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非幸福者同盟 作者:相羽裕司

第九話「サヨナラの音」

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184/259

184/絶対強者VS古の戦艦

 和なる上衣をはためかせ、その右手に紅の雷光を収束させた陸奥は、キリリと大王を一睨みすると、高らかに叫び、フェラーリの後部を蹴り、宙に飛び出した。

「主砲発射!」

 陸奥を迎え撃つ大王は、走行を一時止めると、両の足をいわゆる三戦(サンチン)立ちの形にして、大地の上に堂々と構える。両の腕を天空に広げ、さながら飛び込んでくる陸奥を抱擁せんとするかのようであった。

 その瞬間の攻防を、アスミは見た。

 くり出された陸奥の右拳を、大王は、左腕を上段に掲げて受けた。陸奥の主砲の威力がその防御を吹き飛ばすと思われた瞬間である。陸奥が、右拳を繰り出した体勢で空中に制止する。

「戦艦陸奥、とその主砲」

 大王が低い美声で、陸奥の存在を告げる。その瞬間、陸奥の右手が文字通り爆ぜた。

 空中で右肘から下を失った陸奥を視認しながら、大王は破顔していた。

(なんて、満ち足りた笑顔を)

 蹂躙(じゅうりん)できるという快感に打ち震えるように、大王は言い放った。

「その存在よりも、我は強い!」

 大王が返しの右拳を陸奥の腹部に撃ち込むと、陸奥の小さな体の中心が爆裂し、陸奥は勢いよく弾き飛ばされる。肩に、肘に、足首に、顎にと爆発は伝播し、地に落ち、倒れ伏した時、陸奥の衣服はボロボロに破れ、体は欠損だらけで半分人型を成していなかった。

「『地球(ザ・ストロ)最強の(ンゲスト)存在(・マン)』」

 大王が静かに己の本質能力(エッセンテティア)名を告げると、無残にコンクリートの地面に倒れ伏した陸奥の体は、光の粒子に変換され始めた。何らかの尊い存在が、昇天していく。この国の古典で描かれる、貴人が荼毘(だび)にふされ、煙が天に昇っていく心象が意識される。

(アスミ、さん……)

 陸奥の声が、アスミの内面に響いてきた。消え去る瞬間に、陸奥は何かを残そうとしている。

 しかし、何も伝えられないまま、陸奥を形成していた光の粒子はこの世界から消滅してしまう。

 もはや三人のみになった脆弱な人間たちを乗せて、陸奥が消滅した地点を背に、フェラーリは走り続ける。

「ジョー君?」

 最後の望みをかけてアスミはジョーに確認したが、返ってきたのは残酷な返答だった。

「召喚していない時も背中の方に感じ続けていた、俺と陸奥との、紅い線での繋がりが、途切れた」
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