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非幸福者同盟 作者:相羽裕司

第九話「サヨナラの音」

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179/覚えていてくれる人

  第九話「サヨナラの音」


汚辱(おじょく)! スヴャトポルクは、清く、正しく、美しく作られたこの世界に、泥を浴びせる人間であった!」

 真実大王の声は憤りに満ちている。黄金の髪をなびかせ、今にも獅子が獲物に飛びかからんとする勢いでジョーに向かって歩を進めてくる。

 戦場の中、ジョーの思考に混乱がもたらされる。自分にとって無条件で信用がおけるはずの人間――母親が口にするのを忌避した名前が、敵によってもたらされた。そうだ、スヴャトのフルネームはスヴャトポルク。ソ連の人だった。 ソビエト連邦? そんな国は、今はもうない。どういうことだ?

 続いて、左手首の昇竜のアザが再び痛む。こんな時に。

「下がってくださいっ」

 内と外から、自分の中心を脅かされていたジョーの元に、陸奥(むつ)の凛とした声が響く。窮状にある時は、自分の感覚も変わるからだろうか。これまで年下の可愛い少女といった印象だった陸奥が、今は自分が知らない長い時間を過ごしてきた先立(せんだち)のように頼もしく感じられる。

 さらに場に木霊する、こちらもジョーの胸に温かさをくれる声。

「『八百万(やおよろず)のロックンロール』」

 マッチ棒が回転しながら、小さな花火となって、大王の頭上に降り注いでいた。彼女が操る火炎は、この状況でもある種の美しさを兼ね備えている。

(ふぅ)

 ゆっくりと息を吐き出す。陸奥だけではない。アスミも、志麻(しま)もいる。どうも、不安や混乱には、自分のことを覚えてくれている人の存在が、効くらしい。背後に志麻が駆るスポーツカーで到着したアスミを背に、ジョーは左手首が発生源の痛みを気合で抑え込み、再び大王に向き合った。
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