)

 だからこそ、その瞬間を括目して見た。

 まず、大王が拳を突きだした瞬間、周囲に「ある気配」が飛散した。その気配は、歴戦のアスミには、既知のものだった。次に、大王と直接触れるかという距離まで戦艦が接近した時、大王が大きく一度、息を吐いた。何かを確かめるように。これは、先ほど陸奥を葬った時にはなかったプロセスだった。

 アスミが感じた違和は、それだけ。

「フランスの戦艦ダンケルク」

 あとは、これまでと同じだ。制止したダンケルクに向かって、大王がその存在を告げる。

「その存在よりも、我は強い!」

 この日、大王に向けられた攻撃としては、最大の質量を誇った戦艦ダンケルクも同じであった。大王が撃ち込んだ拳から発火し、すさまじい勢いで業火が焼け広がってゆくように、爆発が連鎖し、その存在が粉々になっていく。

 故国の大戦艦が爆散していく中で、エッフェル搭は何かを悟ったように嘆息した。

「やっぱり、外交か」

 エッフェル塔のつぶやきがある種の諦観に満ちていた一方で、アスミの方はこの攻防の中から、二つの仮説を導いていた。

(笑っちゃうくらい、微かな可能性だけど)

 アスミが見出した二点は、大王が意図的に秘匿しているのか。あるいは、大王自身も気づいていないのか。アスミは天に祈念する。
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